有価証券報告書-第25期(2023/04/01-2024/03/31)
対処すべき課題
当社の事業分野でありますライフサイエンス分野は、近年、新たなモダリティの発明と精密化医療の技術革新が続いており、治療成績が向上しております。最新のがん治療におきましては、従来の三大治療である「手術(外科治療)」、「薬物治療(抗がん剤治療)」、「放射線治療」に加えて、「免疫療法(体の中に侵入した異物を排除するために、生まれながらに備えている能力を高め、がんの治療を行う方法)」が注目されています。近年、免疫療法に用いる「免疫チェックポイント阻害剤」が医薬品として承認され、従来自由診療であった免疫療法による治療が一部保険診療可能となり、患者負担が少なく治療を受けることが可能となりました。
また、遺伝子解析技術の向上により、今後がん予防や治療に新たな展開が期待されております。
このような環境下において、当社は、最も重要な経営課題を「開発力強化と事業化加速」と捉え、既存の受託事業の成長と、新しい診断事業におけるオンコロジー分野でのコンパニオン診断の普及に取り組んでおります。また、さらなる診断事業拡大のためには、開発人材及び学術部隊の補強、営業拡販戦略及び広報体制の拡充、知財戦略の見直しと強化を進める必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
① 肺がん コンパクトパネルⓇの製品改良及び市場への普及に向けた取り組み
当社は、肺がん コンパクトパネルⓇの市場への普及を重点課題と捉え各種薬事試験と普及活動を進めております。2022年11月16日にEGFR ALK ROS1 METの4遺伝子を搭載した製品として薬事承認を取得し、現在、国内のマルチコンパニオン検査としては、国産初となるプログラム医療機器検査サービスをメディカルラボラトリー(川崎市)にて提供しています。当社検査ラボに一括集約・アッセイ解析を実施するLDT検査として、大手検査会社3社(株式会社ビー・エム・エル社、株式会社エスアールエル社、株式会社LSIメディエンス)での検査取り扱いが開始されております。また、BRAF RET KRAS の3遺伝子をさらに追加する追加承認申請を2022年12月16日に実施し、2024年1月26日にEGFR ALK ROS1 MET BRAF RET KRASの7遺伝子を搭載した製品として統合承認を取得しました。今後もさらに遺伝子を追加し、新規薬剤にも対応するための追加申請を実施していく予定です。新しい薬剤の拡張をはじめとした製品改良を進め、臨床現場への普及を促進していきます。また、学術集会でのセミナー、全国web講演会、動画資材作成など、適正使用に向けた周知活動を強化し、単一遺伝子検査あるいは既存マルチ検査からの切り替えを促進していきます。
② 診断メニューの拡充
当社の重点課題として、診断事業の拡充があります。診断サービス市場は、国内外で大きな伸びが期待されており、今後の当社事業の大きな柱と位置付けております。このため、肺がん コンパクトパネルⓇの新規機能追加によるシェア拡大と、海外展開へ向けてターゲットとなりうる地域の調査と検査提供モデルの検討を進めております。また、他のがん種へのコンパクトパネルシステムの適用など新規検査メニューの開発を積極的に行ない、診断メニューの拡充を推進してまいります。
③ 人材の確保
大学、公的病院等と共同研究開発を進めていく上では、専門的知識と技術を有した人材の確保及び育成とその定着を図ることが重要であると認識しております。経験豊富な研究者の確保を進めておりますが、今後新規サービスメニュー等新たな研究開発を進めていく上で、さらなる優秀な研究者の確保が必要であり、これら人材の確保に努めてまいります。また、薬事担当、学術担当、システム開発、臨床検査技師を中心に遺伝子検査にフォーカスした人材補強と各種教育を進めることが重要と考えており、2024年度から臨床検査技師を含め4名の検査要員の増員と薬事対応人員を1名補強しました。今後、検査対応スタッフのスキルマップの運用や継続技能評価を強化し、システム開発と連動した力量評価のシステム化と技能向上の見える化を進めていく予定としております。今後も引き続き、検査事業の拡大状況を見ながら、人材補強と教育システムの強化を進めてまいります。
④ 営業体制の強化
当社の営業部門は、人員もまだ少数であり、充分な体制を整えているとは言い難い状況にあります。診断事業への展開を考慮すると、提案型営業など学術および技術部門とより密接に連携した受注活動が必要であり、営業要員の増員と育成により、顧客ニーズの迅速な取り込みはもとより、顧客第一主義の徹底を図り、製販一体となった受注活動を推進してまいります。営業スキル強化については、2024年度から日本臨床検査薬協会にも参画し、プロモーションコード教育やガイドライン教育の強化を進めていきます。また、DMR(臨床検査薬情報担当者)資格取得を目指す仕組みも社内に取り入れ、診断薬および診断関連製品の適正使用情報提供の強化に取り組んでいく予定としております。
⑤ 特許対応
遺伝子関連事業においては、競合会社に対抗していくためには特許権その他の知的財産権の確保が非常に重要であると考えております。当社は、大学、公的病院等と共同研究開発を進めている診断関連コンテンツを中心に積極的に特許権として取得する方針です。このため、共同研究開発契約でも契約先と共同で特許出願を行う権利確保を標準としております。今後は、さらに診断事業を中心とした事業展開につながる特許戦略を強化し、共同研究ベースでの特許創出に加え、当社単独での出願も行う方針です。