有価証券報告書-第119期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
対処すべき課題
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) グループの理念体系
グループ理念体系(Mission・Vision・Values・Brand Message)の共有により、グループ各社が、それぞれの地域や国で、生命保険の提供を中心に人々の安心で豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献いたします。
また、グループ戦略の共有により、各社がベクトルをあわせてグループ価値の最大化と持続的な成長を目指します。
2022年に創業120周年を迎える当社グループは、将来にわたって、すべての人々が世代を超えて安心に満ち、豊かで健康な人生を送れるwell-being(幸せ)に貢献し続けられる存在でありたいと願います。そのため、事業領域を4つの体験価値(保障、資産形成・承継、健康・医療、つながり・絆)へと拡げることで、従来に増してお客さまに寄り添ってまいります。また、私たちが追求するすべての人々の幸せは、社会のサステナビリティがあってこそ実現するものであります。今般、社会の持続可能性の実現を事業運営の根幹と位置付け、地域・社会の持続性確保に関する重要課題にも、従来に増して取り組んでまいります。

こうした考えの下、当社グループが安心、豊かさ、健康といった体験価値の総体としてのwell-being(幸せ)をお届けすることをグループが一丸となって目指すため、グループビジョンを“Protect and improve the well-being of all”(すべての人々の幸せを守り、高める。)へと改めることといたしました。

Mission:私たちの存在意義
「一生涯のパートナー」
“By your side,for life”
当社グループは、1902年、日本での創業以来、お客さま本位(お客さま第一)を経営の基本理念に据え、生命保険の提供を中心に、地域社会への貢献に努めてまいりました。
これからも、お客さまとお客さまの大切な人々の“一生涯のパートナー”として、グループ各社が、それぞれの地域で、人々の安心で豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献してまいります。
Vision:私たちの目指す姿
「すべての人々の幸せを守り、高める」
“Protect and improve the well-being of all”
当社グループは安心、豊かさ、健康といった体験価値の総体としてのwell-being(幸せ)をお届けすることをグループが一丸となって目指してまいります。
Values:私たちの大切にする価値観
「グループ企業行動原則(DSR憲章)」
“Dai-ichi's Social Responsibility Charter (DSR Charter)”
当社グループは、お客さま、社会、株主・投資家の皆さま、従業員からの期待に応え続けるための企業行動原則として「DSR憲章」を定め、持続可能な社会づくりに貢献いたします。
「DSR」とは、「第一生命グループの社会的責任(Dai-ichi’s Social Responsibility=DSR)」を表し、PDCAサイクルを全社で回すことを通じた経営品質の絶えざる向上によって各ステークホルダーに向けた社会的責任を果たすと同時に、当社グループの企業価値を高めていく独自の枠組みであります。
Brand Message:理念体系を支える私たちの想い
「いちばん、人を考える」
“People First”
いちばん、お客さまから支持される保険グループになるために、以下の4つの視点から誰よりも「人」を考える会社を目指してまいります。
いちばん、品質の高い会社
いちばん、生産性の高い会社
いちばん、従業員の活気あふれる会社
いちばん、成長する期待の高い会社
(2) 経営環境及び対処すべき課題
①経営環境
2021年3月期における世界経済は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う各国における入国規制や外出禁止等の政策を背景に急速に悪化しました。対面型サービス業に大きな打撃が及んだ一方、製造業においてはリモートワークの広がりによる電子部品需要の拡大等がみられ、業種間の濃淡が強くなりました。日本経済においても、2020年4月及び2021年1月の2度の緊急事態宣言発出等を背景に、経済活動が停滞しました。
