有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/02/27 15:01
【資料】
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【項目】
85項目

事業等のリスク

当社は、事業展開上のリスクになる可能性があると考えられる主な要因として、以下の記載事項を認識しております。これらのリスク発生の可能性を認識した上で、その発生の回避と予防に取り組んでおります。また、これらのリスク項目は、提出日現在において、当社が判断したものであり、発生の可能性のあるリスクの全てを網羅するものではありませんのでご留意願います。
なお、文中に記載している将来に関する事項は、本書提出日現在において入手可能な情報に基づき当社が判断したものであり、実際の結果と異なる可能性があります。
(事業環境に関するリスク)
① 医療及びヘルスケア市場について
当社の売上高の多くが、医療・ヘルスケア関連分野からのものとなっています。同業界は今後も市場の成長が見込まれますが、何らかの理由により、市場の成長が停滞し、あるいは市場が縮小するなどした場合や、新たな市場動向に当社が対応できない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の主要顧客である製薬企業においては、グローバルなレベルでの企業間競争及び再編の動きが続いており、これは当社が提供するプラットフォームサービス展開を加速させる可能性がある一方、製薬企業の戦略方針の変更又は再編された既存顧客による契約見直しを要求されることも考えられます。その契約内容により、当社の業績に影響を与える可能性があります。
② 競合について
当社は、「患者・家族が自己管理をする」ための支援サービス提供を主な事業としております。提供アプリの最適なUI/UXを追求した機能設計、特色あるサービスの提供、取引の安全性の確保やカスタマーサポート充実への取り組みなどにより、競争力の向上を図っております。しかし、当社が継続的に優位性を高め、ユーザーの利用価値の維持向上を図ることの成否については不確実な面があります。今後、高い知名度、幅広い顧客基盤を有する先行同業他社による模倣や、資本力、マーケティング力、専門性を有する企業等の参入によって、当社の競争優位性が低下または競争が激化する等の状況が発生した場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
③ 新規サービス展開に伴うリスクについて
医療業界においては、PHRプラットフォームの標準サービスがなく、当社は、事業ミッションに基づき、患者、医師をはじめとする医療従事者、医療業界を取り巻くプレーヤー(製薬企業、医療機器メーカー、自治体等)の方々とともに共同開発・運営を行っており、今後も同分野における新規事業の開発等に積極的に取り組んでおります。新規事業の開発にかかる人材、システム、広告等に対する追加的な支出の発生及び事業が安定して収益を生み出すまでにはある程度の時間がかかることから、これにより当社の利益が一時的に低下する可能性があります。また、当社が想定するプラットフォームの標準化の立ち上がりスピード及び当該新規事業が想定どおりに推移しない場合は当社の業績に影響を与える可能性があります。
④ M&Aや業務提携について
当社は、自社で行う事業開発に加えて、M&Aおよび他社との業務提携を通じて、新規事業の展開を推進しています。M&A・業務提携にあたっては、当社戦略との整合性やシナジーを勘案して対象企業の選定を行い、当該企業の財務内容、契約関係、事業の状況等についてデューデリジェンスを実施した上で、取締役会・経営会議において細心の注意を払って判断を行っています。
しかしながら、これらのM&Aや業務提携が期待通りの効果を生まず戦略目的が達成できない場合や、投資後に未認識の債務が判明した場合等には、当社の業績及び財務状態に影響を与える可能性があります。
(事業運営に関するリスク)
① 収益の季節変動性について
当社の主要顧客は大手製薬企業であり、日系製薬企業の決算期のある第1四半期(1から3月)及び外資系製薬企業の決算期のある第4四半期(10から12月)において、いずれも納品・検収となる案件が多く、この結果、売上高及び利益がそれらの時期に集中する傾向があります。このため、特定の四半期業績をもって当社の通期業績見通しを早期に判断することは困難な場合があります。また、当社は顧客企業の検収をもって売上計上をしているため、期末月に売上計上を計画する案件については、予期せぬトラブルやスケジュール変更等により期ずれが生じる可能性があり、当該要因により当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、第7期事業年度における四半期別の売上高及び営業損益は、次のとおりであります。
第1四半期第2四半期第3四半期第4四半期通期
売上高(千円)102,70866,92191,730213,392474,753
営業損失(△)(千円)△3,527△32,884△28,787△8,161△73,360

(注) 各四半期会計期間の数値は、会計監査人によるレビューを受けておりません。
② 個人情報の取り扱いについて
当社が展開する事業において、多くの患者及び利用者からの重要な個人情報を取り扱っております。当社は、これら個人情報のセキュリティを十分に担保し、信頼性の高い情報として利用していただくことが責務であると考え、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)であるISO27001の認証を取得しております。しかしながら、昨今の企業情報漏洩に関する犯罪の増加や悪質化などを背景に、個人情報流出等の不測の事態が生じた場合は、企業の信用失墜及び患者個人のプライバシーが侵害され、社会的制裁を受けることによる業績の悪化と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③ 知的財産権について
