有価証券報告書-第39期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針及び経営環境
当社グループは、経営理念として「わたしたちの夢」、「使命」、「おこない」を掲げるとともに、経営理念から導出したJR九州グループが常に考えるべきことであるマテリアリティを設定しております。
(経営理念)
わたしたちの夢:「九州の元気を、世界へ」
魅力あふれるまちづくりを通じて、九州をもっとにぎやかに、もっとおもしろく。
九州に住む人、九州を訪れる人、そしてJR九州グループをご利用の世界中の人を元気に
していきます。
使命:「安全を最優先し、お客さま視点で考え、安心で快適な毎日と “わくわく”するときをつくる。」
おこない:「誠実」 常に誠実さを貫き、自分に、そして社会に誇れる仕事をする。
「共創」 人や地域、多様な仲間と未来につながる価値を共創する。
「挑戦」 柔軟な発想を持ち、成長のための挑戦を続ける。
(マテリアリティ)
①事業
「最大の使命である安全の創造とお客さま満足の追求」
・私たちが営むあらゆる事業は、安全であるというお客さまからの信頼の上に成り立っています
・変化する世界の中でも、安心で快適な毎日をつくり出すため、誠実に手間を惜しまず安全を最優先し、お客さまにとって価値のある商品やサービスを提供します
「モビリティサービス を軸に総合力を活かした地域との共創によるまちづくり」
・モビリティサービスを軸に多様な商品やサービス、そこから生まれる“わくわく”の提供を通じて、まちとまち、まちと人、人と人をつないでいきます
・地域のことを深く理解し、JR九州グループに関わるすべての人と手を取り合いながら、持続可能で魅力
あふれる、「住みたい・働きたい・訪れたい」まちづくりを推進します
②基盤
「価値創造の源泉である人づくり」
・社員の誰もがやりがいを持ち、いきいきと活躍できる会社をつくるとともに、人間力・実務力を持っ
た人材を育成します
・多様な価値観や能力を活かし、社員の“個”の力の最大化を図ります
「健全な企業運営」
・情報を適切に管理・共有するとともに、法令の遵守を徹底します
・持続的な成長のための適切なリスクテイクを実現するガバナンス体制のあり方を常に検討します
・ステークホルダーとの対話を充実させ、適切に企業活動に活かしていきます
「環境と調和した事業展開」
・環境優位性を有する鉄道輸送の提供により脱炭素社会の実現に貢献します
・効率的な資源利用による資源循環や生物多様性保全の取組みを推進します
・ビジネス機会でもある環境課題の解決を通じて、持続可能な社会の形成に貢献します
(経営環境)
グローバルな社会・経済情勢の変化が、当社グループを取り巻く経営環境に加速度的な変容を及ぼしている現況を的確に捉え、俯瞰的に将来の変化を見据えた経営を行うことが肝要と認識しております。
特に、国内における物価高騰や労働人口の減少、働き手の価値観の変容を踏まえた待遇改善の必要性については、注視が必要な変化と捉えております。また、諸外国の政策動向や金融資本市場の変動等の影響に鑑みると、今後の経済の先行きには注意する必要があるものと考えられます。
(2)対処すべき課題
2026年3月期よりスタートした「JR九州グループ中期経営計画2025-2027」では、コロナ禍からの成長軌道への復帰を果たした前中期経営計画と当社グループ内外の環境変化を踏まえて、長期的な目線で当社グループが持続的な成長を遂げていくことに主眼を置いた戦略の実行が必要との認識のもと、3つの重点戦略である「サステナブルなモビリティサービスの実現」、「事業間連携の強化によるまちづくり」、「未来への種まき」を推進するとともに、「労働市場の変化を踏まえた人的資本拡充」、「環境課題への統合的なアプローチ」、「DX活用範囲の拡大と深堀り」、「グループガバナンス強化・適切なリスクテイクを可能にするガバナンス体制構築」からなる経営基盤強化の取り組みを進めてまいります。
1.サステナブルなモビリティサービスの実現
昨年4月、消費税の引き上げによるものを除き、29年ぶりに実施した運賃改定は、鉄道事業にとって大きな転換点であったと認識しております。デフレからインフレへ環境が変化する中、運賃改定により物価高騰や人材確保に向けた待遇改善等のコスト上昇に対して、より適切な対応が可能になったと考えています。運賃改定を契機として、安全やお客さま満足の更なる向上をはじめ、各種取り組みをさらに強力に推進することで、重点戦略の1つであるサステナブルなモビリティサービスの実現を達成し、グループ全体の持続的な成長につなげてまいります。
また、新たに策定した「安全中期計画2026-2028」を柱として、車両データ分析等の新技術を実装し、安全性のさらなる高度化を図ってまいります。さらに、「お客さま満足向上戦略(2025~2027)」を深度化させ、モバイルIC導入や「QRチケレス」の拡充で利便性を高めるとともに、新たな車両の製造や既存D&S列車の刷新を検討するなど、お客さまへご提供する旅の魅力向上に努めます。あわせて自動運転区間の拡大や公衆回線を使用した無線式列車制御の導入準備を進め、強固で効率的な運営体制の早期構築を目指してまいります。
2.事業間連携の強化によるまちづくり