金融環境は、新型コロナウイルス感染拡大に対する懸念が強まる中で、年度初の株価は世界的に低迷したものの、各国の政策対応やワクチンの開発等を受けて年度を通じて上昇傾向が続き、歴史的な上昇相場となりました。この間、景気回復期待を受けて米国主導で金利上昇が続きましたが、日本の長期金利は日本銀行のイールドカーブコントロールの効果等から上昇幅が限定されました。生命保険業においては、感染拡大防止のための対面営業自粛が相次ぎ、新契約業績が低調に推移する中で、デジタルツールを活用した非接触の営業スタイル等、新たなビジネスモデルへの変革に向けた動きが業界に広がっていきました。
生命保険事業を中心に国内外で事業を展開する当社グループは、2021年3月期において、2019年3月期に開始した中期経営計画「CONNECT 2020」に沿って、「3つの成長エンジン(国内生命保険事業、海外生命保険事業、資産運用・アセットマネジメント事業)」の更なる強化に向けた取組みを実行するとともに、新型コロナウイルス感染拡大により急激に加速したライフスタイルの多様化や経済・金融市場の変動といった外部環境の変化に対応した様々な施策に取り組みました。詳細は「(3)前中期経営計画「CONNECT 2020」の振返り」をご参照下さい。
②優先的に対処すべき課題
新型コロナウイルスの沈静化に向けた情勢は、ワクチンの供給が開始された現在もなお見通しづらく、当面は不透明な状況が続くものと予想されます。他方、世界的な低金利環境の進行・長期化や景気の減速等、当社グループを取り巻く経営環境は厳しさを増しております。また、デジタル技術の急速な進展や人々の価値観の多様化は、新型コロナウイルス感染拡大を契機として更に加速し、生命保険事業には、とりわけお客さまとの接点に関して、今後大幅な変化が求められることが見込まれます。
当社グループでは、お客さまや従業員の健康に配慮した業務運営を継続する中で、速やかな保険金・給付金のお支払い等、お客さまにとってのライフラインである保険事業者としての役割を果たすことに加え、お客さまのニーズを捉えた保険商品やサービスの開発、デジタルツールを活用した非接触の販売プロセスの確立に取り組むとともに、低金利環境の継続や急激な市場変動への対応を強化してまいります。
昨年来、第一生命保険株式会社(以下「第一生命」という。)において、元従業員による金銭の不正取得事案が複数明らかになりました。これらの不正事案を発生させてしまった原因は複数あると認識していますが、お客さまからの直接の金銭授受を一律禁止するルールや不正行為の予兆を把握するための管理・監督が不十分であったこと等に加え、多くのお客さまのご契約をお取扱いさせていただいている営業員(以下、「優績者」という。)の特権意識を醸成させてしまったことや、従業員による優績者への遠慮意識等、企業風土や体質そのものにも問題があったと認識しております。
第一生命ではこれらの事案を厳粛に受け止め、被害を受けられたお客さまに対して会社として真摯に向き合うとともに、同様の金銭に係る不正行為がないかの総点検、金銭に係る不正行為の撲滅に向けた内部統制体制の一層の整備・充実(事業部門の自律的なリスクコントロール機能並びにコンプライアンス部門・内部監査部門の牽制機能の再強化)に取り組みます。また、真因の一つと考えられる企業風土の抜本的改革を進め、根本原因の分析に基づく網羅的かつ実効性のある再発防止策を徹底してまいります。
また、当社においても、外部専門家の意見、助言及び社内調査を踏まえた第一生命のこれらの課題への取組みと、その改善状況について注視していくとともに、グループ全体の経営管理に係る内部統制システムの運用について課題の存在を強く認識し、適切に管理してまいります。
(3)前中期経営計画「CONNECT 2020」の振返り
前中期経営計画「CONNECT 2020」の3年間では、保険事業者としての役割に立ち返り、お客さまのQOL向上や社会課題解決に向けた各種の取組みを進めた他、国内外における事業基盤の拡大やデジタル化対応、リスク削減方針の打出し等、成長と規律の両面から果断な挑戦を行ってまいりました。
前中期経営計画「CONNECT 2020」における主な取組みは以下のとおりです。

※ ERMとは、エンタープライズ・リスク・マネジメントの略であり、D&Iとは、ダイバーシティ&インクルージョンの略であります。
一方で、第一生命においてお客さまや社会からの信頼を揺るがす不正事案が発覚し、お客さまとの向き合い方から従業員の意識・企業風土の改革に至るまで、新中期経営計画に大きな課題を残すこととなりました。
掲げた計数目標等については、外部環境の変化を踏まえつつ、「3つの成長エンジン(国内生命保険事業、海外生命保険事業、資産運用・アセットマネジメント事業)」の更なる強化に向けた取組みを推進する中で、当初2年間は、将来利益指標と資本効率指標が市場環境要因により未達ペースの進捗となったものの、会計利益指標と健全性指標は順調に進捗いたしました。
