有価証券報告書-第118期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/23 9:01
【資料】
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【項目】
169項目

対処すべき課題


文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) グループの理念体系
グループ理念体系(Mission・Vision・Values・Brand Message)の共有により、グループ各社が、それぞれの地域や国で、生命保険の提供を中心に人々の安心で豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献いたします。
また、グループ戦略の共有により、各社がベクトルをあわせてグループ価値の最大化と持続的な成長を目指します。
Mission:私たちの存在意義
「一生涯のパートナー」
“By your side,for life”
当社グループは、1902年、日本での創業以来、お客さま本位(お客さま第一)を経営の基本理念に据え、生命保険の提供を中心に、地域社会への貢献に努めてまいりました。
これからも、お客さまとお客さまの大切な人々の“一生涯のパートナー”として、グループ各社が、それぞれの地域で、人々の安心で豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献してまいります。
Vision:私たちの目指す姿
「安心の最高峰を、地域へ、世界へ」
“A secure future for every community we serve.
Using the best of our local and global capabilities.”
当社グループは「安心の最高峰を、地域へ、世界へ」をビジョンとして掲げ、生命保険をはじめグループ事業を通じて国内外の各地域に「安心の最高峰」を広げてまいります。
Values:私たちの大切にする価値観
「グループ企業行動原則(DSR憲章)」
“Dai-ichi's Social Responsibility Charter (DSR Charter)”
当社グループは、お客さま、社会、株主・投資家の皆さま、従業員からの期待に応え続けるための企業行動原則として「DSR憲章」を定め、持続可能な社会づくりに貢献いたします。
「DSR」とは、「第一生命グループの社会的責任(Dai-ichi’s Social Responsibility=DSR)」を表し、PDCAサイクルを全社で回すことを通じた経営品質の絶えざる向上によって各ステークホルダーに向けた社会的責任を果たすと同時に、当社グループの企業価値を高めていく独自の枠組みであります。
Brand Message:理念体系を支える私たちの想い
「いちばん、人を考える」
“People First”
いちばん、お客さまから支持される保険グループになるために、以下の4つの視点から誰よりも「人」を考える会社を目指してまいります。
いちばん、品質の高い会社
いちばん、生産性の高い会社
いちばん、従業員の活気あふれる会社
いちばん、成長する期待の高い会社
(2) 経営環境及び対処すべき課題
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、当社グループを取り巻く環境は、先行きの見通しづらい状況が続くものと予想されます。また、低金利環境の長期化や世界的な景気の減速、人々の間における非接触のコミュニケーションの定着等、中期経営計画「CONNECT 2020」のスタート時と比べ、当社グループを取り巻く経営環境はより厳しくなっております。
新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて、当社グループでは、お客さまや従業員の健康と感染予防に配慮した営業・事務体制の構築によりお客さまとの適時適切なコミュニケーションを継続する中で、お客さまの生活を守るための特別取扱の開始や、速やかな保険金・給付金のお支払い等、生命保険事業者としての役割を果たすと同時に、一日も早い沈静化に向けて国際社会と強調した取組みを進めております。
こうした状況のなか、中期経営計画の最終年度を迎えるにあたり、当社グループは「お客さま」「地域・社会」「多様なビジネスパートナー」「グループ各社」との“CONNECT”(つながり・連帯・協働)を3つの成長エンジンの強化に向けた推進力とし、諸課題に対して取り組んでまいります。また、当社グループの持続的成長を確保していくために、国内外の生命保険、アセットマネジメントの各事業が、従来の「保障」に加えて「資産形成」「健康増進」「つながり・絆」といった新たな価値を創造することで、社会課題を解決し、お客さまのQOL向上に貢献することができるよう挑戦してまいります。

① 国内生命保険事業の強化
国内生命保険事業では、「お客さま第一の業務運営方針」の下、多様化するお客さまニーズに的確に応えるために、商品・サービス・チャネルの進化等に資源を投下し、特色の異なる国内3社の強みを活かすという「マルチブランド・マルチチャネル戦略」を推進してまいりました。当年度においては、外貨建保険の販売が市場全体として減速した影響がありましたが、第三分野の新商品をはじめとして国内3社全体での販売は堅調に推移いたしました。当社ではこの「マルチブランド・マルチチャネル戦略」が当社グループの優位性と認識しており、今後はこれを一段と進化させ、国内3社のシナジー効果の発揮により、更なる成長を目指す「マルチブランド・マルチチャネル戦略~2ndステージ~」を展開してまいります。
商品・サービス面では、特色の異なる国内3社の強みを活かし、保障性商品から貯蓄性商品まで幅広い商品ラインアップを提供していくとともに、お客さまニーズの急速な変化に対応するため、最先端のテクノロジーを活用した革新的な商品やサービスの開発にも継続して取り組んでまいります。また、国内3社間における商品・サービスの相互活用を進めるとともに、新たな領域の商品提供にも積極的に挑戦してまいります。
チャネル面では、お客さま一人ひとりのニーズに合致した商品・サービスの提案に向けた生涯設計デザイナーのコンサルティング力の更なる強化や既存代理店への充実した販売サポートに加え、代理店マーケットへの積極展開や異業種・コミュニティ等へのアクセス強化によるマルチチャネル化を進めてまいります。
加えて、異業種のビジネスパートナーと協働しながら、変化を先取りした新たなビジネス展開についても追求してまいります。

