有価証券報告書-第28期(令和2年7月1日-令和3年6月30日)
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」ことを経営理念に掲げ、各種産業分野の技術発展に寄与し、創薬や再生医療をはじめとした先端技術の研究及び実用化の促進に役立つことにより、「科学技術イノベーションの創出に貢献する製品開発を推進する」ことを経営方針に定め、『オプティカル事業』及び『ライフサイエンス・機器開発事業』を推進しております。
(2) 経営環境等
当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、経済・社会活動の制限が続き、個人消費や企業活動が大きく収縮するなど厳しい状況となりました。ワクチンの普及により今後の経済正常化は期待されるものの、依然として先行きが不透明な状況となっております。世界に目を向けても同様の状況であり、ワクチンの接種状況により感染症の影響が落ち着いている地域と、引き続き予断を許さない状況が続いている地域に分かれる状況となっております。
オプティカル事業においては、国内では新型コロナウイルスの変異株の猛威による感染拡大が続いておりますが、世界の放射光施設では、特に欧米各国でコロナ禍により遅れていた投資計画が進み、コロナウイルスの基礎研究や治療薬などの研究開発が積極的に行われるなど、研究活動が復調してきております。
例えば、2021年6月3日にPR情報にて開示しました、米国シカゴのアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory:ANL)にある、世界有数の大型放射光施設APS(Advanced Photon Source)から、第4世代へのアップグレードに伴う新設ビームラインの各種超高精度ミラーの一括受注がありました。加えて、フランスのESRF(European Synchrotron Radiation Facility)、カリフォルニア大学のローレンスバークレー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory:LBNL)のALS(Advanced Light Source)のみならず、ドイツ、イギリス、スイス、イタリアなど欧州各地にて第4世代へのアップグレードの計画が明らかになり、受注活動が活発になってまいりました。
さらに、中国においても同様であり、北京では世界最大のビームライン数を有する第4世代の大型放射光施設の建設、上海では2施設目となるX線自由電子レーザー施設の建設が始まっており、中国全土で10か所以上ある放射光施設やX線自由電子レーザー施設からの受注及び引合いが活発になってまいりました。
国内においても、大型放射光施設SPring-8や自由電子レーザー施設SACLAだけでなく、2023年完成予定の東北放射光施設(SLiT-J)からの引合いも増え、受注も順調に推移しております。
このように、当社ミラーの市場はコロナ前の状況に戻りつつあるため、勝機を逃がさずに特に当社の得意とする超高精度ミラーや次世代(第4世代)向けミラーの新製品を中心に売上増加に注力し、放射光施設向けのみならず、半導体及び宇宙分野などの市場に積極的に参入してまいります。
また、ライフサイエンス・機器開発事業においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が続く中、コロナ治療薬の探索のために、自動細胞培養装置のカスタム製品や簡易型自動細胞培養装置「MakCell®」のような汎用製品等の引合いが増えてきております。また水晶振動子ウエハ加工システムの開発に成功し、パイロットユーザーに納品しました。今後は国内外の水晶振動子メ―カー等を中心に本格販売を行ってまいります。
また、子会社化しました電子科学株式会社の主力製品である昇温脱離分析装置(TDS)においては、現在の半導体や液晶業界向けのみならず、鉄鋼、電機、自動車、水晶振動子等の様々な産業分野にも市場拡大が見込まれるため、営業力を強化し新規顧客開拓に注力してまいります。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 事業活動に関わる課題
(オプティカル事業)
