有価証券報告書-第16期(令和1年7月1日-令和2年6月30日)

【提出】
2020/09/30 15:00
【資料】
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【項目】
158項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は2020年1月1日に、会社分割による持株会社への移行とともに商号を株式会社ビーネックスグループへ変更いたしました。合わせて国内主要会社においてもビーネックスを冠とする社名へ商号変更を行いました。そしてビーネックスという呼称には新たな経営方針も志向しております。
下述の各項目における方針や戦略等の推進、あるいは課題に対処していくにあたり、当社グループの新たなグループ理念の浸透とビーネックスブランドの訴求が、一層の推進力となり、業容拡大に寄与すると考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による世界経済や生活様式に対する影響により当社グループにおいても短期間で社員の稼働が低下する等により業績に影響を及ぼしております。しかしながら、当社グループの事業である人材派遣、請負等は、日本及び世界各国において、構造的にもニーズや持続性を著しく損なうものではなく、また、将来への技術革新や新製品、新サービスの台頭に伴う人材ニーズは絶え間ないことから、環境の変化に応じた事業戦略と適正な財務戦略によって、当社グループの持続的な成長を展望できると考えております。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループはビジョン、ミッション、バリューを掲げ、事業遂行における判断基準、価値としております。
<ビジョン 実現したい未来>ひとりひとりが自分らしいキャリアを歩み、変革の原動力となる社会に。
<ミッション>「次」に挑む、機会を創り続ける
<バリュー>・個の尊重 ・可能性の追求 ・社会との調和
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(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、各事業の成長性と収益性を評価する指標として、売上高とその増加率、売上総利益率、営業利益とその増加率、EBITDA(当社算定方法:営業利益+のれん償却額+減価償却費+M&A一時費用)とその増加率を重視しております
なお、当連結会計年度が属する中期経営計画(2019年8月策定)において2022年6月期における数値目標を掲げておりましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響による事業環境の変化を踏まえて、2022年6月期を区切りとした目標は取止め、業容拡大を進めるうえで国内技術系領域(技術者派遣・請負)の強化を軸とした事業ポートフォリオを進め、中長期でのEBITDA100億円、EBITDA率10%以上への到達をターゲットと定めております。
(3)経営戦略等
持続的な成長を重視し、市場成長性や当社事業の強みを活かした業容の拡大を志向しております。
特に、技術系領域における派遣事業・請負等における業容の拡大を最重視しており、とりわけ、ITのソフトウェア・ハードウェア組込制御・保守等の業務領域の拡充に注力した経営戦略を展開してまいります。そのために、技術系領域には経営資源を優先的に投下(M&A、提携、広告等)と事業モデルの高度化(システム、シェアードサービス強化)を図り、売上高成長と事業効率化の両面を追求いたします。
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製造系領域は、業界の中でも高い営業利益率の事業モデルとなっており、この高収益モデルを堅持しつつ、顧客企業・就業社員の増加による着実な事業拡大を追求いたします。
海外領域においては、国別に市場や法令、業界の成熟度が異なるため、個別に成長のための戦略を設定し、将来の事業の柱となるよう中長期での事業成長を追求いたします。
また当社は人が働く可能性・機会を創り続けることが戦略の遂行には必要であると考えており、直接的な事業だけではなく、HRテックや新技術で将来エンジニアが活躍できる可能性がある業界などに対し、オープンイノベーションや出資などの形で関与し、中長期の成長を目指してまいります。
(4)経営環境並びに会社の対処すべき課題
当社グループの主要事業である技術者派遣等の国内技術系の人材市場は、新たな技術革新が幅広い産業で進む中、労働人口の減少と慢性的なエンジニア不足を背景に、2019年度までの過去5ヵ年においては年10%~15%の増加傾向で市場規模1兆円ほどへ拡大しております(矢野経済研究所「人材ビジネスの現状と展望2019年版」)
新型コロナウイルス感染拡大の影響による世界的な景気減速を受け、短期的な踊り場(調整・縮小)局面はあるものの、技術者派遣(そして請負を含めたアウトソーシング)市場を拡大させてきた、産業構造の変化や労働人口のトレンドは、大きく変わらないと想定しております。
・開発サイクルの短縮化で絶え間なく技術系領域で新需要が発生
・IT・通信の新技術・新サービスの拡大が持続
・新技術の普及段階でのエンジニア人材需要の拡大
