有価証券報告書-第6期(令和1年10月1日-令和2年9月30日)
有報資料
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「教育を科学する」をキーワードに、ラーニングサイエンスとEdTechで、次世代の教育をグローバルに実現する日本発のEdTechカンパニーを目指しております。
(2) 経営環境
国内教育市場は少子化の進行で大学受験者数が減少しているものの、英語教育は低年齢化し、2008年度からスタートしている小学5、6年生を対象とした小学校の英語教育は、2011年度に小学5年生から必修となり、さらに2020年度から小学3年生からの必修化、小学5年生からの教科化が実施されております。
また、大学入試制度改革における民間の英語資格・検定試験の採用は、当初2020年度から予定されておりましたが、2019年11月に文部科学省より延期が発表され、2024年度実施の共通テストに向けて、2020年度中に英語4技能のテストに関する方針について決定される予定です。英検協会では、1日で英語4技能を測定することができるコンピュータを用いた新しい受験形態の英検「S-CBT」を導入し、受験機会が従来の年3回実施から毎週末実施へと大幅に増加しております。このように、教育及びテストの両面においてICT化が加速しており、当社グループにとって大きな事業機会であると考えております。
一方、海外におきましては、アジアの人口増加及び経済発展により教育市場が引き続き拡大しております。教育市場として世界における最大市場である米国において教育のICT化が大きく成長を牽引し、変革の流れを加速させております。当社グループはこれを事業機会と捉え、アジア及び米国の開発拠点を通じて市場開拓に努めております。
<新型コロナウイルス感染症の影響について>足元の新型コロナウイルス感染症の拡大により、英検始め各種試験団体による大型会場での受験の中止や受験者数の減少が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。2020年9月期においては、文部科学省の令和2年度全国学力・学習状況調査(小学校6学年の児童を対象とした調査)の中止等により売上高に影響を受けました。また、販売先・取引先の事業活動が制限を受ける場合があり、2020年9月期においては広告事業において広告主の発注量に影響を受けました。一方で、学習やテスト受験のオンライン化、CBT化が加速化する傾向が顕著となっており、オンラインで完結する企業・学校向け英語能力判定テストの「CASEC」の受注・販売が順調に推移しました。さらに少人数で、かつ、新型コロナウイルス感染症対策が十分になされたテストセンターでの受験ニーズが高まることが予想されます。
(3) 経営戦略等
当社グループは、英語学習におけるラーニングツール及びテストシステムの提供等によるライセンス収入を安定的な成長の礎とし、以下3つの事業領域を中長期的な成長分野と位置付け、積極的に経営資源を投入し、事業拡大を図ることを中長期的な基本戦略としております。
① 教育プラットフォーム
450万人を超える英ナビ会員データベースを土台としたメディア事業および学習サービスの展開
② AIベースの技術ライセンス
既存のソフトウエア及びシステムに、AI-OCR、自然言語処理、レコメンドエンジン、試験監視システム等のAIベースの技術を実装し、教育分野においてAIベースの自動採点、添削システム、EdTech分野以外への展開を行うとともに、他分野・他市場へ展開し技術提供
③ テストセンター
直営及び委託会場を併せてCBTを提供するテストセンターを全国展開し、インフラ整備の上、テストシステムの拡充を図りCBT化を加速
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは、教育分野における能力測定技術・コンピュータやインターネットを用いたテスト及び教育ツールの研究に注力し、特に語学を中心として「CASEC」、「TEAP CBT」、「英検S-CBT」に代表される試験を提供し、項目応答理論を用いた正確な能力測定技術を強みとすることで他社との差別化をしてまいりました。また、英ナビ・スタディギアの会員基盤を対象として教育コンテンツ及び教育に関連した広告情報を提供し、教育プラットフォームの構築に努めてまいりました。さらに、独自のAI技術を活かし、AI-OCR、自動採点システム、オンライン試験監督システムの開発等に努めております。これらに加え、2020年6月より、テストセンター事業を本格的に開始し、各種試験のCBT化をシステム及びインフラ提供の両面から推進することとしております。 当社グループでは、今後の業容拡大及び経営基盤の強化のため、以下の課題に取り組んでまいります。
① ソフトウエア投資の拡大
