有価証券報告書-第33期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/18 15:26
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130項目

事業等のリスク

[方針]
当社グループは、事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握し、リスクの発生頻度や経営への影響を低減していくため、2002年に全社的な視点でリスクマネジメントを統括・推進する役員を置くとともに、リスク管理部門及び各部門とグループ会社にCRO・リスクマネジメント推進責任者を配置し、主体的・自主的に対応できる体制を整備しています。
また、主な重点リスク項目を定め、その目標の達成度・進捗を点検し、各種施策に結果を反映しています。
毎年、年2回の内部統制推進委員会(注)を実施し、リスク低減に関する施策を討議するとともに、有効性に対する評価等を行い、その結果は取締役会に報告しています。
なお、当社グループは、多岐にわたるお客様・業界に対し世界中で様々なサービスを提供しており、各事業により事業環境が大きく異なります。そのため、当社取締役会は事業本部長等へ大幅な権限委譲を図ることで、お客様との関係や市場環境等に関連するリスクを適切に把握し、迅速に対応することを可能としています。

(注)内部統制推進委員会におけるマネジメント体制
本社、地域統括会社等、個社において事業に関連するリスクを洗い出し、対策を策定します。上位主体はそれぞれの状況を分析・評価し、適切な管理を実施します。グループ全体の状況については、リスク管理部門等が分析・評価・モニタリングを実施し、更に、グループ全体に影響を与えるリスクを「グローバル統制リスク」と位置付けて管理し、総括的なリスクマネジメントの徹底を図っています。また、地域統括会社等において設定した重点リスクを「拠点統制リスク」と位置付けて、対策の実施状況及びリスク発生状況等を踏まえ、評価・改善するサイクルを回しています。


[個別のリスク]
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの経営成績及び財務状況等(株価等を含む)に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における判断によるものです。
(特に重要なリスク)
(1)システム開発リスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループの主力事業であるシステムインテグレーション事業では、一般に請負契約の形態で受注を受けてから納期までにシステムを完成し、お客様に提供するという完成責任を負っています。
そのため、契約内容の曖昧性等による当初想定していた見積りからの乖離や、開発段階に当初想定し得ない技術的な問題、プロジェクト管理等の問題が発生し、原価増となることがあります。
不採算案件が発生した場合、想定を超える原価の発生や納期遅延に伴う損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があり、特に重要なリスクであると認識しています。
[リスクへの対応策]
システムの完成責任を全うするため、お客様・業務・技術のいずれかに新規性のある大規模案件を対象に当社内の第三者組織による提案準備段階における提案内容の実現性確認・契約内容の明確化等のリスクへの早期対応、受注時計画や原価見積の妥当性審査と納品までのプロジェクト実査を行っています。更に、お客様・業務のいずれかに新規性のある一定以上の規模の案件はグループ会社の案件も含めて「高リスク案件」として選定し、進捗や課題の状況、リスクとその軽減策を定期的に把握・管理するなど、不採算案件の抑制に努めています。
(2)出資・M&Aに関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、新技術やソリューション、開発リソースの獲得及び戦略的パートナーシップの構築等を目的とし、国内外の企業・組織への出資を実施しています。また、Global 3rd Stageの達成に向けてはM&Aを重要な手段の一つと捉え、グローバル成長の推進力としてM&Aを活用しています。M&Aの実施にあたっては、当社グループと共通の価値観・親和性を持っていることを最重要視し、主にGeography(重点地域)、Offering(サービス提供力)の観点から、当社グループとのシナジー効果の実現性の見極めを実施しています。