世界の放射光施設及びⅩ線自由電子レーザー施設は、各国の多様な地域発研究開発・実証拠点(リサーチコンプレックス)において現在もコアな機関として位置づけられ、イノベーションを強力に推進しております。しかしながら、約1年半に及ぶコロナ禍の影響により、世界の放射光施設の研究者は、研究意欲はあるものの、特に欧米各国の放射光施設での計画が遅れたことにより研究自体の遅れも散見されましたが、最近では計画も進み、コロナの基礎研究や治療薬などの研究開発も積極的に行われるなど研究活動が復調してきております。
例えば、2021年6月3日に情報開示しました、米国シカゴのアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory:ANL)にある、世界有数の大型放射光施設APS(Advanced Photon Source)から、第4世代へのアップグレードに伴う新設ビームラインの各種超高精度ミラーの一括受注がありました。加えて、フランスのESRF(European Synchrotron Radiation Facility)、カリフォルニア大学のローレンスバークレー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory:LBNL)のALS(Advanced Light Source)のみならず、ドイツ、イギリス、スイス、イタリアなど欧州各地にて第4世代へのアップグレードの計画が明らかになり、受注活動が活発になってまいりました。
さらに、中国においても同様であり、北京では世界最大のビームライン数を有する第4世代の大型放射光施設の建設、上海では2施設目となるX線自由電子レーザー施設の建設が始まっており、中国全土で10か所以上ある放射光施設やX線自由電子レーザー施設からの受注及び引合いが活発になってまいりました。
国内においても、大型放射光施設SPring-8や自由電子レーザー施設SACLAだけでなく、2023年完成予定の東北放射光施設(SLiT-J)からの引合いも増え、受注も順調に推移しております。
当社は、このように世界規模で拡大している放射光施設及びX線自由電子レーザー施設向けの高精度X線ミラーの需要に応えるため、生産施設の増強、生産工程の効率化を図り、更なる高精度化を進めていくことが、引続き重要課題であると認識しております。
このため、独自のEEMナノ加工装置やRADSI及びMSIナノ計測装置等の生産設備の増設を積極的に進め、また海外の競合他社に対する技術的優位性を維持するため、現在のナノ加工技術の効率化、ナノ計測技術の高精度化を図るための研究開発を進めております。さらに、新しい製造技術の実用化開発を推進し、前加工協力会社との技術提携や連携強化を図り、生産工程全体の効率化を目指しております。
また、世界各地で第4世代放射光施設の新設や第3世代放射光施設からのバージョンアップにより光源の強化が図られ、それに対応するために当社の主力製品である高精度KB型集光ミラーや新しい光学系の構築が求められているため、回転楕円ミラー、形状可変ミラー、各種ウォルターミラー等の次世代放射光施設向けの新しい集光系のX線ミラーの開発・販売を推進しております。
これら各種X線ミラー(光学素子)は、従来技術では到底不可能であった表面形状の超高精度化を実現することができ、さまざまな産業分野においてビジネスを展開するための技術的ポテンシャルを有しております。
例えば、半導体及び宇宙分野などの成長産業分野で用いられる光学素子において、従来の加工技術では不可能なナノメートルレベルの表面形状精度が望まれているため、当社では販路を拡大するための足掛かりとして今年度新たな競争的資金を獲得し、大阪大学、名古屋大学及びJAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同で新しいX線計測・分析技術の開発を推進し、新しい高精度2次元集光X線ミラーの製造法の確立を目指しております。
また、当社では現在のナノ加工技術EEM以外にも大阪大学の表面加工技術であるプラズマCVMやCARE(触媒基準エッチング法)加工を技術導入して実用化開発を進めており、総合的な加工技術のポテンシャルを上げて選択肢を広げることにより、今後も様々な産業分野への参入を図ってまいります。
(ライフサイエンス・機器開発事業)
・ライフサイエンス事業
