有価証券報告書-第43期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/17 10:24
【資料】
PDFをみる
【項目】
129項目

対処すべき課題

(1)会社の経営の基本方針
今日、ITは企業経営の根幹として重要な一役を担い、その役割は情報処理から経営戦略の構築、更にはビジネスモデルの創出へと一層重要度を増しています。当社グループでは、CTCの由来である「Challenging Tomorrow's Changes」をグループ全体のスローガンとして、日々変化を遂げる顧客の事業環境変化に機敏に対応し、顧客価値を提供する企業たるべく挑戦し続けることにより、事業活動等を通じて夢のある豊かな社会の実現に貢献していきたいと考えております。

また、中長期的な企業価値向上を目指し、サステナビリティに関する基本的な方針を策定しております。当社グループは、サステナビリティ方針に沿い、マテリアリティ(重要課題)に関わる取り組みを推進することにより、ビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。


特に喫緊の課題と認識する気候変動に関しては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、経営会議の諮問機関であるサステナビリティ委員会を設置して、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行っております。
当社グループにおいては、気候変動対応はリスクのみならず、企業価値を高める機会につながると認識しております。お客様へのエネルギーの効率的利用、省エネルギー化、再生可能エネルギーの発展に資する製品・サービスの提供や脱炭素につながる新技術・サービスの創出など、気候変動対応を中長期の成長機会と捉え、今後も社会課題の解決と持続的な成長を目指してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、事業規模の拡大並びに営業利益率の向上を追求した経営により、成長性と安定性を兼ね備えた高収益体質の企業を目指してまいります。また、資本効率を重視し、株主価値の更なる向上に努めてまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループでは、CTCグループ企業理念のMission(使命)「明日を変えるITの可能性に挑み、夢のある豊かな社会の実現に貢献する。」を目指す姿とした、中期経営計画(2021年4月から2024年3月までの3か年)「Beyond the Horizons ~その先の未来へ~」を策定しております。具体的には以下3つの基本方針を着実に実行することで、2024年3月期の定量目標達成を目指してまいります。