当社グループが今後も継続的な成長を果たしていくためには、当社グループが開発したCBTシステムや大規模試験での利用が可能な記述式答案の採点システム等について、市場での優位性を確保するための製品機能の強化が今後も不可欠であると認識しております。さらに、当社グループの提供するラーニングツールは、携帯端末向けのアプリを介して提供されることが主流となりつつありますが、快適なラーニング環境を提供するために必要な資源と時間は確実に増大しています。
また、当社グループで開発を進めているAIを用いた手書き文字認識技術(AI-OCR)を活かすための周辺機能の開発及び導入環境の整備や、AIを活用したアダプティブラーニング等を他分野へ適用するための開発を加速させたいと考えております。
当社グループは、時代の要請により変化する市場と今後も加速するテクノロジーの進歩に素早く対応するため、さらなる製品機能の強化、オプション機能の開発等を通じて競合他社との差別化を図ってまいります。
② コンテンツ開発の強化
当社グループが展開するテスト商品及びラーニング商品は、時代の変化による問題の陳腐化を避けるため、継続的に新たなテスト問題の作成やラーニングのためのコンテンツ制作を行うことが不可欠です。また教育プラットフォーム事業において児童・生徒の学習への関心や意欲を高めるコンテンツの開発力を高めることが重要です。質の高いコンテンツ開発を担当する経験豊富な人材の供給は限られており、当社グループは、塾市場も含めた市場参加者との連携や海外での人材確保などを通じて、経験豊富な質の高い人材にアクセスし、優良な学習コンテンツのライブラリーの開発・提供を進めて商品の競争力を高めてまいります。
③ 海外拠点におけるソフトウエア開発・コンテンツ開発・採点業務の推進による生産性と収益性の向上
第一に、当社グループは、現在、ソフトウエア開発について自社の海外の開発拠点であるインドのプネにおいて開発エンジニア約45名体制で取り組んでいますが、この開発体制の増員及び強化を目的に、2020年7月にSmartCloud Infofusion Pvt.Ltdを買収し、約20名のエンジニアを確保いたしました。更に、アメリカのボストンおよびアイルランドのダブリンで、合わせてエンジニア9名体制で先端的なAIの開発に取り組んでおります。当社グループはこれらの体制の増員及び強化を通じて質の高い豊富な海外の開発リソースを確保し、ソフトウエア開発のみならずシステム運営業務の海外移転を積極的に推進いたします。これらを通じて、当社グループは、グループ全体のシステム開発及び運営の生産性の向上を目指してまいります。
第二に、英語関連コンテンツ開発及び採点業務について、2020年9月期中にEdutech Lab, Inc.への移管が完了いたしました。当社グループは、主要サービスである英語関連サービスの更なる品質向上のために、テスト理論や英語教育分野の修士・博士課程修了者を中心に高度な訓練を受けた人材を確保し、約15名の専門家集団及び約40名のコントラクターを活用して英語コンテンツの開発および採点業務を行っております。今後も事業の拡大に伴いグローバルなサプライチェーンを拡充し、さらなる生産性向上を実現してまいります。
第三に、当社グループは、英語以外の教科コンテンツ開発についてそれぞれの市場での開発をより一層促進し、各事業の拡大に伴い各国の指導要領、個別特殊事情にきめ細かく対応する体制を構築してまいります。
④ テストセンター事業の安定的運営と更なる拡大の両立
当社グループは、英検協会による1日で英語4技能を測定することができる受験形態の「S-CBT」の実施にあたり、その実施会場であるテストセンターの運営を、2020年6月より本格的に開始し、安定的なシステム運用を実現できる体制を構築いたしました。サービス開始後、着実に直営のテストセンターを確保し、2020年9月末現在で43拠点を確保しております。直営のテストセンターの拡大に伴い、テストセンターの賃料や会場運営等に係る固定費の発生に伴う稼働リスクが生じますが、今後この事業を安定的に運営し、S-CBT受験の普及・拡大及び英検協会以外の顧客の獲得等を通じて中長期にわたる事業拡大を実現してまいります。
⑤ 戦略的ビジネスパートナーとの連携強化に基づく教育プラットフォーム事業の拡大
当社グループは、株式会社旺文社と、2020年4月に買収を完了した株式会社教育デジタルソリューションズが展開する受験情報サービス「受験パスナビ」で、当社のAIレコメンデーションエンジン「CAERA」を導入し、中高・大学受験市場におけるマッチングサービスの強化を図ります。また、株式会社マイナビとの業務提携を通じて、株式会社マイナビのビジネスネットワークと当社の会員データベースを活用することにより、マッチングサービスを拡充してまいります。この他、現在展開している学習サービスをスタディギアブランドに統一し、英検の唯一の公式ラーニングサービスである「スタディギア for EIKEN」に続き、漢検および数検等、新たな公式ラーニングサービス等を展開するとともに、更に、英語や数学の無段階学習、高校受験、大学受験等に対応した教材や特典などを加えた学習サービスを、廉価な月額定額プランで提供する予定です。今後も、スタディギアブランドの価値を高めるために戦略パートナーとの更なる連携強化が重要であると認識しております。当社グループは、的確なマーケティング戦略及び営業戦略を通じて本事業の収益化を図ってまいります。
