有価証券報告書-第34期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
有報資料
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針及び経営環境
当社グループは、「安全とサービスを基盤として九州、日本、そしてアジアの元気をつくる企業グループ」を「あるべき姿」として掲げています。そして、今後の人口減少の進展や自然災害の激甚化、技術革新や新たなビジネスモデルの発生等、非連続な将来の経営環境の変化が予想される中で「あるべき姿」を実現するため、「安全・安心なモビリティサービスを軸に地域の特性を活かしたまちづくりを通じて九州の持続的な発展に貢献する」という「2030年長期ビジョン」を掲げています。
当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症により大幅に変化していますが、この「2030年長期ビジョン」のもと、九州のモビリティサービスを担う企業グループとして社会的な役割を担うべく、定時・大量輸送の強みを活かして鉄道を磨きながら、お客さまの利便性を高めるため、新たな技術の取り込みや他社との連携等を図り、持続可能なモビリティサービスの構築に挑戦してまいります。また、これまで博多や大分等で取り組んだ地域の特性を活かしたまちづくりを通じて、当社グループの事業エリアの中心である九州の持続的な発展に貢献してまいります。

(2)対処すべき課題
2020年3月期よりスタートした3ヵ年の「JR九州グループ中期経営計画2019-2021~次の『成長ステージ』に向けて~」にて、経営数値目標を掲げていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響による当社グループを取り巻く経営環境の大幅な変化を受けて、2020年11月に経営数値目標を取り下げました。
当中期経営計画において3つの重点取り組みとして掲げている「更なる経営基盤強化」「主力事業の更なる収益力強化」「新たな領域における成長と進化」は、状況を踏まえ、必要な修正を行いながら継続してまいります。また、すべての事業の基盤となる「ESG」「安全とサービス」「人づくり」への取り組みにも引き続き注力してまいります。
1.更なる経営基盤強化
当社グループは、ガバナンス強化及び効率的なセグメント経営を通じて、更なる経営基盤強化を図ってまいります。
ガバナンス強化については、2019年6月より業績連動型株式報酬制度を導入したほか、社外取締役を2名増員した結果、取締役会は社外取締役が過半数を占めております。今後も、社外取締役が委員長を務める「指名・報酬諮問委員会」を通じて、役員の指名・報酬等に関する手続の客観性・透明性の向上を図ってまいります。
効率的なセグメント経営については、2019年4月に設置した駅ビル事業中間持株会社を通じて、スケールメリットを最大限に活かし、競争力強化を図ってまいります。また、M&A等を活用して、事業ポートフォリオの戦略的な見直しや構築に引き続き努めてまいります。
2.主力事業の更なる収益力強化
①収支改善による持続的な鉄道サービスの構築
鉄道事業では、新型コロナウイルス感染症に伴う移動需要の減少の影響を強く受けております。そのような中、感染防止対策を踏まえたうえで、安全とサービスを基盤としつつ、固定費の高い鉄道事業の収支改善の取り組みを、需要の変化に応じたサービスレベルの再定義も含めて、加速してまいります。
新幹線については、引き続きイールドマネジメントを強化するとともに、EXサービス(東海道・山陽新幹線のネット予約&チケットレス乗車サービス)の九州新幹線へのサービスエリア延伸を通じて、お客さまの更なる利便性向上を図ってまいります。また、新幹線荷物輸送の事業化を進め、新たな収益機会の獲得を目指してまいります。
近距離については、宮崎駅西口開発、熊本駅周辺開発等との連携を図りながら、移動需要の創出を図ってまいります。
また、「36ぷらす3」を始めとしたD&S列車の運行を通じて、九州の新たな観光資源を発掘、新たな鉄道の旅の価値を、新型コロナウイルス感染症収束後の旅行需要を踏まえて、積極的に創出してまいります。
生産性向上については、長期化する新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて、需要に応じた柔軟なダイヤ設定を軸に、駅体制見直しや設備のスリム化等の施策を推進してまいります。同時に、新技術の活用による効率化や省人化を機会と捉え、将来に向けた生産性の向上について引き続き推進してまいります。
そして、2022年秋頃に開業を予定する西九州新幹線の開業準備を着実に進めてまいります。
②拠点地域の戦略的まちづくり
福岡都市圏における積極的な事業展開にあたり、特に九州・アジアの玄関口である博多を中心に、様々な手法による不動産の取得・開発を推進してまいります。
具体的には、福岡市内の「福岡東総合庁舎敷地有効活用事業」、「簀子小学校跡地活用事業」の2件の公募案件を獲得しました。このうち「福岡東総合庁舎敷地有効活用事業」については、福岡市の提唱する「博多コネクティッド」エリア内に位置しており、当該事業をはじめとして、ハード・ソフト両面から博多駅周辺の都市機能向上に寄与してまいります。