新型コロナウイルス感染症拡大の影響が続く中、コロナ治療薬の探索のために、当社設立当初より開発・販売してまいりました自動細胞培養装置のカスタム製品の引合いが増え、受注を獲得しました。
さらに、2013年に日本で初めて上市した汎用型のiPS細胞向けの簡易型自動細胞培養装置「CellPet®」をもとに、多様化するユーザーニーズに応えるために後継機種として「MakCell®」を開発してまいりましたが、現在テレワークが推進され就業時間の短縮化が求められる中、手軽な自動細胞培養装置として引き合いが活発になってきております。
一方、再生医療分野は依然黎明期ではありますが、将来の再生医療市場の拡大に伴いその周辺産業の市場も拡大すると想定しており、その中で当社の対象市場となる自動細胞培養装置及び培養容器(消耗品)分野での製品開発を今後も積極的に進めてまいります。
また、当社は自動細胞培養装置メーカーでありますが、単なる装置メーカーではなく、大阪大学内に当社独自の細胞培養センターを設け、自ら開発した装置を用いて培養手法の有効性を実証することにより、効率よく製品開発・販売を実施しております。
さらに、長年にわたり産業技術総合研究所と共同開発してまいりました独自の3次元浮遊培養技術「CELLFLOAT®」を用いた再生医療向けの自動細胞培養装置「CellMeister®3D」を開発しました。当社の細胞培養センターでは再生医療の実現に向けて研究開発を推進しており、昨年度より横浜市立大学医学部らと新たに競争的資金(日本医療研究開発機構:AMED)を獲得し、世界で初めての「弾性軟骨デバイス」を用いた再生医療の普及を目標として、医師主導の治験(鼻咽腔機能閉鎖不全症)を目指して共同研究を進めており、さらに大阪大学医学部心臓血管外科らともiPS細胞を用いた心筋シートの臨床研究を目指して共同研究を進めております。
当年度はさらに、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構(神戸)及び日本光電工業株式会社と競争的資金(AMED)を獲得し、脳梗塞治療用の幹細胞分離機器(医療機器)の共同開発を進めております。
また、2017年1月に上市したiPS細胞用の回転浮遊培養装置「CellPet 3D-iPS®」や小片化装置「CellPet FT®」をはじめとして、近年急速に進歩しつつあるオルガノイド培養向けの回転浮遊培養装置「CellPet®CUBE」や酸素透過型培養容器などの関連機器を積極的に製品開発し、国内だけでなく海外展開も図ってまいります。
・機器開発事業
当社設立当初より各種自動細胞培養装置を開発してまいりましたが、その自動化設計技術を活かし、当社の高精度KB型集光ミラーを用いたKB集光装置や各種OEM製品の製品開発も手掛けてまいりました。
また、新規事業として実用化開発を進めてきた独自のプラズマCVM加工技術を水晶振動子ウエハの厚みの均一加工に適用し、その量産化システムの実用化にも成功しパイロットユーザーに納品しました。今後は国内外の水晶振動子メ―カー等を中心に本格販売を行ってまいります。
これら以外にも、様々な産業分野の自動化製品の開発を手掛けてまいります。
(電子科学株式会社の子会社化)
当社は、2021年5月に電子科学株式会社の全株式を取得し子会社化いたしました。同社は、昇温脱離分析装置(TDS)のメーカーであります。本装置は、超高真空環境に設置した試料を独自の加熱方式(赤外線)によって加熱することにより、試料から微量に放出される成分(特に水素、水)を四重極質量分析装置(QMS)にて分析し、独自の分析ソフトウェアにより高感度でリアルタイム検出する装置であります。
現在、本装置は半導体や液晶業界を中心に材料の研究や、製造工程の評価、品質管理に用いられており高い評価を得ております。しかしながら、本装置は鉄鋼、電機、自動車、水晶振動子等の様々な産業分野にも用いられるポテンシャルがあり、最近では海外からの引合いもあるものの、営業体制等の問題で積極的に拡販ができていない現状であります。
そのため、当社のオプティカル事業の海外チャンネルを用いた、営業体制の強化による拡販が急務であると考えております。また、電子科学における装置作りはファブレス方式であり当社のライフサイエンス・機器開発事業と同じであることから、生産管理強化により、製造面でもシナジー効果が見込めると考えております。また電子科学の分析技術と当社の自動化技術を融合し、特に半導体分野において、共同で新しい製品の企画、開発を進めてまいります。