⑥ AI-OCR技術である「DEEP READ」の早期の事業応用とAI技術の活用領域の拡大
各種学力調査は、「知識・技能」を中心に問う手法から「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を総合的に評価する手法へと移行しつつあり、記述式の出題が増加する傾向にある一方、これに伴う採点費用も増加しています。当社グループは、大規模な学力調査における記述式解答の採点効率化の観点から、ディープラーニングに基づくAI技術を用いた高精度な手書き文字認識技術「DEEP READ」を開発してまいりました。当社グループは、早期に「DEEP READ」を事業応用し、記述式解答の採点プロセスのイノベーションを実現することで競合他社との差別化を図る方針です。また、この文字認識技術は教育IT分野のみならずOCR(光学的文字認識)関連市場など他分野にも応用可能な技術と考えており、他分野への技術転用を積極的に進め当社グループのビジネスの拡大を図ってまいります。このため、当社グループは、子会社DoubleYard Inc.を通じて、優秀なAI人材の確保と研究開発活動を積極的に進めております。日本市場のみならず中国、インド市場を含む他市場での同時展開を視野に活動しており、その一環として当社のアメリカ子会社のEdutech Lab, Inc.が企業内の各種文書を管理するECMソリューションを展開するEphesoft Inc.との資本業務提携を締結し、「DEEP READ」の海外展開を本格化しております。「DEAP READ」については、既に外資系大手金融機関、大手新聞社、大手BPO会社、政府関連機関、大学等との協業プロジェクト等の受注実績がありますが、これまで進めてまいりましたAPI環境の整備や、多様なユーザーニーズに応える提供形態(クラウドサービス型・オンプレミス型・クラウドとオンプレミスの複合型)を整えながら、将来の大規模な受注に向けて、精度面、機能面、サポート面の更なる強化を図ってまいります。
ディープラーニングを活用した技術及びサービスの開発手法は、他の分野へ応用することが比較的に容易であることから、当社グループは、手書き文字認識技術の開発で培ったAIを活用した開発力を他の分野に展開して当社グループ全体の商品及びサービスの競争力を高めていく方針です。当社グループがAIの活用を進める領域は、レコメンドエンジン(商品名:CAERA)、自然言語処理(英語:Natural Language Processing、略称:NLP)、自動作問システム(英語:Automatic Item Generation、略称:AIG)、オンライン試験監督システム(商品名:CheckPointZ)になります。これらの開発により、当社の全セグメントにおいて商品及びサービスの競争力の向上及び利益率の拡大を図ることができると考えております。
当社グループの開発する手書き文字認識技術、NLP等のAI技術の活用領域については、当社グループの従来の事業領域である文教市場のみならず、他の産業においても導入することで生産性の向上に資する可能性があると考えております。当社グループとしては、積極的に他の産業のパートナーとの協業を追求し、応用領域のみならず他産業への応用拡大を図りたいと考えております。
⑦ 大型公共プロジェクトの安定的運用
当社グループは、文部科学省が実施する令和3年度 全国学力・学習状況調査(小学校第6学年の児童を対象)を3年連続で受託、また、同じく令和3年度 全国学力・学習状況調査(中学校第3学年の生徒を対象)も、株式会社Z会の再委託機関として受託いたしました。更に、世界的にも先進的なIRTを用いて個人及び学年の経年的な学力の進捗を測定する埼玉県学力・学習状況調査を開始以来7年連続で受託しております。これらをはじめとした大型の公共プロジェクトを、当社グループの強みであるテスト理論、AIソフトウエアや採点システム等を活用して安定的かつ効率的に運用し、収益の安定化を図ってまいります。
⑧ 海外事業の早期収益化
海外事業の課題として、当社グループが現在営んでいる以下の事業の早期黒字化と事業拡大を図るとともに、香港、シンガポール、米国法人において引き続きロイヤリティ収入、キャピタルゲイン収入及び販売代理店収入の実現を図ります。
a) 中国自習室事業