しかしながら、特に海外の出資先において法的規制、税制、商習慣の相違、労使関係、各国の政治・経済動向等の要因により、当社グループの適切なコントロールが及ばず事業運営を円滑に行うことが困難となった場合や出資先に対し当社グループとのシナジー効果を十分に発揮できず売上や利益が想定を大きく下回るなど、期待したリターンが得られなかった場合、のれん等の減損処理を行うなど、当社グループの経営成績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があり、特に重要なリスクであると認識しています。
[リスクへの対応策]
M&Aの意思決定時には、投下資本利益率(ROI)等の指標を用いた投資対効果の評価や、第三者評価による財務健全性の評価等を判断要素としています。
特に重要なリスクと認識している、当社グループの適切なコントロールが及ばず事業運営を円滑に行うことが困難となるリスクについては、出資時の意思決定において、社内ビジネス部門及びファイナンシャルアドバイザ・会計士・弁護士等外部有識者によるビジネス面に着目したデューデリジェンスと、出資先のカントリーリスクを踏まえたコンプライアンスに着目したデューデリジェンスの実施を必須とし、発見された各リスクの検証、対応策を踏まえた意思決定を実施することにより、当該リスクの低減に努めています。
また、当社グループとのシナジー効果を十分に発揮できず売上や利益が想定を大きく下回るなど、期待したリターンが得られないリスクについては、当社グループとのシナジー創出による買収先会社の継続的成長を重要視し、案件の規模や内容に応じてロングタームインセンティブ(一定期間の勤続に伴う報酬)やアーンアウト(買収価格の分割払い)等のスキームを活用しています。加えて、意思決定時にM&A実施後の統合プロセス(PMI)計画の作成を必須とし、M&A効果の最大化に向けた統合プロセスを早期から実施することにより、当該リスクの低減に努めています。
上記のような対応策により、当該リスクが当社グループの経営成績及び財務状況に大きな影響を与えることのないよう、入念な検証及び適切なガバナンス態勢の構築を行うことで、リスクの顕在化防止に努めています。
(3)情報セキュリティに関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは業務遂行の一環として、個人情報や機密情報を取り扱うことがあります。これらの情報について、サイバー攻撃等による情報セキュリティ事故のリスクがあります。直近では新型コロナウイルス感染症に関連した標的型メール、フィッシングによる攻撃や、急速に普及拡大するテレワークやオンライン会議の脆弱性を狙ったサイバー攻撃が急増しています。また、高度な標的型のサイバー攻撃に関して企業や政府機関等組織への攻撃を目的として、その委託先を標的にする攻撃手法が活発化しています。社会的に重要なインフラ等を支える顧客を抱える当社にとってサイバー攻撃は特に重要なリスクであると認識しており、顕在化の可能性は日常的にあると認識しています。当該リスクが発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い、法的罰則等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当該リスクを低減するため、当社は、情報セキュリティポリシーや個人情報保護方針を制定し、情報技術の進歩や社会情勢の変化に応じて、見直しや改善を実施しています。
また、NTTデータグループセキュリティポリシーを制定し、グループ全体で情報の安全な流通に努めています。このほか、「情報セキュリティ委員会」のもと、外部の脅威動向と全社の活動状況、課題点を把握し、必要な施策を決定しています。更に、サイバー攻撃防止・検知のためのソリューションの導入、お客様と当社とのネットワーク環境の分離、24時間体制の監視運用を行うとともに、インシデント発生時の緊急対応のためのCSIRT組織として「NTTDATA-CERT」を設置しています。
(4)コンプライアンスに関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループはグローバルに企業活動を展開しており、海外事業の拡大に伴い、国内だけでなく、海外の法令を遵守する必要が生じています。各国の法令の中には、当該国内における企業活動について適用されるだけではなく、EUのGDPR(注1)や米国のFCPA(注2)等、当該国の域外においても適用される法令があり、当社グループはこれら域外適用法令も遵守する必要があります。これらの法令に違反した場合は多額の制裁金や当局対応に要する費用の支払いが必要となる可能性があります。この他にも、会計基準や税法、取引関連等の様々な法令の適用を受けています。不正な会計処理やサプライチェーン上における不正や横領等といった法令違反が発生した場合は、当該不正等による損害はもとより、課徴金の支払い等が必要となる可能性があります。
