有価証券報告書-第9期(令和3年6月1日-令和4年5月31日)

【提出】
2022/08/30 15:00
【資料】
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【項目】
138項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、建築分野における確認検査機関を中核として、さまざまな審査・検査・評価・認証などに必要な技術力を具えると同時に、その役務の公益性から公正さ・中立性が重視されることを認識しています。その社会的使命の認識の下で、以下に掲げる「七つの理念」を実践して、良質なすまい・建物を実現し、安全で美しい街づくりに貢献することが、当社グループ創業以来の基本方針であります。
「七つの理念」
1.消費者・事業者に公正かつ必要な情報を提供します。
2.法令・規程を遵守し、第三者性、中立性を保ちます。
3.最高水準の技術を提供して、技術の基準となります。
4.全分野のニーズを引受け、迅速なサービスに努めます。
5.全ての業務を自己執行する責任ある体制を築きます。
6.可能な限りの情報を公開し、透明な会社となります。
7.信頼され、社会的にも影響力のある会社になります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループでは、2023年5月期を初年度とする3ヶ年の中期経営計画を策定しております。この経営計画において目標とする経営指標は以下のとおりです。
≪計画最終年度(2025年5月期)における計数目標≫
売上高200億円(内、M&A効果20~30億円)
営業利益23億円
営業利益率11.5%
ROE20~30%
配当安定的配当の継続(配当性向の目安30%)

(3) 経営環境の認識と対処すべき課題
新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる国内外の経済活動の制約は、ワクチン接種の普及とともに緩和に向かい、わが国経済においても経済活動の正常化に向けた動きが活発化するものと思われます。
当社グループが属する住宅・建築業界を取り巻く事業環境につきましては、コロナ禍の影響によって大きく落ち込んだ新設住宅着工戸数に回復の動きが顕著に見られます。企業の設備投資動向についても、コロナ禍で先送りされていた設備投資の始動や脱炭素関連の投資などにけん引され、コロナ禍における停滞から回復基調へと移行することが見込まれます。一方、著しい資源高と円安が同時進行しており、企業業績や設備投資意欲への影響に関しては、今後の動向に十分留意する必要があると考えております。
そうした状況下、省エネ基準適合完全義務化を2025年度に控え、大手事業者中心に住宅・建築物の省エネ性能表示の取得の動きが加速するものと思われます。この建築基準法改正においては、同時に、これまで非常に多くの戸建住宅において適用されてきた4号特例(構造審査免除)の適用範囲を大幅に縮小することも予定されています。これらの規制改革に着実に対応する技術力こそが、当社グループの競争力の源であると認識しています。
このような状況下、一連の規制改革に関連して相応の業務量の増加が見込まれることから、当社グループでは先んじて態勢整備を進めることが必要になると考えております。中長期的な視点では、新築市場の将来的な縮小をはじめ、建設業界に求められる先端のICT技術(i-construction)への対応など、市場変化に決してひるまない姿勢で臨み、事業毎の成長戦略と経営基盤の強化により収益力を高めるとともに、補完的事業の育成のために経営資源を積極的に投入することで、当社グループの特色である公共性の高いサービスの提供を安定的に行うことができるビジネスモデルを構築することが課題であると認識しております。
当社グループは、今後の事業環境の変化に備えて対処すべきこれらの課題を踏まえ、ステークホルダーの皆様から評価される新たな価値を創造するべく、以下の戦略分野を掲げて、持続的な成長と安定的な収益の実現を目指しております。
① 既存中核事業の強化
規制改革対応によって想定される、省エネ関連業務の増加や4号特例縮小に伴う審査負担の増加に対して、確実に対応できる態勢整備を進めます。人材の拡充を図るとともに、BIMの一層の活用やリモート検査技術の開発をはじめとするDXの推進によって、業界における人材不足の課題への対応で競争力を強化します。また、主力の建築確認及び住宅性能評価は業界の再編機会を的確に捉え、M&Aによる市場シェアの拡大を目指します。
② 補完的事業の強化
グループの技術力、ブランド力を活かせる分野へ事業領域の拡大を図ります。土木インフラから環境関連の事業に至るまで、持続的な成長を目指す社会の実現のために求められるサービスの提供を一層拡大して参ります。インフラ・ストック分野の事業拡大を積極的に推進するために、公益重視の理念を共有できる企業とのM&Aの機会を積極的に模索してまいります。
③ サステナビリティの重視
当社グループの提供する役務は、住宅・建築物の安全・安心の確保から土木インフラ整備、脱炭素社会に向けた環境負荷低減の取り組みに至るまで、持続可能な社会の実現のために欠かせない社会基盤の一部であることを自覚し、それを支える人的資本への投資を重視します。女性技術者の活躍をはじめ多様な人材が活躍できる態勢整備、従業員の労働環境・健康増進に配慮した健康経営の推進に注力します。
今後も、当社の経営理念である「七つの理念」の下に、「信頼性向上」と「ERIブランドの確立」にむけた取り組みを通じて、建築・土木分野における公益重視の技術者集団として社会的使命を果たしてまいります。