当社グループは、2017年から中国において「アダプティブラーニング」を用いた民間教育団体(塾)向けの教材/システム提供サービス(サービス名「自習室」) の提供を開始し、2020年9月末時点で24省70都市、255の教室に導入されるに至りました。この間、中国政府の指導のもと、いくたびか大きな教育政策の変更、民間教育事業者への規制強化が実施されました。当社グループは、これらの新政策やガイダンスに対応し、さらに今後の更なる事業拡大及び発展を実現するため、強みである教育技術の提供に特化し、事業運営については現地パートナーに委ねる方針です。2020年9月末、当社グループは上海国昂技術開発有限公司との事業提携合意に至りました。今後、「自習室」事業運営については提携パートナーである上海国昂技術開発有限公司(とそのグループ会社)が引継ぎ、当社グループは事業継続に必要なシステムやコンテンツ等の提供に加え、さらに今後の事業展開に必要な新たな(AI関連等)技術の共同開発等、主にコア技術面でのサポートを行っていく予定です。中国における有力な国有企業との新たな事業提携に踏み出すことにより、当社グループが保有、開発する教育関連技術をベースに、中国教育市場でのライセンス事業の拡大及び発展を加速し、また教育分野以外で技術の展開を可能にする強固な足掛かりを得ることができたと考えております。
b) インド国内向けテスト事業
当社グループは、2016年に開始した中・高生対象の学習塾向けの単元テスト提供事業を再構築し、2017年より小・中高生を対象とした紙媒体での理系4科目のアチーブメントテスト及び単元テストを提供しております。2017年に小・中・高校に全国規模で直接営業網を持つSmartclass Educational Services社との排他的販売パートナー契約を締結し、2017年10月から2018年2月までの5ヶ月間の累計で約1万2,000テストを販売・実施いたしました。当社グループとしては、2020年5月より本格的に開始したオンラインのテスト・プラットフォームである「OneUp」の収益拡大等を通じて、引き続きインド国内のテスト事業の拡大を図りたいと考えております。
c) 米国内を中心としたEdTechベンチャー企業等への投資事業
米国Edutech Lab, Inc.の子会社として、2018年4月にEduLab Capital Management Company, LLCを米国ボストンに設立し、世界最大のEdTech市場である米国を中心に、中国、東南アジア、インド、日本のアーリーステージのEdTechベンチャー企業への投資加速を目的に活動を開始しました。過去数年、米国のGSV Acceleration Fund I、Fresco Capital Education Venture Fund I及びLearnLaunch Accelerator IIへのLP(Limited Liability Partner )投資を含め、当社グループは、米国で7社、東南アジアで2社、イスラエルで2社のEdTechベンチャーへの直接投資を行いましたが、急速に変化・成長する世界のEdTech市場の動向にタイムリーに呼応するために、上記のとおり別組織での投資事業展開をしております。今後は、当社グループの経営リソースを最大限活用した形で他のEdTechベンチャー投資ファンドとの差別化を図り、単なるキャピタルゲイン収入の追求のみならず、投資先の商材の他地域での展開等により収益確保も目指していきます。
⑨ 内部管理体制及びコーポレート・ガバナンスの強化
当社グループのさらなる事業の拡大、継続的な成長のためには、内部管理体制及びコーポレート・ガバナンスのさらなる強化が重要な課題であると認識しております。当社は、監査役と内部監査部門の連携、定期的な内部監査の実施、経営陣や従業員に対する研修の実施等を通じて、内部管理体制の一層の強化に取り組んでいく方針です。
⑩ ネットワークシステムの強化
当社グループの提供する事業は、テストやラーニングツールの配信・提供をするにあたり、コンピュータ・システムを結ぶ通信ネットワークに依存しています。自然災害や事故等により通信ネットワークが切断された場合には、当社グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループではセキュリティ対策やシステムの安定性確保に取り組み、海外でのインフラの二重化やバックアップ体制の構築などを通じて当社グループのサービス提供に支障が出るリスクを低減するための措置を充実していきます。
⑪ 人材の確保と育成
当社グループは日本市場のみならず海外市場での事業の拡大を見据え、研究開発、事業開発、営業・マーケティング、内部管理の全ての面において、海外オペレーションにも対応可能な優秀な人材の確保、採用、育成が重要な課題であると認識しております。特に、専門性の高いAIエンジニア、項目応答理論等のテスト理論の専門家、教育コンテンツ開発の専門家等を各海外拠点で積極的に採用してまいります。また、事業開発、ベンチャー投資分野においても専門性の高い人材の採用を積極的に進める予定です。新たに採用した人員に対しては充実した研修を実施するなど人材の育成に取り組んでおり、今後も採用と並行して新入社員への研修・教育制度を整備することで優秀な人材の確保・育成に取り組む方針です。