更に、このような法令違反が発生した場合は、費用の支出といった経済的損失のみならず、社会的信用やブランドイメージが大きく毀損され、当社グループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があり、特に重要なリスクであると認識しています。55カ国・地域、約14万人(2021年3月31日現在)で事業運営をしている状況においては、これらのリスクが発生する可能性を完全には否定できません。
[リスクへの対応策]
当社グループでは、法令違反等のリスクの顕在化を未然に防ぐため、企業倫理の確立による健全な事業活動を基本方針とする「グローバル・コンプライアンス・ポリシー」を制定の上、適法性、財務報告の適正性を確保するための内部統制システムを構築しています。また、国内においては公務員等への接待贈答の禁止、不適切な接待贈答の禁止、違反時の処分等を規定した「贈収賄・腐敗防止規程」を定めています。加えて、グローバルコンプライアンスを推進する担当組織を設置し、役員・社員への教育啓発活動の実施、関連組織との連携による内部統制の運用徹底・改善の取り組みを通じて、グループでのいっそうの企業倫理の向上及び法令遵守の強化に努めています。
(5)システム運用リスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが提供するシステムやサービスには、社会的なインフラとなっているものがあります。これらにおいて運用中に障害が発生し、システムやサービスが停止すると、お客様業務や一般利用者の生活に多大な影響を及ぼすことがあります。また、顧客データの喪失等の問題が発生した場合には更に影響は大きくなり、場合によっては発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があり、特に重要なリスクであると認識しています。加えて、システムやサービスの運用が滞ることは、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下にもつながります。
当該リスクが顕在化する蓋然性は高くはありませんが、皆無とは言えません。特に、市販製品の不具合に起因する故障は対応に時間を要する場合もあります。
[リスクへの対応策]
当社グループでは、システムを安定運用し、継続してサービスを提供できるように、障害発生の未然防止と障害発生時の影響極小化の両面から、公知の市販製品の不具合情報や対処策情報の積極的な収集と周知、過去発生した障害の原因分析結果及び再発防止策の社内共有、チェックリストを用いた定期点検、故障発生時の連絡体制の構築や障害発生対応訓練等の様々な活動を実施しています。
(6)大規模災害や重大な感染症等に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが提供するシステムやサービスには、社会的なインフラとなっているものもあることから、行政のガイドラインに準拠した事業継続のための体制整備や防災訓練のほか、従業員の安否状況確認等を適宜実施しています。
しかしながら、巨大地震や気候変動、その他の大規模な自然災害等が発生した場合、システムや従業員等の多くが被害を受けることでサービスの提供が困難になり、お客様業務や一般利用者の生活に多大なる影響を及ぼすことがあります。その結果、当社グループの社会的信用やブランドイメージが低下するおそれがあるほか、多額の復旧費用等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があり、発生を予見することが困難ではありますが起こりうるリスクと認識しています。
また、新型コロナウイルス感染症のような大規模な感染症等の発生によって、従業員等の感染や、感染拡大防止のために従業員が出社できなくなること等によってシステムやサービスの提供が困難になることがあります。
更に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国内および海外の経済は依然として厳しい状況にあり、当社事業に大きなリスクを生じさせる可能性があります。具体的には、製造業・航空業・旅行業等における消費の落ち込みや金融機関における信用コストの増大等に起因するお客様企業の経営状況の悪化によるIT投資の抑制・先送りや既存案件の規模の縮小、政情不安が誘発されることによる環境変化等により、新規での営業活動の停滞や、デジタル等先進案件、コンサルティングビジネスの減少、世界的な景気の減速に伴うお客様企業からの支払い猶予の要請等による当社グループのキャッシュフローの悪化等のリスクが想定されます。