最終年度にあたる2021年3月期においては、長引く低金利に加え営業活動の自粛等の影響により将来利益指標は大幅に目標未達となりました。一方、従来の延長線上にないリスク削減取組みを資産・負債の両面から実施した結果、健全性指標は中長期的に目指す姿に到達した他、会計利益指標と資本効率指標では市場環境の好転を主因に目標を達成できました。ただし、市場変動の影響を受けやすい収益構造には依然として課題が残りました。

各事業における主な取組みは次のとおりであります。
① 国内生命保険事業
国内生命保険事業では、「お客さま第一の業務運営方針」の下、多様化するお客さまニーズに的確に応えるために、商品・サービス・チャネルの進化等に資源を投下し、特色の異なる国内3社の強みを活かすという「マルチブランド・マルチチャネル戦略」を推進してまいりました。
第一生命、第一フロンティア生命保険株式会社(以下、「第一フロンティア生命」という。)及びネオファースト生命保険株式会社(以下、「ネオファースト生命」という。)(以下、「国内生命保険3社」という。)においては、保険事業者としての役割を果たすため、迅速な保険金支払いの継続や感染拡大防止に配慮した営業活動に取り組みました。また、新型コロナウイルス感染を原因とした死亡・高度障害に対する災害割増の適用や、お客さまの資金ニーズに配慮した保険料払込みの猶予等の特別取扱いを実施するとともに、お客さま向けの感染症に関するご相談サービスの提供等に取り組みました。
第一生命の元従業員による金銭の不正取得事案を受け、発生原因分析を踏まえた伏在調査(総点検)を実施するとともに、金銭不正行為の撲滅のための内部統制体制の整備・充実、金銭不正行為の背景となった企業風土・体質の改革を進めました。また、これらを実施するために新たに社長が主導する全社横断的な「経営品質刷新プロジェクト」を発足させました。
国内のお客さまニーズにお応えする保険商品の開発・販売を推進し、第一生命では、一時給付金の受取りを可能とすることで入院期間の短期化等に対応した商品の発売、第一フロンティア生命では、資産承継ニーズにお応えする相続・贈与型商品の改定、ネオファースト生命では、健康年齢型商品への最新の治療に対応したがん保障の上乗せ特約の追加等に取り組みました。
また、国内グループ会社として第一スマート少額短期保険の営業開始に向けた準備を進めました。デジタルチャネルを通じてミレニアル世代やZ世代と呼ばれる若年層へのアプローチを強化します。

② 海外生命保険事業
海外生命保険事業では、各国毎の異なる市場環境に応じて、事業基盤の強化・拡大を企図した安定的な利益貢献と、中長期的な成長享受双方のバランスが取れたポートフォリオの構築を推進してまいります。
海外グループ各社では、新型コロナウイルス感染拡大を受けた非接触ニーズに対応するため、ビデオ通話等のデジタル技術を活用した商品説明に取り組むとともに、従業員の在宅勤務推進等、各国情勢に応じた適切な業務運営を行いました。
Protective Life Corporationでは、オンラインでの保険金請求サービス等、お客さまの利便性向上を図る一方、レボロスとしてブランド展開を行う損害保険会社を買収した他、2019年に買収が完了したGreat-West Life & Annuity Insurance Companyの既契約ブロックからの利益貢献が本格化する等、事業基盤を強化いたしました。
TAL Dai-ichi Life Australia Pty Ltdでは、新契約が底堅く推移した他、解約失効率も良好に推移しました。一部の団体契約において保険収支の悪化が見られましたが、影響は限定的であり、また、下半期には同団体との間で保険料率の引上げに合意する等、安定した事業運営を継続いたしました。
新興国の各社においては、対面営業活動が制限される中、お客さま向け・個人代理店向け双方のプラットフォームのデジタル化や代理店チャネル研修のオンライン化を推進する等、お客さま等の利便性の確保・向上に取り組みました。

③ 資産運用・アセットマネジメント事業
第一生命の資産運用では、低金利環境が長期化する中、確定利付資産を中心とした運用を基本としつつ、マーケット動向に応じたリスクコントロールを行う等、安定的な収益確保に向け、分散投資を行っております。アセットマネジメント事業においては、グループ会社を通じて日・米・欧の各地域における市場の成長を享受し、当社グループへの利益貢献の拡大に取り組みました。また、保険負債の特性を考慮したALM(Asset Liability Management)運用を基本に、金融市場の変動に対する財務健全性の確保と資本効率向上のため、主に金利リスクや株式リスクといった市場関連リスクの削減を強化・加速することで、リスク特性の改善に取り組みました。また、収益力強化やリスク分散の観点から、オルタナティブ投資や実物資産投資にも積極的に取り組みました。