(1) 経営方針
当社グループは、「教育を科学する」をキーワードに、ラーニングサイエンスとEdTechで、次世代の教育をグローバルに実現する日本発のEdTechカンパニーを目指しております。
(2) 経営環境
国内教育市場は少子化の進行で大学受験者数が減少しているものの、英語教育は低年齢化し、2008年度からスタートしている小学5、6年生を対象とした小学校の英語教育は、2011年度に小学5年生から必修となり、さらに2020年度から小学3年生からの必修化、小学5年生からの教科化が実施されております。
また、大学入試制度改革における民間の英語資格・検定試験の採用は、当初2020年度から予定されておりましたが、2019年11月に文部科学省より延期が発表され、2024年度実施の共通テストに向けて、2020年度中に英語4技能のテストに関する方針について決定される予定です。英検協会では、1日で英語4技能を測定することができるコンピュータを用いた新しい受験形態の英検「S-CBT」を導入し、受験機会が従来の年3回実施から毎週末実施へと大幅に増加しております。このように、教育及びテストの両面においてICT化が加速しており、当社グループにとって大きな事業機会であると考えております。
一方、海外におきましては、アジアの人口増加及び経済発展により教育市場が引き続き拡大しております。教育市場として世界における最大市場である米国において教育のICT化が大きく成長を牽引し、変革の流れを加速させております。当社グループはこれを事業機会と捉え、アジア及び米国の開発拠点を通じて市場開拓に努めております。
<新型コロナウイルス感染症の影響について>足元の新型コロナウイルス感染症の拡大により、英検始め各種試験団体による大型会場での受験の中止や受験者数の減少が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。2020年9月期においては、文部科学省の令和2年度全国学力・学習状況調査(小学校6学年の児童を対象とした調査)の中止等により売上高に影響を受けました。また、販売先・取引先の事業活動が制限を受ける場合があり、2020年9月期においては広告事業において広告主の発注量に影響を受けました。一方で、学習やテスト受験のオンライン化、CBT化が加速化する傾向が顕著となっており、オンラインで完結する企業・学校向け英語能力判定テストの「CASEC」の受注・販売が順調に推移しました。さらに少人数で、かつ、新型コロナウイルス感染症対策が十分になされたテストセンターでの受験ニーズが高まることが予想されます。
(3) 経営戦略等
当社グループは、英語学習におけるラーニングツール及びテストシステムの提供等によるライセンス収入を安定的な成長の礎とし、以下3つの事業領域を中長期的な成長分野と位置付け、積極的に経営資源を投入し、事業拡大を図ることを中長期的な基本戦略としております。
① 教育プラットフォーム
450万人を超える英ナビ会員データベースを土台としたメディア事業および学習サービスの展開
② AIベースの技術ライセンス
既存のソフトウエア及びシステムに、AI-OCR、自然言語処理、レコメンドエンジン、試験監視システム等のAIベースの技術を実装し、教育分野においてAIベースの自動採点、添削システム、EdTech分野以外への展開を行うとともに、他分野・他市場へ展開し技術提供
③ テストセンター
直営及び委託会場を併せてCBTを提供するテストセンターを全国展開し、インフラ整備の上、テストシステムの拡充を図りCBT化を加速
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは、教育分野における能力測定技術・コンピュータやインターネットを用いたテスト及び教育ツールの研究に注力し、特に語学を中心として「CASEC」、「TEAP CBT」、「英検S-CBT」に代表される試験を提供し、項目応答理論を用いた正確な能力測定技術を強みとすることで他社との差別化をしてまいりました。また、英ナビ・スタディギアの会員基盤を対象として教育コンテンツ及び教育に関連した広告情報を提供し、教育プラットフォームの構築に努めてまいりました。さらに、独自のAI技術を活かし、AI-OCR、自動採点システム、オンライン試験監督システムの開発等に努めております。これらに加え、2020年6月より、テストセンター事業を本格的に開始し、各種試験のCBT化をシステム及びインフラ提供の両面から推進することとしております。 当社グループでは、今後の業容拡大及び経営基盤の強化のため、以下の課題に取り組んでまいります。
① ソフトウエア投資の拡大