ライフサイエンス・機器開発事業においては、ライフサイエンス分野や半導体分野における独自の製品開発を積極的に進めて顧客を獲得するとともに、市場の拡大に備えるために優秀な技術者の確保、生産体制の強化、保守サービスの構築が重要課題であると認識しております。このため当社では、優秀な技術者の確保のために積極的な中途採用活動を展開する一方で、生産体制の強化や保守サービスの構築につきましては、電子科学株式会社や新たな協力会社との関係構築によって対応してまいります。
② 技術開発体制の構築
当社の顧客の多くは基礎研究に取り組んでいる研究機関・大学・企業の研究者であり、この基礎研究の分野で当社が成長するためには、最先端の技術動向のキャッチアップと継続的な技術開発を可能とする開発体制を構築し、継続的に付加価値を提供することが重要であると考えております。
このような認識のもと、オプティカル事業では国際学会での企業展示だけでなく、当社の製品や最新の技術紹介等を積極的に発信してまいります。また、ライフサイエンス・機器開発事業においては独自に細胞培養センターを設け、ここをオープンイノベーションの拠点として、最先端の技術開発に取り組んでいる研究機関や大学との共同研究や企業との事業連携を積極的に推進することに努めてまいります。
また、電子科学株式会社とのシナジーにより、半導体分野を対象とした製品開発も推進してまいります。
③ 営業力の強化
当社の両事業において、その事業規模を拡大させるためには営業力の強化が重要であると考えております。しかしながら、当社が取り扱っている製品は、コンサルティング営業ができるような技術知識が必要となるため、即戦力となる営業人材の確保が難しく、継続的な営業人材の確保と強化が特に重要な課題であると考えております。具体的には、技術者の社内ローテーションや物理学等の基礎学力を有している人材の採用活動によって営業人材を確保し、加えて既存営業マンによる継続的な現場教育の推進によって営業力の強化に注力してまいります。
一方で、未だ新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため世界各地で外出禁止・制限・自粛要請とソーシャル・ディスタンスの確保が求められ、展示会・学会などが世界中で中止を余儀なくされており、いつ従来どおりの開催ができるのか予測できない状況下ではありますが、オプティカル事業においては、今までの実績をもとにユーザーである世界の研究者とWEB会議などを通じて商談を進めております。また、今まで中止されていた学会においても、WEB配信での開催の検討が増えてきているため、積極的な学会発表や企業宣伝に努めてまいります。
ライフサイエンス・機器開発事業においても、オンライン商談、リモート営業などを推進しておりますが、全てをオンラインに切り替えるのではなく、新規ユーザーへの初回訪問と既存ユーザーへの提案について営業手法を分ける等、訪問とオンラインを組み合わせて有効に営業活動を進めてまいります。
また、オプティカル事業だけでなくライフサイエンス・機器開発事業においても海外展開を視野に入れており、ヨーロッパ、アメリカ、中国での代理店網の構築を進めております。
④ 生産管理体制の強化
オプティカル事業において、需要が拡大しグローバルな競争に生き残っていくためには、生産管理の役割が大きくなってまいります。一方、ライフサイエンス・機器開発事業においては、ファブレスによる柔軟な生産体制にて事業を展開しております。
今後の量産化に向けて、それぞれの製造工程、生産管理や品質管理等における最適なチェック体制を構築し、安定した品質を維持する仕組みが必要不可欠となるため、生産管理体制を強化してまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
ここ数年の当社の急速な成長に伴い、内部管理に関係する業務が多岐にわたって発生しておりますが、今後のさらなる成長のためには内部管理体制の一層の強化を図る必要があると認識しております。そのためには、内部管理の重要性に対する全社的な認識の強化を図るとともに、内部管理に精通した人材を採用し、また経理・人事・広報・法務等に精通した人材も積極的に採用することによって、業務の有効性と効率性を高めてまいります。