当社は、第三者の特許権その他の知的財産権を侵害することのないよう万全を期しておりますが、万が一侵害があった場合には、相手方より相応の損害賠償を請求される可能性があります。また、現在のインターネットの基盤技術はその権利帰属先が不明な部分があり、基盤技術の重要な一部について第三者の特許取得が認められた場合あるいは将来特許取得が認められた他社の技術がインターネットの基盤技術の重要な一部を構成することとなった場合には、当該ライセンサーに対しライセンス料を負担する必要が生じる可能性があります。このような損害賠償及びライセンス料の負担が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は知的財産権について適切な保護管理策を講じておりますが、第三者が当社の知的財産権を侵害する可能性を完全に排除することは困難でもあり、当社の重要な知的財産権が第三者に不当に侵害された場合には、当社の経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
④ 情報セキュリティについて
当社は、顧客の新製品開発計画や営業上の機密情報等に接する機会があり、当然ながら守秘義務を負うこととなるため、顧客及び社外の専門スタッフとの取引時には機密情報の守秘義務契約を締結しております。またデータの授受にはセキュアなクラウド上のファイルサーバー等を利用するなどセキュリティ対策を講じております。過去に機密情報漏洩などの事象は発生しておりませんが、何らかの理由によりそれら機密情報等が漏洩し、顧客に重大な損害を与えた場合には、損害賠償請求や信用失墜等により当社の業績に影響を与える可能性があります。
⑤ 外注先企業の選定管理および確保について
当社は、システム開発の一部を外部の開発パートナー会社に委託しております。開発業務のスピード向上やコスト削減のためには、一定レベルのスキルを持った優秀な外部委託先を安定的に確保することが必須となります。そのため既存の外部委託先のみならず、新規の候補先については技術力などについて厳しく審査を行ない、信頼できる会社を選定することとしておりますが、万が一の外注先の責による納入遅延や不具合などのリスクを完全に排除できるものではなく、適切な外部委託先を安定的に確保することができない場合、開発スケジュールに支障をきたし、当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ インターネットビジネスについて
当社のビジネスは、プラットフォームサービスに関する事業であるため、ブロードバンド環境の安定普及により今後も拡大していくことが事業展開の基本条件であると考えております。しかし、インターネットの利用に関する新たな規制、通信環境やセキュリティ対策等の技術進歩が市場のニーズに追いつかなくなるなど技術革新の遅れ、利用料金の改訂を含む通信事業者の動向など、予期せぬ要因によりインターネットの利便性が阻害される場合には、当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、今後、医療分野におけるインターネット普及の障壁、利用に関する新たな規制やインターネットビジネス関連事業者を対象とする法的規制等の導入、その他予期せぬ要因によって、インターネット利用の順調な発展が阻害された場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑦ システム障害について
当社の事業は、インターネット環境を利用したサービス提供が中心であり、コンピューターウイルス対策や情報管理の徹底に努めておりますが、たとえば許容量を超えるアクセスの急増、自然災害等による電力供給の停止、外部からの不正な手段によるコンピューターへの侵入、ソフトウエアの不具合等、予測を超える事態が生じることでサービスの提供が困難となった場合、事業活動に支障をきたし、当社の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ サービスに関する不具合、クレームについて
当社は、エンドユーザー(患者)からの意見やクレームに対応するセクションとしてカスタマーサポート窓口を設置しております。クレームに即時に対応することや、様々な意見などを関連部門にフィードバックすることで、サービス改善等に繋げる役割を果たしております。当社が今後もエンドユーザーに信頼され、支持される企業として発展していくためには、満足度の向上が必要不可欠であり、かつクレームへの対応が重要と認識したうえで、さらに迅速な対応が出来る体制の強化を図ってまいります。しかしながら、結果的に当社のサービスをめぐる重大なクレーム等が発生した場合は、当社の財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 技術革新への対応について
当社の事業はICT(情報通信技術)を事業基盤としており、提供する各サービスの価値向上のために有効であると思われる新たな技術やノウハウを積極的に取り入れ、サービス機能の拡充及び強化を進めております。しかしながら、技術革新や他社による新たな高付加価値サービスの提供等の理由により、当社が提供するサービス及び保有ノウハウが陳腐化した場合や、変化への対応が困難になった場合、各サービスのユーザー及びクライアントの満足度が低下し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(組織体制に関するリスク)