② 海外生命保険事業の強化
海外生命保険事業では、各国毎の異なる市場環境に応じて、事業基盤の強化・拡大を企図した安定的な利益貢献と、中長期的な成長享受双方のバランスが取れたポートフォリオの構築を推進してまいります。
北米、豪州の先進国市場では、経済成長を通じた市場の安定的な拡大が見込まれることから、これまでに実現した買収の統合プロセスを着実に進めるとともに、安定的な利益成長を基本としながら選別的な買収による利益拡大に努めてまいります。
またアジア等の新興国市場においては、著しい経済成長や保険普及率の向上に伴う今後の市場成長を見据え、トップラインに軸を置き、販売チャネルの強化等により、市場シェアの拡大を目指してまいります。加えて、中長期的な事業成長が見込まれるカンボジアやミャンマーでの取組みを新たに推進してまいります。
事業基盤の拡大に伴うグローバルベースでの経営体制の強化に向けては、経営理念や経営戦略の相互理解を深めるとともに、海外CEOや部門長等と協働の上、グローバルな共通課題の解決やグループシナジーの発揮を通じた新たな価値創造を目指してまいります。

③ 資産運用・アセットマネジメント事業の強化
第一生命の資産運用では、低金利環境が長期化する中、確定利付資産を中心とした運用を基本としつつ、マーケット動向に応じたリスクコントロールを行う等、安定的な収益確保に向け、分散投資を行っております。アセットマネジメント事業においては、グループ会社を通じて日・米・欧の各地域における市場の成長を享受し、当社グループへの利益貢献の拡大に取り組みました。2020年3月期は、2019年3月期に持分法適用会社としたジャナス・ヘンダーソングループの利益貢献が拡大いたしました。
~責任ある機関投資家として~
第一生命は、日本全国の約1,000万名の保険契約者からお預かりした約36兆円の資金を幅広い資産で運用する「ユニバーサル・オーナー」として、多様なステークホルダーを意識した資産運用を行う中で地域・社会の課題解決に貢献していくことも使命であると認識し、「第一生命らしい責任投資」を積極的に推進しております。具体的には、日本を軸にグローバルに事業を展開していることから、以下の重点テーマを掲げ、資産横断的にESG投資を推進してまいります。
<重点テーマ>•「QOL向上」
•「地方創生・地域活性化」
•「気候変動の緩和」
また、成長ステージごとに異なる投資先企業の課題に中長期的視点で寄り添い、エンゲージメント(対話)を中心としたスチュワードシップ活動を行っております。
このような取組みが評価され、2020年2月には、環境省「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」投資家部門の金賞(環境大臣賞)を受賞いたしました。
~より規律あるリスクコントロール~
昨今の世界経済の情勢を踏まえれば、低金利環境が今後も長期にわたり継続する蓋然性が高まっております。こうした環境認識の下、当社では引き続きALM運用を基本に据える中で、規律あるリスクコントロールにより一層注力してまいります。具体的には、市場環境に左右されにくい財務体質を志向して、市場関連リスク(金利・株式リスク量)を削減いたします。2024年3月期までの4年間で20%、その後も段階的に削減に取り組み、安定的な利益創出、資本効率の改善及び経済価値ベースの資本充足率の安定化を同時追求してまいります。
④ イノベーションの創出
当社グループでは、テクノロジーの進化等を背景としたお客さまニーズの急速な変化に対応するため、最先端のテクノロジーを活用した“InsTech”(Insurance Technology)を推進しております。
一人ひとりのお客さまのQOL向上に資する新たなサービスを“InsTech”の活用を通じて創出し、健康寿命の延伸や医療費の抑制といった地域・社会の課題解決に貢献していくために、様々な社会実証事業等に積極的に取り組んでおります。また、異分野における知見やアイデアを持つ医師会、医療機関、大学やスタートアップ企業等との連携の強化や、先端技術を有する国内外のベンチャー企業への戦略的な投資を進めております。
ミレニアル世代やZ世代と呼ばれる若年層から、新たな生き方や価値観の変化が起きている保障中核層に至るまで、各世代に対応するような、新たな商品・サービスの提供に向けて、第一生命ではスタートアップ企業と連携し、スマートフォンで加入や保険金請求手続きが完結する少額短期保険の販売を開始いたしました。数日間のキャンプ等、短期間のレジャーやスポーツにおけるケガのリスクに備え、思い立った時にすぐに保険に加入できる便利さといった新たな保険体験を提供するとともに、SNS等を活用した様々なデジタルマーケティングを試行することで、若年層や保障中核層との接点を更に拡大しております。