アセットマネジメント事業では、アセットマネジメントOneにおいては公募投信の販売が好調に推移した一方、Janus Henderson Group plcにおいて無形固定資産等の減損損失を計上したこと等から、修正利益は前年度比17.5%の減益となりました。
また、グループ事業戦略や財務・資本戦略の方向性を踏まえ、Janus Henderson Group plcとの資本関係を解消するとともに、新たな業務提携契約を締結いたしました。
<サステナブル(持続可能)な社会を目指した機関投資家としての取組み>・ 第一生命は、日本全国のお客さまからお預かりしている資金を幅広い資産で運用するユニバーサル・オーナーとして、中長期的な投資リターンの獲得と多様なステークホルダーを意識した持続可能な社会の実現の両立を目指した資産運用を行っております。
・ 2021年3月期は、持続可能な社会の実現に向けてESG投資を更に力強く進めるために、「ESG投資の基本方針」を公表いたしました。
・ESG投資の基本方針(概要)
①全資産の運用方針・運用プロセスにESG要素を組込み(2024年3月期完了を目標)
②当社が設定する重点的な社会課題の解決に向けた投融資(2024年3月期末までに2020年3月期末比で累計投資金額を倍増以上)
③投資先企業のESG取組み促進に向けたスチュワードシップ活動
・ 具体的な取組みとしては、ESG投資を通じた新型コロナウイルス対策支援として、ソーシャルボンド(コロナ債等)の発行機運の高まりを受けた債券投資や、インパクト投資を通じたヘルスケア関連のイノベーション創出を後押しいたしました。
・ 更に、2050年までに運用ポートフォリオの温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを対外的に表明する等、気候変動問題に対する取組みを一段と強化いたしました。

④ ERM (Enterprise Risk Management)
昨今の経済情勢を踏まえれば、低金利環境が長期にわたり継続する蓋然性が高まっております。当社グループは、ERM※1の枠組みに基づき、リスクを適切にコントロールし、健全性向上を図る一方で、より高い利益が見込める事業に資本を配賦する等、資本効率・企業価値向上に繋がる取組みを進めております。
これらの取組みの結果、健全性やリスク許容度の水準を示す経済価値ベースの資本充足率※2は、2021年3月期を通じて、中長期的な目標である170-200%の範囲を上回って安定的に推移し、前年度末比9ポイント増加となる203%となりました。
※1 ERMとは、事業におけるリスクの種類や特性を踏まえ、利益・資本・リスクの状況に応じた経営計画・資本政策を策定し、事業活動を推進することを指します。
2 経済価値ベースの資本充足率(ESR)の計測基準は、2021年3月期末においてより厳格な内部管理の観点から主に負債割引率等の計測前提を改定しております。
<2021年3月期の主な取組み>~資産側のリスクコントロール~
・ 2020年4月、保険負債の特性を考慮したALM運用を基本に据える中で、リスクコントロールを強化する方針を発表しました。具体的には、市場環境に左右されにくい財務体質への変革に向けて、市場関連リスク(金利・株式リスク量)を2024年3月期までの4年間で20%削減することといたしました。
・ この方針の下、2021年3月期は、当初計画を大幅に上回る金利リスク削減等により、4カ年の削減目標対比で約7割相当の金利・株式リスク量削減を実施できました。
~負債側のリスクコントロール~
・ 過去に販売した高予定利率の個人保険契約については、現在の低金利環境に照らせば将来にわたって予定利息を充足し続けることが困難であるため、これらの保険契約に関わる財務的なリスクを外部の再保険会社に移転する取引を3年連続で実施いたしました。
・ 団体年金契約については、予定利率と国内金利水準との著しい乖離を背景として長らく新規の受託を抑制しておりましたが、生命保険会社が担う利率保証機能を発揮するため、すでに受託している一般勘定の年金資産を含めて予定利率を引き下げる一方、手数料率を見直すことで商品性を確保すること等により、2021年10月から新規受託を再開することといたしました。
・ グループ内再保険の活用推進により、日本を含む9ヵ国に生命保険事業を展開する保険グループとしてのシナジーを追求しつつ、最適な資本配賦を通じた財務健全性の確保と資本効率の向上を目指し、英領バミューダに再保険会社を設立いたしました。第1号案件として、金利変動による損益への影響を軽減するため、第一フロンティア生命からの再保険の引受けを開始いたしました。
⑤ イノベーションの創出
