有価証券報告書-第115期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/26 15:09
【資料】
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【項目】
161項目

対処すべき課題


文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、1902年、日本での創業以来、お客さま本位(お客さま第一)を経営の基本理念に据え、生命保険の提供を中心に、地域社会への貢献に努めてまいりました。これからも、お客さまとお客さまの大切な人々の“一生涯のパートナー”として、グループ各社が、それぞれの地域で、人々の安心で豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献してまいります。
[グループミッション]
「一生涯のパートナー」“By your side,for life”
[グループビジョン]
「いちばん、人を考える会社になる。」“Thinking People First”
いちばん、お客さまから支持される保険グループになるために、以下の4つの視点から誰よりも「人」を考える会社を目指してまいります。
・いちばん、品質の高い会社
・いちばん、生産性の高い会社
・いちばん、従業員の活気あふれる会社
・いちばん、成長する期待の高い会社
[グループバリュー]
「第一生命グループ企業行動原則(DSR憲章)」
当社グループは、お客さま、社会、株主・投資家の皆さま、従業員からの期待に応え続けるための企業行動原則として「DSR憲章」を定め、持続可能な社会づくりに貢献いたします。
「DSR」とは、「第一生命グループの社会的責任(Dai-ichi’s Social Responsibility=DSR)」を表し、PDCAサイクルを全社で回すことを通じた経営品質の絶えざる向上によって各ステークホルダーに向けた社会的責任を果たすと同時に、当社グループの企業価値を高めていく独自の枠組みであります。
こうしたグループ理念体系の共有により、各社がベクトルをあわせてグループ価値の最大化と持続的成長を目指してまいります。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
当社グループは、中期経営計画「D-Ambitious」スタート以降、基本戦略である4つの柱に基づき、3つの成長エンジン(国内生命保険事業、海外生命保険事業、資産運用・アセットマネジメント事業)による成長戦略を着実に遂行するとともに、成長戦略を支える経営態勢・ガバナンスを更に強化してまいりました。また、日本銀行によるマイナス金利政策の導入や英国のEU離脱の動き等があった厳しい経営環境下にあっても、前中期経営計画期間との比較において大幅な利益水準の向上を実現してまいりました。
しかしながら、国内の低金利環境の長期化が想定されることや不透明感を強める金融経済環境等を踏まえ、当社グループは、ROEV(エンベディッド・バリュー(EV)の成長率)(注1)、資本充足率(経済価値)(注2)、利益水準等、「D-Ambitious」における主要な経営目標を変更いたしました。
EVとは、計算基準日の金利環境が今後も継続する前提で将来利益を計算する指標であります。2016年1月のマイナス金利政策の導入の影響を受けた2016年3月末のEVは、将来利益の見積もりが2015年3月末に比べて大きく減少したため、マイナス成長となりました。加えて、低金利環境の長期化が想定されるため、ROEVの目標につきましては、新契約の獲得を中心とした経営努力だけでは2017年度までの3ヶ年で達成することは困難であると判断し、「中長期的に目指す姿」にその位置付けを変更し、従来の「2015~2017年度の3ヶ年平均で8%を超える平均的成長」から「中長期的に平均8%成長を目指す」といたしました。また、健全性を示す指標であります資本充足率(経済価値)につきましても、同様に「中長期的に目指す姿」に位置付けを変更し、将来の資本規制も見据えて、従来の「2017年度末までに170%~200%」に到達するという目標を「中長期的な時間軸で170%~200%到達を目指す」といたしました。
また、2017年度の利益水準につきましては、「D-Ambitious」策定時からの環境の大幅な変化等を踏まえ、当初の設定目標を下回る可能性が高いと判断し目標を修正いたしました。併せて、定義を変更し、従来の「連結修正純利益2,200億円」を「グループ修正利益(注3)1,800億円」といたしました。なお、株主還元につきましては、グループ修正利益に対する割合として、「総還元性向(注4)40%」の目標を維持いたします。
今回の変更は、今後も当社グループが中長期的な視点に立って、持続的な価値創造を目指すために行うものであります。成長戦略の加速・高度化、更なる態勢強化やグループシナジーの発揮等を通じて、より機動的かつ強力に未来を見据えた変革にチャレンジいたします。
① Dynamism:ステークホルダーの期待に応える持続的成長の実現
3つの成長エンジン(国内生命保険事業、海外生命保険事業、資産運用・アセットマネジメント事業)に加えて、“InsTech”の推進、株式会社かんぽ生命保険との業務提携を通じて成長機会の創出に取り組んでまいります。
a. 国内生命保険事業
第一生命保険株式会社、第一フロンティア生命保険株式会社、ネオファースト生命保険株式会社の3社体制で、お客さま本位の業務運営を一層推進し、最適な商品・サービスを最適なチャネルでお届けすることで、様々なお客さまニーズに的確に対応いたします。
第一生命保険株式会社におきましては、国内成長戦略「一生涯のパートナー With You プロジェクト」の下、「確かな安心」と「充実した健康サポート」をお客さまに提供してまいります。お客さまのニーズを捉えた販売促進やお客さま接点の更なる強化に向けて、生涯設計デザイナーのコンサルティング力の向上に資する育成体制の強化等に一層取り組んでまいります。また、お客さまニーズに応じた商品ラインアップの充実により主力商品や成長分野である第三分野商品の販売拡大を目指してまいります。加えて、健康支援や重症化予防等の新しい価値提供を目指して、お客さまの健康増進につながるサービスの充実に取り組んでまいります。
