有価証券報告書-第24期(令和1年10月1日-令和2年9月30日)

【提出】
2020/12/24 15:48
【資料】
PDFをみる
【項目】
113項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
一般的な業務効率化を目的としたシステムは、手軽でリスクが少ない方法として汎用パッケージシステムをクラウド上で利用する形態に進んでいきます。一方、個々の企業における「競争力の源泉の一つ」である独自の経営ノウハウ、独自の技術、独自の文化(生産方法や営業手法、経営管理方法、顧客サービス手法等)をシステムとして組上げ、最新技術を咀嚼しながらシステムを構築し運用していくことは簡単ではありません。当社は、顧客企業の「競争力の源泉の一つ」となる顧客独自の情報システム構築を実現すること、そして、その道がたとえ困難であっても一歩踏み出す勇気を持つこと、をポリシーとし、以下の経営理念として定めております。
「勇者たらんと。」 小さな僕等が持ち得るものは、一人一人の知恵と勇気と諦めない強い心だけだ。
どんな時でも、「その一歩」が踏み出せるように。
勇者たらんと。
(2)目標とする経営指標
当社は、主力事業であるセキュアクラウドシステム事業を継続的に成長させ、エモーショナルシステム事業の収益力を確立することにより、持続的な企業価値の向上を目指しているため、「売上高」、「営業利益」を重要な経営指標としております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社は2020年9月期を1年目とする「小さいが強い企業」への3年間の成長プロセスの初年度を上方修正で完遂した結果を踏まえ、「小さいが強い企業」を目指す方針は変えず、新たに2021年9月期を1年目とする3年間を新たな成長プロセスと位置付け直しております。当社は事業のコアである仮想化技術をベースとしつつ、顧客企業に差し迫っているリアルなニーズ(障害からの回復性、強靭性の確保:必須のレジリエンス、生産性の高い強力なテレワークの実現、2025年の崖対策、デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応等)に対応した高品質なIT技術を提供することで、主力事業であるセキュアクラウドシステム事業の継続的な成長を目指しております。また、エモーショナルシステム事業においては、「体験共有型VRシアター」である4DOHを市場に広めるため、販売パートナーの確保及び育成を行うとともに、販売力の強化を推進し、2つの事業が、中期的には収益面でお互いに補完しあうことで安定的な収益構造を構築してまいります。
(4)経営環境及び優先的に対処すべき課題
わが国経済全般の見通しは、2020年9月24日付内閣府月例経済報告において「先行きについては、感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動のレベルを引き上げていくなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待される。但し、国内外の感染症の動向や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある」という先行き予想が出されています。
当社の属する情報通信業界は、AI、IoTなどのデジタル技術の進展による企業のデジタルトランスフォーメーションに向けた動きが拡大を続けており、デジタルトランスフォーメーションの前提となる企業の基幹システムのクラウド化は一層重要さを増しています。2020年9月の日銀短観においても、ソフトウエア投資額の計画値が全産業平均で前年度比6.4%増加しており、企業におけるソフトウエア投資意欲は今後高まっていくと想定されます。
企業を取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行(パンデミック)による経済活動の減速、年々頻度を増す地震・風水害などの自然災害による生産設備やサプライチェーンへのダメージ、サイバー攻撃やコンピュータシステムの障害による重要ITインフラの停止など、短期間にいくつもの大きな変化が生じる状況に、継続的に直面する新たな時代を迎えつつあります。そのため、企業が想定外の危機的事象に見舞われた際にも顧客への重要サービスの提供を継続あるいは速やかに再開する能力や、市場環境の急速な変化にすばやく対応する能力といった、回復力と強靭性すなわち「レジリエンス」が、規模・業種を問わずあらゆる企業にとって今後ますます重要になると想定されます。「レジリエンス」の課題を解決するためにクラウドの活用を検討する企業は既に増加の兆しがあり、そのような企業に選ばれるクラウドは、単に柔軟性に富むだけではなく、障害に対する優れた耐性、高い回復力を備えることが条件になることは必然です。
