有価証券報告書-第7期(令和2年10月1日-令和3年9月30日)
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「教育を科学する」をキーワードに、ラーニングサイエンスとEdTechで、次世代の教育をグローバルに実現する日本発のEdTechカンパニーを目指しております。
(2) 経営環境
国内教育市場は少子化の進行で大学受験者数が減少しているものの、英語教育は低年齢化し、2008年度からスタートしている小学5、6年生を対象とした小学校の英語教育は、2011年度に小学5年生から必修となり、2020年度からは、小学3、4年生からの必修化、小学5年生からの教科化が実施されております。
また、英検協会では、1日で英語4技能を測定することができるコンピュータを用いた新しい受験形態の英検「S-CBT」を導入し、受験機会が従来の年3回実施から年間を通じた実施へと大幅に増加しております。このように、教育及びテストの両面においてICT化が加速しており、当社グループにとって大きな事業機会であると考えております。
一方、海外におきましては、アジアの人口増加及び経済発展により教育市場が引き続き拡大しております。教育市場として世界における最大市場である米国において教育のICT化が大きく成長を牽引し、変革の流れを加速させております。
<新型コロナウイルス感染症の影響について>足元国内の新型コロナウイルス感染症は猛威を振るっておりますが、今後も感染拡大期間が長期化し、英検始め各種試験団体による大型会場での受験の中止や受験者数の減少が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。一方で、GIGAスクール構想を受け、児童生徒に1人1台端末が整備されること等から、学習やテスト受験のオンライン化、CBT化が加速化する傾向が続いております。
(3) 経営戦略等
当社グループは、英語学習におけるラーニングツール及びテストシステムの提供等によるライセンス収入を安定的な成長の礎とし、以下3つの事業領域を中長期的な成長分野と位置付け、積極的に経営資源を投入し、事業拡大を図ることを中長期的な基本戦略としております。
① 教育プラットフォーム
590万人を超える英ナビ会員データベースを土台としたメディア事業および学習サービスの展開
② AIベースの技術ライセンス
既存のソフトウエア及びシステムに、AI-OCR、自然言語処理、レコメンドエンジン、試験監視システム等のAIベースの技術を実装したサービスの展開
③ テストセンター
直営及び委託会場を併せてCBTを提供するテストセンターを全国展開し、インフラ整備の上、テストシステムの拡充を図りCBT化を加速
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは、教育分野における能力測定技術・コンピュータやインターネットを用いたテスト及び教育ツールの研究に注力し、特に語学を中心として「CASEC」、「英検S-CBT」に代表される試験を提供し、項目応答理論を用いた正確な能力測定技術を強みとすることで他社との差別化を図ってまいりました。また、英ナビ・スタディギアの会員基盤を対象として教育コンテンツを提供し、教育プラットフォームの構築に努めてまいりました。さらに、独自のAI技術を活かし、AI-OCR、自動採点システム、オンライン試験監督システムの開発等に努めております。今後は、これらに加え、テストセンター事業を通じて、各種試験のCBT化をシステム及びインフラ提供の両面から推進することとしております。
当社グループでは、今後の業務展開及び経営基盤の強化のため、以下の課題に取り組んでまいります。
① 戦略に基づくソフトウエア開発
当社グループが今後も継続的な成長を果たしていくためには、当社グループが開発したCBTシステムや大規模試験での利用が可能な記述式答案の採点システム等について、市場での優位性を確保するための製品機能の強化が不可欠であると認識しております。さらに、当社グループの提供するラーニングツールは、携帯端末向けのアプリを介して提供されることが主流となりつつありますが、快適なラーニング環境を提供するために必要な資源と時間は確実に増大しています。
また、当社グループで開発を進めているAIを用いた手書き文字認識技術(AI-OCR)を活かすための周辺機能の開発及び導入環境の整備や、AIを活用したアダプティブラーニング等を開発してまいりました。
当社グループは、時代の要請により変化する市場と今後も加速するテクノロジーの進歩に素早く対応するため、戦略に即した製品機能の強化、オプション機能の開発等を行い、競合他社との差別化を図ってまいります。
② コンテンツ開発の強化
