四半期報告書-第11期第2四半期(平成26年7月1日-平成26年9月30日)

【提出】
2014/11/14 15:11
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【項目】
27項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

(1)業績の状況
前第3四半期連結会計期間より四半期連結財務諸表を作成しているため、業績数値の前年同四半期等との比較は行っておりません。
当社グループの当第2四半期連結累計期間における事業開発活動の状況としましては、主に中外製薬株式会社及び同社の海外子会社であるChugai Pharmabody Research Pte. Ltd.(以下、「中外製薬グループ」といいます)との契約に基づく研究開発活動を中心に、順調に事業を推進してまいりました。診断薬分野の大手企業である富士レビオ株式会社(以下、「富士レビオ」といいます)が、ADLib®システム(*1)から取得した抗体を使用した診断薬キットを販売しており、当社は売上高に応じたロイヤルティ収益を計上しております。また、当社の独自技術であるADLib®システムの研究を積極的に推進し、完全ヒトADLib®システム(*2)の多様性の向上や、リード抗体作製に関する研究開発活動を継続しました。
以上の結果、当第2四半期連結累計期間における売上高は158,058千円、営業損失は581,867千円、経常損失は582,379千円、四半期純損失は557,533千円となりました。
当第2四半期連結累計期間におけるセグメントの業績は次のとおりです。
① 創薬アライアンス事業(*3)
中外製薬グループとの契約に基づく研究開発活動を継続しております。当期は、従来のADLib®ライブラリ(*4)に加えて、複数の製薬企業に対し、来年度の検証的契約締結に向けた完全ヒトADLib®システムでの営業活動を開始しております。その他の営業活動として、BioPharm America 2014でのプレゼンテーション及び海外研究機関等への訪問を実施いたしました。今後も国内外のカンファレンスへの参加とプレゼンテーションを継続し、完全ヒトADLib®システムの紹介を中心に営業活動を実施する予定です。
連結子会社の株式会社リブテックは、平成23年11月に株式会社ヤクルト本社と締結したがん治療用抗体「LIV-2008」の独占オプション契約に基づき、各種非臨床試験(*5)を行っております。
以上の結果、当該事業における当第2四半期連結累計期間の売上高は142,756千円、セグメント利益(売上総利益)は88,266千円となりました。
② リード抗体ライセンスアウト事業(*6)
当該事業につきましては、従来から実施している活動を継続しており、今後の売上の獲得を目指す所存であります。当第2四半期連結会計期間においては、横浜市立大学五嶋研、東京大学高橋研との共同研究契約を更新し、新規治療用抗体のステージアップ・導出に向けた研究活動を継続しております。また、新たに名古屋市立大学植村研及び横浜市立大学竹居研との共同研究を開始いたしました。
横浜市立大学と共同研究中の抗セマフォリン3A抗体(*7)は、導出に向けた魅力的なパッケージの構築のための、疾患モデル動物(*8)での薬効試験を実施しております。また、動物を用いた薬効試験についてはリブテックを含め、当社グループ内での試験の内製化を始めました。東京大学高橋研との膜タンパク質を標的とした創薬の共同研究では標的抗原に対する抗体を作製しておりますが、今後は得られた抗体の機能性の確認及び疾患モデルを用いた薬効評価を行っていく予定です。英国のBiotecnol Ltd.との共同研究では、お互いのユニークな技術を活かして順調に研究開発活動が進捗しており、今後、革新的なリード候補抗体を取得していく予定です。
当該事業につきましては、当第2四半期連結累計期間の売上高及び利益(又は損失)は発生しておりません。
③ 基盤技術ライセンス事業(*9)
オリジナルADLib®システムの技術導出先である富士レビオでは、臨床検査・診断に用いる試薬の研究開発を行い、その成果として、欧州での“ビタミンD測定用の抗体を含む診断キット(Lumipulse® G25-OH Vitamin D Immunoreaction Cartridges)”の販売を平成25年12月より開始いたしました。これに伴い当社は売上高に応じたロイヤルティを受領いたしております。また、現在もADLib®システムを用いた新たな診断キット創出に向けた研究開発活動が継続されております。この他、技術ライセンスに興味を持つ国内外の複数企業との間で技術評価試験の実施及び技術ライセンススキームの交渉を行っております。
以上の結果、当該事業における当第2四半期連結累計期間の売上高は15,901千円、セグメント利益(売上総利益)は15,782千円となりました。
これら各セグメント事業の基盤となる技術プラットフォームの研究開発活動の状況につきましては、完全ヒトADLib®システムを構築し 、現在は多様化レベルの向上、ライブラリの拡充を進めております。また、従来のライブラリを用いた困難抗原(*10)に対する特異的抗体(*11)の作製を進め、パイプラインの拡充や戦略抗体の創出活動を継続しております。
以上の結果、当第2四半期連結累計期間における研究開発費は359,558千円となりました。なお、当社は創薬基盤技術であるADLib®システムを核として事業を展開しており、全ての保有資産が一体となってキャッシュ・フローを生成していることから、研究開発費を各報告セグメントへ配分しておりません。
(2)財政状態の分析
(流動資産)
