訂正有価証券報告書-第5期(平成30年10月1日-令和1年9月30日)
有報資料
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「教育を科学する」をキーワードに、ラーニングサイエンスとEdTechで、次世代の教育をグローバルに実現する日本発のEdTechカンパニーを目指しております。
(2) 経営環境
国内教育市場は少子化の進行で大学受験者数が減少しているものの、英語教育は低年齢化し、2008年度からスタートしている小学5、6年生を対象とした小学校の英語教育は、2011年度に小学5年生から必修となり、さらに2020年には小学3年生からの必修化、小学5年生からの教科化が実施される予定です。
また、大学入試制度改革における民間の英語資格・検定試験の採用は、当初2020年から予定されておりましたが、2019年11月に文部科学省より延期が発表され、2024年度実施の共通テストに向けて2020年度中に英語4技能のテストに関する方針について決定することとなりました。同省は、大学入試において同一日程一斉実施型の共通テストでは「話す」「書く」能力を含めた試験を国が実施することは実質不可能であることから、既に民間事業者等により広く実施され、英語の4技能評価において一定の評価を受けている資格・検定試験の活用を推進することが必要であるとしています。英検協会では、この需要に応えるために1日で英語4技能を測定することができるコンピュータを用いた新しい受験形態の英検「S-CBT」を導入し、受験機会を従来の年3回実施から4月から11月の毎週末実施へと大幅に増やす予定です。このように、教育及びテストの両面においてICT化が不可欠となる等、現在の国内教育市場の動きは当社グループにとって引き続き大きな事業機会となると考えております。
また、海外においても、アジアの人口増加及び経済発展により教育市場が拡大する一方で、最大である米国市場においても教育ICT化が大きく進む等変革の流れを加速させております。当社グループはこれを事業機会と捉え、アジア及び米国の拠点開設を積極的に行って事業拡大を図ります。
(3) 経営戦略等
当社グループの今後の中期的な基本戦略は、次のとおりです。
① 英語学習の4技能化、民間の英語資格・検定試験の活用を契機とする商品及びサービスの開発
② ラーニングツールの拡充
③ 英ナビ会員をベースとする多教科プラットフォームの確立
④ 各種テストの実施及び実施インフラの拡充
⑤ AI-OCR・アダプティブエンジン等のAI技術を軸とするEdTech投資と新しい事業領域の拡大
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは、教育分野における能力測定技術・コンピュータやインターネットを用いたテスト及び教育ツールの研究に注力し、特に語学を中心として「CASEC」、「TEAP CBT」に代表される試験サービスを提供し、項目応答理論を用いた正確な能力測定技術を強みとすることで他社との差別化をしてまいりました。 当社グループでは、今後の業容拡大及び経営基盤の強化のため、以下の課題に取り組んでまいります。
① ソフトウエア投資の拡大
当社グループが今後も継続的な成長を果たしていくためには、当社グループが開発したIRTを実装したCBTシステムや大規模試験での利用が可能な記述式答案の採点システムについて、市場での優位性を確保するために製品機能の強化が今後も必要不可欠であると認識しております。また、当社グループの提供するラーニングツールは、携帯端末向けのアプリを介して提供されることが主流となりつつあり、快適なラーニング環境を提供するためにも携帯端末向けのアプリ開発に対する投資をこれまで以上に拡大していく必要があると考えております。
さらに、当社グループで開発を進めているAIを用いた手書き文字認識技術を活かすための周辺の開発及び導入環境の整備や、AIを活用したアダプティブラーニング等を英語学習以外の他分野へ適用するための開発も加速させたいと考えております。
当社グループは、時代の要請により変化する市場を見据え、今後も加速するテクノロジーの進歩に素早く対応できるよう製品機能の強化やオプション機能の開発等により、さらなる製品機能を充実させ、競合他社との差別化を図ってまいります。
② コンテンツ開発の強化
当社グループが展開するテスト商品及びラーニング商品は、時代の変化によるコンテンツの陳腐化を避けるため、継続的に新たなテスト問題の作成やラーニングのためのコンテンツ制作を行うことが不可欠です。また多教科プラットフォーム事業において児童・生徒の学習への関心や意欲を高めるコンテンツの開発力を高める必要があります。質の高いコンテンツ開発を担当する経験豊富な人材の供給は限られています。当社グループは、塾市場も含めた市場参加者との連携等を通じて、経験豊富な質の高い人材にアクセスし、優良な学習コンテンツのライブラリーの開発・提供を進めて商品の競争力を高めてまいります。