なお、中長期を見据えたセグメント別の取り組みは次のとおりであります。
① エンタープライズ事業
・DXビジネスへの取組強化
当事業セグメントは、増加する膨大なデータ量を顧客価値に変え、新しいビジネスモデルを開拓するため、DXビジネスへの取り組みを強化します。最先端の技術力と知見を使って製造業、運輸・小売・エネルギーなど幅広い領域のお客様に対し、お客様のビジネスの次世代化を支えることで、ともに成長していくことを目指します。特にGreen Transformationにおける新たなビジネス機会の創出とライフサイエンス・ヘルスケア分野における新規ビジネスを検討し、新規案件の獲得につなげたいと考えています。
・セキュリティビジネス強化
昨今の企業や組織は、情報システムの停止による損失、顧客情報の漏洩による企業や組織のブランドイメージの失墜など、情報セキュリティ上のリスクが増大しております。当事業セグメントはDXビジネスの拡大に際し、お客様の情報システムをサイバー攻撃の脅威から守るセキュリティソリューションを強化し、セキュリティビジネス拡大を積極的に推進していきます。
② 流通事業
・小売・流通事業のDXビジネス対応
当事業セグメントは、流通分野におけるDXビジネス活性化を担う横断組織を設置し、社会の価値観やライフスタイルの変化への対応が迫られている顧客ニーズを的確に捉え、お客様のDXビジネス展開を支援する事業セグメントとして活動しております。流通分野における基幹/業務システムの開発及び運用で培ったプロジェクトのマネジメントノウハウに加えて、Block Chain、AI等の新技術を活用することで新規ソリューションの創出と展開を図りビジネス拡大を目指します。
・基幹系開発/運用ビジネスの深化
基幹/業務システムの開発及び運用についても引き続き注力していきます。新たな技術・開発手法を採り入れて開発/運用のレベルアップを図るとともに、ERPパッケージ導入案件の獲得にも積極的に取り組みます。特に、国内では事例の少ないSAP S/4HANA®マイグレーションを市場に先駆けて実施した経験とノウハウを活かすとともに、DX時代の基幹システムに求められるマルチクラウド基盤を整備し「基幹システムの標準化=Fit to Standard」の実践に取り組むことで、SAPビジネスの拡大を積極的に推進していきます。
・新技術獲得と品質向上
ビジネスのデジタル化が急速に進展する中で、お客様との関係性強化と、新技術に関する知見の蓄積が重要であると認識しています。社内外のリソースを活用した人材の能力向上、品質及び生産性の継続的な向上にも注力し、より高付加価値の製品・サービスを提供できる事業セグメントへと成長していきます。
③ 情報通信事業
・当事業セグメントは、移動通信システムの高度化に伴い、モバイル端末からインターネットへの接続サービスの構築及び高速化や、スマートフォンに代表される大容量データの送受信を支えるバックボーンネットワークの構築等、時代に即した最新技術を通信キャリアへ提供することで、通信サービスの発展に貢献してきました。
5Gにおいては、あらゆるものがネットワークにつながることで、全産業のデジタルビジネスが加速していくことが予想されます。それに伴い、通信キャリア各社は従来の通信事業を中心とした事業戦略だけではなく、5Gインフラの活用によって各企業と協業し、各産業のビジネスモデル変革を実現する方向へとシフトを進めていきます。
・5Gを“作る”ビジネス、“使う”ビジネスの推進
こうしたトレンドを捉え、当事業セグメントでは、通信キャリア各社が安定した5Gサービスを提供するための通信基盤設備をはじめ、ネットワーク仮想化技術・クラウドネイティブ技術など、当事業セグメントにおける豊富な経験を活かして、5Gを“作る”と“使う”の両面で包括的に進めていきます。
「Society 5.0:超スマート社会の実現」では、地上、海洋、空、宇宙などフィジカル空間のあらゆる場所で生ずる様々な詳細データを収集、デジタルデータに変換し、サイバー空間において蓄積・解析を行いフィジカル空間に瞬時にフィードバックする高度な同期を実現するため、通信インフラであるCPS※1が必要となっています。CPSにおいて5Gは、パブリック/プライベート/ローカル問わずフィジカル空間とサイバー空間との接点機能を担い、高度化された移動体通信インフラに、アクセス技術(RAN領域)、情報解析技術、情報流通技術、AI技術、高度セキュリティ技術などの多様な近代ICT技術を付加することで、「超スマート社会」におけるプラットフォームへと発展することが期待されています。
5Gがプラットフォームとなり、企業による循環型経済の実現や自治体による豊かな社会活動を実現するとともに、Beyond 5G時代における「超スマート社会」の実現へとつながっていくと予測しています。
当事業セグメントの主なお客様である通信キャリア各社が、全産業や社会活動に向けて5Gを駆使したDXのイネーブルメントを推進していく際に、5G/Beyond 5Gを“作る”と“使う”の両面における強力なビジネスパートナーとしての地位を確立していきます。
※1 CPS: Cyber Physical Systemの略 サイバー空間とフィジカル空間を融合するシステム
・事業領域拡大への挑戦
中長期的な事業領域拡大へ向け、国内事業の強み(情報通信技術、製品購買力等)のグローバル展開を目指します。
④ 広域・社会インフラ事業
・地域社会の変革に貢献
