有価証券報告書-第36期(2022/04/01-2023/03/31)
② 戦略
a. 気候変動関連のリスクと機会
気候変動がもたらすリスクは、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な影響(物理的リスク)に分けられます。当社の鉄道事業を対象として、気候関連のリスクと機会が組織の事業、戦略、財務計画に及ぼす影響について検討した結果は次のとおりです。
b. シナリオ群の定義
当社の鉄道事業における気候変動の影響について、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)などの専門機関が描く1.5℃、2℃と4℃のシナリオに基づき、分析を行いました。また、定性的なリスクのうち、特に影響が大きいと想定されるもの、かつ将来的な予測パラメータが入手できる一部の項目について、2050年の財務的影響増加額を試算しています。
<シナリオ分析に使用した主なシナリオ>
<各シナリオに基づく移行リスク及び物理的リスクの将来予測パラメータ※1>
※1 パラメータは、一部推計した値を使用
※2 IEA 「World Energy Outlook 2020」、「World Energy Outlook 2021」参照
※3 1.5℃シナリオは、将来予測パラメータが十分に揃っていないため、2℃シナリオのパラメータを使用
※4 A-PLAT「気候変動適応情報プラットフォーム」参照
※5 気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会「気候変動を踏まえた治水計画のあり方 提言」参照
<シナリオ分析に基づく2050年の財務的影響増加額の試算>
c. シナリオ分析の結果と今後の方針・取り組み
1.5℃及び2℃シナリオでは、炭素税の引き上げや再生可能エネルギー電力の普及によるコストの増加が見込まれる一方で、鉄道の環境優位性を保つことが出来れば、代替輸送機関からお客さまの転換が見られ、売上を増加させる機会を獲得できることが分かりました。さらに1.5℃シナリオを目指すことで、炭素税が増加するものの、全体的な排出係数が低下すれば、炭素税に係るコストが抑制されることが想定されました。
一方で、4℃シナリオでは、気候変動を原因とする自然災害の頻発・激甚化により、鉄道資産に被害が生じ、修繕のためのコストが増加するとともに、運休の発生により売上が減少することが分かりました。
移行リスクや物理的リスクを踏まえ、「JR九州グループ中期経営計画2022-2024」において、脱炭素社会の実現に向けたロードマップを策定しています。
エネルギー使用量の削減や再生可能エネルギーの導入・活用といった緩和策の積極的な実施とともに、降雨対策などの適応策も実施してまいります。

a. 気候変動関連のリスクと機会
気候変動がもたらすリスクは、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な影響(物理的リスク)に分けられます。当社の鉄道事業を対象として、気候関連のリスクと機会が組織の事業、戦略、財務計画に及ぼす影響について検討した結果は次のとおりです。
| 種類 | 評価 | リスク | 機会 | ||
| 移行 | 政策 ・ 規制 | 炭素税の引き上げ (炭素価格の上昇) | 大 | (中長期) ・エネルギー調達コスト増加 ・鉄価格上昇による材料調達コスト増加 ・調達コストの運賃への転嫁による売上減少 | (中長期) ・省エネ化、脱炭素化の早期対応によりエネルギー調達コストへの影響が軽微 |
| 炭素排出や化石燃料の使用に関する規制 | 中 | (中長期) ・規制に対応するための鉄道車両の開発・製造コストの増加 (長期) ・規制に対応出来ない場合、気動車の運行が困難 | (中長期) ・脱炭素化の早期対応により鉄道の環境優位性が維持され売上増加 | ||
| 市場 | エネルギーミックスの変化 エネルギー価格の増減 | 大 | (中長期) ・エネルギー調達コスト増加 ・エネルギー調達コストの運賃への転嫁による売上減少 | (中長期) ・太陽光発電や蓄電技術の向上に伴う再エネ事業の導入・拡大による、コスト削減、売上増加 | |
| 技術 | 次世代技術の普及 | 大 | (中長期) ・電気自動車の普及等による鉄道の環境優位性の低下による売上減少 ・環境配慮型車両等への新技術の投資の失敗 (長期) ・自動車等の自動運転技術の普及による、鉄道の優位性が損なわれ売上減少 | (短中期) ・鉄道の自動運転技術の普及によるコスト削減 (中長期) ・気象予報の高度化に伴う、効率的な点検業務によるコスト削減 ・MaaSの広がりにより公共交通機関が積極利用され売上増加 (長期) ・次世代車両の導入によるメンテナンスコストの削減と、環境優位性の高まりによる売上増加 | |