(1) 経営方針
当社は、「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」ことを経営理念に掲げ、各種産業分野の技術発展に寄与し、創薬や再生医療をはじめとした先端技術の研究及び実用化の促進に役立つことにより、「科学技術イノベーションの創出に貢献する製品開発を推進する」ことを経営方針に定め、『オプティカル事業』及び『ライフサイエンス・機器開発事業』を推進しております。
(2) 経営環境等
当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、経済・社会活動の制限が続き、個人消費や企業活動が大きく収縮するなど厳しい状況となりました。ワクチンの普及により今後の経済正常化は期待されるものの、依然として先行きが不透明な状況となっております。世界に目を向けても同様の状況であり、ワクチンの接種状況により感染症の影響が落ち着いている地域と、引き続き予断を許さない状況が続いている地域に分かれる状況となっております。
オプティカル事業においては、国内では新型コロナウイルスの変異株の猛威による感染拡大が続いておりますが、世界の放射光施設では、特に欧米各国でコロナ禍により遅れていた投資計画が進み、コロナウイルスの基礎研究や治療薬などの研究開発が積極的に行われるなど、研究活動が復調してきております。
例えば、2021年6月3日にPR情報にて開示しました、米国シカゴのアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory:ANL)にある、世界有数の大型放射光施設APS(Advanced Photon Source)から、第4世代へのアップグレードに伴う新設ビームラインの各種超高精度ミラーの一括受注がありました。加えて、フランスのESRF(European Synchrotron Radiation Facility)、カリフォルニア大学のローレンスバークレー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory:LBNL)のALS(Advanced Light Source)のみならず、ドイツ、イギリス、スイス、イタリアなど欧州各地にて第4世代へのアップグレードの計画が明らかになり、受注活動が活発になってまいりました。
さらに、中国においても同様であり、北京では世界最大のビームライン数を有する第4世代の大型放射光施設の建設、上海では2施設目となるX線自由電子レーザー施設の建設が始まっており、中国全土で10か所以上ある放射光施設やX線自由電子レーザー施設からの受注及び引合いが活発になってまいりました。
国内においても、大型放射光施設SPring-8や自由電子レーザー施設SACLAだけでなく、2023年完成予定の東北放射光施設(SLiT-J)からの引合いも増え、受注も順調に推移しております。
このように、当社ミラーの市場はコロナ前の状況に戻りつつあるため、勝機を逃がさずに特に当社の得意とする超高精度ミラーや次世代(第4世代)向けミラーの新製品を中心に売上増加に注力し、放射光施設向けのみならず、半導体及び宇宙分野などの市場に積極的に参入してまいります。
また、ライフサイエンス・機器開発事業においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が続く中、コロナ治療薬の探索のために、自動細胞培養装置のカスタム製品や簡易型自動細胞培養装置「MakCell®」のような汎用製品等の引合いが増えてきております。また水晶振動子ウエハ加工システムの開発に成功し、パイロットユーザーに納品しました。今後は国内外の水晶振動子メ―カー等を中心に本格販売を行ってまいります。
また、子会社化しました電子科学株式会社の主力製品である昇温脱離分析装置(TDS)においては、現在の半導体や液晶業界向けのみならず、鉄鋼、電機、自動車、水晶振動子等の様々な産業分野にも市場拡大が見込まれるため、営業力を強化し新規顧客開拓に注力してまいります。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 事業活動に関わる課題
(オプティカル事業)
