有価証券報告書-第116期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
対処すべき課題
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) グループの理念体系
グループ理念体系(Mission・Vision・Values・Brand Message)の共有により、グループ各社が、それぞれの地域や国で、生命保険の提供を中心に人々の安心で豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献いたします。
また、グループ戦略の共有により、各社がベクトルをあわせてグループ価値の最大化と持続的な成長を目指します。
Mission:私たちの存在意義
「一生涯のパートナー」
“By your side,for life”
当社グループは、1902年、日本での創業以来、お客さま本位(お客さま第一)を経営の基本理念に据え、生命保険の提供を中心に、地域社会への貢献に努めてまいりました。
これからも、お客さまとお客さまの大切な人々の“一生涯のパートナー”として、グループ各社が、それぞれの地域で、人々の安心で豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献してまいります。
Vision:私たちの目指す姿
「安心の最高峰を、地域へ、世界へ」
“A secure future for every community we serve.
Using the best of our local and global capabilities.”
当社グループは「安心の最高峰を、地域へ、世界へ」をビジョンとして掲げ、生命保険をはじめグループ事業を通じて国内外の各地域に「安心の最高峰」を広げてまいります。
Values:私たちの大切にする価値観
「グループ企業行動原則(DSR憲章)」
“Dai-ichi's Social Responsibility Charter (DSR Charter)”
当社グループは、お客さま、社会、株主・投資家の皆さま、従業員からの期待に応え続けるための企業行動原則として「DSR憲章」を定め、持続可能な社会づくりに貢献いたします。
「DSR」とは、「第一生命グループの社会的責任(Dai-ichi’s Social Responsibility=DSR)」を表し、PDCAサイクルを全社で回すことを通じた経営品質の絶えざる向上によって各ステークホルダーに向けた社会的責任を果たすと同時に、当社グループの企業価値を高めていく独自の枠組みであります。
Brand Message:理念体系を支える私たちの想い
「いちばん、人を考える」
“People First”
いちばん、お客さまから支持される保険グループになるために、以下の4つの視点から誰よりも「人」を考える会社を目指してまいります。
いちばん、品質の高い会社
いちばん、生産性の高い会社
いちばん、従業員の活気あふれる会社
いちばん、成長する期待の高い会社
(2) 経営環境及び対処すべき課題
当社グループは、1902年の創業以来、お客さまの「一生涯のパートナー」として、様々な変革に挑戦しながら、生命保険事業等を通じて時々の社会課題と向き合い、解決することで成長を遂げてまいりました。
現在の生命保険会社を取り巻く環境は、不確実性を増す金融経済環境やライフスタイルの変化によるお客さまニーズの多様化、医療・情報通信技術の進化等、大きく変化しております。また、社会保障負担の増加や地球規模の脅威の発生(環境破壊・エネルギー問題等)等、官民の垣根を越えて取り組むべき、多くの社会課題が存在しております。
これからの変化の激しい時代の中、当社グループが社会課題の解決を通じて持続的な成長を実現していくためには、一世紀を超える歴史の中で構築した強みを発揮していくことに加え、「お客さま」「地域・社会」「多様なビジネスパートナー」「グループ各社」との「つながり(CONNECT)」に更に磨きをかけ、変化を先取りした課題解決力を高めていく必要があります。
このような中、当社グループでは2018年度より、ステークホルダーの皆さまの期待に応える持続的な成長の実現に向けて、3ヶ年の中期経営計画「CONNECT 2020」をスタートしました。新中期経営計画 (以下、「新中計」という。)では、成長戦略の基軸となる「5つの重点取組み」において「つながり」の価値を高め、この「つながり」を活かした総合力を発揮して、地域で、世界で、社会課題に挑戦し、人々のQOL向上への貢献を通じて持続的な成長を実現してまいります。
「5つの重点取組み」は以下のとおりであります。
① 国内生命保険事業の強化
国内生命保険事業では、より幅広い人々に対する、よりきめ細やかな商品・サービスの提供を通じて、人々のQOL向上に貢献してまいります。
新中計期間においては、お客さまが「もっと安心に。もっと私らしく。」日々の生活を送れるよう、商品・サービス・チャネルの進化等に資源を投下してまいります。これにより、低金利環境下においても今後の新契約価値を向上させつつ、新中計期間における利益水準を維持してまいります。
商品・サービス面では、特色の異なる国内3社の強みを活かし、保障性商品から貯蓄性商品まで幅広い商品ラインアップを提供していくとともに、健康をはじめ新たな付加価値を備えた商品・サービスを提供してまいります。また、国内3社間における商品・サービスの相互活用を拡大させるとともに、新たな領域の商品の提供も視野に、マルチブランド体制の更なる拡大・進化を進めてまいります。
チャネル面では、生涯設計デザイナーのコンサルティング力の更なる強化や既存代理店への充実した販売サポートの提供に加え、お客さま接点の強化を目的とした戦略拠点の増強や代理店マーケットへの積極展開、新たな事業領域への参入によるマルチチャネル化を進めてまいります。
加えて、異業種のビジネスパートナーとの協働に基づく、変化を先取りした新たなビジネス展開についても追求してまいります。
② 海外生命保険事業の強化
海外生命保険事業では、進出各国での保険普及等を通じて、人々の生活の安定に寄与していくことを目指してまいります。