当社グループが展開するテスト商品及びラーニング商品は、時代の変化による問題の陳腐化を避けるため、継続的に新たなテスト問題の作成やラーニングのためのコンテンツ制作を行うことが不可欠です。また教育プラットフォーム事業において児童・生徒の学習への関心や意欲を高めるコンテンツの開発力を高めることが重要です。質の高いコンテンツ開発を担当する経験豊富な人材の供給は限られており、当社グループは、戦略的ビジネスパートナーとの連携などを通じて、経験豊富な質の高い人材にアクセスし、優良な学習コンテンツのライブラリーの開発・提供を進めていくことで商品の競争力を高めてまいります。
③ 海外拠点におけるソフトウエア開発・コンテンツ開発・採点業務の推進による生産性と収益性の向上
第一に、当社グループは、ソフトウエア開発について自社の海外の開発拠点であるインドにおいて開発エンジニア60から70名規模の体制で取り組んでいます。更に、アメリカのボストンおよびアイルランドのダブリンで、合わせてエンジニア9名体制で先端的なAIの開発に取り組んでおります。当社グループはこれらの体制を通じて質の高い豊富な海外の開発リソースを確保し、グループ全体のシステム開発及び運営の生産性の向上を目指してまいります。
第二に、英語関連コンテンツ開発及び採点業務をEdutech Lab, Inc.にて行っております。当社グループは、主要サービスである英語関連サービスの更なる品質向上のために、テスト理論や英語教育分野の修士・博士課程修了者を中心に高度な訓練を受けた人材を確保し、15名の専門家集団と40名のコントラクターを活用して英語コンテンツの開発および採点業務を行っております。今後もグローバルなサプライチェーンを活用し、さらなる生産性向上を実現してまいります。
④ テストセンター事業の安定的運営と更なる拡大の両立
当社グループは、英検協会による1日で英語4技能を測定することができる受験形態の「英検S-CBT」の実施にあたり、その実施会場であるテストセンターの安定的な運営を実現できる体制構築に注力しており、2021年9月末現在で42の直営のテストセンターを運営しております。直営のテストセンターの運営には、テストセンターの賃料や会場運営等に係る固定費の発生に伴う稼働リスクが生じますが、今後この事業を一層安定的に運営し、「英検S-CBT」受験の普及・拡大及び英検協会以外の顧客の獲得等を通じて中長期にわたる事業拡大を実現してまいります。
⑤ 戦略的ビジネスパートナーとの連携強化に基づく教育プラットフォーム事業の拡大
当社グループは、株式会社旺文社と、2020年4月に買収を完了した株式会社教育デジタルソリューションズが展開する受験情報サービス「受験パスナビ」で、当社のAIレコメンデーションエンジン「CAERA」を導入し、中高・大学受験市場におけるマッチングサービスの強化を図ります。また、株式会社マイナビとの業務提携を通じて、株式会社マイナビのビジネスネットワークと当社の会員データベースを活用することにより、その他の市場においてもマッチングサービスを拡充してまいります。この他、現在展開している学習サービスをスタディギアブランドに統一し、英検の唯一の公式ラーニングサービスである「スタディギア for EIKEN」に続き、漢検、数検等、新たな公式ラーニングサービス提供をスタートさせました。更に、英語や数学の無段階学習、高校受験、大学受験等に対応した教材や特典などを加えた学習サービスを提供する予定です。今後も、スタディギアブランドの価値を高めるために戦略パートナーとの更なる連携強化が重要であると認識しております。当社グループは、的確なマーケティング戦略及び営業戦略を通じて本事業の収益化を図ってまいります。
⑥ AI-OCR技術である「DEEP READ」の早期の事業応用とAI技術の活用領域の充実
各種学力調査は、「知識・技能」を中心に問う手法から「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を総合的に評価する手法へと移行しつつあり、記述式の出題が増加する傾向にある一方、これに伴う採点費用も増加しています。当社グループは、大規模な学力調査における記述式解答の採点効率化の観点から、ディープラーニングに基づくAI技術を用いた高精度な手書き文字認識技術「DEEP READ」を開発してまいりました。当社グループは、早期に「DEEP READ」を事業応用し、記述式解答の採点プロセスのイノベーションを実現することで競合他社との差別化を図っております。また、この文字認識技術は教育IT分野のみならずOCR(光学的文字認識)関連市場など他分野にも応用可能な技術と考えており、他分野への技術転用を積極的に進め当社グループのビジネスの拡大を図ってまいります。