駅を中心としたまちづくりを核に、各事業の成長に加え、事業間連携を強化し、グループの総合力の最大化を進めてまいります。事業間連携強化のポイントとなるのが、お客さま接点の強化です。当社グループが提供する各種サービス会員の新規獲得等、これまで推進してきたJRキューポの取り組みを強化し、お客さまに寄り添った行動の提案や、特典の付与等による複数サービスの利用促進を通じて、お客さま単価・ご利用頻度の増加につなげてまいります。
また、福岡都市圏や豊肥本線沿線における大規模な開発プロジェクトを着実に進め、沿線全体の価値向上を牽引するとともに、インフレによる建設コスト増大が進む中、更なる収益拡大策として、駅ビルや商業施設などの既存アセットのリニューアル(バリューアップ)に取り組みます。
3.未来への種まき
未来への種まきとして、引き続き、適切なリスクテイクを通じた新たな事業機会の創出とレジリエンスの更なる強化に積極的に取り組んでまいります。新たな事業機会の創出について、外部環境の変化に対応し、不透明な将来においても当社グループの競争力を維持するためには、新規事業への挑戦が不可欠だと認識しています。新たな収益源の確保と既存事業の変革・活性化を目指し、本中期経営計画期間においては、ベンチャーキャピタルへの出資等を通じたスタートアップとの協業等を加速してまいります。本年4月には既存事業の枠を超えた視点で新規事業創出を行うため、フロンティア創造部を立ち上げました。レジリエンスの強化について、資本効率性の向上を意識しつつ、人流依存の事業ポートフォリオの改善、お客さまとの接点の強化・拡大など、当社グループの強みが活かせる事業への投資を行ってまいります。
4.労働市場の変化を踏まえた人的資本拡充
本中期経営計画期間では、昨今の激しく変化する労働市場に鑑み、長期的に事業を継続し、成長させていくという観点から待遇や働きやすさを改善するための投資を拡充していきます。加えて、マテリアリティや事業戦略と連動して各種研修を拡充するなど、持続的な成長を支える人材の育成を推進いたします。
また、従業員意識調査の結果を反映させた人材戦略を推進し、DE&Iの促進や自発的に学ぶ社員への支援等を通じて、「明るく楽しい会社づくり」を推進し、経営基盤を強化してまいります。
5.環境課題への統合的なアプローチ
昨年2月に「JR九州グループ環境ビジョン2050」を策定し、従前より取り組んできた気候変動に加え、資源循環や生物多様性も含めた統合的なアプローチを行うことで、自然と共生した未来を目指しています。2050年カーボンニュートラルに向けては2035年度における野心的な目標として、2023年度比でグループ全体のGHG排出量60%削減を掲げており、省エネ型車両への更新やバイオ燃料の実証試験に加え、PPA(電力購入契約)を活用した再生可能エネルギーの調達を拡大していくなど、それぞれの領域において長期的に企業価値の向上に資する取り組みを意欲的に推進してまいります。
6.DX活用範囲の拡大と深堀り
「JR九州グループDX戦略」に基づき、「デジタルの力で、まちを、お客さまを、社員を、元気に」を旗印に各種取り組みを推進するとともに、生成AIやAIエージェントの積極活用により、オペレーションの変革と生産性向上を図ります。また、並行してこれらを支えるセキュリティ基盤の強化にも積極的に取り組んでまいります。
7.グループガバナンス強化・適切なリスクテイクを可能にするガバナンス体制構築
(1)グループガバナンス強化
2024年度、連結子会社であるJR九州高速船株式会社において安全確保に関わる重大な問題が発生したことを受け、当社は、再発防止策の策定とグループガバナンス強化に注力してまいりました。また、昨年4月よりグループ会社に常勤監査役を配置することを基本とし、監査体制を強化するとともに、グループ会社の非常勤取締役が各社の現地視察や社員との意見交換を実施する等を通じて、業務の実態把握を強化する取り組みを推進しております。また、これらの実施状況を半期に一度、当社の取締役会に報告することにより、グループガバナンスの更なる強化を進めてまいりました。
しかしながら、昨年、連結子会社においてアルコール検査未実施の事象が発生するとともに、点呼業務を適切に実施していなかった事案も判明しました。これらの事象を受け、当社では、全グループ会社における自動車運転時のアルコール検査の実施状況を確認するとともに、アルコール検査の厳格化を図っております。また、2026年度以降、当社のグループ会社の子会社に対しても当社から監査役を派遣するなど、グループ全体の監査体制の更なる強化を進める方針です。
更に、グループ会社における安全等のリスク管理の全体総括等を目的として、本年4月、当社にリスクマネジメント推進室等を新設し、グループ会社の安全等のリスク管理をより一層強化してまいります。
今後も、これらの対策を継続し、その実施状況を適切にトレースすることで、グループガバナンスを強化するとともに、当社グループにおける安全意識の向上及び安全管理体制の再構築を進め、グループ全体で安全を最優先とした事業運営を行ってまいります。
(2)適切なリスクテイクを可能にするガバナンス体制構築
持続的な企業価値の向上に向けて、引き続き、取締役会の独立した社外取締役の比率を原則過半数とするとともに、業績・企業価値の向上に対する動機付けをより強くする方向で役員報酬の見直しを行う等の仕組みを継続・強化していくことで、適切なリスクテイクを可能にするガバナンス体制構築をより一層促進してまいります。