③ 海外拠点におけるソフトウエア開発・コンテンツ開発・採点業務の推進による生産性と収益性の向上
第一に、当社グループは、現在、ソフトウエア開発について自社の海外の開発拠点であるインドのプネにおいて開発エンジニア約35名体制で取り組むとともに、中国の江蘇省無錫市の拠点において、中国市場向けソフトウエアの開発について開発エンジニア約15名体制で取り組んでおりますが、今後もこの増員及び強化を図ってまいります。また、アメリカのボストンでは、AIの先端的な開発を担うエンジニア5名体制で取り組んでいますが、より多くの優秀なエンジニアを獲得するため、他の地域への拠点拡大も視野に入れて体制の強化を図ってまいります。当社グループはこれらの体制の増員及び強化を通じて質の高い豊富な海外の開発リソースを確保し、ソフトウエア開発及びシステム運営業務の海外移転を積極的に推進いたします。これにより、当社グループは、さらなる原価低減及び開発スピードの向上を図り、グループ全体のシステム開発及び運営の生産性の向上を目指してまいります。
第二に、英語関連コンテンツ開発及び採点業務について、2020年度を目処にEdutech Lab, Inc.への完全移管を予定しております。当社グループは、主要サービスである英語関連サービスの更なる品質向上のために、テスト理論や英語教育分野における修士・博士課程修了者を中心に高度な訓練を受けた人材を確保してまいります。Edutech Lab, Inc.は約10名の専門家集団に加えて、その下に常時約20名のコントラクター(繁忙期には100名まで拡張可能)と契約し英語コンテンツの開発業務を行っております。事業の拡大に伴いグローバルなサプライチェーンを拡充し、さらなる生産性向上を実現してまいります。
第三に、当社グループは、英語以外の教科コンテンツ開発において各市場での開発・ローカライゼーションを推進し、各国の指導要領、個別特殊事情にきめ細かく対応する体制の構築を進めたいと考えております。
④ テストセンター事業の着実な立ち上げと収益化
当社グループは英検協会が導入する予定である1日で英語4技能を測定することができる新しい受験形態の「S-CBT」の実施にあたり、その実施会場であるテストセンターを全国に展開し運営を開始いたします。これは当社グループにとって新規事業であり、テストセンターの調達に係る費用として賃料や会場運営等に係る固定費の発生に伴う稼働リスクや、安定的なシステム運用に係るリスクが想定されます。この事業を着実に立ち上げ、安定的に運用し、e-Testing/e-Learning事業の継続的な成長を実現いたします。
⑤ 株式会社旺文社等との業務提携に基づく「スタディチャンネル」ブランドでの多教科プラットフォームの提供等及び教育メディアサービスの確立
当社グループは、株式会社旺文社による資本参加を受けて小中学生を対象とする学習コンテンツ・サービスを開始いたしました。本事業は、当社グループが英検受験者をはじめ英語学習者に広く提供している英ナビ会員(2019年9月30日現在で約336万人)に対し、英語を含む5教科について、学習する際の“つまずき”をなくすための学習解説動画及びドリル学習を小中学生に無償提供するサービスです。本サービスは、主にアプリ及びコンテンツ開発のための先行投資を必要とする一方、主な収益源として、教育コンテンツを保有するパートナーからのプラットフォーム利用料、広告収入、月額課金収入(プレミアム会員費)、有料コンテンツ販売を予定しております。本事業の収益化のためには、着実に広告主に対して英ナビ会員の属性データの価値を訴求するとともに、個人及び法人のコンテンツユーザーを獲得し、「スタディチャンネル」のメディアとしての価値を高めていくこと、その結果として、更なる教育コンテンツパートナーとの連携を図っていくことが重要であると認識しております。当社グループは、代理店の活用も含めたマーケティング及び営業戦略を通じて顧客基盤及びコンテンツユーザー拡大を通じて本事業の収益化を図ってまいります。
⑥ AI-OCR技術である「Deep Read」の事業応用とその他AI技術の活用領域の拡大