このようなビジネス拡大のため、当社グループは、子会社DoubleYard Inc.を通じて、優秀なAI人材の確保と研究開発活動に努めております。日本市場の他、米国市場においては、当社と資本業務提携を締結している企業内の各種文書を管理するECMソリューションを展開するEphesoft Inc.等へ「DEEP READ」の展開を本格化しております。「DEEP READ」については、既に外資系大手金融機関、大手新聞社、大手BPO会社、政府関連機関、大学等との協業プロジェクト等の受注実績がありますが、これまで進めてまいりましたAPI環境の整備や、多様なユーザーニーズに応える提供形態(クラウドサービス型・オンプレミス型・クラウドとオンプレミスの複合型)を整えながら、将来の大規模な受注に向けて、精度面、機能面、サポート面の更なる強化を図っております。
ディープラーニングを活用した技術及びサービスの開発手法は、他の分野へ応用することが比較的に容易であることから、当社グループは、手書き文字認識技術の開発で培ったAIを活用した開発力を他の分野に展開して当社グループ全体の商品及びサービスの競争力を高めていく方針です。当社グループがAIの活用を進める領域は、レコメンドエンジン(商品名:CAERA)、自然言語処理(英語:Natural Language Processing、略称:NLP)、オンライン試験監督システム(商品名:CheckPointZ)になります。これらの開発により、当社の商品及びサービスの競争力の向上を図ることができると考えております。
当社グループの開発する手書き文字認識技術、NLP等のAI技術の活用領域については、当社グループの従来の事業領域である文教市場のみならず、他の産業においても導入することで生産性の向上に資する可能性があると考えております。
⑦ 大型公共プロジェクトの安定的運用
当社グループは、文部科学省が実施する令和4年度 全国学力・学習状況調査(小学校第6学年の児童を対象)を受託いたしました。受託は4年連続となります。更に、世界的にも先進的なIRT(Item Response Theory、項目応答理論)を用いて個人及び学年の経年的な学力の進捗を測定する埼玉県学力・学習状況調査を開始以来7年連続で受託しております。これらをはじめとした大型の公共プロジェクトを、当社グループの強みであるテスト理論、AIソフトウエアや採点システム等を活用して安定的かつ効率的に運用し、収益の安定化を図ってまいります。
⑧ 海外事業に関する収益性改善や事業継続の検討
海外事業の課題として、当社グループが現在営んでいる以下の事業の収益性の改善を図ります。
a) 米国内を中心としたEdTechベンチャー企業等への投資事業
米国Edutech Lab, Inc.の子会社として、2018年4月にEduLab Capital Management Company, LLCを米国ボストンに設立し、世界最大のEdTech市場である米国を中心に、中国、東南アジア、インド、日本のアーリーステージのEdTechベンチャー企業への投資加速を目的に活動を開始しました。過去数年、米国のGSV Acceleration Fund I、Fresco Capital Education Venture Fund I及びLearnLaunch Accelerator IIへのLP(Limited Liability Partner )投資を含め、当社グループは、米国で7社、東南アジアで2社、イスラエルで2社のEdTechベンチャーへの直接投資を行いましたが、急速に変化・成長する世界のEdTech市場の動向にタイムリーに呼応するために、上記のとおり別組織での投資事業展開をしております。
b) 中国自習室事業
当社グループは、2017年から中国において民間教育団体(塾)向けの教材/システム提供サービス(サービス名「自習室」)を提供しておりましたが、2021年7月に、中国政府の指導のもと、教育政策の大幅な変更、民間教育事業者への規制強化が実施されたこと等による事業環境の変化に伴い、「自習室」事業を撤退することといたしました。
⑨ コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の強化
有限責任 あずさ監査法人における監査の実施過程において、当社の連結子会社である株式会社教育測定研究所とその特定の顧客との間の過年度及び当連結会計年度の一部取引(以下「本件取引」という。)について、経済合理性に関して追加的な調査が必要であると判断し、対応してまいりました。当該対応の経緯は以下の通りです。
ⅰ.調査の経緯
