訂正有価証券報告書-第29期(平成26年6月1日-平成27年5月31日)

【提出】
2016/04/21 16:30
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【項目】
119項目

対処すべき課題

(1) 現状に対する認識について
調剤薬局市場は、政府の医薬分業政策を背景に拡大が続いていましたが、薬価改定や後発医薬品使用促進の強化などにより、市場の伸び率は鈍化傾向が予想されます。またわが国の高齢者人口の増加に伴う国民医療費は増加基調にあり処方せん枚数も増加を続ける見込みでありますが、前述の薬価改定や後発医薬品の使用促進並びに予想される調剤報酬のマイナス改定に伴う処方せん単価の下落により、中長期的に市場は横這い傾向になると予想しております。そして多数の薬局が混在する現状から、周辺業界の参入も含めて再編成が進み、大手資本による寡占化が進行すると考えられます。
こうしたなか、当社の存在感を打ち出していくためには、資本効率を意識したM&Aや新規出店によるスケールメリットを確保しつつ、患者及び利用者に選ばれるために、患者本位の医薬分業の実現に向けた「かかりつけ薬局」化の推進及び在宅医療・施設調剤等の地域医療への取り組み強化、並びにセルフメディケーション・サポート機能の充実が不可欠と認識しており、重要な経営課題として位置付けております。
これらの実現のためには、質の高い薬物医療やセルフメディケーション・サポートを持続的に提供できる薬剤師等の人材確保・育成が重要であると認識しております。
(2) 対処すべき課題について
① 規模の拡大と積極的な新規出店
規模の拡大を目的として、新規出店に関しては、従来からの新規出店に関する情報入手ルートの他に、新たなルートを開拓することを営業上の課題と認識しております。また、営業体制についても、医薬分業率の低い地域を重点開発地域として情報の収集を図り、より地域密着の開拓に努めてまいります。
また規模の拡大は、仕入に関し一定のバイイングパワー形成に寄与し、医薬品卸やその他業者との価格交渉を有利に運ぶメリットがあります。
② 変化への対応と質的向上
調剤薬局業界は医療法、健康保険法によって調剤技術料、薬価等が定められており、そのために隔年で実施される医療法の改正等の影響を受けます。また社会の変化につれて医療の質も時々刻々変化しており、薬剤師が常駐する調剤薬局に対するニーズも今後変化していくことが予想されます。
当社グループは変化する社会のニーズを適確に捉え、そのニーズを積極的にサービスに反映させていく方針であり、現在は、顧客の満足度を高めるホスピタリティ(おもてなしの心と訳される顧客重視の考え方)の実践や今後の高齢化をにらんだ在宅医療への対応などを経営課題と考えております。またニーズに適切に対応するためには、最新の専門情報の収集、蓄積や薬剤師の質的向上が必要となります。当社は、従来から学術研究の充実に取り組み、薬学、医療事務等自主的研究を重ねるとともに、教育・研修に関する専門部署を設けて、人材育成のため研修制度の質的向上を図ってまいりました。こうした地道な取組み姿勢が結果として質の高い薬剤師の確保につながると考えております。
③ リスク管理の徹底
イ.調剤過誤への対応
調剤薬局は医療機関であり、薬剤の調剤は患者の生命、健康に関わる業務です。特に調剤過誤は、健康を損なうおそれがあり、徹底的に防止することが調剤薬局の使命であると認識しております。当社では過誤のリスクを管理するため、委員会組織を設けて過誤の防止に取り組んでおります。現場の店舗では「過誤防止検討会」を開催して、過誤、インシデント(調剤の過程で起こる何らかの間違い)の事例研究を行い、本部では「過誤防止委員会」が、各店の報告に基づいて全社レベルでの状況を把握し、対策を検討したうえで対応を指導しております。過誤が発生した場合には、適正かつ迅速に対応するため「調剤過誤判定委員会」が過誤のレベルを判定し、重大な過誤が発生した場合には、「過誤対策委員会」が組織的かつ迅速に対応を決定し指示しております。
このように当社では調剤過誤を防止するため、現場から本部まで連携の組織を設け、重層的な組織対応で防止に取り組んでおります。
ロ.個人情報保護への対応
当社グループのような調剤薬局チェーンは、膨大かつ重要な個人情報を取り扱っております。当社グループでは個人情報の保護を徹底するため、1.組織・体制の整備、2.人的対策、3.物理的対策、4.技術的対策という4つの側面から対策を講じております。
組織・体制の整備として「個人情報保護委員会」を設け、すべての部門に個人情報管理責任者を配置しております。人的対策としては、研修実施の他、実務レベルでのマニュアルを作成し、現場保管を義務付けております。このマニュアルの実施状況については随時内部監査・統制室が監査を実施し、随時フォローを行っております。また、その他全従業員から「個人情報保護に関する誓約書」を取得して個人情報に対する意識を啓蒙しております。さらに物理的対策としては、入退室管理方法の徹底、情報廃棄方法のルール化等を行い、技術的対策としては、電子データの管理方法の徹底、暗号化等を行っております。
このように当社グループでは個人情報漏洩を防止するため、体系的かつ網羅的に対策を講じ、随時管理の精度向上に努めております。
④ オペレーションの効率化
広範な地域で多店舗展開を営む事業形態にあっては、店舗のオペレーションの効率化は必須の経営課題であり、これをIT化等の投資によって推進できることが、大企業の優位性であります。また規制が多く、収益確保に制約の多い調剤薬局事業においては、オペレーションの効率化が個別の店舗の採算確保の基礎であります。
こうした認識のもと、当社は店舗における煩雑な業務のオペレーションを常に見直し、効率化すると同時に、業務のIT化等も推進して、店舗の運営コスト低減に努めております。
⑤ 後発(ジェネリック)医薬品への対応
後発(ジェネリック)医薬品の強力な普及推進が国策として促されております。当社は、内部研究機関である「ファーマライズ医薬情報研究所」を中心に信頼性のおける後発医薬品の選定を行い、患者及び病院、クリニック等の医療機関の要望に極力対応できる体制の整備に努めております。
⑥ コンプライアンスへの取り組み
当社では、コンプライアンスの認識不足に起因する不祥事の発生を根絶するために、平成22年7月にコンプライアンス委員会を設置いたしました。コンプライアンス委員会では、コンプライアンス計画を策定し、役職員に対するコンプライアンス意識の啓蒙・教育活動に徹底的に努めてまいります。
⑦ 内部統制システムの強化
当社グループにおいて、内部統制システムの構築は最重要事項の一つと認識しております。当社では、内部監査・統制室を設置し、コーポレートガバナンスを担う各機関との連携を密にすることで、店舗やグループ企業の拡大にも柔軟に対応できる体制を構築するべく鋭意努めております。