各種学力調査は、「知識・技能」を中心に問う手法から「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を総合的に評価する手法へと移行しつつあり、記述式の出題が増加する傾向にある一方、これに伴う採点費用も増加することが見込まれます。当社グループは、大規模な学力調査における記述式解答の採点効率化の観点から、ディープラーニングに基づくAI技術を用いた高精度な手書き文字認識技術「Deep Read」を開発し、実践投入してまいりました。当社グループは、早期に「Deep Read」の応用拡大を通じて、記述式解答の採点プロセスのイノベーションを先導し、競合他社との差別化を図ってまいります。また、この文字認識技術をAI-OCR(光学的文字認識)市場をはじめとする新分野への技術転用を積極的に進め、当社グループの事業分野の拡大を図ってまいります。当社グループは、2018年4月に米国ボストンに設立したDoubleYard Inc.を通じて、優秀なAI人材の確保と研究開発活動を積極的に進めており、日本市場のみならず北米、中国、インド市場を含む他市場での同時展開を視野に活動を開始しております。その一環として当社のアメリカ子会社のEdutech Lab, Inc.が企業内の各種文書を管理するECMソリューションを展開するEphesoft Inc.との資本業務提携を締結し、「Deep Read」の海外展開を本格化させる予定です。既に、外資系大手金融機関、大手新聞社、大手BPO会社、政府関連機関、大学等との協業プロジェクト等の受注実績がありますが、昨年来進めてまいりましたAPI環境の整備や、多様なユーザーニーズに応える提供形態(クラウドサービス型・オンプレミス型・クラウドとオンプレミスの複合型)を整える等、将来の大規模な受注に向けて商品ラインアップを強化しております。
ディープラーニングを活用した技術及びサービスの開発手法は、他の分野へ応用することが比較的に容易であることから、当社グループは、手書き文字認識技術の開発で培ったAIを活用した開発力を他の分野に展開して当社グループ全体の商品及びサービスの競争力を高めていく方針です。当社グループがAIの活用を進める予定の領域として、自然言語処理(英語:Natural Language Processing、略称:NLP)とアダプティブエンジン(個人適応型学習管理システム)を考えております。これらの開発により、当社の全セグメントにおいて商品及びサービスの競争力の向上及び利益率の拡大を図ります。
当社グループの開発する手書き文字認識技術、NLP等のAI技術の活用領域については、当社グループの従来の事業領域である文教市場のみならず、他の産業においても導入することで生産性の向上に資する可能性があると考えております。当社グループとしては、積極的に他の産業のパートナーとの協業を追求し、応用領域及び他産業への応用拡大を図りたいと考えております。
⑦ 大型公共プロジェクトの安定的運用
当社グループは、文部科学省が実施する令和2年度 全国学力・学習状況調査(小学校第6学年の児童を対象)を前年度に続いて2年連続で受託し、また、世界的にも先進的なIRTを用いて個人及び学年の経年的な学力の進捗を測定する埼玉県学力・学習状況調査も開始以来6年連続で受託しております。これらをはじめとした大型の公共プロジェクトを、当社グループの強みであるテスト理論、AIソフトウエアや採点システム等を活用して安定的かつ効率的に運用し、収益の安定化を図ってまいります。
⑧ 海外事業の早期収益化
海外事業の課題として、当社グループが現在営んでいる以下の事業の早期黒字化と事業拡大を図るとともに、香港、シンガポール、米国法人において早期にロイヤリティ収入、キャピタルゲイン収入及び販売代理店収入の実現を図ります。
a) 中国自習室事業
約2年間のシステム及びコンテンツの開発準備期間を経て、当社グループは、2017年夏より、新しい指導コンセプトである反転授業(Flipped Classroom)(注)を基本に、家庭学習と個人学習履歴のデータ分析をベースとしたコーチング型小学生向け個別指導学習塾事業を算数及び国語の2教科をはじめとして展開中です。現在、江蘇省無錫市において直営校を運営し、またその他地域は地域代理店契約の締結等の事業提携を同時に推進しており、2019年9月30日現在、華北、華東、中原及び華南省へ事業展開を進め、中国全国の展開都市数は17省58都市、運営する教室数は140、有料生徒登録数は約11,000人となっております。教材はオンラインと紙媒体の双方で提供しております。事業収入の形態には、直営店運営収入及びコース授権料及び授権校への教材とシステム提供によるロイヤリティ収入があります。今後の経営課題としては、早期の単年度黒字化及び中学生事業の展開を含めた更なる事業拡大、上海教材開発拠点及び無錫システム開発拠点の拡充、内部管理の体制強化、AI機能を備えたアダプティブエンジンの既存システムへの搭載による個人学習履歴のデータ分析の精度向上等があげられます。