新中計期間においては、展開先各国の持続的な成長により利益を拡大していくことに加え、中長期的な成長を見据えて新たな成長機会も追求してまいります。具体的には、プロテクティブやTALが展開する先進国市場では、一定の成長と安定した利益獲得に注力していく一方、アジア等の新興国市場では、トップラインに軸を置き、チャネルの強化等により、市場シェアの拡大を目指してまいります。加えて、中長期的な事業成長が見込まれるメコン地域での事業開始に向けた取組みを本格化してまいります。
③ 資産運用・アセットマネジメント事業の強化
第一生命では、資産運用の更なる高度化により、安定的な運用収益の確保を目指し、アセットマネジメント事業においては、グローバル展開により世界の市場成長を享受しつつ、グループの生命保険会社各社を含むシナジー創出を追求してまいります。
具体的には、第一生命の資産運用については、国内において低金利環境が長期化する中、市場動向に応じた機動的な資金配分や、プロジェクトファイナンスをはじめとする新規分野への投融資等、資産運用の高度化に向けた取組みを推進し、運用収益の拡大を目指してまいります。また、「責任ある機関投資家」として、収益性を確保しつつ社会の持続的な発展に寄与するESG投資の更なる推進と、ESGをテーマとした対話の強化等によるスチュワードシップ活動の実効性向上を図ってまいります。
アセットマネジメント事業については、経営統合により事業基盤・競争力が大きく強化されたアセットマネジメントOne、ジャナス・ヘンダーソン両社の統合効果の発揮等を通じ、両社の利益成長を加速させてまいります。また、両社の自立的な成長に加えて、両社の運用商品や販売チャネルの相互活用の更なる強化の他、国内・海外における当社グループ傘下の生命保険会社への両社の競争力のある運用ソリューションの提供や共同商品開発等、グローバルなグループシナジーの創出に向けた取組みの拡大を図ってまいります。
④ イノベーションの創出
環境変化を捉え、先端技術を国内外の業務へ順次応用するとともに、お客さまのQOL向上に繋がる新たな価値創造への挑戦をさらに加速させてまいります。
具体的には、顧客インターフェースのデジタル化により、給付金のお支払いや各種お手続きに係るお客さまの利便性向上を進めていくとともに、RPA・AI技術の導入による事務オペレーションの自動化を通じた生産性向上等により、人財リソースを国内外の成長分野等へシフトさせてまいります。
体制面においては、新組織であるDai-ichi Life Innovation Labを東京とシリコンバレーに設置し、グローバルでの連携を更に強化してまいります。海外の先端技術を積極的に取り入れ、既存のビジネスモデルや単なる価格競争にとどまらない、新たな市場・競争軸を生むためのイノベーションの創出を加速させてまいります。
⑤ ERM、ダイバーシティ&インクルージョン
ERM
ステークホルダーの皆さまの期待に応えるべく、個々の事業の収益性向上と最適な事業ポートフォリオの構築に取り組み、資本効率や企業価値の向上を目指してまいります。具体的には、グループ修正利益(注1)と新契約価値(注2)の成長を実現するとともに、中長期的に資本コストを上回る平均8%以上のEV(エンベディッド・バリュー)(注3)成長率(ROEV)を目指してまいります。
また、不透明な金融経済環境が継続していることを踏まえ、ERMの枠組みに基づく取組みをより一層強化し、国際資本規制の導入までの時間的猶予も活用し、規律あるリスクコントロールを通じて、財務健全性の維持・向上に取り組んでまいります。具体的には、中長期的に経済価値ベースの資本充足率(注4)170%~200%の到達を目指してまいります。
新中計期間における株主還元については、成長戦略とのバランスも考慮しながら、グループ修正利益に対する総還元性向(注5)40%を目処に検討してまいります。
ダイバーシティ&インクルージョン
グループにおける人財のダイバーシティ&インクルージョンを持続的成長の原動力として、変革と新たな価値創造の実現に挑戦してまいります。
グループ全体で多様な個性が輝き、共にシナジーを発揮する環境を築くことで、個人・組織の生産性及び競争力の向上を実現し、経営目標の達成と持続的成長の実現を目指してまいります。
(注1)グループ修正利益とは、当社独自の指標であり、グループ各社の修正利益を合計したものであります。各社の修正利益は、国内生命保険会社については、純利益に「負債性内部留保(注6)の繰入額のうち法定繰入額を超過して繰り入れた額(税引後)」を加算し、実質的でない会計上の評価損益である「定額保険の市場価格調整に係る損益(注7)(税引後)」を除外することにより算出いたします。また、連結会計上発生するのれん償却や子会社等の組織変更時の持分変動損益等も除外されます。
(注2)新契約価値は、当期に獲得した新契約(転換契約については正味増加分のみ)の契約獲得時点における価値(契約獲得に係る費用を控除した後の金額)を表したものであります。
(注3)EVの詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「(参考2)当社グループ及び第一生命保険株式会社のEV」をご参照ください。
(注4)経済価値ベースの資本充足率とは、健全性を示す指標で、経済価値ベースで算出した資本を分子とし、内部モデルで計算したリスク量(信頼水準99.5%、税引き後ベース)を分母として算出しております。
(注5)総還元性向=(株主配当総額+自己株式取得総額)/グループ修正利益
(注6)保険引受け等のリスクに備える「危険準備金」や資産の価格下落に備える「価格変動準備金」
(注7)市場価格調整とは、保険契約において、市中金利の変動による運用資産の価格変動を解約返戻金に反映させる機能のことであります。市場価格調整に係る損益とは、会計上の負債である解約返戻金の変動が、責任準備金の繰入れ/戻入れとして損益計算書に反映される一方で、実際の運用資産の価格(含み損益)は変動しているにもかかわらず損益計算書には反映されないことにより発生する損益であります。あくまでも会計上の一時的な評価により発生する損益であり、キャッシュフローを伴う実質的な損益ではありません。