世界の放射光施設及びⅩ線自由電子レーザー施設は、各国の多様な地域発研究開発・実証拠点(リサーチコンプレックス)において現在もコアな機関として位置づけられ、イノベーションを強力に推進しております。しかしながら、約1年半に及ぶコロナ禍の影響により、世界の放射光施設の研究者は、研究意欲はあるものの、特に欧米各国の放射光施設での計画が遅れたことにより研究自体の遅れも散見されましたが、最近では計画も進み、コロナの基礎研究や治療薬などの研究開発も積極的に行われるなど研究活動が復調してきております。
例えば、2021年6月3日に情報開示しました、米国シカゴのアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory:ANL)にある、世界有数の大型放射光施設APS(Advanced Photon Source)から、第4世代へのアップグレードに伴う新設ビームラインの各種超高精度ミラーの一括受注がありました。加えて、フランスのESRF(European Synchrotron Radiation Facility)、カリフォルニア大学のローレンスバークレー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory:LBNL)のALS(Advanced Light Source)のみならず、ドイツ、イギリス、スイス、イタリアなど欧州各地にて第4世代へのアップグレードの計画が明らかになり、受注活動が活発になってまいりました。
さらに、中国においても同様であり、北京では世界最大のビームライン数を有する第4世代の大型放射光施設の建設、上海では2施設目となるX線自由電子レーザー施設の建設が始まっており、中国全土で10か所以上ある放射光施設やX線自由電子レーザー施設からの受注及び引合いが活発になってまいりました。
国内においても、大型放射光施設SPring-8や自由電子レーザー施設SACLAだけでなく、2023年完成予定の東北放射光施設(SLiT-J)からの引合いも増え、受注も順調に推移しております。
当社は、このように世界規模で拡大している放射光施設及びX線自由電子レーザー施設向けの高精度X線ミラーの需要に応えるため、生産施設の増強、生産工程の効率化を図り、更なる高精度化を進めていくことが、引続き重要課題であると認識しております。
このため、独自のEEMナノ加工装置やRADSI及びMSIナノ計測装置等の生産設備の増設を積極的に進め、また海外の競合他社に対する技術的優位性を維持するため、現在のナノ加工技術の効率化、ナノ計測技術の高精度化を図るための研究開発を進めております。さらに、新しい製造技術の実用化開発を推進し、前加工協力会社との技術提携や連携強化を図り、生産工程全体の効率化を目指しております。
また、世界各地で第4世代放射光施設の新設や第3世代放射光施設からのバージョンアップにより光源の強化が図られ、それに対応するために当社の主力製品である高精度KB型集光ミラーや新しい光学系の構築が求められているため、回転楕円ミラー、形状可変ミラー、各種ウォルターミラー等の次世代放射光施設向けの新しい集光系のX線ミラーの開発・販売を推進しております。
これら各種X線ミラー(光学素子)は、従来技術では到底不可能であった表面形状の超高精度化を実現することができ、さまざまな産業分野においてビジネスを展開するための技術的ポテンシャルを有しております。
例えば、半導体及び宇宙分野などの成長産業分野で用いられる光学素子において、従来の加工技術では不可能なナノメートルレベルの表面形状精度が望まれているため、当社では販路を拡大するための足掛かりとして今年度新たな競争的資金を獲得し、大阪大学、名古屋大学及びJAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同で新しいX線計測・分析技術の開発を推進し、新しい高精度2次元集光X線ミラーの製造法の確立を目指しております。
また、当社では現在のナノ加工技術EEM以外にも大阪大学の表面加工技術であるプラズマCVMやCARE(触媒基準エッチング法)加工を技術導入して実用化開発を進めており、総合的な加工技術のポテンシャルを上げて選択肢を広げることにより、今後も様々な産業分野への参入を図ってまいります。
(ライフサイエンス・機器開発事業)
・ライフサイエンス事業