これらリスクの先行きを正確に見通すのは困難でありますが、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があると認識しています。
[リスクへの対応策]
被災時における事業継続については、従業員等の安全の確保と事業の継続を目的として、一定の基準を超える災害発生時には事業継続計画を発動し、代表取締役社長を執行責任者とする体制により、臨機応変な対応を行います。また、新型コロナウイルス等の感染症対策としては、オンライン環境の増強を進め、オンラインで可能な業務はオンラインで実施するなど、社員や協業者の安全確保と事業遂行のバランスを考慮し、オンラインとリアルのベストミックスな働き方改革を推進しています。
また、新型コロナウイルス感染症によるビジネスへの影響に対しては、例年以上にお客様の状況把握に努めるとともに、特にキャッシュフローについて各社のきめ細かな状況把握に尽力し、いち早くリスクの顕在化時の資金手当等が可能となるように取り組んでまいります。
なお、一方では従来以上に、お客様の働き方改革やそれに伴うIT投資、デジタル化のニーズが顕在化する可能性もあり、従来の取り組みを通じて得た、デジタル等先進技術に関するノウハウやインダストリーの知見を最大限活用し、お客様・社会全体のデジタル化への貢献を通じて事業拡大に取り組んでいます。
(重要なリスク)
(1)経済動向・社会・制度等の変化に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループの事業は、電力や通信といった社会基盤、税や各種規制といった法制度、各国の政治・経済動向等、様々な要因の影響下にあります。これらの要因は当社グループが関与し得ない理由によって大きく変化する可能性があり、このような変化が生じた場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があることから、重要なリスクと認識しています。
[リスクへの対応策]
当社は、中期経営計画において「リージョン特性に合わせたお客様への価値提供の深化」を戦略として定めています。グループ共通の価値提供モデルである「4D Value Cycle」により、リージョンごとに異なる市場特性と当社の強みに、デジタル等の先進技術を掛け合わせ、お客様への価値提供を深化させる取り組みを行っています。社会基盤、法制度の変化によりもたらされる機会やリスクを予見し、我々が提供するシステムやサービスを進化させていくことで、市場やお客様ニーズの変化へ柔軟に対応していきます。
加えて、特定のリージョンに依存しない事業ポートフォリオとすることで、各国における政治・経済動向の変化がもたらすリスクを分散し、事業全体が大きな影響を受けない構造にしています。これまで北米・欧州を中心にグローバル事業を拡大し、国内中心だった事業構造を海外比率50%にまで高めてきました。今後はこの取り組みを更に加速し、各リージョンでバランスの良い事業ポートフォリオを実現することをめざします。
(2)気候変動に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
気候変動に関しては、FSB(金融安定理事会)が設置したTCFD(注3)提言で定義する移行リスクと物理リスクがあります。
・移行リスク
お客様・社会の気候変動問題に対する関心が高まり、グリーンイノベーションに資するテクノロジーや当該領域に強みのあるベンダへのニーズが増え、IT業界の地殻変動が起こる可能性があります。当社グループにおいて、グリーンイノベーション領域での取り組みやビジネス展開が遅れた場合、新たな事業機会を失うのみならず、これまで取引のあったお客様との事業機会を失う可能性があります。加えて、当社グループの気候変動問題への対応に関する外部評価が低い場合、資金調達コストが高騰する可能性があるとともに、当社グループの化石燃料依存度が高い場合には、グローバルで年々高騰している炭素税のコスト負担が経営に重くのしかかることから、重要なリスクと認識しています。
・物理リスク
異常気象や感染症等の災害リスクが高まることにより、損害保険への掛け金等の支出が増大するリスクがあることに加え、気温上昇による空調コストの高騰、海面上昇によるデータセンタやオフィスへの浸水等のリスクもあります。
[リスクへの対応策]
気候変動問題への対応の遅れによって、新たな事業機会を失うリスクがある一方で、グリーンイノベーションに資するテクノロジーの開発やグリーンイノベーションに関わる事業創出を積極的に行うことで、当社グループの更なる事業成長につなげることが可能となります。
