有価証券報告書-第61期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/24 9:00
【資料】
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【項目】
159項目

対処すべき課題

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「お客様の事業活動のサステナビリティに寄与し、社会全体の価値向上を図る」ことがパーパス(存在意義)であると認識しており、「サステナブルな全てのステークホルダーの幸せ向上」を長期ビジョン(ありたい姿)としています。
その長期ビジョンを実現させるために、経営理念である「お客様に安心感を与える最適な環境を維持するために、技術力と人的資源を結集させ、高品質サービスを提供する」をミッション(果たすべき使命)とした事業活動を展開することで、社会的価値の創造に努めております。
そして、その結果として経済的価値が創造されるという考えを経営の基本方針としております。
〈目的〉
サステナブルな全てのステークホルダーの幸せ向上

〈手段〉
社会的価値創造

〈結果〉
経済的価値創造
(2)目標とする経営指標
当社グループは、長期ビジョン達成に向けた企業価値拡大に資する成長戦略(競争優位性の強化)に最大限注力しております。良質なサービスを提供できる人的資本の価値向上を加速させ、本業による持続的な成長を実現することで、結果として資本生産性も維持・向上できるものと考えております。
本業による持続的な成長を確認する指標として、売上高の持続的な成長を前提とした営業利益率6%程度の維持を目標としております。また、資本効率を意識した経営の指標として、投資家との対話等から想定される8%程度の株主資本コストを上回る10%程度の自己資本当期純利益率の維持を目標とし、利益を追求した結果としての持続的な正のエクイティスプレッドの創出に努めてまいります。
(3)利益配分に関する基本方針
当社グループは、本業の持続的な成長による利益拡大を前提とした、株主の皆様に対する利益還元を重視しております。また、安定的な利益還元を重要な経営課題のひとつと認識しており、経営基盤の強化に向けた内部留保の充実を勘案しつつ、利益配分を決定することとしております。
株主の皆様への安定した利益還元の実現を目的として、1株当たりの年間配当金の下限を40円に設定いたします。それと同時に、連結配当性向の目途を50%程度とする基本方針を設定し、自己資本当期純利益率の目標と併せることで、純資産配当率5%程度を目安とした株主の皆様への持続的な利益還元を実現させてまいります。
(4)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略、会社の優先的に対処すべき課題
経営環境につきましては、不安定な国際情勢や物価上昇、部分的な供給制約等が続き、依然として先行き不透明な状況で推移するものと予想しております。
当社グループの中核事業である建物設備メンテナンスは、外部要因の変動に需要が左右されにくい面はあるものの、その重要な補完的役割を担う建物設備工事につきましては、お客様の設備投資計画に一定程度依存しております。設備投資の不確実性は依然として懸念され、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
中長期的な会社の経営戦略として、当社グループが永続的な成長を実現するためには、お客様の事業活動におけるサステナビリティに寄与することを目的とした建物設備メンテナンスを安定的に拡大し、より強固な経営基盤を構築していくことが必要であると考えております。その実現に向けた施策として、お客様からの「日本空調に仕事を任せて本当に良かった、これからも頼むよ」とのご評価のもと、契約の更新・拡大を図ってまいります。そして、毎年着実に新規のお客様を獲得できるよう、お客様の事業価値の向上に貢献する高い技術力とサービス力を「日本空調ブランド」と位置付け、提供するサービスの質の絶え間ない向上を掲げ、競争力を高めてまいります。
また、内部統制システムに関する整備・運用の状況につきましては、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性等を適切に構築しており、引き続き、コンプライアンス及びリスク管理体制の充実を図り、社内管理体制の強化に取り組んでまいります。