当第2四半期連結会計期間末における流動資産の残高は4,015,359千円(前連結会計年度末は4,514,672千円)となり、前連結会計年度末と比較して499,313千円減少しました。この主な要因は、コマーシャル・ペーパーの購入や販売費及び一般管理費並びに固定資産の取得による現金及び預金1,769,731千円の減少、コマーシャル・ペーパーの購入による有価証券1,299,634千円の増加等によるものであります。
(固定資産)
当第2四半期連結会計期間末における固定資産の残高は517,144千円(前連結会計年度末は498,131千円)となり、前連結会計年度末と比較して19,012千円増加しました。この主な要因は、研究機械の購入等による有形固定資産14,825千円の増加、ソフトウェアの購入等による無形固定資産4,301千円の増加等によるものであります。
(流動負債)
当第2四半期連結会計期間末における流動負債の残高は304,457千円(前連結会計年度末は347,064千円)となり、前連結会計年度末と比較して42,607千円減少しました。この主な要因は、固定資産購入代金の支払い等による未払金26,383千円の減少、借入金の返済による1年内返済予定の長期借入金20,812千円の減少等によるものであります。
(固定負債)
当第2四半期連結会計期間末における固定負債の残高は116,267千円(前連結会計年度末は106,595千円)となり、前連結会計年度末と比較して9,672千円増加しました。
(純資産)
当第2四半期連結会計期間末における純資産の残高は4,111,778千円(前連結会計年度末は4,559,143千円)となり、前連結会計年度末と比較して447,365千円減少しました。この主な要因は、四半期純損失による利益剰余金557,533千円の減少、新株予約権の行使に伴う資本金及び資本剰余金の増加145,796千円等によるものであります。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は3,879,636千円となり、前連結会計年度末と比較して470,097千円減少しました。各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において営業活動により使用した資金は507,095千円となりました。主な内訳として、税金等調整前四半期純損失584,077千円に対し、資金を伴わない減価償却費39,795千円等を調整した資金の増加、また、収入要因として未収消費税等19,752千円の減少や支出要因として前受金19,579千円の減少等があります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において投資活動により使用した資金は86,530千円となりました。これは、研究機器の取得やシステム導入等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第2四半期連結累計期間において財務活動により取得した資金は122,219千円となりました。この内訳は、株式の発行による収入143,031千円や長期借入金の返済による支出20,812千円であります。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において、新たに発生した事業上及び財務上の対処すべき課題はありません。
<用語解説>
番号用語意味・内容
*1ADLib®(アドリブ)システムニワトリ細胞をもとにして作製された細胞株であるDT40細胞のもつ抗体遺伝子の組換えを活性化することによって、抗体タンパクの多様性を増大させ、特定の抗原を固定した磁気ビーズで特異的抗体を産生する細胞をつり上げる仕組みです。理研で開発された技術で、当社はその独占的な実施権を保有しております。既存の方法に比べ、迅速性に優れていること及び従来困難であった抗体取得が可能であること等の点に特徴があると考えております。
*2完全ヒトADLib®システムDT40細胞のもつニワトリ抗体の遺伝子の主要部分をヒト抗体の遺伝子に置き換えることで、最初からヒトの抗体を作り出すことが可能なADLib®システムです。
*3創薬アライアンス事業製薬企業等と提携して治療用医薬品開発を目的とした抗体を共同研究し、または委託を受けて研究する事業になります。
*4ライブラリ一つ一つの細胞が異なる構造の抗体を持っているような、大量の細胞の集団のことを、図書館にたとえて、ライブラリと呼びます。ADLib®システムにおいては、論理的には無限の抗体遺伝子配列の異なる細胞ライブラリを作製する事が可能です。
*5非臨床試験新薬開発の段階で、ヒトを対象とする臨床試験の前に行う試験のことで、動物を使って有効性や安全性を調べる試験です。
*6リード抗体ライセンスアウト
事業
治療薬候補となる新規抗体を作製し、製薬企業等に早期のライセンスアウトを行う事業になります。
*7抗セマフォリン3A抗体セマフォリン3Aは神経ガイダンス因子として同定された分子で、神経伸長を抑制することにより伸長方向を決めていることが知られています。最近の研究では、セマフォリン3Aを阻害することにより神経再生が起こること、また免疫反応やがん、アルツハイマーとも関連していることが報告されております。
*8疾患モデル動物ヒトの疾患と似た疾患を持ち、ヒトの疾患研究を行うことのできる実験動物(マウス等)のことを指します。
*9基盤技術ライセンス事業ADLib®システムを製薬企業等にライセンス提供し、製薬企業自らが研究開発を行う事業になります。
*10抗原通常、細菌やウイルスの持つタンパク質等、体内で異物と認識され、抗原抗体反応を起こさせる物質のことを抗原と言います。抗原が体内に入ると、これを撃退するための物質として抗体が作られ、抗原を排除するために働きます。さらにこの意味から派生して、抗体に結合する物質、あるいはこれから抗体を作製したい物質全般を、抗原と呼ぶこともあります。
*11特異的抗体抗原抗体反応において、ある特定の抗原に結合する抗体です。