当社は、あずさ監査法人との協議を踏まえ、2021年8月2日付の当社取締役会において、当社と利害関係を有しない弁護士及び公認会計士からなる特別調査委員会の設置を決議し、本件取引について調査を開始しました。その後の調査の過程において、本件取引とは関連性のない、当社連結子会社である株式会社教育測定研究所と当社の関連会社との間の過年度の一部取引等(以下「グループ会社間取引」)に関連して、売上高の計上が実態を伴うものであるかについての懸念及び株式会社教育測定研究所の売上高の実在性及び期間帰属の根拠となる証憑の信頼性に疑義がある複数取引(以下「業務提携先等との取引」)が判明したため、調査範囲を拡大し、調査を継続してまいりました。
ⅱ.調査報告書の受領
当社は、2021年10月15日に特別調査委員会より、暫定的な調査結果の概要をまとめた中間報告書を受領し、また、2022年2月25日に特別調査委員会より、最終報告書を受領しております。最終報告書では主に以下の事項について調査を行った旨の報告がされております。
●テストセンター取引の事実関係、経済合理性及び会計処理
●グループ会社間取引の事実関係及び会計上の評価
●連結範囲の意図的な調整に関する事実関係及び会計上の評価
●業務提携先等との取引に関する事実関係及び会計上の評価
●各取引と類似する取引が他に存在するかどうか
ⅲ.調査報告書を踏まえた会計処理の修正
当社は、特別調査委員会の中間報告書の内容に基づき、過年度及び当連結会計年度のテストセンター取引及びグループ会社間取引について、会計処理を修正し、連結子会社の範囲を拡大いたしました。加えて、業務提携先等との取引について、会社が独自に調査した内容に基づき会計処理を修正し、2021年10月15日に2016年9月期から2021年9月期の第2四半期までの有価証券報告書等の訂正報告書を提出しております。さらに、当社は、最終報告書の内容及び当社が独自に実施した自主点検の内容に基づき、過年度及び当連結会計年度の業務提携先等との取引に係る売上高等の会計処理を修正し、2022年2月28日に2016年9月期から2021年9月期の第3四半期までの有価証券報告書等の訂正報告書を提出しております。追加調査の過程で会計処理の修正が必要となった取引には、以下のような取引が含まれております。
・株主との業務提携基本契約に基づいて実行される取引や、契約書に定義される成果物に照らし取引価格が相対的に高い特定の顧客に対するソフトウェアの開発等に関する取引について、過年度における売上高の計上時期及び金額が、提供される財又は役務の経済的実態を適切に反映していなかったこと
・当社グループが過去に実行した広告販売取引に関連して、業務提携契約により包括的に配信件数を約定しているものの、覚書の文言に基づき、初回のウェブDMの配信時に全ての売上高が計上されている取引や、広告配信が実施されていないにも係わらず、広告枠を約定した時点において作業完了報告書を作成し、売上高を計上していた取引
最終報告書では、これらの修正が必要となった取引の一部について、当社の経営者も認識している取引であった旨が報告されています。当社は、信頼性ある財務報告を実現するための内部統制が十分に機能していなかったと判断しておりますが、これらの原因として、取締役会等による監督機能が弱かったことに加え、社内牽制機能の不足、社内規程等に対するコンプライアンス意識や適切な会計処理及び開示に対する意識が徹底されていなかったこと、更に社内関係部署間の連携が不十分であったこと等があげられます。そのため当社は、これら内部統制の不備が財務報告に重要な影響を及ぼしており、当連結会計年度末において、全社的な内部統制及び全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセス並びに業務プロセスについて開示すべき重要な不備が存在しているものと判断いたしました。また、当社は、財務報告に関して内部統制が十分機能することの重要性を再確認し、再発防止策を策定し改善報告書として2022年1月25日東京証券取引所へ提出しております。2022年2月25日特別調査委員会の報告を受け、再発防止に向けたコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の一層の強化を図ってまいります。
⑩ 人材の確保と育成
当社グループは日本市場のみならず海外市場での事業の拡大を見据え、研究開発、事業開発、営業・マーケティング、内部管理の全ての面において、海外オペレーションにも対応可能な優秀な人材の確保、採用、育成が重要な課題であると認識しております。特に、専門性の高いAIエンジニア、項目応答理論等のテスト理論の専門家、教育コンテンツ開発の専門家等を積極的に採用してまいります。新たに採用した人員に対しては充実した研修を実施するなど人材の育成に取り組んでおり、今後も採用と並行して新入社員への研修・教育制度を整備することで優秀な人材の確保・育成に取り組む方針です。
