有価証券報告書-第20期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/23 15:00
【資料】
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【項目】
120項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営方針
当社は、創業者の鈴木雄介が出版社勤務時代に、返本の山が断裁・焼却されることに地球環境への影響を危惧し、「SAVE TREES!」を事業コンセプトに電子書籍による解決を目指して2000年5月に設立されました。以来、電子書籍の普及に努め、デバイスの進化や通信環境の進歩など事業環境の変化を的確にとらえ、常に市場での優位性を確保できるよう事業運営に取り組んでまいりました。今後も、ヤフーとの事業連携を積極的に推進し、サービスを飛躍的に発展させることで「電子コミック国内取扱高No.1」に向けて継続的な事業成長を実現してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社は、2016年6月に資本業務提携したヤフーとの事業連携を積極的に推進し、「電子コミック国内取扱高No.1」を達成することを中期ビジョンとして掲げております。成長を続ける電子書籍市場において、さらなる事業規模の拡大に注力するため、「売上高」および「営業利益」を重要な経営指標として位置付けております。
(3)中長期的な会社の経営戦略及び優先的に対処すべき課題
出版業界においては、2019年(1月~12月期)の紙の出版市場が前年比4.3%減の1兆2,360億円となった一方で、電子出版市場が同23.9%増の3,072億円となったほか、当社が主力と位置付ける電子コミックの推定販売額は同29.5%増の2,593億円となり、大きく伸長しております(出所:公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所「出版月報」2020年1月号)。当社は、このような事業環境のもと、「電子コミック国内取扱高No.1」を達成することを中期ビジョンとして掲げ、ヤフーとの事業連携を積極的に推進し、持続的な事業成長を実現してまいります。
一方で、当社が主力事業として営む電子書籍市場は、市場の急速な拡大に伴って新規の参入企業も多く、競合各社による激しい競争が続いております。このような状況下において、当社は市場での優位性を確保し、企業としての成長を高めるため、下記事項を優先的に対処すべき課題と認識し、これらの課題に対処していくための経営戦略を推進し、以下のとおりの取り組みを実施しております。
① 市場環境、市場動向への機敏かつ的確な対応
電子書籍市場は引き続き拡大が見込まれるなか、特に電子コミックにおいては消費者の認知が急速に広がり、今後も大きな市場成長が期待されます。また、デバイスの進化や通信環境の進歩により、電子コミックを購入・閲読する環境も年々変化を続けております。このような変化の速い市場においては、技術革新やプラットフォームの進化、新たなビジネスモデルの出現などが発生しやすいため、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルス感染防止のため自宅で過ごす時間が増加し、電子書籍に対する市場ニーズが拡大する可能性がある一方で、感染拡大の状況によっては出版活動への影響も懸念されます。このような事業環境の変化を的確にとらえ、機敏に対応し、常に市場での優位性を確保できるよう、経営基盤を強固なものとし、迅速な意思決定により、継続的な事業成長を実現してまいります。
② 競合他社との差別化、効果的なマーケティング活動による新規利用者の獲得拡大
当社が主力事業として営む電子書籍事業は、参入障壁が低く、大規模なマーケティング投資を行うことで新規利用者を獲得し事業拡大を図ることが可能であることから、競合他社との新規利用者の獲得競争は激しさを増しております。当社においても新規利用者の増加が引き続き事業成長の要であることから、優れた顧客基盤およびマーケティングノウハウを有するヤフーおよび同グループ各社との連携をより一層強化することを軸に、競合他社との差別化ならびに効果的な広報・広告宣伝を含めたマーケティング活動を実施してまいります。
③ コンプライアンスの徹底ならびにリスクマネジメントの推進
事業運営に関する法令違反はもとより、役員・従業員による不法行為や過重労働、ハラスメント等の問題が発生した場合、業績や事業継続に影響を与える可能性があるため、当社では関連する規程を定め、明示し、定期的な社内研修や関係者を集めた会議等で、全役員および全従業員に理解およびコンプライアンスの徹底を図っております。リスクマネジメントにおいては、代表取締役を委員長とするリスクマネジメント委員会を定期的に開催し、リスクの調査、分析、判断、対応計画、対応の推進を図っております。