当社グループでは、テクノロジーの進化やライフスタイルの多様化等を背景としたお客さまニーズの急激な変化に対応するため、2015年から生命保険事業独自のイノベーションを創出する取組みとして“InsTech※1”を推進してまいりました。2020年には本取組みの更なる強化に向け、イノベーションの専担組織として当社にイノベーション推進ユニット、第一生命にイノベーション推進部を設置いたしました。
専担組織に加え、グローバルかつタイムリーに先端テクノロジーの動向把握やスタートアップの発掘に取り組むため、国内ではイノベーションラボ、データマネジメント室を設置した他、海外ではシリコンバレー、ロンドン、シンガポール、上海等に拠点を設けております。また、異分野における知見やアイデアを持つ医師会、医療機関、大学等との連携の強化や、先端技術を有する国内外のベンチャー企業への戦略的な投資を進めております。
<2021年3月期の主な取組み>・ 当社グループでは、保険会社として従来から提供する「保障」に「資産形成・承継」「健康・医療」「つながり・絆」を加えた4つの体験価値を事業領域と定め、各領域におけるイノベーションに取り組んでおります。体験価値(CX※2)の改善を通じてお客さま満足度の向上を図るCXデザイン戦略を推進するため、開発組織の整備等に取り組みました。
・ 第一生命では、AIを活用した将来の医療費予測の分析を通じて健康保険組合の保健事業の効率化と医療費抑制を支援するサービス「Healstep℠(ヘルステップ)」の2021年度の提供開始に向けて、みずほ銀行等※3と業務提携契約を締結いたしました。なお、同サービスは厚生労働省が主催するデータヘルス・予防サービス見本市2020において、優秀賞を受賞いたしました。
・ 当社グループでヘルスケアサービスを提供するQOLeadでは、新型コロナウイルス感染拡大の状況下における人々の生活や健康のサポートを目的として、同社が無料で提供する「健康第一」アプリ上で、新型コロナウイルス感染症関連情報「毎日、健康第一」を公開いたしました。外出自粛に伴う運動不足や食事の量と栄養のバランスに関する不安等、感染症拡大の影響が生活の様々な場面で見られる中、アプリを通じて健康に役立つ情報を発信し、社会課題の解決に向けて取り組んでおります。
※1 保険ビジネス(Insurance)とテクノロジー(Technology)の両面から生命保険事業独自のイノベーションを創出する活動
2 Customer Experienceの略語で、お客さまが商品・サービスを通じて体験する価値
3 QOLead、みずほ銀行、みずほ情報総研(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー
⑥ ダイバーシティ&インクルージョン
当社グループでは、多様化するお客さまの価値観・ニーズを先んじて捉え、お客さまの期待を超える体験・感動をお届けすることで持続的成長を実現するためには、私たちも多様性に富んだ人財・組織である必要があるという考えの下、「ダイバーシティ(人財の多様性)」と「インクルージョン(お互いに包摂すること)」を推進しております。
加えて、従業員一人ひとりがかけがえのない個性を発揮し、自分らしく健康でいきいきと働くことができる企業文化・風土の醸成や、ライフスタイルに合わせた就業を可能とする制度の整備を通じた働き方改革を推進することで、「働きがい」を高めてまいります。
<2021年3月期の主な取組み>・ 女性が活躍できる環境の構築がダイバーシティの推進、ひいては企業価値の向上に資するとの認識から、意識・風土の改革、能力開発の充実、ワーク・ライフ・マネジメントの推進を3本柱として取組みました。
・ 当社及び国内生命保険3社では、2020年代に女性管理職比率30%の実現を目指し、女性リーダーの安定輩出と定着を推進しております。2021年4月時点において女性役員数※1は7名、前中期経営計画期間に25%の目標を掲げた女性管理職比率※2は27.5%に達しました。加えて第一生命では、国内生命保険会社で初となる「30% Club Japan Investor Group※3」へ加入する等、機関投資家としてジェンダーダイバーシティ促進に取り組みました。
・ 当社グループでは、グループ企業行動原則(DSR憲章)及びグループ人権方針において基本的な人権の尊重を明確に打ち出すとともに、LGBT※4フレンドリーな企業を目指し、従業員の理解促進に向けた研修や社外イベントへの参加等に取り組んでおります。2021年3月期は、「PRIDE指標2020※5」において最高位の「ゴールド」を5年連続で受賞いたしました。
・ 第一生命では、グループの持続的な成長のための人財育成方針の一環として、マネジメント職を目指すことに重きを置いていた従来のキャリアパスを、高度な専門性を持つ人財の活躍の場が広がるように複線化する等、人事制度を抜本改定いたしました。人財の市場価値を意識した、個の能力の活用と伸長、均質的な人財育成からの脱却、高度な専門性を持つ人財の獲得・活躍の促進等を目指します。