(1) 経営方針
当社グループは、「教育を科学する」をキーワードに、ラーニングサイエンスとEdTechで、次世代の教育をグローバルに実現する日本発のEdTechカンパニーを目指しております。
(2) 経営環境
国内教育市場は少子化の進行で大学受験者数が減少しているものの、英語教育は低年齢化し、2008年度からスタートしている小学5、6年生を対象とした小学校の英語教育は、2011年度に小学5年生から必修となり、2020年度からは、小学3、4年生からの必修化、小学5年生からの教科化が実施されております。
また、英検協会では、1日で英語4技能を測定することができるコンピュータを用いた新しい受験形態の英検「S-CBT」を導入し、受験機会が従来の年3回実施から年間を通じた実施へと大幅に増加しております。このように、教育及びテストの両面においてICT化が加速しており、当社グループにとって大きな事業機会であると考えております。
一方、海外におきましては、アジアの人口増加及び経済発展により教育市場が引き続き拡大しております。教育市場として世界における最大市場である米国において教育のICT化が大きく成長を牽引し、変革の流れを加速させております。
<新型コロナウイルス感染症の影響について>足元国内の新型コロナウイルス感染症は猛威を振るっておりますが、今後も感染拡大期間が長期化し、英検始め各種試験団体による大型会場での受験の中止や受験者数の減少が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。一方で、GIGAスクール構想を受け、児童生徒に1人1台端末が整備されること等から、学習やテスト受験のオンライン化、CBT化が加速化する傾向が続いております。
(3) 経営戦略等
当社グループは、英語学習におけるラーニングツール及びテストシステムの提供等によるライセンス収入を安定的な成長の礎とし、以下3つの事業領域を中長期的な成長分野と位置付け、積極的に経営資源を投入し、事業拡大を図ることを中長期的な基本戦略としております。
① 教育プラットフォーム
590万人を超える英ナビ会員データベースを土台としたメディア事業および学習サービスの展開
② AIベースの技術ライセンス
既存のソフトウエア及びシステムに、AI-OCR、自然言語処理、レコメンドエンジン、試験監視システム等のAIベースの技術を実装したサービスの展開
③ テストセンター
直営及び委託会場を併せてCBTを提供するテストセンターを全国展開し、インフラ整備の上、テストシステムの拡充を図りCBT化を加速
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは、教育分野における能力測定技術・コンピュータやインターネットを用いたテスト及び教育ツールの研究に注力し、特に語学を中心として「CASEC」、「英検S-CBT」に代表される試験を提供し、項目応答理論を用いた正確な能力測定技術を強みとすることで他社との差別化を図ってまいりました。また、英ナビ・スタディギアの会員基盤を対象として教育コンテンツを提供し、教育プラットフォームの構築に努めてまいりました。さらに、独自のAI技術を活かし、AI-OCR、自動採点システム、オンライン試験監督システムの開発等に努めております。今後は、これらに加え、テストセンター事業を通じて、各種試験のCBT化をシステム及びインフラ提供の両面から推進することとしております。
当社グループでは、今後の業務展開及び経営基盤の強化のため、以下の課題に取り組んでまいります。
① 戦略に基づくソフトウエア開発
当社グループが今後も継続的な成長を果たしていくためには、当社グループが開発したCBTシステムや大規模試験での利用が可能な記述式答案の採点システム等について、市場での優位性を確保するための製品機能の強化が不可欠であると認識しております。さらに、当社グループの提供するラーニングツールは、携帯端末向けのアプリを介して提供されることが主流となりつつありますが、快適なラーニング環境を提供するために必要な資源と時間は確実に増大しています。
また、当社グループで開発を進めているAIを用いた手書き文字認識技術(AI-OCR)を活かすための周辺機能の開発及び導入環境の整備や、AIを活用したアダプティブラーニング等を開発してまいりました。
当社グループは、時代の要請により変化する市場と今後も加速するテクノロジーの進歩に素早く対応するため、戦略に即した製品機能の強化、オプション機能の開発等を行い、競合他社との差別化を図ってまいります。
② コンテンツ開発の強化