新型コロナウイルス感染症拡大の影響が続く中、コロナ治療薬の探索のために、当社設立当初より開発・販売してまいりました自動細胞培養装置のカスタム製品の引合いが増え、受注を獲得しました。
さらに、2013年に日本で初めて上市した汎用型のiPS細胞向けの簡易型自動細胞培養装置「CellPet®」をもとに、多様化するユーザーニーズに応えるために後継機種として「MakCell®」を開発してまいりましたが、現在テレワークが推進され就業時間の短縮化が求められる中、手軽な自動細胞培養装置として引き合いが活発になってきております。
一方、再生医療分野は依然黎明期ではありますが、将来の再生医療市場の拡大に伴いその周辺産業の市場も拡大すると想定しており、その中で当社の対象市場となる自動細胞培養装置及び培養容器(消耗品)分野での製品開発を今後も積極的に進めてまいります。
また、当社は自動細胞培養装置メーカーでありますが、単なる装置メーカーではなく、大阪大学内に当社独自の細胞培養センターを設け、自ら開発した装置を用いて培養手法の有効性を実証することにより、効率よく製品開発・販売を実施しております。
さらに、長年にわたり産業技術総合研究所と共同開発してまいりました独自の3次元浮遊培養技術「CELLFLOAT®」を用いた再生医療向けの自動細胞培養装置「CellMeister®3D」を開発しました。当社の細胞培養センターでは再生医療の実現に向けて研究開発を推進しており、昨年度より横浜市立大学医学部らと新たに競争的資金(日本医療研究開発機構:AMED)を獲得し、世界で初めての「弾性軟骨デバイス」を用いた再生医療の普及を目標として、医師主導の治験(鼻咽腔機能閉鎖不全症)を目指して共同研究を進めており、さらに大阪大学医学部心臓血管外科らともiPS細胞を用いた心筋シートの臨床研究を目指して共同研究を進めております。
当年度はさらに、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構(神戸)及び日本光電工業株式会社と競争的資金(AMED)を獲得し、脳梗塞治療用の幹細胞分離機器(医療機器)の共同開発を進めております。
また、2017年1月に上市したiPS細胞用の回転浮遊培養装置「CellPet 3D-iPS®」や小片化装置「CellPet FT®」をはじめとして、近年急速に進歩しつつあるオルガノイド培養向けの回転浮遊培養装置「CellPet®CUBE」や酸素透過型培養容器などの関連機器を積極的に製品開発し、国内だけでなく海外展開も図ってまいります。
・機器開発事業
当社設立当初より各種自動細胞培養装置を開発してまいりましたが、その自動化設計技術を活かし、当社の高精度KB型集光ミラーを用いたKB集光装置や各種OEM製品の製品開発も手掛けてまいりました。
また、新規事業として実用化開発を進めてきた独自のプラズマCVM加工技術を水晶振動子ウエハの厚みの均一加工に適用し、その量産化システムの実用化にも成功しパイロットユーザーに納品しました。今後は国内外の水晶振動子メ―カー等を中心に本格販売を行ってまいります。
これら以外にも、様々な産業分野の自動化製品の開発を手掛けてまいります。
(電子科学株式会社の子会社化)
当社は、2021年5月に電子科学株式会社の全株式を取得し子会社化いたしました。同社は、昇温脱離分析装置(TDS)のメーカーであります。本装置は、超高真空環境に設置した試料を独自の加熱方式(赤外線)によって加熱することにより、試料から微量に放出される成分(特に水素、水)を四重極質量分析装置(QMS)にて分析し、独自の分析ソフトウェアにより高感度でリアルタイム検出する装置であります。
現在、本装置は半導体や液晶業界を中心に材料の研究や、製造工程の評価、品質管理に用いられており高い評価を得ております。しかしながら、本装置は鉄鋼、電機、自動車、水晶振動子等の様々な産業分野にも用いられるポテンシャルがあり、最近では海外からの引合いもあるものの、営業体制等の問題で積極的に拡販ができていない現状であります。
そのため、当社のオプティカル事業の海外チャンネルを用いた、営業体制の強化による拡販が急務であると考えております。また、電子科学における装置作りはファブレス方式であり当社のライフサイエンス・機器開発事業と同じであることから、生産管理強化により、製造面でもシナジー効果が見込めると考えております。また電子科学の分析技術と当社の自動化技術を融合し、特に半導体分野において、共同で新しい製品の企画、開発を進めてまいります。