<非財務情報ハイライト>
連結従業員数 | 64,823名 |
女性管理職比率 ※2 | 27.5% |
障がい者雇用率 ※6 | 2.22% |
海外従業員比率 ※7 | 11.7% |
男性育児休業取得率 ※8 | 91.4% |
※1 2021年4月時点、当社及び第一生命合計(執行役員を含む)
2 2021年4月時点、当社及び国内生命保険3社合計、営業部長・機関担当のオフィス長・オフィス長代理を含んでおります。
3 ジェンダーダイバーシティの促進を通じて投資先企業の中長期的企業価値向上を目指す機関投資家グループ
4 女性同性愛者(レズビアン、Lesbian)、男性同性愛者(ゲイ、Gay)、両性愛者(バイセクシュアル、Bisexual)、性同一性障害を含む性別越境者(トランスジェンダー、Transgender)等の人々を意味する各単語の頭文字を組み合わせた表現
5 任意団体「work with Pride」が策定した職場におけるLGBT等への取組みの評価指標
6 2020年6月1日現在、持株会社および第一生命(キャリアローテーション者を含む)・第一生命情報システム・第一生命ビジネスサービス・第一生命チャレンジドの合計
7 2021年3月末時点、海外子会社5社合計
8 2021年3月末時点、持株会社および第一生命(キャリアローテーション者を含む)の合計
⑦ 地域・社会が抱える課題の解決
<保険事業者としての責務>・ 当社グループでは、新型コロナウイルス感染拡大への対応として、お客さまの生活を守るため保険契約の特別取扱いや速やかな保険金・給付金のお支払い等に取り組みました。
・ 国内生命保険3社では、医療機関へ1億円を寄附するとともに感染症指定医療機関を中心にマスク50万枚や消毒液の提供等を実施いたしました。新型コロナウイルス感染拡大の状況下で活動に制限がある中においても、各支社・営業オフィスが地域に寄り添いながら創意工夫の下、手作りマスクの製作・配布や学校における消毒活動のサポート等、各地域において様々な地域貢献活動を展開してまいりました。これらの地域貢献をきっかけに市区町村との連携も深まり、包括連携協定締結につながる等、全国で地域との結びつきが大きく進展いたしました。
・ 米国では、プロテクティブ財団が100万米ドルを拠出して救済基金を設立した他、海外各社でも、寄附やマスクの提供等の活動を行いました。
<気候変動への対応>・ 環境問題の中でもとりわけ気候変動は、お客さまの生命や健康、企業活動、地域・社会の持続可能性(サステナビリティ)に大きな影響を与える問題と認識しており、グローバルに生命保険事業や資産運用事業を展開する当社グループにとっても、重要課題の一つと位置付けております。
・ 2021年3月期は、第一生命で、本邦初となる「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス※1」への加盟を通じて、2050年までの運用ポートフォリオの温室効果ガス排出量実質ゼロを表明するとともに、2025年3月までに運用する上場株式・公募社債・不動産のCO2排出量を2020年3月末比で25%削減する目標を設定いたしました。また、「RE100(Renewable Energy 100%)※2」については2024年3月期までの達成に加え、特に投資用不動産については2021年度中の再生可能エネルギー100%化を目指す方針を決定いたしました。
※1 パリ協定での目標(気温上昇を1.5℃未満に抑える)達成を目的に、2050年までの運用ポートフォリオのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)にコミットするアセットオーナーのイニシアティブ
※2 事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%化にコミットする協働イニシアティブ
<気候変動に関する取組みの変遷>

(4) 新中期経営計画『Re-connect 2023』
当社グループは、上記の経営環境や課題を踏まえ、全てのステークホルダーの皆さまと「再度、より良い形でつながり直す」という想いを込めて、新中期経営計画『Re-connect 2023』をスタートさせました。全役員・従業員が価値観を共有し、共鳴しあいながら変革を遂げるために 改めて結束を強めてまいります。

<第一生命グループの重要課題>第一生命グループは、全ての人々のwell-being実現に貢献していくにあたり、重点的に取り組むべき社会課題を以下のとおり選定いたしました。具体的には、ステークホルダーからの期待及び当社の事業活動に照らした重要度、さらにはグループ理念との関係性(ビジョンとの親和性等)から取り組むべき社会課題の優先度・重要度を評価し、中期経営計画「Re-connect 2023」の事業戦略に反映しております。