当社グループが展開するテスト商品及びラーニング商品は、時代の変化による問題の陳腐化を避けるため、継続的に新たなテスト問題の作成やラーニングのためのコンテンツ制作を行うことが不可欠です。また教育プラットフォーム事業において児童・生徒の学習への関心や意欲を高めるコンテンツの開発力を高めることが重要です。質の高いコンテンツ開発を担当する経験豊富な人材の供給は限られており、当社グループは、戦略的ビジネスパートナーとの連携などを通じて、経験豊富な質の高い人材にアクセスし、優良な学習コンテンツのライブラリーの開発・提供を進めていくことで商品の競争力を高めてまいります。
③ 海外拠点におけるソフトウエア開発・コンテンツ開発・採点業務の推進による生産性と収益性の向上
第一に、当社グループは、ソフトウエア開発について自社の海外の開発拠点であるインドにおいて開発エンジニア60から70名規模の体制で取り組んでいます。更に、アメリカのボストンおよびアイルランドのダブリンで、合わせてエンジニア9名体制で先端的なAIの開発に取り組んでおります。当社グループはこれらの体制を通じて質の高い豊富な海外の開発リソースを確保し、グループ全体のシステム開発及び運営の生産性の向上を目指してまいります。
第二に、英語関連コンテンツ開発及び採点業務をEdutech Lab, Inc.にて行っております。当社グループは、主要サービスである英語関連サービスの更なる品質向上のために、テスト理論や英語教育分野の修士・博士課程修了者を中心に高度な訓練を受けた人材を確保し、15名の専門家集団と40名のコントラクターを活用して英語コンテンツの開発および採点業務を行っております。今後もグローバルなサプライチェーンを活用し、さらなる生産性向上を実現してまいります。
④ テストセンター事業の安定的運営と更なる拡大の両立
当社グループは、英検協会による1日で英語4技能を測定することができる受験形態の「英検S-CBT」の実施にあたり、その実施会場であるテストセンターの安定的な運営を実現できる体制構築に注力しており、2021年9月末現在で42の直営のテストセンターを運営しております。直営のテストセンターの運営には、テストセンターの賃料や会場運営等に係る固定費の発生に伴う稼働リスクが生じますが、今後この事業を一層安定的に運営し、「英検S-CBT」受験の普及・拡大及び英検協会以外の顧客の獲得等を通じて中長期にわたる事業拡大を実現してまいります。
⑤ 戦略的ビジネスパートナーとの連携強化に基づく教育プラットフォーム事業の拡大
当社グループは、株式会社旺文社と、2020年4月に買収を完了した株式会社教育デジタルソリューションズが展開する受験情報サービス「受験パスナビ」で、当社のAIレコメンデーションエンジン「CAERA」を導入し、中高・大学受験市場におけるマッチングサービスの強化を図ります。また、株式会社マイナビとの業務提携を通じて、株式会社マイナビのビジネスネットワークと当社の会員データベースを活用することにより、その他の市場においてもマッチングサービスを拡充してまいります。この他、現在展開している学習サービスをスタディギアブランドに統一し、英検の唯一の公式ラーニングサービスである「スタディギア for EIKEN」に続き、漢検、数検等、新たな公式ラーニングサービス提供をスタートさせました。更に、英語や数学の無段階学習、高校受験、大学受験等に対応した教材や特典などを加えた学習サービスを提供する予定です。今後も、スタディギアブランドの価値を高めるために戦略パートナーとの更なる連携強化が重要であると認識しております。当社グループは、的確なマーケティング戦略及び営業戦略を通じて本事業の収益化を図ってまいります。
⑥ AI-OCR技術である「DEEP READ」の早期の事業応用とAI技術の活用領域の充実
各種学力調査は、「知識・技能」を中心に問う手法から「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を総合的に評価する手法へと移行しつつあり、記述式の出題が増加する傾向にある一方、これに伴う採点費用も増加しています。当社グループは、大規模な学力調査における記述式解答の採点効率化の観点から、ディープラーニングに基づくAI技術を用いた高精度な手書き文字認識技術「DEEP READ」を開発してまいりました。当社グループは、早期に「DEEP READ」を事業応用し、記述式解答の採点プロセスのイノベーションを実現することで競合他社との差別化を図っております。また、この文字認識技術は教育IT分野のみならずOCR(光学的文字認識)関連市場など他分野にも応用可能な技術と考えており、他分野への技術転用を積極的に進め当社グループのビジネスの拡大を図ってまいります。このようなビジネス拡大のため、当社グループは、子会社DoubleYard Inc.