当社グループが今後も継続的な成長を果たしていくためには、当社グループが開発したCBTシステムや大規模試験での利用が可能な記述式答案の採点システム等について、市場での優位性を確保するための製品機能の強化が今後も不可欠であると認識しております。さらに、当社グループの提供するラーニングツールは、携帯端末向けのアプリを介して提供されることが主流となりつつありますが、快適なラーニング環境を提供するために必要な資源と時間は確実に増大しています。
また、当社グループで開発を進めているAIを用いた手書き文字認識技術(AI-OCR)を活かすための周辺機能の開発及び導入環境の整備や、AIを活用したアダプティブラーニング等を他分野へ適用するための開発を加速させたいと考えております。
当社グループは、時代の要請により変化する市場と今後も加速するテクノロジーの進歩に素早く対応するため、さらなる製品機能の強化、オプション機能の開発等を通じて競合他社との差別化を図ってまいります。
② コンテンツ開発の強化
当社グループが展開するテスト商品及びラーニング商品は、時代の変化による問題の陳腐化を避けるため、継続的に新たなテスト問題の作成やラーニングのためのコンテンツ制作を行うことが不可欠です。また教育プラットフォーム事業において児童・生徒の学習への関心や意欲を高めるコンテンツの開発力を高めることが重要です。質の高いコンテンツ開発を担当する経験豊富な人材の供給は限られており、当社グループは、塾市場も含めた市場参加者との連携や海外での人材確保などを通じて、経験豊富な質の高い人材にアクセスし、優良な学習コンテンツのライブラリーの開発・提供を進めて商品の競争力を高めてまいります。
③ 海外拠点におけるソフトウエア開発・コンテンツ開発・採点業務の推進による生産性と収益性の向上
第一に、当社グループは、現在、ソフトウエア開発について自社の海外の開発拠点であるインドのプネにおいて開発エンジニア約45名体制で取り組んでいますが、この開発体制の増員及び強化を目的に、2020年7月にSmartCloud Infofusion Pvt.Ltdを買収し、約20名のエンジニアを確保いたしました。更に、アメリカのボストンおよびアイルランドのダブリンで、合わせてエンジニア9名体制で先端的なAIの開発に取り組んでおります。当社グループはこれらの体制の増員及び強化を通じて質の高い豊富な海外の開発リソースを確保し、ソフトウエア開発のみならずシステム運営業務の海外移転を積極的に推進いたします。これらを通じて、当社グループは、グループ全体のシステム開発及び運営の生産性の向上を目指してまいります。
第二に、英語関連コンテンツ開発及び採点業務について、2020年9月期中にEdutech Lab, Inc.への移管が完了いたしました。当社グループは、主要サービスである英語関連サービスの更なる品質向上のために、テスト理論や英語教育分野の修士・博士課程修了者を中心に高度な訓練を受けた人材を確保し、約15名の専門家集団及び約40名のコントラクターを活用して英語コンテンツの開発および採点業務を行っております。今後も事業の拡大に伴いグローバルなサプライチェーンを拡充し、さらなる生産性向上を実現してまいります。
第三に、当社グループは、英語以外の教科コンテンツ開発についてそれぞれの市場での開発をより一層促進し、各事業の拡大に伴い各国の指導要領、個別特殊事情にきめ細かく対応する体制を構築してまいります。
④ テストセンター事業の安定的運営と更なる拡大の両立
当社グループは、英検協会による1日で英語4技能を測定することができる受験形態の「S-CBT」の実施にあたり、その実施会場であるテストセンターの運営を、2020年6月より本格的に開始し、安定的なシステム運用を実現できる体制を構築いたしました。サービス開始後、着実に直営のテストセンターを確保し、2020年9月末現在で43拠点を確保しております。直営のテストセンターの拡大に伴い、テストセンターの賃料や会場運営等に係る固定費の発生に伴う稼働リスクが生じますが、今後この事業を安定的に運営し、S-CBT受験の普及・拡大及び英検協会以外の顧客の獲得等を通じて中長期にわたる事業拡大を実現してまいります。
⑤ 戦略的ビジネスパートナーとの連携強化に基づく教育プラットフォーム事業の拡大
当社グループは、株式会社旺文社と、2020年4月に買収を完了した株式会社教育デジタルソリューションズが展開する受験情報サービス「受験パスナビ」で、当社のAIレコメンデーションエンジン「CAERA」を導入し、中高・大学受験市場におけるマッチングサービスの強化を図ります。また、株式会社マイナビとの業務提携を通じて、株式会社マイナビのビジネスネットワークと当社の会員データベースを活用することにより、マッチングサービスを拡充してまいります。この他、現在展開している学習サービスをスタディギアブランドに統一し、英検の唯一の公式ラーニングサービスである「スタディギア for EIKEN」に続き、漢検および数検等、新たな公式ラーニングサービス等を展開するとともに、更に、英語や数学の無段階学習、高校受験、大学受験等に対応した教材や特典などを加えた学習サービスを、廉価な月額定額プランで提供する予定です。今後も、スタディギアブランドの価値を高めるために戦略パートナーとの更なる連携強化が重要であると認識しております。当社グループは、的確なマーケティング戦略及び営業戦略を通じて本事業の収益化を図ってまいります。