ライフサイエンス・機器開発事業においては、ライフサイエンス分野や半導体分野における独自の製品開発を積極的に進めて顧客を獲得するとともに、市場の拡大に備えるために優秀な技術者の確保、生産体制の強化、保守サービスの構築が重要課題であると認識しております。このため当社では、優秀な技術者の確保のために積極的な中途採用活動を展開する一方で、生産体制の強化や保守サービスの構築につきましては、電子科学株式会社や新たな協力会社との関係構築によって対応してまいります。
② 技術開発体制の構築
当社の顧客の多くは基礎研究に取り組んでいる研究機関・大学・企業の研究者であり、この基礎研究の分野で当社が成長するためには、最先端の技術動向のキャッチアップと継続的な技術開発を可能とする開発体制を構築し、継続的に付加価値を提供することが重要であると考えております。
このような認識のもと、オプティカル事業では国際学会での企業展示だけでなく、当社の製品や最新の技術紹介等を積極的に発信してまいります。また、ライフサイエンス・機器開発事業においては独自に細胞培養センターを設け、ここをオープンイノベーションの拠点として、最先端の技術開発に取り組んでいる研究機関や大学との共同研究や企業との事業連携を積極的に推進することに努めてまいります。
また、電子科学株式会社とのシナジーにより、半導体分野を対象とした製品開発も推進してまいります。
③ 営業力の強化
当社の両事業において、その事業規模を拡大させるためには営業力の強化が重要であると考えております。しかしながら、当社が取り扱っている製品は、コンサルティング営業ができるような技術知識が必要となるため、即戦力となる営業人材の確保が難しく、継続的な営業人材の確保と強化が特に重要な課題であると考えております。具体的には、技術者の社内ローテーションや物理学等の基礎学力を有している人材の採用活動によって営業人材を確保し、加えて既存営業マンによる継続的な現場教育の推進によって営業力の強化に注力してまいります。
一方で、未だ新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため世界各地で外出禁止・制限・自粛要請とソーシャル・ディスタンスの確保が求められ、展示会・学会などが世界中で中止を余儀なくされており、いつ従来どおりの開催ができるのか予測できない状況下ではありますが、オプティカル事業においては、今までの実績をもとにユーザーである世界の研究者とWEB会議などを通じて商談を進めております。また、今まで中止されていた学会においても、WEB配信での開催の検討が増えてきているため、積極的な学会発表や企業宣伝に努めてまいります。
ライフサイエンス・機器開発事業においても、オンライン商談、リモート営業などを推進しておりますが、全てをオンラインに切り替えるのではなく、新規ユーザーへの初回訪問と既存ユーザーへの提案について営業手法を分ける等、訪問とオンラインを組み合わせて有効に営業活動を進めてまいります。
また、オプティカル事業だけでなくライフサイエンス・機器開発事業においても海外展開を視野に入れており、ヨーロッパ、アメリカ、中国での代理店網の構築を進めております。
④ 生産管理体制の強化
オプティカル事業において、需要が拡大しグローバルな競争に生き残っていくためには、生産管理の役割が大きくなってまいります。一方、ライフサイエンス・機器開発事業においては、ファブレスによる柔軟な生産体制にて事業を展開しております。
今後の量産化に向けて、それぞれの製造工程、生産管理や品質管理等における最適なチェック体制を構築し、安定した品質を維持する仕組みが必要不可欠となるため、生産管理体制を強化してまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
ここ数年の当社の急速な成長に伴い、内部管理に関係する業務が多岐にわたって発生しておりますが、今後のさらなる成長のためには内部管理体制の一層の強化を図る必要があると認識しております。そのためには、内部管理の重要性に対する全社的な認識の強化を図るとともに、内部管理に精通した人材を採用し、また経理・人事・広報・法務等に精通した人材も積極的に採用することによって、業務の有効性と効率性を高めてまいります。