を通じて、優秀なAI人材の確保と研究開発活動に努めております。日本市場の他、米国市場においては、当社と資本業務提携を締結している企業内の各種文書を管理するECMソリューションを展開するEphesoft Inc.等へ「DEEP READ」の展開を本格化しております。「DEEP READ」については、既に外資系大手金融機関、大手新聞社、大手BPO会社、政府関連機関、大学等との協業プロジェクト等の受注実績がありますが、これまで進めてまいりましたAPI環境の整備や、多様なユーザーニーズに応える提供形態(クラウドサービス型・オンプレミス型・クラウドとオンプレミスの複合型)を整えながら、将来の大規模な受注に向けて、精度面、機能面、サポート面の更なる強化を図っております。
ディープラーニングを活用した技術及びサービスの開発手法は、他の分野へ応用することが比較的に容易であることから、当社グループは、手書き文字認識技術の開発で培ったAIを活用した開発力を他の分野に展開して当社グループ全体の商品及びサービスの競争力を高めていく方針です。当社グループがAIの活用を進める領域は、レコメンドエンジン(商品名:CAERA)、自然言語処理(英語:Natural Language Processing、略称:NLP)、オンライン試験監督システム(商品名:CheckPointZ)になります。これらの開発により、当社の商品及びサービスの競争力の向上を図ることができると考えております。
当社グループの開発する手書き文字認識技術、NLP等のAI技術の活用領域については、当社グループの従来の事業領域である文教市場のみならず、他の産業においても導入することで生産性の向上に資する可能性があると考えております。
⑦ 大型公共プロジェクトの安定的運用
当社グループは、文部科学省が実施する令和4年度 全国学力・学習状況調査(小学校第6学年の児童を対象)を受託いたしました。受託は4年連続となります。更に、世界的にも先進的なIRT(Item Response Theory、項目応答理論)を用いて個人及び学年の経年的な学力の進捗を測定する埼玉県学力・学習状況調査を開始以来7年連続で受託しております。これらをはじめとした大型の公共プロジェクトを、当社グループの強みであるテスト理論、AIソフトウエアや採点システム等を活用して安定的かつ効率的に運用し、収益の安定化を図ってまいります。
⑧ 海外事業に関する収益性改善や事業継続の検討
海外事業の課題として、当社グループが現在営んでいる以下の事業の収益性の改善を図ります。
a) 米国内を中心としたEdTechベンチャー企業等への投資事業
米国Edutech Lab, Inc.の子会社として、2018年4月にEduLab Capital Management Company, LLCを米国ボストンに設立し、世界最大のEdTech市場である米国を中心に、中国、東南アジア、インド、日本のアーリーステージのEdTechベンチャー企業への投資加速を目的に活動を開始しました。過去数年、米国のGSV Acceleration Fund I、Fresco Capital Education Venture Fund I及びLearnLaunch Accelerator IIへのLP(Limited Liability Partner )投資を含め、当社グループは、米国で7社、東南アジアで2社、イスラエルで2社のEdTechベンチャーへの直接投資を行いましたが、急速に変化・成長する世界のEdTech市場の動向にタイムリーに呼応するために、上記のとおり別組織での投資事業展開をしております。
b) 中国自習室事業
当社グループは、2017年から中国において民間教育団体(塾)向けの教材/システム提供サービス(サービス名「自習室」)を提供しておりましたが、2021年7月に、中国政府の指導のもと、教育政策の大幅な変更、民間教育事業者への規制強化が実施されたこと等による事業環境の変化に伴い、「自習室」事業を撤退することといたしました。
⑨ コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の強化
有限責任 あずさ監査法人における監査の実施過程において、当社の連結子会社である株式会社教育測定研究所とその特定の顧客との間の過年度及び当連結会計年度の一部取引(以下「本件取引」という。)について、経済合理性に関して追加的な調査が必要であると判断し、対応してまいりました。当該対応の経緯は以下の通りです。
ⅰ.調査の経緯