⑥ AI-OCR技術である「DEEP READ」の早期の事業応用とAI技術の活用領域の拡大
各種学力調査は、「知識・技能」を中心に問う手法から「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を総合的に評価する手法へと移行しつつあり、記述式の出題が増加する傾向にある一方、これに伴う採点費用も増加しています。当社グループは、大規模な学力調査における記述式解答の採点効率化の観点から、ディープラーニングに基づくAI技術を用いた高精度な手書き文字認識技術「DEEP READ」を開発してまいりました。当社グループは、早期に「DEEP READ」を事業応用し、記述式解答の採点プロセスのイノベーションを実現することで競合他社との差別化を図る方針です。また、この文字認識技術は教育IT分野のみならずOCR(光学的文字認識)関連市場など他分野にも応用可能な技術と考えており、他分野への技術転用を積極的に進め当社グループのビジネスの拡大を図ってまいります。このため、当社グループは、子会社DoubleYard Inc.を通じて、優秀なAI人材の確保と研究開発活動を積極的に進めております。日本市場のみならず中国、インド市場を含む他市場での同時展開を視野に活動しており、その一環として当社のアメリカ子会社のEdutech Lab, Inc.が企業内の各種文書を管理するECMソリューションを展開するEphesoft Inc.との資本業務提携を締結し、「DEEP READ」の海外展開を本格化しております。「DEAP READ」については、既に外資系大手金融機関、大手新聞社、大手BPO会社、政府関連機関、大学等との協業プロジェクト等の受注実績がありますが、これまで進めてまいりましたAPI環境の整備や、多様なユーザーニーズに応える提供形態(クラウドサービス型・オンプレミス型・クラウドとオンプレミスの複合型)を整えながら、将来の大規模な受注に向けて、精度面、機能面、サポート面の更なる強化を図ってまいります。
ディープラーニングを活用した技術及びサービスの開発手法は、他の分野へ応用することが比較的に容易であることから、当社グループは、手書き文字認識技術の開発で培ったAIを活用した開発力を他の分野に展開して当社グループ全体の商品及びサービスの競争力を高めていく方針です。当社グループがAIの活用を進める領域は、レコメンドエンジン(商品名:CAERA)、自然言語処理(英語:Natural Language Processing、略称:NLP)、自動作問システム(英語:Automatic Item Generation、略称:AIG)、オンライン試験監督システム(商品名:CheckPointZ)になります。これらの開発により、当社の全セグメントにおいて商品及びサービスの競争力の向上及び利益率の拡大を図ることができると考えております。
当社グループの開発する手書き文字認識技術、NLP等のAI技術の活用領域については、当社グループの従来の事業領域である文教市場のみならず、他の産業においても導入することで生産性の向上に資する可能性があると考えております。当社グループとしては、積極的に他の産業のパートナーとの協業を追求し、応用領域のみならず他産業への応用拡大を図りたいと考えております。
⑦ 大型公共プロジェクトの安定的運用
当社グループは、文部科学省が実施する令和3年度 全国学力・学習状況調査(小学校第6学年の児童を対象)を3年連続で受託、また、同じく令和3年度 全国学力・学習状況調査(中学校第3学年の生徒を対象)も、株式会社Z会の再委託機関として受託いたしました。更に、世界的にも先進的なIRTを用いて個人及び学年の経年的な学力の進捗を測定する埼玉県学力・学習状況調査を開始以来7年連続で受託しております。これらをはじめとした大型の公共プロジェクトを、当社グループの強みであるテスト理論、AIソフトウエアや採点システム等を活用して安定的かつ効率的に運用し、収益の安定化を図ってまいります。
⑧ 海外事業の早期収益化
海外事業の課題として、当社グループが現在営んでいる以下の事業の早期黒字化と事業拡大を図るとともに、香港、シンガポール、米国法人において引き続きロイヤリティ収入、キャピタルゲイン収入及び販売代理店収入の実現を図ります。
a) 中国自習室事業