企業(団体)が推進する健康経営の支援や、所属する皆さま一人ひとりの健康増進のサポートを目的として、既に個人向けにサービスを提供し好評を得ている「健康第一」アプリをカスタマイズした法人向け「健康第一」アプリの提供を開始いたしました。
イノベーション創出に向けて産学連携を進める中、2020年3月期は新たに東京理科大学、東北大学とそれぞれ包括連携協定を締結いたしました。大学との共同研究やデータサイエンティスト人財のインターンシップとしての受入れ、先端技術を有するベンチャー企業への投資等、学界と産業界とのつながりを多様化しながら、経済発展と社会的課題の解決の両立を目指す未来社会“Society5.0”の実現に資する新たな価値を生み出すための取組みを進めました。
⑤ ダイバーシティ&インクルージョン
当社グループでは、人財の多様性(ダイバーシティ)をお互いに包摂(インクルージョン)することが持続的成長の原動力になるとの考えの下、多様な個性が互いに尊重しあい、共に活躍・成長することができる職場環境・風土づくりに加え、社員一人ひとりが自身の個性・強みを発揮し、経営や組織運営に自ら参画することで、変革(イノベーション)と新しい価値を創造していくことを目指しております。
具体的には、多様な人財が活躍できる環境を整備するとともに、働き方改革やグループ人財交流の活性化等を通じて社員の生産性・競争力を高め、新たな価値創造の実現に向けて取り組んでまいりました。
女性リーダーの定着・安定輩出に向けて、「意識・風土の改革」、「能力開発の充実」、「ワーク・ライフ・マネジメントの推進」の3本柱で取組みを推進しております。女性役員数(※1)は7名、女性管理職比率(※2)は26.5%に達しております。
こうした各種取組み・制度が評価され、2020年3月には、女性活躍推進の優れた上場企業として、「準なでしこ2020」に選定されました。「なでしこ銘柄2019」に続き、2年連続での選定となります。
当社グループでは、「人権方針」及び「人権宣言」において基本的な人権の尊重を明確に打ち出しております。LGBT(※3)フレンドリーな企業を目指し、社員に向けては理解促進や休暇制度・社宅制度の適用拡大、お客さまに向けては同性パートナーによる保険金受取りの柔軟化等の取組みを行ってまいりました。こうした結果、2019年10月には、「PRIDE指標2019(※4)」において最高位の「ゴールド」を4年連続で受賞いたしました。
(※1) 2020年4月時点、当社、第一生命保険株式会社の合計
(※2) 2020年4月時点、当社、第一生命保険株式会社、第一フロンティア生命保険株式会社及びネオファースト生命保険株式会社の合計、営業部長・機関担当のオフィス長・オフィス長代理を含んでおります
(※3) 女性同性愛者(レズビアン、Lesbian)、男性同性愛者(ゲイ、Gay)、両性愛者(バイセクシュアル、Bisexual)、性同一性障害を含む性別越境者(トランスジェンダー、Transgender)等の人々を意味する各単語の頭文字を組み合わせた表現
(※4) 任意団体「work with Pride」が策定した職場におけるLGBT等への取組みの評価指標
(3) 次期中期経営計画に向けて
次期中期経営計画に向けては、ポストコロナにおける人々の価値規範の変容等、社会環境の変化も捉えた取り組みが必要であります。当社グループの提供価値である「保障」「資産形成」「健康増進」「つながり・絆」に対する人々の意識も変わっていくものと考えております。この新しいパラダイムの中で当社グループが提供価値を拡大、深化させることで、お客さまのQOL向上に貢献できるよう挑戦してまいります。
加えて、当社グループが保険ビジネスを通じて社会課題を解決し、未来に向けて持続的な企業価値の向上を図っていくために、またそれを支える財務体質を強固なものとするために、各種の取組みを検討してまいります。
具体的には、市場リスクの削減や、既存事業の効率化と成長の追求、ESG投資等の社会の持続性を価値創造の枠組みに取り込んだ投融資活動の推進、デジタル化や経済社会構造の変化等のメガトレンドを見据えた次世代の保険ビジネスの在り方の開発の強化と実装、そのための多様なビジネスパートナーとの連携等、未来志向の戦略を描いていくべく、検討を進めてまいります。