当社グループでは、気候変動問題に関するリスク対応及び事業機会の拡大を目的に、2050年カーボンニュートラルに向けたビジョン策定や、2030年に向けた気候変動に関するアクションプランの策定を行っています。加えて、2020年11月に気候変動アクション推進委員会を立上げ、全社横断的な取り組みとして、社会全体の温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。具体的には、「Green Innovation of IT」として、自社内事業の省エネ化による当社自身の温室効果ガス排出量の削減に取り組むとともに、「Green Innovation by IT」として、デジタル技術を活用して、環境に関するお客様の課題や社会課題を解決し、お客様・社会全体のグリーン化に貢献していきます。
また、当社グループとしての2030年に向けた温室効果ガス排出削減目標を策定し、2020年6月にSBT(Science Based Targets)イニチアチブより認定を取得しました。当社グループにおいては、2030年度までにScope1(注4)およびScope2(注5)での2016年度比60%削減(1.5℃目標)、Scope3(注6)での2016年度比55%削減を目標に設定しました。更に、2021年3月30日にTCFD(注3)提言への賛同を表明するなど、気候変動問題に関する取り組みをよりいっそう進めるとともに開示を充実させ、取り組みの透明性の確保を図っています。
(3)人財確保に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループの成長と利益は、デジタル技術等の専門性に基づいて顧客に価値を提供する優秀な人財の確保・育成に大きく影響されます。これは当社グループに限らず、協力会社の人財確保状況からも大きな影響を受けます。こうした優秀な人財の確保・育成が想定どおりに進まない場合、事業計画の達成が困難になることや、システムやサービスの提供が困難になることがあります。これによって、お客様業務や一般利用者の生活に多大なる影響を及ぼすこととなり、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があることから、重要なリスクであると認識しています。当該リスクは一定程度予見が可能であり、突発的に顕在化する可能性は僅少であると認識しています。
[リスクへの対応策]
・当社グループに関する対応策
当社グループは、中長期的なビジネスを担う人財を、質と量を伴って採用・育成しています。採用においては、事業成長見込みや事業部門ニーズを勘案した採用目標数を定義し、デジタル技術の素養のある人財や、グローバルビジネスを推進できる素養のある人財の採用の強化、即戦力となる経験者採用の強化を推進しています。また、先進技術領域や急速に利活用が進むデジタル領域において卓越した専門性を有し、即座に当社ビジネスの拡大・牽引に寄与できる人財を市場価値に応じた報酬で採用するAdvanced Professional制度による人財の確保を推進しています。育成においては、中期経営計画のもと「全社員のデジタル対応力強化」に重点的に取り組んでおり、最先端技術開発をリードするコア人財、デジタル技術を活用したサービス提供をリードする中核人財、デジタルを活用してビジネスに新しい価値を創出する人財のそれぞれについてOJT/OFFJTの両面で施策を展開しています。具体的には、先端技術領域での実案件アサインを伴うDigital Acceleration Program(注7)を通じたデジタル中核人財の育成や、グローバル横断で最先端技術の知見を蓄積するCoE活動を通じたデジタルコア人財の育成等を、それぞれ目標値を設定して進めています。また、ラーニング環境をデジタル化し、モバイル含めてオンデマンドで受講できるプラットフォームを用意し、社員の「学び直し」ニーズにも応えられるコンテンツを順次揃え、人財育成への活用を進めています。加えて、2019年10月にスペシャリストのキャリアパスを実現するTechnical Grade制度(以下、「TG制度(注8)」という)を創設し、社員個人のキャリアをベースにした成長を支援することで、多様なスキルを有する社員のProfessionality最大化をめざしています。
また、ニューノーマルの時代において社員が心身ともに健康でより高い生産性を発揮することができるよう、リモート型の働き方(場所にとらわれない柔軟な働き方)を推進しており、給与・服務制度の見直しや創設、面談等の産業保健活動のオンライン化の実現、パルスサーベイ等を活用した社員のヘルスケア対策等を行っています。
・協力会社に関する対応策