・労働人中の若年層の減少、キャリアの流動化
メーカー/開発会社/システム会社等において、派遣活用は事業構造に組み込まれており、特に派遣技術者は常時必要な戦力であり、中長期には基本的に安定した需要が継続すると見込んでおります。
当社グループは、製造業やソフトウェア産業を、短中期の人材ニーズ充足で下支えする企業として、移り変わる技術ニーズの変化に対応していく考えです。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは従来より、①「採用と稼働の持続的な強化による社員数の増加」 ②「社員のより良い職場環境づくりやキャリアの実現」 ③「事業領域及び地域(国)の拡大」の3点を、経営上の重要な課題としております。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、世界経済への影響は極めて大きく、今後の生活様式の変化は看過できないものがあり、当社グループにおける経営上の重要な課題の本質が大きく変わることはないものの、現況に対応した取り組みや優先度の見極めが必要となってまいりました。
①採用と稼働の持続的な強化による社員数の増加
当社グループの主力事業である技術系領域の事業セグメントでは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により顧客企業における働き方の制約や就業時間の低下等が生じており、技術社員の稼働率の低下や一人当たりの売上高の減少といった従来とは異なる変化が生じております。また他の事業セグメントにおいては新型コロナウイルスの影響で、社員数は減少しております。
しかしながら顧客企業における人材ニーズは潜在的には低下しておらず、経済活動の本格化に向けては人手不足が懸念される状況でもあります。当社グループは採用と稼働を強化して社員数を増加することを方針としておりますが、現況においては、社員の安心安全を確保しながら、稼働率の向上を優先的に取り組みます。短期的には社員の採用数は以前より低下しますが、稼働率の回復を経て社員数の増加に重きを置く方針です。
この実現のために、当社グループが以前から取り組んでいる、「人」を第一とするビジネスモデルを引き続き進めてまいります。社員や応募者のスキル、希望するキャリアプランや環境等をきめ細かく体系的に掌握し、多くの可能性を提示しチャレンジできる機会を提案するよう営業や採用等各部門の連携を高めマッチングする機能を強化していきます。このような継続的な取り組みが、当社グループの社員数の増加と定着に結び付き、持続可能な成長を推進すると考えております。
②社員のより良い職場環境づくりやキャリアの実現
当社グループは、顧客企業先に派遣等で就業する社員の支援が重要な課題であると認識しております。働き方改革といった国策は当社グループにおいても重要な取り組みであり、社員の長時間労働や健康・安全に関する状況の掌握や社員教育にとどまらず、必要と認めるときは顧客企業に対しても積極的に関与し、働く人にとって、より良い環境となるよう努めております。
現下の新型コロナウイルス感染拡大においても就業環境の変化が生じていることに対し、テレワークを含めた業務遂行環境の調整やルール作り、ケアやコミュニケーションの新しい手法を速やかに整えていきます。
技術系領域においては、「エンジニアバリューモデル」と定義して、社員のスキルや就業先企業における評価をビッグデータ化し、キャリアプランの検討や適正な派遣単価等の算定の品質や統制のための取り組みを推進しております。これにより社員の給与や賞与といった価値を公正に把握、実現するとともに、希望に沿う業務への異動などを通じたキャリア向上に努めてまいります。
その他にも、多様性への対応として増加する外国籍の社員に対しては、顧客企業での円滑な就業支援だけでなく、慣習・文化の違いに配慮した日本での生活支援や相談窓口の設置を行っており、外国籍の社員の活躍も支えてまいります。
③事業領域及び地域(国)の拡大
当社グループは、成長戦略として事業領域の拡大を展望しており、ものづくりの現在及び将来に必要とされる職種や職能に関わる顧客企業や社員の増加に加え、M&Aによる事業領域の拡大を志向しています。
現下の新型コロナウイルス感染拡大により当社グループの事業や地域の状況や見通しにはセグメント毎に違いが生じていることを踏まえて今後の業容の拡大における、最優先は国内の技術系領域の拡大であると考えております。
技術系領域では、例えば自動車や家電の開発において、IT領域と密接に関わる変化が生じており、部品の制御や連動に関わるソフト開発の技術者ニーズが高まっています。またその分野に関わりたいと考え転職を志向する技術者も多くおり、新型コロナウイルスによる景気低迷からの回復フェーズにおいて、当社グループの成長余地が大いにある事業環境と考えております。技術系領域での自立成長力の強化に加え、M&Aも一層の取り組みを行う方針です。
従来の成長戦略の一つとして、海外での人材サービス事業を拡げ、各々の地域での自立成長をすすめていく方針については長期的には変わらないものの、新型コロナウイルスの影響を踏まえ海外の新たな投資に関しては慎重に判断し、既存事業の利益率の回復と向上を優先してまいります。また引き続き、現地経営層へのマネジメント、グループ企業統治への適切な対応等に注力してまいります。