第一フロンティア生命保険株式会社におきましては、国内の低金利環境が継続する中、お客さまニーズを踏まえ外貨建商品を中心に商品ラインアップの充実に取り組むとともに、引き続き商品の特性に応じてリスク管理を強化いたします。また、金融機関代理店への一層のサポート充実等に取り組んでまいります。
ネオファースト生命保険株式会社におきましては、「『あったらいいな』をいちばんに。」というコーポレートスローガンに基づき、健康増進をキーワードとした商品提供等、お客さまのニーズにいち早くお応えし満足いただける商品・サービスを充実させてまいります。また、ダイレクト販売等のチャネルの多角化を進めるとともに、委託代理店に対するサポート体制の充実に取り組んでまいります。
b. 海外生命保険事業
プロテクティブ社やTAL社が展開する先進国市場では安定的な利益貢献を目指す一方で、アジア新興国市場ではグループ各社の成長加速を目指してまいります。また、プロテクティブ社を通じた北米市場における買収案件や、新興国市場における新規投資等の検討を推進してまいります。
c. 資産運用・アセットマネジメント事業
第一生命保険株式会社の資産運用では、国内において低金利環境が長期化する中、継続して金利リスクのコントロールの強化に取り組むとともに、成長分野・新規分野への投融資等、資産運用の高度化に向けた取組みを推進し、運用収益の拡大を目指してまいります。また、「責任ある機関投資家」として、専門部署の設置等によりスチュワードシップ活動の態勢を強化しており、投資先企業の企業価値向上に向けた取組みを一層推進してまいります。
アセットマネジメント事業におきましては、国内外市場における受託残高の拡大を目指してまいります。また、アセットマネジメントOne株式会社や、2017年度に予定しておりますジャナス社とヘンダーソン社の経営統合を通じて、アセットマネジメント事業を更に強化し、お客さまの資産形成に貢献いたします。
d. “InsTech”の推進
保険ビジネスとテクノロジーの両面から生命保険事業独自のイノベーション創出を目指す“InsTech”について、他業態との連携や、外部の開発力・アイデアの活用等も行いながら、更なる付加価値の創出に取り組んでまいります。
e. 株式会社かんぽ生命保険との業務提携
株式会社かんぽ生命保険との業務提携を通じ、海外生命保険事業、資産運用事業、国内生命保険事業の3つの協業分野で両社の強みを活かし、事業基盤の強化と新たな成長機会の創出を目指してまいります。
② Discipline:規律ある資本配賦を通じた資本水準の確保・資本効率の向上
ステークホルダーの期待に応えるべく、個々の事業の収益性向上と最適な事業ポートフォリオの構築に取り組み、資本効率や企業価値の向上を目指してまいります。
また、国内の長期化する低金利環境等、厳しい金融経済環境を踏まえ、ERMの枠組みに基づく取組みをより一層強化し、グローバルに活動する保険会社に将来的に求められる資本規制も見据え、引き続き財務健全性の維持、更なる向上に取り組んでまいります。
③ Dimension:持株会社体制でのグループ経営の更なる進化
持株会社体制のメリットを最大限に活用して、グループ全体の経営資源の最適配分や成長分野への事業展開等を行います。また、監査等委員会設置会社として、コーポレートガバナンス基本方針の下、上場会社として業界の範となるコーポレートガバナンス体制の構築を目指してまいります。
④ Diversity:グループ・グローバルベースでのダイバーシティ&インクルージョンの確立
国籍、性別、障がいの有無、ライフスタイル等に関わらず多様な人財が活躍する環境の整備を更に進めるとともに、グローバルな事業展開を支える人財の育成を推進いたします。
当社グループは、2020年に目指す姿として中長期ビジョン「安心の最高峰を、地域へ、世界へ」を掲げ、世界中の皆さまから選ばれ続ける保険グループを目指しております。この中長期ビジョンを実現していくため、今後も創業より受け継いできた「お客さま第一主義の精神」を守りつつ、DSR経営の実践を通じて独自の強みを磨きながら、グループ一丸となって変革への挑戦を続けてまいります。
(注1)EVの詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「(参考2)当社グループ及び第一生命保険株式会社のEV」をご参照ください。
(注2)資本充足率(経済価値)とは、健全性を示す指標で、経済価値ベースで算出した資本を分子とし、内部モデルで計算したリスク量(信頼水準99.5%、税引き後ベース)を分母として算出しております。
(注3)グループ修正利益とは、当社独自の指標であり、グループ各社の修正利益を合計したものであります。各社の修正利益は、国内生命保険会社については、純利益に「負債性内部留保(注5)の繰入額のうち法定繰入額を超過して繰り入れた額(税引後)」を加算し、実質的でない会計上の評価損益である「定額保険の市場価格調整に係る損益(注6)(税引後)」を除外することにより算出いたします。また、連結会計上発生するのれん償却や子会社等の組織変更時の持分変動損益等も除外されます。
(注4)総還元性向=(株主配当総額+自己株式取得総額)/グループ修正利益
(注5)保険引受け等のリスクに備える「危険準備金」や資産の価格下落に備える「価格変動準備金」
(注6)市場価格調整とは、保険契約において、市中金利の変動による運用資産の価格変動を解約返戻金に反映させる機能のことであります。市場価格調整に係る損益とは、会計上の負債である解約返戻金の変動が、責任準備金の繰入れ/戻入れとして損益計算書に反映される一方で、実際の運用資産の価格(含み損益)は変動しているにもかかわらず損益計算書には反映されないことにより発生する損益であります。あくまでも会計上の一時的な評価により発生する損益であり、キャッシュフローを伴う実質的な損益ではありません。