協力会社に関しては、「品質向上、生産性向上、セキュリティや個人情報保護等に関する取り組みを協力して推進し、相互のビジネス拡大及び競争力強化を図ること」を目的に、ビジネスパートナー制度を導入しています。具体的には、協力会社をコアビジネスパートナー、ビジネスパートナー、アソシエイトパートナーとして認定し信頼関係を築くとともに、①当社の経営幹部(社長)同士の直接会合の開催による一体感醸成、②当社方針/成長戦略の共有等を通じたコミュニケーションの深化、③当社のシステム開発標準の研修や新規技術分野のセミナーの開催等による技術情報提供、④生産性向上支援等、様々な共同施策を実施しています。この枠組みを通し、社と社の深いパートナーシップの構築を図ることで、当社のニーズにマッチした人材のアサインを受けています。
(4)技術革新に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが属する情報サービス産業では、破壊的技術革新のような不連続な技術環境の変化が生じることがあります。当社グループの重要事業領域やその周辺で、予想を超える破壊的技術革新があり、それらへの対応が遅れた場合、市場での競争力やブランド価値が低下し、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があり、重要なリスクであると認識しています。以下に記載の対応をしているため、破壊的技術革新に対して対応が遅れるというリスクが顕在化する可能性は僅少であると認識しています。
[リスクへの対応策]
予想を超える技術革新は日常的に発生する可能性はありますが、当社グループでは、NTT DATA Technology Foresight(注9)において、注目すべき革新技術を技術トレンドとして毎年見極めています。そして、AIやIoT等最先端技術を活用するにあたり、当社グループのデジタルビジネスにおいて特に力を入れて投資すべき領域(注力領域)を決定し、各注力領域で検討したビジネスシナリオに対して投資を行うDSO(Digital Strategy Office)を設置し取り組みを推進しています。また、NTT研究所の研究開発成果を取り入れています。
(5)知的財産権に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが事業を遂行する上で必要となる知的財産権等の権利につき、当該権利の保有者よりライセンス等を受けられず、その結果、特定の技術、商品又はサービスを提供できなくなる可能性があります。また、従来からの個別受注型システムインテグレーションビジネスに加え、最近ではより多くのお客様への提供が見込まれるソリューション展開型やプラットフォーム提供型のビジネスが増加し、他者の知的財産権を侵害したとして、損害賠償請求を受ける可能性が高まっています。いずれの場合も当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があり、重要なリスクであると認識しています。
当該リスクが顕在化する蓋然性は高くはありませんが皆無とは言えません。
[リスクへの対応策]
当社グループでは知的財産権活動を推進する担当組織を設置し、産業財産権の適正な権利化や第三者権利調査、知的財産権に関するプロジェクトからの各種相談対応や当社グループ内での教育・啓発活動を実施し、当社グループの知的財産権の保護・活用、第三者の知的財産権侵害防止に努めています。
(6)競争激化に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが展開する情報サービス産業は、デジタル分野でのコンサルティング系企業の台頭に加え、プラットフォーマーやベンチャー企業の積極参入、システムインテグレーション事業におけるインド系ベンダの急成長等により、グローバル競争が激化しています。このようなマーケットの競争激化に加え、お客様のクラウド志向に代表される低コスト化要求もいっそう高まっており、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があることから、重要なリスクと認識しています。
[リスクへの対応策]
当社グループは、「グローバルデジタルオファリングの拡充」を中期経営計画の戦略として定めています。この戦略は、グローバルで戦うための武器づくりと戦い方のレベルアップを目的としており、積極的なデジタル投資とグローバル連携の強化、技術集約拠点の拡充により、当社の強みとなるオファリングを創出し、マーケティング・技術活用支援と一体でグローバル連携を加速させていきます。更には、プラットフォーマーやベンチャー企業をデジタル分野における重要なパートナーと位置付け、戦略的な提携を行うことでケイパビリティを強化し、グローバルマーケットにおける競争力を高めています。
加えて、システム開発環境のクラウド上への集約、ソフトウェア開発自動化の適用範囲拡大といった、「次世代生産技術による開発プロセス変革」を推進し更なる生産性の向上に努めています。