(注)ブレンド型学習の形態のひとつで、生徒たちは新たな学習内容を、通常は自宅でビデオ授業を視聴して予習し、教室では講義は行わず、従来であれば宿題とされていた課題について、教師が個々の生徒に合わせた指導を与え、また、生徒が他の生徒と協働しながら取り組む形態の授業をいう。
b) インド国内向けテスト事業
当社グループは、2016年に開始した中・高生対象の学習塾向けの単元テスト提供事業を再構築し、2017年より小・中高生を対象とした紙媒体での理系4科目のアチーブメントテスト及び単元テストを提供しております。2017年に小・中・高校に全国規模で直接営業網を持つSmartclass Educational Services社との排他的販売パートナー契約を締結し、2017年10月から2018年2月までの5ヶ月間の累計で約1万2,000テストを販売・実施した実績があります。当社グループとしては引き続きインド国内のテスト事業の拡大を図りたいと考えております。今後の課題としては、当社グループでインドのオフショア開発会社であるJIEM India Private Limitedと本テスト事業を担ってきたKyoshi Education Private Limitedを合併することでシステム開発とコンテンツ開発のシナジー効果を生み、テスト商品をCBT化して市場投入することがあげられます。
c) 米国内を中心としたEdTechベンチャー企業等への投資事業
米国Edutech Lab, Inc.の子会社として、2018年4月にEduLab Capital Management Company, LLCを米国ボストンに設立し、世界最大のEdTech市場である米国を中心に、中国、東南アジア、インド、日本のアーリステージのEdTechベンチャー企業への投資加速を目的に活動を開始しました。過去数年、米国のGSV Acceleration Fund I、Fresco Capital Education Venture Fund I及びLearnLaunch Accelerator IIへのLP(Limited Liability Partner )投資を含め、当社グループは、米国で7社、アジアで4社、イスラエルで2社のEdTechベンチャー企業へ、米国で新たに1社のECM企業へ直接投資を行いましたが、急速に変化・成長する世界のEdTech市場の動向にタイムリーに呼応するため、別のファンド組織を通じて投資事業を展開しております。今後は、当社グループの経営リソースを最大限活用した形で他のEdTechベンチャー投資ファンドとの差別化を図り、キャピタルゲイン収入に加えて、EphesoftのECMソリューションを日本で販売する等を一例とする投資先の商材の他地域での展開等により収益確保も目指していきます。
⑨ 内部管理体制及びコーポレート・ガバナンスの強化
当社グループのさらなる事業の拡大、継続的な成長のためには、内部管理体制及びコーポレート・ガバナンスのさらなる強化が重要な課題であると認識しております。当社は、監査役と内部監査部門の連携、定期的な内部監査の実施、経営陣や従業員に対する研修の実施等を通じて、内部管理体制の一層の強化に取り組んでいく方針です。
⑩ ネットワークシステムの強化
当社グループの提供する事業は、テストやラーニングツールの配信・提供をするにあたり、コンピュータ・システムを結ぶ通信ネットワークに依存しています。自然災害や事故等により通信ネットワークが切断された場合には、当社グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループではセキュリティ対策やシステムの安定性確保に取り組み、海外でのインフラの二重化やバックアップ体制の構築などを通じて当社グループのサービス提供に支障が出るリスクを低減するための措置を充実していきます。
⑪ 人材の確保と育成
当社グループは日本市場のみならず海外市場での事業の拡大を見据え、研究開発、事業開発、営業・マーケティング、内部管理の全ての面において、海外オペレーションにも対応可能な優秀な人材の確保、採用、育成が重要な課題であると認識しております。特に、専門性の高いAIエンジニア、項目応答理論等のテスト理論の専門家、教育コンテンツ開発の専門家等を各海外拠点で積極的に採用してまいります。また、事業開発、ベンチャー投資分野においても専門性の高い人材の採用を積極的に進める予定です。新たに採用した人員に対しては充実した研修を実施するなど人材の育成に取り組んでおり、今後も採用と並行して新入社員への研修・教育制度を整備することで優秀な人材の確保・育成に取り組む方針です。