また、駅を拠点としたまちの価値向上を図るべく、宮崎駅西口開発及び熊本駅周辺開発によるにぎわいの創出に取り組んでまいります。そして、現中期経営計画以降に控える長崎駅周辺開発、鹿児島中央駅西口開発の計画の着実な実行や博多駅空中都市構想の基本計画策定等に取り組んでまいります。
なお、新型コロナウイルス感染症によるお客さまの移動需要の減少により大きな影響を受けているホテル業を中心に、固定費の大幅な削減に加えて新しい生活様式に対応した商品の拡充や運営力の強化を図ってまいります。
3.新たな領域における成長と進化
当社グループは、長期的な技術革新の潮流をとらえ、事業の持続的な成長と更なる飛躍を目指してまいります。
新たなモビリティサービス(MaaS)については、他の交通事業者等との連携を進めております。今後も連携先とスマートフォンアプリを活用した実証実験を重ねる等、シームレスで利便性の高い、将来の持続可能なモビリティサービスの実現に向けて、引き続き取り組んでまいります。
鉄道の自動運転については、今後労働人口が減少していく中で必要な人材を確保していくため、将来的には運転士以外の係員が前頭に乗務する自動運転(GOA2.5)の実現を目指しています。2020年12月より営業列車にて運転士を乗務させた形で実証運転を開始しており、今後も様々な検証や国との協議を重ねてまいります。
不動産開発事業においては、EC市場の成長等を背景に、物流施設へのニーズが高まっている状況であることから、物流賃貸業への参入を検討します。また、循環型投資モデルによる不動産開発事業の持続的成長基盤の整備やアセットマネジメント事業への参画による収益機会の拡大等を目的として、私募REIT運用開始に向けた取り組みも推進してまいります。
さらに、地域課題への取り組みとして、地域特化型ファンドを設立し九州に基盤を置く中小企業、地域に根差した商品やサービスを提供する企業等を対象に出資を行い、後継者不足やコロナ禍による影響を受けている地元企業等との連携を強化してまいります。
4.ESG
当社グループは、事業を通じて地域社会へ貢献する企業グループであり続けるために、環境・社会・ガバナンスの各分野における取り組みを強化・推進してまいります。
2019年には、「ESG戦略委員会」を設立しました。当社グループの強みを活かして提供すべき価値や、そのために優先的に取り組むテーマ(マテリアリティ)について、議論を深め、統合報告書等を通じてステークホルダーの皆さまへの開示内容の充実を図ってまいります。
また、2021年2月には、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明するとともにTCFDに沿った気候関連情報を開示しました。当社グループは、気候変動問題をESG重要課題(マテリアリティ)の一つと位置付け、気候変動問題への対応を進めるために、2050年 CO₂排出量実質ゼロに向けた中間目標の設定や具体的な施策を検討しロードマップを策定してまいります。
5.安全とサービス
①安全
当社グループにとって「安全」が最大の使命であり、企業価値の源泉であります。
新型コロナウイルス感染症に対しては、お客さまと社員の健康維持を第一に考え、感染防止対策を徹底してまいります。
鉄道事業においては、「安全中期計画(2020-2022)」に基づき、“「ゆるぎなき安全」をつくる”をスローガンに施策を展開してまいります。鉄道運転事故等の未然防止、防災対策、車両・設備の故障防止、社員の研修・教育等について、継続して実行してまいります。また、IoT、画像認識等の新技術の導入によるCBM(Condition Based Maintenance)等の設備管理手法の革新や、スマートデバイスの活用によるヒューマンエラー防止に取り組んでまいります。
サイバーセキュリティ強化についても重要な課題であると考えております。当社グループのWebサイトにおける個人情報流出等への対策の徹底やインシデント対応体制の強化に加え、情報セキュリティ基盤の強化及びデジタル人材・組織の強化を通じて、当社グループにおけるITガバナンス向上に取り組んでまいります。
②サービス
当社グループは、時代や環境の変化にあわせて多様化するニーズやご期待に応えるサービスを提供し、お客さまに選ばれ続ける企業グループを目指します。お客さまや社員の声を商品や施策に積極的に反映するとともに、実践的な教育・研修や資格取得を通じて社員のスキル向上を図ります。
また、新型コロナウイルス感染症に対しては、感染防止対策を適切に施したうえで、新しい生活様式に応じたサービスを提供してまいります。
6.人づくり
当社グループは、社員が“幸せ”を感じ、“いきいき”と活躍できる環境をつくり、当社グループが持続的に発展していくための基盤となる人づくりを推進してまいります。
社員の働きやすさの追求及び働きがいの創出のため、デジタル技術の活用等を通じた社員の生産性向上や長時間労働抑制を図るとともに、効率的かつ機動的な運営体制の構築を進めてまいります。また、健康経営やダイバーシティの推進について、グループ会社を含めた取り組みを充実させてまいります。