当社は、あずさ監査法人との協議を踏まえ、2021年8月2日付の当社取締役会において、当社と利害関係を有しない弁護士及び公認会計士からなる特別調査委員会の設置を決議し、本件取引について調査を開始しました。その後の調査の過程において、本件取引とは関連性のない、当社連結子会社である株式会社教育測定研究所と当社の関連会社との間の過年度の一部取引等(以下「グループ会社間取引」)に関連して、売上高の計上が実態を伴うものであるかについての懸念及び株式会社教育測定研究所の売上高の実在性及び期間帰属の根拠となる証憑の信頼性に疑義がある複数取引(以下「業務提携先等との取引」)が判明したため、調査範囲を拡大し、調査を継続してまいりました。
ⅱ.調査報告書の受領
当社は、2021年10月15日に特別調査委員会より、暫定的な調査結果の概要をまとめた中間報告書を受領し、また、2022年2月25日に特別調査委員会より、最終報告書を受領しております。最終報告書では主に以下の事項について調査を行った旨の報告がされております。
●テストセンター取引の事実関係、経済合理性及び会計処理
●グループ会社間取引の事実関係及び会計上の評価
●連結範囲の意図的な調整に関する事実関係及び会計上の評価
●業務提携先等との取引に関する事実関係及び会計上の評価
●各取引と類似する取引が他に存在するかどうか
ⅲ.調査報告書を踏まえた会計処理の修正
当社は、特別調査委員会の中間報告書の内容に基づき、過年度及び当連結会計年度のテストセンター取引及びグループ会社間取引について、会計処理を修正し、連結子会社の範囲を拡大いたしました。加えて、業務提携先等との取引について、会社が独自に調査した内容に基づき会計処理を修正し、2021年10月15日に2016年9月期から2021年9月期の第2四半期までの有価証券報告書等の訂正報告書を提出しております。さらに、当社は、最終報告書の内容及び当社が独自に実施した自主点検の内容に基づき、過年度及び当連結会計年度の業務提携先等との取引に係る売上高等の会計処理を修正し、2022年2月28日に2016年9月期から2021年9月期の第3四半期までの有価証券報告書等の訂正報告書を提出しております。追加調査の過程で会計処理の修正が必要となった取引には、以下のような取引が含まれております。
・株主との業務提携基本契約に基づいて実行される取引や、契約書に定義される成果物に照らし取引価格が相対的に高い特定の顧客に対するソフトウェアの開発等に関する取引について、過年度における売上高の計上時期及び金額が、提供される財又は役務の経済的実態を適切に反映していなかったこと
・当社グループが過去に実行した広告販売取引に関連して、業務提携契約により包括的に配信件数を約定しているものの、覚書の文言に基づき、初回のウェブDMの配信時に全ての売上高が計上されている取引や、広告配信が実施されていないにも係わらず、広告枠を約定した時点において作業完了報告書を作成し、売上高を計上していた取引
最終報告書では、これらの修正が必要となった取引の一部について、当社の経営者も認識している取引であった旨が報告されています。当社は、信頼性ある財務報告を実現するための内部統制が十分に機能していなかったと判断しておりますが、これらの原因として、取締役会等による監督機能が弱かったことに加え、社内牽制機能の不足、社内規程等に対するコンプライアンス意識や適切な会計処理及び開示に対する意識が徹底されていなかったこと、更に社内関係部署間の連携が不十分であったこと等があげられます。そのため当社は、これら内部統制の不備が財務報告に重要な影響を及ぼしており、当連結会計年度末において、全社的な内部統制及び全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセス並びに業務プロセスについて開示すべき重要な不備が存在しているものと判断いたしました。また、当社は、財務報告に関して内部統制が十分機能することの重要性を再確認し、再発防止策を策定し改善報告書として2022年1月25日東京証券取引所へ提出しております。2022年2月25日特別調査委員会の報告を受け、再発防止に向けたコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の一層の強化を図ってまいります。
⑩ 人材の確保と育成
当社グループは日本市場のみならず海外市場での事業の拡大を見据え、研究開発、事業開発、営業・マーケティング、内部管理の全ての面において、海外オペレーションにも対応可能な優秀な人材の確保、採用、育成が重要な課題であると認識しております。特に、専門性の高いAIエンジニア、項目応答理論等のテスト理論の専門家、教育コンテンツ開発の専門家等を積極的に採用してまいります。新たに採用した人員に対しては充実した研修を実施するなど人材の育成に取り組んでおり、今後も採用と並行して新入社員への研修・教育制度を整備することで優秀な人材の確保・育成に取り組む方針です。