具体的には以下の3つのステップにて重要課題を選定しております。
<ステップ1>・具体性を高めて取り組むべき社会課題の優先度・重要度を検討するために、SDGsの17の目標・169のターゲットを目的によってグルーピングし、50の社会課題を抽出
<ステップ2>・50の社会課題を対象に、国際機関・ガイドライン策定団体、NGO、投資家にESG情報を提供する評価機関、業界団体をはじめとするステークホルダーからの期待を踏まえて、優先度付けを実施
・国内外の保険会社が取り組んでいる社会課題を踏まえて、重要度付けを実施
<ステップ3>・保険会社にとっての重要課題を抽出し、「グループ理念」「QOL向上への貢献」との関連度を加味し、個々の重要課題の位置付け・表現を整理
・外部有識者との対話を経て、重要課題を選定
重要課題毎に具体的な社会課題を定め、中長期目標を設定した上で、当社グループの貢献度の測定にも取り組んでまいります。課題解決を通じて、当社グループにおける非保険分野を含めた、お客さま数の拡大を目指してまいります。
当社の重要課題のうち、“well-being”を構成する4つの体験価値と、それを支えるCX向上のそれぞれについて、中長期的に目指す方向性については以下のとおりであります。

一方で私たちが追求する全ての人々の幸せは、持続的社会(サステナビリティ)があってこそ実現するものであります。今般、持続的社会の実現を事業運営の根幹と位置づけ、地域・社会の持続性確保に関する重要課題にも、従来に増して取り組んでまいります。

新中計『Re-connect 2023』においては、新ビジョン“Protect and improve the well-being of all”で表現した私たちの目指す姿からバックキャスティングする形で、お客さまをはじめとする全てのステークホルダーとの「つながり」の在り方を見直し、この3年間で4つの重要施策「国内事業戦略」「海外事業戦略」「財務・資本戦略」「サステナビリティ・経営基盤」を展開してまいります。
<新中期経営計画「Re-connect 2023」における4つの重要施策>① 国内事業戦略:保険ビジネスモデルの抜本的転換「事業ポートフォリオにおける深化と探索の同時追求」
国内生命保険事業では、市場シェアの拡大に加え事業効率向上を通じて事業の「深化」を図ると同時に、新たな組織能力の獲得、即ち「探索」に向けて、健康・医療領域の新規サービス提供、デジタル技術の獲得を目的とした外部との協業、資産形成・承継領域の機能強化につながる事業投資等を通じて、グループの持続的成長を目指します。
マルチブランド・マルチチャネル戦略を基盤としつつ、お客さまの継続した体験、すなわちCXに軸足を置き、対面チャネルに加えてデジタルも活用した総合的なビジネス・サービスプロセスを構築する「CXデザイン戦略」に取り組んでまいります。「CXデザイン戦略」とは、全てのお客さま接点でお客さまの期待を超える体験・感動をお届けすることで、会社の成長につなげていくものであります。デジタル接点を含めたお客さま接点の拡大や、リアルチャネルのコンサルティング力向上、データアナリティクスなどを通じた 「お客さま理解」の深化に取り組むことで、一人ひとりに最適で品質の高いCXを提供できる仕組みづくりを行ってまいります。オフラインであるリアルチャネルの強みを活かしながら、オンラインと融合することでお客さま接点を一つにつなげ、最適な商品・サービス・情報を、最適なタイミング・最適なチャネルで提供する当社版OMO(Online Merges with Offline)を実現し、お客さまにとって「ほしいものがほしいときに自然なかたち」でお客さまの期待を超える体験・感動をお届けすることを目指してまいります。

② 海外事業戦略:環境変化に柔軟に対応し、成長を牽引する海外事業ポートフォリオの構築
海外生保事業においては、市場ステージに応じたポートフォリオ戦略を引き続き推進いたします。
安定成長と早期利益貢献が期待できる米国及び豪州と、中長期の利益貢献が見込まれるアジア新興国での成長に加え、将来の更なる環境変化に備えた革新的なビジネスモデルの取込みを戦略の3つの柱とし、これらにバランスよく取り組むことで、持続的な利益成長と資本コストを上回る資本効率を同時追求してまいります。
特に各国の資本規制や引き続き継続する低金利環境に対応した新ビジネスの探索(イノベーション)を進めてまいります。キャピタルライトなビジネスの取り込みや地域・事業分散を通じて、より厳しさを増す外部環境の変化への耐性を持った持続的成長基盤の構築を目指してまいります。