(1) 経営方針
当社グループは、「教育を科学する」をキーワードに、ラーニングサイエンスとEdTechで、次世代の教育をグローバルに実現する日本発のEdTechカンパニーを目指しております。
(2) 経営環境
国内教育市場は少子化の進行で大学受験者数が減少しているものの、英語教育は低年齢化し、2008年度からスタートしている小学5、6年生を対象とした小学校の英語教育は、2011年度に小学5年生から必修となり、さらに2020年には小学3年生からの必修化、小学5年生からの教科化が実施される予定です。
また、大学入試制度改革における民間の英語資格・検定試験の採用は、当初2020年から予定されておりましたが、2019年11月に文部科学省より延期が発表され、2024年度実施の共通テストに向けて2020年度中に英語4技能のテストに関する方針について決定することとなりました。同省は、大学入試において同一日程一斉実施型の共通テストでは「話す」「書く」能力を含めた試験を国が実施することは実質不可能であることから、既に民間事業者等により広く実施され、英語の4技能評価において一定の評価を受けている資格・検定試験の活用を推進することが必要であるとしています。英検協会では、この需要に応えるために1日で英語4技能を測定することができるコンピュータを用いた新しい受験形態の英検「S-CBT」を導入し、受験機会を従来の年3回実施から4月から11月の毎週末実施へと大幅に増やす予定です。このように、教育及びテストの両面においてICT化が不可欠となる等、現在の国内教育市場の動きは当社グループにとって引き続き大きな事業機会となると考えております。
また、海外においても、アジアの人口増加及び経済発展により教育市場が拡大する一方で、最大である米国市場においても教育ICT化が大きく進む等変革の流れを加速させております。当社グループはこれを事業機会と捉え、アジア及び米国の拠点開設を積極的に行って事業拡大を図ります。
(3) 経営戦略等
当社グループの今後の中期的な基本戦略は、次のとおりです。
① 英語学習の4技能化、民間の英語資格・検定試験の活用を契機とする商品及びサービスの開発
② ラーニングツールの拡充
③ 英ナビ会員をベースとする多教科プラットフォームの確立
④ 各種テストの実施及び実施インフラの拡充
⑤ AI-OCR・アダプティブエンジン等のAI技術を軸とするEdTech投資と新しい事業領域の拡大
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは、教育分野における能力測定技術・コンピュータやインターネットを用いたテスト及び教育ツールの研究に注力し、特に語学を中心として「CASEC」、「TEAP CBT」に代表される試験サービスを提供し、項目応答理論を用いた正確な能力測定技術を強みとすることで他社との差別化をしてまいりました。 当社グループでは、今後の業容拡大及び経営基盤の強化のため、以下の課題に取り組んでまいります。
① ソフトウエア投資の拡大
当社グループが今後も継続的な成長を果たしていくためには、当社グループが開発したIRTを実装したCBTシステムや大規模試験での利用が可能な記述式答案の採点システムについて、市場での優位性を確保するために製品機能の強化が今後も必要不可欠であると認識しております。また、当社グループの提供するラーニングツールは、携帯端末向けのアプリを介して提供されることが主流となりつつあり、快適なラーニング環境を提供するためにも携帯端末向けのアプリ開発に対する投資をこれまで以上に拡大していく必要があると考えております。
さらに、当社グループで開発を進めているAIを用いた手書き文字認識技術を活かすための周辺の開発及び導入環境の整備や、AIを活用したアダプティブラーニング等を英語学習以外の他分野へ適用するための開発も加速させたいと考えております。
当社グループは、時代の要請により変化する市場を見据え、今後も加速するテクノロジーの進歩に素早く対応できるよう製品機能の強化やオプション機能の開発等により、さらなる製品機能を充実させ、競合他社との差別化を図ってまいります。
② コンテンツ開発の強化
当社グループが展開するテスト商品及びラーニング商品は、時代の変化によるコンテンツの陳腐化を避けるため、継続的に新たなテスト問題の作成やラーニングのためのコンテンツ制作を行うことが不可欠です。また多教科プラットフォーム事業において児童・生徒の学習への関心や意欲を高めるコンテンツの開発力を高める必要があります。質の高いコンテンツ開発を担当する経験豊富な人材の供給は限られています。当社グループは、塾市場も含めた市場参加者との連携等を通じて、経験豊富な質の高い人材にアクセスし、優良な学習コンテンツのライブラリーの開発・提供を進めて商品の競争力を高めてまいります。