当事業セグメントは、日本全国における社会インフラ分野及び中央省庁や地方自治体、文教、地方銀行等のお客様を担当しています。お客様が抱える経営課題は、少子高齢化や人口の都市集中、新型コロナウイルスによる働き方改革や非対面業務へのシフトといった社会の変化に大きく影響を受けたものであることが特徴です。中央省庁、地方自治体を中心とした地方創生の支援や再編が進む地銀、文教へ向けた支援に注力し、地域イノベーションの先導役として地域社会の変革に貢献していきます。
・先端技術領域でNo.1のSIパートナー
当事業セグメントは、特に担当産業領域や地域が広く、お客様が解決すべき課題も多岐にわたることから、先端技術にも対応しながら経営効率を確保することが重要です。既存のITインフラ構築の強みに加えAI・IoTを中心とした先端技術を用いた開発SI/DXビジネスに注力することで、先端技術領域でNo.1のSIパートナーになることを目指します。
⑤ 金融事業
・お客様のDXへの対応力向上
当事業セグメントは、銀行・証券・保険・ノンバンクといった金融機関を担当しております。強みとする市場・リスク管理システム及びクレジットカード基幹システムについては、国内外の金融規制の対応や、キャッシュレスの進展と普及などへの対応ニーズが高く、継続的な重点領域としています。一方、新型コロナウイルスの影響の長期化と国内外の政治・経済環境の変化を受け、お客様は抜本的な構造改革による経営基盤回復に向け「DX・経費削減」を骨子とした中期経営計画を掲げ、新しいビジネススタイルやビジネスモデル構築のためのIT投資が増加する見通しです。また、法改正により金融業態間及び他業種の金融業への参入の機会は増しており、金融サービスへのIT投資の裾野は拡大しております。当事業セグメントは、この潮流を牽引すべく、先端技術や新たな金融サービスへの対応力を高め、ビジネス領域の拡大を目指します。
・金融市場の環境変化へグローバルネットワークで支援
金融機関のグローバルビジネスは、成長著しいアジア圏を中心に引き続き積極的な事業展開が見込まれます。東南アジア商圏の更なる拡大や、海外事業会社、パートナーとの連携による北米商圏でのビジネス強化など、当社グループのグローバルネットワークを活用し、お客様のビジネスを支えます。
⑥ ITサービス事業
・OneCUVICの推進
当事業セグメントは、クラウドを軸に全社のリカーリングビジネスを支え、グループの経営安定化に貢献していきます。
国内クラウド市場は今後も堅調な拡大が予想され、当社グループにとって引き続き強化すべき領域と捉えています。本領域ではデジタル化による競争力強化を目的にハイブリッドクラウド環境への移行やアプリケーションのクラウドネイティブ化を進める動きが活発になっております。また、このような中、必要となる機能は多様化しており、これら様々な機能をエンタープライズ品質で組み合わせ、セキュアな運用を含めた高品質なサービスとして提供することが今後更に求められます。
当社グループではこのようなニーズに対し、「OneCUVIC」というブランド名称でハイブリッドクラウド環境を継続的に最適化して提供するサービス群を展開しており、今後この取り組みを更に強化していきます。
具体的には、
「アプリケーションのクラウドネイティブ化への対応力強化」
「IBM社との協業による自社クラウドサービス「CUVIC」の可搬性・可用性向上」
「アジア最大規模のAWSパートナーであるMegazoneグループとのジョイントベンチャー推進」
「複雑化する環境を守るセキュリティサービスの高度化」
「ハイブリッドクラウド一元管理機能の構築による統合状態監視&マネージドサービスの強化」
これらを通じUX(User Experience)向上を実現するとともに一層の事業規模拡大を図ります。また、デジタルエッジ・ジャパン合同会社との協業を中心にデータセンターの高度化・事業効率化も引き続き追求していきます。
⑦ その他
・DXを起点に独自の新しい価値を創出
未来技術研究所は、中長期的な視点で地球温暖化、労働力不足、地方活性化などの社会課題とビジネスとの融合を図り、イノベーションスペース「DEJIMA」/コーポレートベンチャーキャピタル「CTC Innovation Partners」活用によるお客様とパートナーとの連携を強化し、新規事業創出を目指します。
特にスマート物流、スマートタウン、スマートワークの3領域を重点テーマとし事業探索を強化していきます。
・全社のDXビジネスを推進
DXビジネス推進事業部は、セグメントとの緊密な連携と協業を実施しながら案件特性に応じた最適なプロジェクトチームを構築し、DXビジネスの上流工程からアプローチを行い、迅速なPoC(Proof of Concept)を実行することでお客様のDXビジネスに貢献していきます。
・海外でのCTC品質のデリバリーと目利き力の更なる強化
グローバルビジネスグループは、海外事業会社において、当社グループの国内でのビジネスモデルを展開し、収益拡大を目指します。
海外事業会社においても当社グループの強みであるベンダーリレーションを活かし、CTCの品質でサービスを提供することにより、従来からの現地顧客の深堀と新規顧客の獲得を図るとともに、海外に展開する日本企業の現地支援を行います。また、北米を中心とした先端技術や新規商材の発掘活動により、日本のお客様に対する更なる付加価値の拡大に貢献していきます。
<2024年3月期 定量目標>中期経営計画の最終年度である2024年3月期における定量目標は、以下を目指しています。
2024年3月期 目標
営業利益率10%
当社株主に帰属する当期純利益400億円
ROE13%以上