また、これまでも、社長、海外各社のCEO、関連役員により構成されるGLC(グローバル・リーダーズ・コミッティー)において、グローバルな知見を活用しつつ、グループ共通の課題解決に向けた協働取組みを行ってまいりましたが、海外生命保険事業の更なる拡大が見込まれる中、より一層グループ最適な視点から経営戦略を策定し、求心力を発揮することが不可欠であります。
このために、海外グループ会社の中間持株会社に海外生命保険事業戦略を議論する討議体を設置し、その運営を担える国内外のグローバル人財の活用を通じて、よりグローバルな経営スタイルへの転換を加速させてまいります。

③ 財務・資本戦略:グループ事業を支える強靭な財務体質への変革と資本循環経営
財務・資本戦略では、市場関連リスクの削減による健全性の向上や資本コストの低減に加え、ERMに基づく規律ある成長投資や機動的かつ柔軟な株主還元の実践等を通じ、中長期的に資本コストを上回る資本効率を目指してまいります。
資本コストについては、経営環境が変化する中で、これまでの当社想定8%から10%水準へと自己認識を改めました。高い資本コストの一因としては、金融市場変動の影響を受けやすい財務体質が挙げられ、実際、当社グループが有する統合リスク量(2021年3月末時点)の構成を見ると、市場関連リスクが68%を占めております。そこで市場関連リスクの削減については、従来の削減量・スピードともに高め、新中期経営計画期間の3年間で20%削減することといたしました。これは、2021年3月期の取組みを含めると、当初の4年計画の約1.5倍に相当する削減計画となりますが、これはあくまで通過点であり、金利リスクについては流動性も踏まえつつ、新中期経営計画期間以降においても更なるリスク削減を図ってまいります。
資本効率については、改定後の資本コストを安定凌駕する水準を目指します。グループ各社の事業リスク特性に応じたベータや所在国による市場リスクプレミアムを勘案した資本コストを個別に設定の上で事業成果を評価し、資本の配賦・回収等の意思決定を行ってまいります。
このような考えのもと、新中期経営計画のKPIとしては、資本効率指標に従来のROEVに加えて新たに修正ROEを加えるとともに、市場関連リスク削減に関する具体的な削減金額ならびに資本充足率についても目標設定を行いました。

④ サステナビリティ・経営基盤:サステナビリティ向上への使命・責任を果たし、人と社会と地球の幸せな未来を創る
当社グループは、地域・社会の持続性確保に関する重要課題にも、従来に増して取り組んでまいります。地域・社会のサステナビリティに関する取組みは、国内グループ中心に“世の中の範”となるための目標を設定しております。将来的には、独自の商品・サービスなどを通じた社会的インパクトの創出も挑戦してまいります。
例えば、気候変動対応については、カーボンニュートラルの実現に向けて、2024年3月期までに第一生命が事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達する方針を決定しました。加えて、責任ある機関投資家としてESG投資をグループ会社へも展開することを目指します。第一生命では、2050年までに運用ポートフォリオの温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指します。
また、新中計「Re-connect 2023」より、社長を委員長とする 「グループサステナビリティ推進委員会」を新設し、グループ横断的に非財務分野に係る方針・戦略の立案や、各社における取組遂行状況のモニタリング等を開始いたしました。多様化するお客さまの価値観・ニーズを先んじて捉え、お客さまの期待を超える体験・感動をお届けするためには、私たちも多様性に富んだ人財・組織である必要があると考えており、ダイバーシティ&インクルージョンを推進してまいります。
男女共同参画社会の実現に向けた取組みはもとより、中途社員・外国人・専門人財など、様々なバックグラウンドを持つ人財が自分らしく働き、個や組織の能力と生産性を高めながら、仲間とつながり、アイデアの共有や相乗効果を生みやすい環境を整備してまいります。具体的には女性管理職比率の新たな目標として、2021年4月時点で13%を占めるライン部長・ラインマネジャー級の管理職における女性比率を2024年4月までに30%とすることを目指してまいります。
より良い未来を創造し、世代を超えて人々のwell-being(幸せ)に貢献するためにも、気候変動対策をはじめとする様々な社会課題に一層積極的に取り組むとともに、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、多様な働き方の支援、機動的な人財シフト等を通じて、ビジネスモデル変革の原動力となる人財・組織を強化してまいります。
