有価証券報告書-第16期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/27 15:18
【資料】
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【項目】
116項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は創業以来、当社独自の抗体作製技術であるADLib®システムの研究開発や技術導出に向けた取り組みを行ってまいりました。
現在、当社では当社独自技術のADLib®システムをはじめ複数の抗体作製技術を保有し、これまでの製薬企業等との協業を通じて培ってきた抗体創薬に関わる周辺の技術も蓄積しております。これらの技術を活かし、アンメットニーズの高い疾患に対する抗体創薬および開発に注力する経営を進めております。
複数の抗体作製技術を用いることでリード抗体取得の可能性を高め、有効な治療法がない重篤な疾患や、薬剤による治療満足度が低い疾患を中心に「医療のアンメットニーズに創薬の光を」あてる研究開発を強く推進し、人類の健康に貢献をしてまいります。
(2)経営環境
「第1 企業の概況 3 事業の内容 1.事業環境」に記載しております。
(3)目標とする経営指標
創薬事業においては、医療用医薬品の開発候補品となるリード抗体の創出とリード抗体を製薬企業に導出することで収益を得るビジネスに取り組んでおります。当社が保有する開発候補品の収益性向上や導出確度の向上を鑑み、前臨床試験(*)段階、または、初期臨床試験を実施した後の導出を目指しております。一般的には臨床開発を行い、医療用医薬品として承認に至る可能性が高まることによって、導出時に得られる収益性が高くなります。しかしながら、臨床開発段階で承認に至るまでの抗体医薬品の開発成功確率は一般的に10~20%程度と言われているため、1つの開発品目だけに当社の事業や将来の収益の可能性を依存することは経営上の様々なリスクが大きくなります。従いまして、当社は研究開発の各段階において、複数の開発品目を保有することで事業全体の成功確度を高めることを目標に掲げております。なお、当社では臨床段階のプログラムにつきましては、研究開発費と導出によって得られる収益の状況を鑑みて、同時期に扱う品目数を2~3本と想定しており、現在、当社ではCBA-1205とCBA-1535の二つの開発品目を有しております。
また、探索研究段階にある創薬プロジェクトではリード抗体獲得に向けて、抗体作製や動物試験等の研究開発を推進しております。リード抗体獲得の成功確率を向上させるために、社内での技術改良に加え、社外の技術導入や共同研究等のアライアンスも積極的に推進することで、創薬力を高める取り組みを行っております。リード抗体獲得に資する共同研究は常時10件程度取り扱うことを目安にしており、現在国内のアカデミアや企業を中心に10件の共同研究が進んでおります。なお、当社の開発・導出候補品で構成される開発パイプラインの拡充に向けては、有望なシーズ(*)の導入も視野に入れております。
創薬支援事業においては、複数の安定顧客に質の高い抗体作製およびタンパク質・抗体の発現精製等の委受託業務を継続的に提供することで、収益基盤の安定化と本事業で獲得した収益を創薬事業での研究開発投資に充当しております。本事業では収益性を高めるために、当社の抗体研究領域における高い業務品質と柔軟な業務遂行を通した高付加価値型のビジネスの遂行により、セグメントの利益率50%確保を目指しております。また、付加価値の高い業務品質や柔軟な業務遂行力を維持することが本事業における目標達成にとって重要な要素であり、収益性を高めるために現在は国内の大手抗体医薬企業との取引に注力をしております。
(4)中長期的な会社の経営戦略
当社の中長期的な事業シナリオは次のとおりです。
① 治療用抗体の臨床開発
ファースト・イン・クラス抗体であるCBA-1205および、多重特異性抗体であるCBA-1535の臨床開発を進め、Phase 1終了後の導出を目指します。これまでにGLP(*)下での毒性試験(*)、治験薬の製造が終了し、治験届を提出したCBA-1205は2020年内の第1相試験の開始、現在臨床開発に向けた原薬製造を行っているCBA-1535は2021年後半以降の治験届の提出を目指して、研究開発を進めております。
② 治療用リード抗体の継続的な創出
アカデミアやバイオベンチャー等との共同研究を軸に、当社の抗体作製技術を用いてアンメットニーズに対するリード抗体を継続的に創出し、製薬企業等へ早期に導出することを目指します。
③ 開発候補品の継続的な保持
当社が手掛けるような医薬品の研究開発事業は通常、開発期間が長く相当程度の開発中止リスクが伴うため、安定的な成長にはステージの異なる複数のパイプラインの確保が必要となります。当社では自社の創薬開発によってリード抗体を継続的に創出し、新たなパイプラインに加えるだけでなく、外部からのパイプラインの導入も行うことにより、開発ポートフォリオを充足させ開発候補品を断続的に保持することを目指します。また、CBA-1205やCBA-1535に続く自社で手掛ける臨床開発については、CBA-1535のCMC(*)開発の目途がついたのち、2022年頃に新たな臨床開発候補品のCMC開発に着手すべく、当社の創薬プロジェクトの研究活動を積極的に推進するなど、臨床開発候補品の確保にむけた取り組みを進めてまいります。
④ 創薬開発と事業開発の連動
新規の創薬開発においては、将来の提携や早期の導出が実現できるよう、業界での開発動向や既存薬剤による医療ニーズの充足度等を調査、検討の上、最適な創薬ターゲットの選定と出口戦略の策定が重要です。そのため、当社では自社での評価の他に、製薬企業等との情報交換による需要の発掘やアカデミアとの連携などを通じて、ターゲットの選定が適切に行われるよう努めてまいります。その上で提供可能なパイプラインがクライアントのニーズに即していた場合には、早期にライセンス契約へと繋げていくことを目指します。
⑤ 収益最大化を目指した初期臨床開発の実施
医療用医薬品の導出において、一般的には開発後期になるほど医薬品開発の成功確率があがり、それにより導出時の経済条件は有利になります。当社は、一部のパイプラインにおいては前臨床段階での導出のみならず初期臨床開発を実施した上で導出することで、当社の収益性が最大化するような取り組みを進めてまいります。
(5)対処すべき課題
当社が認識する対処すべき課題については以下のように考えております。
① 抗体作製力の維持向上とパイプライン拡充
当社は、抗体医薬の開発候補品を継続的に創出して、革新的な医薬品を待ち望む患者さんに貢献することを目指しておりますが、保有するパイプラインが様々な理由で開発の遅延や中断、中止等になるリスクがあります。それらの開発上のリスクに対応するためには、開発パイプラインを拡充することにより、開発中止等によって生じる経営上の様々なリスクを分散する必要があると考えております。そのためには抗体作製技術の継続的な改良を行い自社での抗体作製力の向上を図りパイプラインを創出することにより、様々な開発ステージでバランス良く構成された複数のパイプラインを保有してまいります。また、大学や企業等の外部の有望な抗体医薬の候補品の導入も含め、開発パイプラインの拡充を進めてまいります。
② 初期臨床開発の着実なる遂行
当社は、医薬品の開発段階の中でも比較的早期の導出を目指しておりますが、初期臨床開発によって得られたデータにより医療用医薬品として承認される可能性を高め、導出時の収益性の向上させることも重要であると考え、自社での初期臨床開発の取り組みも進めております。現在、当社が保有するパイプラインのうちがん治療用抗体のCBA-1205とCBA-1535については、価値最大化を目指して臨床試験実施に向けて社外専門家との提携しながら、CMO(*)やCRO(*)を活用しCMC開発及び試験計画の策定や臨床試験を進めてまいります。