③ 海外拠点におけるソフトウエア開発・コンテンツ開発・採点業務の推進による生産性と収益性の向上
第一に、当社グループは、現在、ソフトウエア開発について自社の海外の開発拠点であるインドのプネにおいて開発エンジニア約35名体制で取り組むとともに、中国の江蘇省無錫市の拠点において、中国市場向けソフトウエアの開発について開発エンジニア約15名体制で取り組んでおりますが、今後もこの増員及び強化を図ってまいります。また、アメリカのボストンでは、AIの先端的な開発を担うエンジニア5名体制で取り組んでいますが、より多くの優秀なエンジニアを獲得するため、他の地域への拠点拡大も視野に入れて体制の強化を図ってまいります。当社グループはこれらの体制の増員及び強化を通じて質の高い豊富な海外の開発リソースを確保し、ソフトウエア開発及びシステム運営業務の海外移転を積極的に推進いたします。これにより、当社グループは、さらなる原価低減及び開発スピードの向上を図り、グループ全体のシステム開発及び運営の生産性の向上を目指してまいります。
第二に、英語関連コンテンツ開発及び採点業務について、2020年度を目処にEdutech Lab, Inc.への完全移管を予定しております。当社グループは、主要サービスである英語関連サービスの更なる品質向上のために、テスト理論や英語教育分野における修士・博士課程修了者を中心に高度な訓練を受けた人材を確保してまいります。Edutech Lab, Inc.は約10名の専門家集団に加えて、その下に常時約20名のコントラクター(繁忙期には100名まで拡張可能)と契約し英語コンテンツの開発業務を行っております。事業の拡大に伴いグローバルなサプライチェーンを拡充し、さらなる生産性向上を実現してまいります。
第三に、当社グループは、英語以外の教科コンテンツ開発において各市場での開発・ローカライゼーションを推進し、各国の指導要領、個別特殊事情にきめ細かく対応する体制の構築を進めたいと考えております。
④ テストセンター事業の着実な立ち上げと収益化
当社グループは英検協会が導入する予定である1日で英語4技能を測定することができる新しい受験形態の「S-CBT」の実施にあたり、その実施会場であるテストセンターを全国に展開し運営を開始いたします。これは当社グループにとって新規事業であり、テストセンターの調達に係る費用として賃料や会場運営等に係る固定費の発生に伴う稼働リスクや、安定的なシステム運用に係るリスクが想定されます。この事業を着実に立ち上げ、安定的に運用し、e-Testing/e-Learning事業の継続的な成長を実現いたします。
⑤ 株式会社旺文社等との業務提携に基づく「スタディチャンネル」ブランドでの多教科プラットフォームの提供等及び教育メディアサービスの確立
当社グループは、株式会社旺文社による資本参加を受けて小中学生を対象とする学習コンテンツ・サービスを開始いたしました。本事業は、当社グループが英検受験者をはじめ英語学習者に広く提供している英ナビ会員(2019年9月30日現在で約336万人)に対し、英語を含む5教科について、学習する際の“つまずき”をなくすための学習解説動画及びドリル学習を小中学生に無償提供するサービスです。本サービスは、主にアプリ及びコンテンツ開発のための先行投資を必要とする一方、主な収益源として、教育コンテンツを保有するパートナーからのプラットフォーム利用料、広告収入、月額課金収入(プレミアム会員費)、有料コンテンツ販売を予定しております。本事業の収益化のためには、着実に広告主に対して英ナビ会員の属性データの価値を訴求するとともに、個人及び法人のコンテンツユーザーを獲得し、「スタディチャンネル」のメディアとしての価値を高めていくこと、その結果として、更なる教育コンテンツパートナーとの連携を図っていくことが重要であると認識しております。当社グループは、代理店の活用も含めたマーケティング及び営業戦略を通じて顧客基盤及びコンテンツユーザー拡大を通じて本事業の収益化を図ってまいります。
⑥ AI-OCR技術である「Deep Read」の事業応用とその他AI技術の活用領域の拡大