また、経済産業省が「2025年の崖」と表現して警告している問題も全産業の企業にとって喫緊の課題となっています。「2025年の崖」とは、2018年9月に経済産業省が発表したDXレポートにおいて警告されている「複雑化・ブラックボックス化した古い情報システムを放置すると、2025年以降、企業に甚大な経済損失を生じさせる可能性がある」というものです。
このような環境下において、当社は、主力のセキュアクラウドシステム事業においては、今後の市場環境や技術革新に対して積極的にキャッチアップし、継続的な成長を目指すとともに、新分野開拓を戦略としたエモーショナルシステム事業の推進により、中長期的には両事業が収益面でお互いに補完しあいながら安定的な収益構造を構築すべく、対処すべき課題として以下の施策に取り組んでまいります。
①新コンセプト「必須のレジリエンス」推進
テレワークやワーケーションに象徴される働き方改革の進展は、派生する様々な業務のデジタル化を推し進め、場所や時間に囚われず業務システムを操作可能にするシステム構築の需要拡大は、当社の代名詞であるシステム仮想化技術を大いに生かせる時代の到来と言えます。
しかし一方で、データが多くの機器に連動するデジタル化への依存度の高まりとともに、システムを構成するネットワークやデータベースあるいはサーバー類の障害等により、一部でもシステムが停止した場合には、想像以上に甚大な業務への影響を生じ、ひいては社会問題にまで発展しかねません。マルウエア感染や人為的ミスなどによるデータの棄損や改竄に対して100%防御することは不可能であり、インシデントの発生都度、多くの労力を使い緊急対処せざるを得ない現実があります。
今、ここから考えなければならないことは、前向きなデジタル化の推進と同時に、障害発生時に極力短時間でシステムを回復する「レジリエンス」の重要性を意識したシステムを構成することです。つまり、止まらない前提のシステムではなく、万が一止まっても速やかに回復できるシステムであり、回復のための選択肢を準備しておくことが必須です。これこそ事業の強靭化であり、その実現には、システム設計の熟慮とともに人的な運用体制まで含めた、高度なノウハウが必要となります。当社は独立系システム構築会社として様々なシステム障害対応の経験によってそのノウハウを蓄積し、メーカー問わず優れた製品やサービスをいち早く検証し、組み合わせることでレジリエンスを更に発展させることができます。
回復力と強靭化を意味する「レジリエンス」の重要性をすべての企業、自治体に向けて発信し、従来の「基幹システムをクラウド化する」という事業の拡大に、「必須のレジリエンス」という新たなコンセプトを加え、セキュアクラウドシステム事業を発展させていきます。
「レジリエンス」は、2025年の崖を乗り越え、様々なDXを外連味なく実行可能にし、持続可能な企業成長を促すことになり、SDGsに対しても必須のキーワードとなります。
②優良顧客の獲得のための営業力の強化
顧客のビジネス進展に応じて、システムに関する様々なご相談を当社に継続して行っていただけるロイヤルカスタマーの数を増加させることが、当社の安定的成長に欠かせない経営課題であるため、九州地場顧客のみならず、関東圏でのロイヤルカスタマー増加に対する営業力の強化に努めていきます。
③ストック型売上の拡大
当社は、クラウド基盤構築の受託業務を主体する会社であり、それらはフロー型の売上となりますが、保守などのストック型売上についても拡大を図っていきます。当社が構築したシステムの保守だけでなく、他社が構築したシステムについても当社が保守サービスを提供できるよう、他社構築システムのアセスメントと保守提供の体制を整備していきます。また、サブスクリプション型(月額料徴収型)のソフトウエア、クラウドサービスを組み合わせたハイブリッドクラウドシステムの構築・販売を推進することで、ストック売上高の拡大に努めていきます。
④4DOHの新分野への展開
エモーショナルシステム事業は、営業損益において赤字が継続している状態であることから、早期の黒字化を目標としています。その実現のため、従来の3DCGによるエンタメ系施設への導入だけではなく、3D実写映像と3DCGを組み合わせて実現する各種シミュレーション分野への展開(防災施設、インフラ系企業の住民コミュニケーションツール、科学館、博物館、観光施設、製造業の工場見学ルート、スポーツ施設、教育施設、医療介護施設等)、あるいは海外展開も含めた、分野別の販売代理店の確保及び育成に努めていきます。
⑤優秀な人材の確保
当社は、企業や自治体システムのクラウド化を中心として行っているセキュアクラウドシステム事業の伸びにより成長を続けており、今後の継続した業績拡大のためには、たゆまぬ生産性の向上とともに、優秀な技術者と営業担当者の増員が不可欠です。引き続き積極的な人材獲得活動を行い、当社で育成していく方針として、優秀な人材の確保に努めていきます。