会社の対処すべき課題に取り組むとともに、その目的と手段を間違えることなく、企業価値拡大に資する成長戦略(競争優位性の強化)に注力し、中長期的な視点の経営を行うためのコーポレートガバナンスの充実を進めてまいります。
また、「何事にも誠実であることを基本姿勢とし、よりよい結果を目指す努力を惜しまず、あらゆるステークホルダーと納得いくまで対話を行い、最後まで成し遂げる信念をもって実現させる」という当社グループが正しいと考えるあり方をもとに、フェアにやるという企業風土の醸成を一層推進するためのコンプライアンスを充実させてまいります。
〈2024中期5ヵ年経営計画における対処すべき課題〉
① 最大の財産である従業員のパフォーマンスを最大化させるエンゲージメントの向上
→社員エンゲージメントスコア 70pt以上の維持を目指す。
② 高品質サービスの中核となる従業員の技術力を向上させるためのコア技術力指数の向上
→コア技術力指数CAGR 3%以上を目指す。
※コア技術力指数:当社が独自に設定している技術力指数(公的資格取得数×資格点数÷従業員数)の内、
より本業の成長と相関が高いと考えられる公的資格による技術力指数
③ 特殊な環境を有する施設を中心とした、事業活動のサステナビリティ向上を目指すお客様への傾注
→特殊な環境を有する施設と一般的な施設の売上高比率は7:3を目安とする。
※特殊な環境を有する施設:「病院及び研究施設」「製造工場等」「その他の特殊な施設」
④ お客様の事業活動のサステナビリティを向上させるための省エネ提案の強化
→お客様の事業活動における温室効果ガス排出量の削減(年間10,000t-CO2以上)を目指す。
⑤ 事業活動のサステナビリティを向上させるための海外事業の拡大と強化
→海外売上高35億円、海外営業利益1.75億円(海外営業利益率5%)の達成を目指す。
⑥ サステナブルな全てのステークホルダーの幸せ向上を達成するための利益水準の維持
→売上高の持続的な成長を前提に、当該計画期間中の平均営業利益率6%程度の維持を目指す。
⑦ 企業価値創造に必要となる資本コストを上回る資本生産性の維持
→8%程度の株主資本コストを上回る、当該計画期間中の平均ROE 10%程度の維持を目指す。
⑧ サステナブルな株主還元の実施
→1株当たり年間配当金の下限40円、配当性向50%程度、純資産配当率5%程度を目指す。
当社グループは、パーパスである「お客様の事業活動のサステナビリティに寄与し、社会全体の価値向上を図る」について、「いき、続けるために。」という言葉で表現しております。
この「いき」には「息」「生き」「活き」等の意味が含まれております。建物設備メンテナンスを通じて、お客様の施設の安定稼働と省エネの両立による施設運営最適化を実現させることで人々の「生きる(活きる)」を支えるという、当社グループの「目指すべき方向」を見失わないように、企業価値の拡大を推進しております。
その要となる「人的資本の価値向上」の加速を目的として、現在、技術研修センターを建設中であり、2026年3月期より本格稼働させる予定です。当社では、2019年3月期より「人的資本の価値向上」を目的とした各種プロジェクトを進めております。そのひとつである「新人財育成」プロジェクトを中心に検討を重ねた結果、人材教育の品質向上と新人・若年層の早期戦力化を目的とし、2023年9月より建設に着手いたしました。
現在、当社グループは全国に営業展開を実施しており、地域毎の顧客特性や取り扱う機器等、戦略変数が多岐にわたります。そこで、各地域の従業員が集合し、病院・工場等の実際の現場に近い環境で実践的な研修を実施することで、技術力の底上げと安全意識の向上を図るとともに、従業員間の交流を深める情報交換の場としても活用していきます。また、2025年4月より新入社員が基礎的な技術を身に付けた上で配属され、スムーズに実務へ臨めるよう、新入社員向け研修の実施も予定しております。多くのお客様に、より一層の高品質サービスをご提供できるよう、引き続き人的資本の価値向上に取り組んでまいります。
また、当社グループの付加価値創出力を更に向上させるため、太陽光発電事業をはじめとした省エネ提案ツールの拡充による製造工場等へのアプローチ強化、バリデーションサポートによる医薬品製造施設等への深耕開拓、新たな空間除染手法による医薬・医療施設等への新規開拓、海外展開の拡大と強化を加速させていきます。
これらの取り組みを中心として、本業の競争優位性を高めるために「やるべきことをやる。」ことで、業界におけるポジションを一層高め、「建物設備メンテナンス業界のリーダー」として、企業価値拡大に資する当社グループ独自のビジネスモデルの構築を進めてまいります。