有価証券報告書-第11期(平成26年4月1日-平成26年12月31日)

【提出】
2015/03/30 15:49
【資料】
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【項目】
108項目

対処すべき課題

当社グループは、医薬品の中でも成長性が高い抗体医薬品市場で事業を展開し、加えて独自性の高い創薬基盤技術であるADLib®システムの特徴を活かすことにより持続的に成長し企業価値を高めるとともに、当社グループのビジョンやミッションの達成を目指しております。
このような中、当社といたしましては、対処すべき課題を次のように考えております。
(1)競合医薬品との差別化
最近の医薬品業界においては、抗体医薬に加え、低分子医薬(*)、特殊ペプチド(*)、核酸医薬(*)等の研究開発が続いております。このような環境の中、当社グループが取り組んでいる抗体医薬は下表<抗体医薬の特徴>にまとめましたとおり安全性の高さ、生体内安定性(*)の高さ及びターゲット特異性の強さについて優位性があると認識いたしております。また、抗体医薬ではターゲット多様性や細胞内ターゲットへの対応に弱点があるとの見方がありましたが、最近の技術の進展に伴い抗体医薬での治療戦略が拡大し、これらの難点を克服しつつあります。その一方で、製造コストを低減させることはなお重要な課題となっています。このような抗体医薬の持つ特性を認識し、競合医薬品との差別化を図ることが重要だと捉えております。
<抗体医薬の特徴>
特徴
安全性の高さ抗体は本来生体内に存在する分子であり、異物として認識される確率が低い。また、抗体医薬品は、疾患特有の抗原を標的とし、正常組織への非特異的作用が少ないため、安全性は高い傾向にある。
生体内安定性の高さ一般に、抗体が属する免疫グロブリンは、生体内安定性が高く、血中寿命も長い。低分子化加工により、血中寿命を制御(短期化)することが可能。
ターゲット結合力(*)の強さ各カテゴリの中でも、結合力が強い・弱いものが存在し、医薬品ごとにその特徴は異なるが、抗体医薬は結合力の強いカテゴリに属する。超高親和性(強結合力)抗体医薬の創製可能性を有する。
ターゲット特異性(*)の強さ抗体医薬品は、治療標的となる特定のタンパク質を選択的に認識する力が強い。
ターゲット多様性(*)の多さ治療の対象となる標的の数は低分子医薬がもっとも多く、抗体医薬品は主に血液中に存在する標的分子や細胞表面タンパク等の特定の標的をターゲットとするものの、活性等作用面からの多様な治療戦略が構築できる。
細胞内ターゲット(*)への対応低分子医薬品以外の治療法では、技術の組み合わせによる治療法が開発されている。抗体医薬品においては細胞内侵入抗体やADC(antibody-drug conjugate:抗体薬物複合体)技術の応用により細胞内ターゲットに対して治療効果を示す方法がある。
投与経路低分子医薬品以外の医薬品は主に注射・点滴での投与が一般的である。
大量製造
製造コスト
一般的に低分子医薬品は他の医薬品と比べ、大量製造が容易でコストが低い。他の技術は製造コストの低減が課題である。
製剤化の実績バイオ医薬品の中で、抗体医薬品は、複数の大手製薬会社が販売しており、製剤化の実績がある。

<各種論文等に基づき当社で作成>(2)基盤技術の性能向上と補完技術との連携
バイオテクノロジーの進展に伴い、ペプチド創薬や核酸医薬等の新たなバイオ創薬技術が次々と出現する環境において、ADLib®システムがこれら競合技術との差別化を図りアンメットメディカルニーズ(*)にも対応した創薬を行うための対処すべき最大の課題は、「基盤技術の性能向上と補完技術との連携」と捉えております。
完全ヒトADLib®システムの開発に成功したことから、当期は今後の技術導出契約の獲得を目指した多様性の高度化を実施いたしました。さらにセレクション方法等の技術開発等に継続して取り組み、従来技術では抗体作製が困難な抗原に対してより付加価値の高い完全ヒト特異的抗体を短期間に獲得できる最先端の基盤技術プラットフォームを構築いたします。現在、神奈川県川崎市に新研究所を開設する準備を進めており、当研究所では抗体作製から薬効評価までの研究開発体制を構築し、パイプライン創出にむけた研究開発活動を加速させてまいります。また、ADLib®システムと相乗効果を持ち抗体の機能性向上等に関わる技術を保有する複数の企業との共同研究開発により、短期的に高付加価値の抗体あるいは抗体様新規物質を生み出せる関係を構築し、多くの提携先にとって必要不可欠な存在になることを目指してまいります。