各種学力調査は、「知識・技能」を中心に問う手法から「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を総合的に評価する手法へと移行しつつあり、記述式の出題が増加する傾向にある一方、これに伴う採点費用も増加することが見込まれます。当社グループは、大規模な学力調査における記述式解答の採点効率化の観点から、ディープラーニングに基づくAI技術を用いた高精度な手書き文字認識技術「Deep Read」を開発し、実践投入してまいりました。当社グループは、早期に「Deep Read」の応用拡大を通じて、記述式解答の採点プロセスのイノベーションを先導し、競合他社との差別化を図ってまいります。また、この文字認識技術をAI-OCR(光学的文字認識)市場をはじめとする新分野への技術転用を積極的に進め、当社グループの事業分野の拡大を図ってまいります。当社グループは、2018年4月に米国ボストンに設立したDoubleYard Inc.を通じて、優秀なAI人材の確保と研究開発活動を積極的に進めており、日本市場のみならず北米、中国、インド市場を含む他市場での同時展開を視野に活動を開始しております。その一環として当社のアメリカ子会社のEdutech Lab, Inc.が企業内の各種文書を管理するECMソリューションを展開するEphesoft Inc.との資本業務提携を締結し、「Deep Read」の海外展開を本格化させる予定です。既に、外資系大手金融機関、大手新聞社、大手BPO会社、政府関連機関、大学等との協業プロジェクト等の受注実績がありますが、昨年来進めてまいりましたAPI環境の整備や、多様なユーザーニーズに応える提供形態(クラウドサービス型・オンプレミス型・クラウドとオンプレミスの複合型)を整える等、将来の大規模な受注に向けて商品ラインアップを強化しております。
ディープラーニングを活用した技術及びサービスの開発手法は、他の分野へ応用することが比較的に容易であることから、当社グループは、手書き文字認識技術の開発で培ったAIを活用した開発力を他の分野に展開して当社グループ全体の商品及びサービスの競争力を高めていく方針です。当社グループがAIの活用を進める予定の領域として、自然言語処理(英語:Natural Language Processing、略称:NLP)とアダプティブエンジン(個人適応型学習管理システム)を考えております。これらの開発により、当社の全セグメントにおいて商品及びサービスの競争力の向上及び利益率の拡大を図ります。
当社グループの開発する手書き文字認識技術、NLP等のAI技術の活用領域については、当社グループの従来の事業領域である文教市場のみならず、他の産業においても導入することで生産性の向上に資する可能性があると考えております。当社グループとしては、積極的に他の産業のパートナーとの協業を追求し、応用領域及び他産業への応用拡大を図りたいと考えております。
⑦ 大型公共プロジェクトの安定的運用
当社グループは、文部科学省が実施する令和2年度 全国学力・学習状況調査(小学校第6学年の児童を対象)を前年度に続いて2年連続で受託し、また、世界的にも先進的なIRTを用いて個人及び学年の経年的な学力の進捗を測定する埼玉県学力・学習状況調査も開始以来6年連続で受託しております。これらをはじめとした大型の公共プロジェクトを、当社グループの強みであるテスト理論、AIソフトウエアや採点システム等を活用して安定的かつ効率的に運用し、収益の安定化を図ってまいります。
⑧ 海外事業の早期収益化
海外事業の課題として、当社グループが現在営んでいる以下の事業の早期黒字化と事業拡大を図るとともに、香港、シンガポール、米国法人において早期にロイヤリティ収入、キャピタルゲイン収入及び販売代理店収入の実現を図ります。
a) 中国自習室事業
約2年間のシステム及びコンテンツの開発準備期間を経て、当社グループは、2017年夏より、新しい指導コンセプトである反転授業(Flipped Classroom)(注)を基本に、家庭学習と個人学習履歴のデータ分析をベースとしたコーチング型小学生向け個別指導学習塾事業を算数及び国語の2教科をはじめとして展開中です。現在、江蘇省無錫市において直営校を運営し、またその他地域は地域代理店契約の締結等の事業提携を同時に推進しており、2019年9月30日現在、華北、華東、中原及び華南省へ事業展開を進め、中国全国の展開都市数は17省58都市、運営する教室数は140、有料生徒登録数は約11,000人となっております。教材はオンラインと紙媒体の双方で提供しております。事業収入の形態には、直営店運営収入及びコース授権料及び授権校への教材とシステム提供によるロイヤリティ収入があります。今後の経営課題としては、早期の単年度黒字化及び中学生事業の展開を含めた更なる事業拡大、上海教材開発拠点及び無錫システム開発拠点の拡充、内部管理の体制強化、AI機能を備えたアダプティブエンジンの既存システムへの搭載による個人学習履歴のデータ分析の精度向上等があげられます。