当社グループは、2017年から中国において「アダプティブラーニング」を用いた民間教育団体(塾)向けの教材/システム提供サービス(サービス名「自習室」) の提供を開始し、2020年9月末時点で24省70都市、255の教室に導入されるに至りました。この間、中国政府の指導のもと、いくたびか大きな教育政策の変更、民間教育事業者への規制強化が実施されました。当社グループは、これらの新政策やガイダンスに対応し、さらに今後の更なる事業拡大及び発展を実現するため、強みである教育技術の提供に特化し、事業運営については現地パートナーに委ねる方針です。2020年9月末、当社グループは上海国昂技術開発有限公司との事業提携合意に至りました。今後、「自習室」事業運営については提携パートナーである上海国昂技術開発有限公司(とそのグループ会社)が引継ぎ、当社グループは事業継続に必要なシステムやコンテンツ等の提供に加え、さらに今後の事業展開に必要な新たな(AI関連等)技術の共同開発等、主にコア技術面でのサポートを行っていく予定です。中国における有力な国有企業との新たな事業提携に踏み出すことにより、当社グループが保有、開発する教育関連技術をベースに、中国教育市場でのライセンス事業の拡大及び発展を加速し、また教育分野以外で技術の展開を可能にする強固な足掛かりを得ることができたと考えております。
b) インド国内向けテスト事業
当社グループは、2016年に開始した中・高生対象の学習塾向けの単元テスト提供事業を再構築し、2017年より小・中高生を対象とした紙媒体での理系4科目のアチーブメントテスト及び単元テストを提供しております。2017年に小・中・高校に全国規模で直接営業網を持つSmartclass Educational Services社との排他的販売パートナー契約を締結し、2017年10月から2018年2月までの5ヶ月間の累計で約1万2,000テストを販売・実施いたしました。当社グループとしては、2020年5月より本格的に開始したオンラインのテスト・プラットフォームである「OneUp」の収益拡大等を通じて、引き続きインド国内のテスト事業の拡大を図りたいと考えております。
c) 米国内を中心としたEdTechベンチャー企業等への投資事業
米国Edutech Lab, Inc.の子会社として、2018年4月にEduLab Capital Management Company, LLCを米国ボストンに設立し、世界最大のEdTech市場である米国を中心に、中国、東南アジア、インド、日本のアーリーステージのEdTechベンチャー企業への投資加速を目的に活動を開始しました。過去数年、米国のGSV Acceleration Fund I、Fresco Capital Education Venture Fund I及びLearnLaunch Accelerator IIへのLP(Limited Liability Partner )投資を含め、当社グループは、米国で7社、東南アジアで2社、イスラエルで2社のEdTechベンチャーへの直接投資を行いましたが、急速に変化・成長する世界のEdTech市場の動向にタイムリーに呼応するために、上記のとおり別組織での投資事業展開をしております。今後は、当社グループの経営リソースを最大限活用した形で他のEdTechベンチャー投資ファンドとの差別化を図り、単なるキャピタルゲイン収入の追求のみならず、投資先の商材の他地域での展開等により収益確保も目指していきます。
⑨ 内部管理体制及びコーポレート・ガバナンスの強化
当社グループのさらなる事業の拡大、継続的な成長のためには、内部管理体制及びコーポレート・ガバナンスのさらなる強化が重要な課題であると認識しております。当社は、監査役と内部監査部門の連携、定期的な内部監査の実施、経営陣や従業員に対する研修の実施等を通じて、内部管理体制の一層の強化に取り組んでいく方針です。
⑩ ネットワークシステムの強化
当社グループの提供する事業は、テストやラーニングツールの配信・提供をするにあたり、コンピュータ・システムを結ぶ通信ネットワークに依存しています。自然災害や事故等により通信ネットワークが切断された場合には、当社グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループではセキュリティ対策やシステムの安定性確保に取り組み、海外でのインフラの二重化やバックアップ体制の構築などを通じて当社グループのサービス提供に支障が出るリスクを低減するための措置を充実していきます。
⑪ 人材の確保と育成
当社グループは日本市場のみならず海外市場での事業の拡大を見据え、研究開発、事業開発、営業・マーケティング、内部管理の全ての面において、海外オペレーションにも対応可能な優秀な人材の確保、採用、育成が重要な課題であると認識しております。特に、専門性の高いAIエンジニア、項目応答理論等のテスト理論の専門家、教育コンテンツ開発の専門家等を各海外拠点で積極的に採用してまいります。また、事業開発、ベンチャー投資分野においても専門性の高い人材の採用を積極的に進める予定です。新たに採用した人員に対しては充実した研修を実施するなど人材の育成に取り組んでおり、今後も採用と並行して新入社員への研修・教育制度を整備することで優秀な人材の確保・育成に取り組む方針です。