また、コンサルティングや上流人財の拡充に向けた取り組みや、分野・業界を超えた連携を推進する新組織の立ち上げ等、更なるケイパビリティの強化を図っています。
(7)為替変動リスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、グローバルに企業活動を行っており、各社が拠点とする機能通貨以外による売買取引、ファイナンス、投資に伴う為替変動リスクに晒されています。予測の範囲を超える急激な市況変動や為替変動がある場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があり、重要なリスクであると認識しています。
[リスクへの対応策]
当社グループは、非機能通貨のキャッシュ・フローの経済価値を保全するべく為替予約等の契約を利用することにより、為替変動リスクを管理しています。これらの取引が為替変動による影響を有効に相殺していると判断しています。
(8)親会社の影響力
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社の直接的な親会社であるNTT株式会社は、当連結会計年度末現在、当社の議決権の54.2%を保有している大株主であります。当社は直接的な親会社であるNTT株式会社及び最終的な親会社である日本電信電話株式会社(以下、総称して「親会社」という)並びにその他の子会社から独立して業務を営んでいますが、重要な問題については、親会社との協議、もしくは親会社に対する報告を行っています。このような影響力を背景に、親会社は、自らの利益にとって最善であるが、その他の株主の利益とはならないかもしれない行動をとり、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があり、現実化した場合には重要なリスクであると認識しています。
[リスクへの対応策]
当社は、親会社との間で締結する重要な契約については、法務部門による法務審査を行った上で、意思決定を行います。特に重要な契約については独立社外取締役が出席する取締役会での承認を必須とし、親会社から独立した意思決定の確保に努めています。
また、日本電信電話株式会社の研究所との強連携として、基盤的研究開発や次世代技術研究開発の成果をグローバルで活用し、先進ソリューションやサービスの提供をめざします。NTTグループの各社が得意とするインフラ、セキュリティサービスを組み合わせた、トータルサービスの更なる拡大及び調達集約等によるコスト削減等のスケールメリットを活かした連携を進めていきます。今後も引き続き、親会社との間で、相互の自主性・自律性を十分尊重し、親会社との取引等について法令に従い適切に行うことで、リスクの顕在化防止に取り組むとともに、親会社との連携を強化することで株主への利益還元に尽力し、上記リスクの低減に努めます。
(注1)GDPR
EU域内の個人情報を取り扱う際に適用されるEU一般データ保護規則のことです。
(注2)FCPA
贈収賄にかかる米国の海外腐敗行為防止法のことです。
(注3)TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)
投資家等に適切な投資判断を促すための効率的な気候関連財務情報開示を企業等へ促す目的で、金融安定理事会が設置した作業部会のことです。
(注4)Scope1
事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)のことです。
(注5)Scope2
他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出のことです。
(注6)Scope3
Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出) のことです。
(注7)Digital Acceleration Program
全社でデジタル化中核人財の育成・強化をするため、先端領域 OFF-JTや多様な先端案件での実経験を合わせた一連の育成プログラムのことです。
(注8)TG(Technical Grade)制度
専門的スキルをもつ人財の潜在能力を最大限に活かして評価する制度のことです。
(注9)NTT DATA Technology Foresight
今後3~10年の間に大きなインパクトをもたらす先進技術や社会動向の継続的な調査から導出した、技術が生み出す将来変化を予見したトレンド情報のことです。社会・ビジネスにおける技術活用の視点を示す「情報社会トレンド」と、革新的技術の潮流を示す「技術トレンド」で、将来の進むべき道を解き明かします。