| 評判 | お客さまの嗜好の変化 | 大 | (短中期) ・鉄道の環境優位性が低下した場合、お客さまの環境意識の高まりによる代替輸送機関へのシフトが進み売上減少 | (短中期) ・鉄道の環境優位性を維持した場合、お客さまの環境意識の高まりによる鉄道利用へのシフトが進み売上増加 | |
| 投資家の評判変化 | 小 | (短中期) ・環境対策に積極的でないと評価された場合、投資家の評価の低下 | (短中期) ・低炭素・環境配慮型の事業への移行によるESG投資の呼び込み | ||
| 物理 | 急性 | 自然災害の頻発・激甚化 | 大 | (短期) ・降雨・強風の増大及び長期化に伴う災害復旧コストの増加と運休の発生による売上減少 (短中期) ・サプライチェーンの分断による事業継続への影響 ・災害リスクが高い地域の資産価値の低下 | (中長期) ・災害に強い(レジリエント)鉄道事業の運営による災害復旧コストの削減、売上増加 |
| 慢性 | 平均気温の上昇 | 大 | (短期) ・冷房コスト増加 ・熱中症対策によるコスト増加 ・電気機器等の鉄道資産の故障や線路座屈の発生によるコスト増加 (短中期) ・外出手控えによる売上減少 | ⁻ | |
b. シナリオ群の定義
当社の鉄道事業における気候変動の影響について、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)などの専門機関が描く1.5℃、2℃と4℃のシナリオに基づき、分析を行いました。また、定性的なリスクのうち、特に影響が大きいと想定されるもの、かつ将来的な予測パラメータが入手できる一部の項目について、2050年の財務的影響増加額を試算しています。
<シナリオ分析に使用した主なシナリオ>
| 主に移行リスクを分析するために使用 | IEA:NZE、SDS、STEPS、DRS |
| 主に物理的リスクを分析するために使用 | IPCC:RCP1.9、RCP2.6、RCP8.5 |
<各シナリオに基づく移行リスク及び物理的リスクの将来予測パラメータ※1>
| リスク項目 | パラメータ 項目 | 単位 | 将来予測パラメータ(2050年) | ||||
| 現状 | 4℃ | 2℃ | 1.5℃ | ||||
| 移行 | 炭素税の 引き上げ | 排出係数※2 | g-CO2/kWh | 463 | 282 | 67 | -5 |
| 炭素価格※2 | $/t-CO2 | - | - | 160 | 250 | ||
| 物理的 | 自然災害の 頻発・激甚化※3 | 斜面崩壊 発生確率※4 | % | 10 | 12 | 12 | |
| 洪水発生 頻度※5 | 倍 | 1 | 4 | 2 | |||
※1 パラメータは、一部推計した値を使用
※2 IEA 「World Energy Outlook 2020」、「World Energy Outlook 2021」参照
※3 1.5℃シナリオは、将来予測パラメータが十分に揃っていないため、2℃シナリオのパラメータを使用
※4 A-PLAT「気候変動適応情報プラットフォーム」参照
※5 気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会「気候変動を踏まえた治水計画のあり方 提言」参照
<シナリオ分析に基づく2050年の財務的影響増加額の試算>
| リスク項目 | 想定内容 | 財務影響増加額(億円/年) | |||
| 4℃ | 2℃ | 1.5℃ | |||
| 移行 | 炭素税の 引き上げ | 排出係数の減少を踏まえ、炭素税導入に伴うコストを想定 | - | +約15 | +約10 |
| 物理的 | 自然災害の 頻発・激甚化 | 自然災害の増加に伴う設備被害増額を想定 | +約150 | +約75 | |
c. シナリオ分析の結果と今後の方針・取り組み
1.5℃及び2℃シナリオでは、炭素税の引き上げや再生可能エネルギー電力の普及によるコストの増加が見込まれる一方で、鉄道の環境優位性を保つことが出来れば、代替輸送機関からお客さまの転換が見られ、売上を増加させる機会を獲得できることが分かりました。さらに1.5℃シナリオを目指すことで、炭素税が増加するものの、全体的な排出係数が低下すれば、炭素税に係るコストが抑制されることが想定されました。
一方で、4℃シナリオでは、気候変動を原因とする自然災害の頻発・激甚化により、鉄道資産に被害が生じ、修繕のためのコストが増加するとともに、運休の発生により売上が減少することが分かりました。
移行リスクや物理的リスクを踏まえ、「JR九州グループ中期経営計画2022-2024」において、脱炭素社会の実現に向けたロードマップを策定しています。
エネルギー使用量の削減や再生可能エネルギーの導入・活用といった緩和策の積極的な実施とともに、降雨対策などの適応策も実施してまいります。