(注)ブレンド型学習の形態のひとつで、生徒たちは新たな学習内容を、通常は自宅でビデオ授業を視聴して予習し、教室では講義は行わず、従来であれば宿題とされていた課題について、教師が個々の生徒に合わせた指導を与え、また、生徒が他の生徒と協働しながら取り組む形態の授業をいう。
b) インド国内向けテスト事業
当社グループは、2016年に開始した中・高生対象の学習塾向けの単元テスト提供事業を再構築し、2017年より小・中高生を対象とした紙媒体での理系4科目のアチーブメントテスト及び単元テストを提供しております。2017年に小・中・高校に全国規模で直接営業網を持つSmartclass Educational Services社との排他的販売パートナー契約を締結し、2017年10月から2018年2月までの5ヶ月間の累計で約1万2,000テストを販売・実施した実績があります。当社グループとしては引き続きインド国内のテスト事業の拡大を図りたいと考えております。今後の課題としては、当社グループでインドのオフショア開発会社であるJIEM India Private Limitedと本テスト事業を担ってきたKyoshi Education Private Limitedを合併することでシステム開発とコンテンツ開発のシナジー効果を生み、テスト商品をCBT化して市場投入することがあげられます。
c) 米国内を中心としたEdTechベンチャー企業等への投資事業
米国Edutech Lab, Inc.の子会社として、2018年4月にEduLab Capital Management Company, LLCを米国ボストンに設立し、世界最大のEdTech市場である米国を中心に、中国、東南アジア、インド、日本のアーリステージのEdTechベンチャー企業への投資加速を目的に活動を開始しました。過去数年、米国のGSV Acceleration Fund I、Fresco Capital Education Venture Fund I及びLearnLaunch Accelerator IIへのLP(Limited Liability Partner )投資を含め、当社グループは、米国で7社、アジアで4社、イスラエルで2社のEdTechベンチャー企業へ、米国で新たに1社のECM企業へ直接投資を行いましたが、急速に変化・成長する世界のEdTech市場の動向にタイムリーに呼応するため、別のファンド組織を通じて投資事業を展開しております。今後は、当社グループの経営リソースを最大限活用した形で他のEdTechベンチャー投資ファンドとの差別化を図り、キャピタルゲイン収入に加えて、EphesoftのECMソリューションを日本で販売する等を一例とする投資先の商材の他地域での展開等により収益確保も目指していきます。
⑨ 内部管理体制及びコーポレート・ガバナンスの強化
当社グループのさらなる事業の拡大、継続的な成長のためには、内部管理体制及びコーポレート・ガバナンスのさらなる強化が重要な課題であると認識しております。当社は、監査役と内部監査部門の連携、定期的な内部監査の実施、経営陣や従業員に対する研修の実施等を通じて、内部管理体制の一層の強化に取り組んでいく方針です。
⑩ ネットワークシステムの強化
当社グループの提供する事業は、テストやラーニングツールの配信・提供をするにあたり、コンピュータ・システムを結ぶ通信ネットワークに依存しています。自然災害や事故等により通信ネットワークが切断された場合には、当社グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループではセキュリティ対策やシステムの安定性確保に取り組み、海外でのインフラの二重化やバックアップ体制の構築などを通じて当社グループのサービス提供に支障が出るリスクを低減するための措置を充実していきます。
⑪ 人材の確保と育成
当社グループは日本市場のみならず海外市場での事業の拡大を見据え、研究開発、事業開発、営業・マーケティング、内部管理の全ての面において、海外オペレーションにも対応可能な優秀な人材の確保、採用、育成が重要な課題であると認識しております。特に、専門性の高いAIエンジニア、項目応答理論等のテスト理論の専門家、教育コンテンツ開発の専門家等を各海外拠点で積極的に採用してまいります。また、事業開発、ベンチャー投資分野においても専門性の高い人材の採用を積極的に進める予定です。新たに採用した人員に対しては充実した研修を実施するなど人材の育成に取り組んでおり、今後も採用と並行して新入社員への研修・教育制度を整備することで優秀な人材の確保・育成に取り組む方針です。