<2023年3月期 連結業績予想>2023年3月期の連結業績予想は次のとおりであります。
(金額単位は百万円。%表示は、対前期増減率。)
売上収益営業利益税引前利益当期純利益当社株主に
帰属する
当期純利益
通期553,00055,50056,00038,50038,000
5.9%9.9%8.0%11.7%7.4%

なお、今後の新型コロナウイルス感染症拡大や収束の状況等によって業績は変動する可能性があります。業績予想の修正の必要性が生じた場合には、速やかに開示いたします。
(4)会社の対処すべき課題
当社グループは、創立当初より業界動向や技術動向を常に先取りし、高い技術力を持つ国内外のIT先進企業との強固なパートナーシップを活用しながら、あらゆる業界の顧客のニーズや社会課題の解決に広く貢献してまいりました。
昨今の当社グループを取り巻く環境につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により社会全体のDXが加速する中、顧客のIT投資の目的がコスト削減や業務効率化などから、自社の競争力の向上や新たなビジネスモデルの変革へと変化しております。
また、これらを実現するためのITシステムも、クラウドコンピューティングの普及・拡大に伴い、所有からサービス利用、あるいはそれらの組み合わせと、選択肢が広がっています。
このようにITサービスに対するニーズは高度化、多様化してきており、かつ技術は急速に進歩しております。
当社グループは、今後更なる成長に向け、従来の「強い領域におけるさらなる探求と市場拡大」に加え、「顧客の変革を支える新たな取り組みを加速」することが必要と考えております。具体的には、「“つくる”を土台にした5Gビジネスの拡大」や「高付加価値サービス、先進技術の提供」を通じた顧客業務、顧客事業、そして生活者の日常のDXに取り組んでまいります。
また、当社グループの競争優位性を高めるべく、新技術への対応力についても更なる強化が必要と考えております。従来より注力しているAI・IoTなどに関する先進技術や新たなアプリケーション開発技術、次世代ネットワーク技術などの開拓はもとより、UI/UXデザインなどを用いた高付加価値サービスの提供に向け、新たな領域の知見を有する技術者の育成に一層注力してまいります。
これらを実践していく優秀な人材の確保のため、新卒・キャリア採用活動を強化するとともに、社員が自分らしく働きがいをもって効率的・効果的に働けるよう、「働く時間」や「働く場所」を含む働き方の選択肢を広げる環境整備や、年齢、性別、性自認や性的指向、国籍、障がいの有無等を問わず、多彩な個性の自己実現を可能とするダイバーシティ&インクルージョンの推進にも積極的に取り組んでおります。
なお、新型コロナウイルス感染症、半導体不足による供給面での制約、ウクライナ情勢による原材料価格の上昇や金融資本市場の変動などにより先行きの不透明な環境が続くと見込まれますが、内外経済、顧客、取引先、及び当社グループへの影響を注意深く見極めながら、機動的に必要な施策を講じるよう取り組んでまいります。