④ 有能な人材の確保と育成
当社の従業員は、2020年3月末現在で145名(臨時従業員を除く)と組織が小さく、社内の各種管理体制もこの規模に応じたものとなっております。当社のサービスを安定的に継続し、かつ、進化させていくにあたり、今後も継続的に有能な人材の確保および育成が不可欠であると考えております。新卒および中途採用を計画的に行うとともに、社内人材に対する教育研修制度を充実させ、また働きがいのある企業風土や職場環境を整備することにより、全体のレベルアップを図ってまいります。なお、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当社は迅速にリモートワーク体制を整え、緊急事態宣言発出後は全従業員リモートワークにて事業を継続しております。今後も従業員の安全を第一に、柔軟かつ迅速に対応してまいります。
⑤ 個人情報保護を含む情報セキュリティの強化
当社では、主にサービス提供時に個人情報を取得しており、個人情報取り扱い事業者としての義務を課されるとともに、各種法令・条例等の遵守が求められております。当社は、個人情報を有するサーバーへのアクセス制限や、個人情報保護方針を制定すると共に、ISMS国際規格 「ISO/IEC 27001:2013」および日本国内規格である「JIS Q 27001:2014」の認証を取得するなど、情報管理体制の整備強化に努めております。しかしながら、外部からの不正アクセスや、ハッキング等による情報の漏えいに関するリスクは完全には排除できないことから、個人情報が流出するような事態を未然に防ぐための措置とともに、万が一の事態が発生した場合の対応について十分な体制を整備してまいります。
⑥ 安心安全なサービスを継続的に提供するためのシステムの増強
利用者の増加、提供するコンテンツの拡大等に伴い、サービスを提供するシステムの増強およびメンテナンスが常に求められるほか、外部からのサイバー攻撃を受けるリスクや自然災害、事故等も想定し、サーバーの増強やシステム脆弱性診断などを、定常的に実施していく必要があるものと認識しております。ヤフーのセキュリティ強化に関する知見も取り入れ、引き続き安心安全なサービスを継続的に提供するため、システムの増強を図ってまいります。
⑦ 特定事業への高い依存度を踏まえた事業展開
当社の事業は電子書籍に関連するものが多くを占めております。電子書籍市場は将来の成長が見込まれてはいるものの、競合他社の動向や新たなビジネスモデルの出現、技術革新、取引先との取引条件変更など、予期せぬ環境変化により成長に何らかの問題が生じた場合、当社の業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。今後も市場の動向を慎重に見極めつつ、市場環境が大きく変容する場合は迅速かつ的確に経営リソースをシフトさせる準備をしておく必要があると認識しております。
⑧ 出版社との良好な関係構築および維持
当社は事業の特性により、大手出版社からの作品の仕入が相対的に高くなっております。将来的には取引先の多様化により、特定の仕入先への依存度は低くなることも考えられますが、当面はこれらの大手出版社への依存度が高い状態が継続すると考えております。そのため、取引先である大手出版社と何らかの事由により関係が悪化した場合、当社の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。大手出版社との取引は、今後も安定的に良質な作品の取扱いを維持するための根幹であることを鑑み、出版社向けの営業体制を整備し、関係維持・良化のための取り組みを引き続き強化してまいります。なお、新型コロナウイルスの感染状況によっては、出版社など出版活動への影響も懸念されるため、今後の状況を注視してまいります。
⑨ ヤフーとの事業連携の推進
ヤフーは当社の親会社であり、当社の主力事業である電子書籍事業にて協力してサービスを運営しているため、当社の事業に影響力を及ぼしうる立場にあります。ガバナンス面においては独立社外役員を選任し、独立性の確保に努めております。また、事業面においては、2016年6月のヤフーとの資本業務提携以来、両社が保有するアセット、知見、ノウハウを持ち寄り、電子コミック分野での国内取扱高No.1を目指して、事業連携を進めてまいりました。2019年6月には旧サービス「eBookJapan」における電子書籍販売を終了し、当社とヤフーが協力して運営する「ebookjapan」への統合を完了しました。今後もヤフーとの連携をより一層強化し、電子コミック分野における国内取扱高No.1の実現に繋げてまいります。