① 人材の確保及び育成について
当社は、業容拡大に向けた優秀な人材の確保及び育成が極めて重要な課題であると考えております。スタッフの業務スキルの底上げを図ると共に、新たな人材確保のための採用活動を強化し、さらに外部パートナーの開拓や育成、他業種との業務提携なども順次行なっております。しかし、適切な人材を十分に確保できず、あるいは在職中の従業員が退職するなどして、十分な人材リソースを確保することができない場合には、当社の業績又は将来的な事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
② 小規模組織であることについて
当社の業務執行体制及び経営管理組織は、事業規模に応じた比較的小規模なものとなっております。現時点において最適と考えられる各体制を構築するとともに、今後の事業拡大に伴い積極的に人員の増強、内部管理体制の一層の充実を図る方針ですが、当初計画を超えた規模以上に事業が成長し体制構築が追い付かない場合や、新たな人材の採用及び育成が順調に進まなかった場合には、組織的対応が有効に機能しないことが考えられ、これにより新規事業開発や営業活動、サービスの安定運用が阻害されるなど、当社の業績に影響を与える可能性があります。
③ 特定役員への依存について
当社の創業者であり代表取締役である比木武は、経営責任者として経営方針や経営戦略の決定等、当社の事業活動上の重要な役割を果たしております。また本書提出日現在において比木武は筆頭株主であり、持株比率は45.1%となっております。取締役会等において役員及び社員への情報共有や権限移譲を進めるなど組織体制の強化を図りながら、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。しかしながら、現時点において、同氏が何らかの理由により経営者として業務を遂行できなくなった場合には、当社の業務推進及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(その他のリスク)
① 社歴が浅いことについて
当社は、2011年9月に設立された社歴の浅い会社であり、財務状態や経営成績の期間比較の情報が限られております。今後のIR活動などを通じて経営状態を積極的に開示してまいりますが、経営成績等の期間比較をするための情報には時間の経過が不可欠であり、現時点において今後当社が成長を継続していけるか否かを予測する客観的な判断材料として過年度の経営成績のみでは不十分な可能性があります。
② 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社は、役員及び従業員の経営参画意識高揚のために会社法第236条、第238条及び第240条の規定に従って、2018年8月20日開催の取締役会決議に基づく新株予約権(以下、「ストック・オプション」という。)を付与しております。今後に関しましてもストック・オプションの付与を行う可能性があります。これらストック・オプションの権利行使がなされた場合には、新株式が発行され当社株式価値の希薄化が生じる可能性があります。なお、本書提出日現在でのストック・オプションによる潜在株式数は154,000株(発行済株式総数に対して8.3%)となっております。
③ 配当政策について
当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題と認識しております。利益還元策の決定にあたっては、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状態や今後の事業計画等を十分に勘案し実施していく所存であります。しかし、現段階においては、当社の成長を加速させるとともに、財務面での健全性を強化し、経営における成長性と安全性の均衡を図ることこそが株主の利益に資するとの判断に基づき、内部留保資金の確保を優先し、剰余金の配当は行わないことを基本的な方針としており、今後の配当の実施及びその時期については未定であります。
④ 税務上の繰越欠損金について
当社は、税務上の繰越欠損金を有しております。これは将来の法人税負担の軽減効果があり、今後も当該欠損金の繰越期間の使用制限範囲内において、納税額の減少によりキャッシュ・フロー改善に貢献することとなりますが、当社の業績が順調に推移することで繰越欠損金を上回る課税所得が発生した場合には、所定の税率に基づく法人税等の納税負担が発生するため、当社の当期純利益及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
⑤ 資金使途について
今回当社が計画している公募増資による調達資金の使途については、患者及び医療機関向けの新規PHRプラットフォームの開発及び改修に係る費用、PHRプラットフォームの実臨床における治療効果のエビデンスの構築、及び当該成果を発表するための各種学会への出展、セミナー開催に係る費用並びに専門人材等の採用費に充当する予定であります。
しかしながら、変化する経営環境に柔軟に対応するため、現時点での計画以外の使途にも充当される可能性があります。または、当初の計画に沿って資金を使用したとしても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性があります。
⑥ 各種規制について
当社が提供するPHRプラットフォームサービスは、現時点は薬機法規制対象である「医療機器プログラム」に該当しないことを管轄官庁の厚生労働省に確認しております。しかし、今後プラットフォームサービスにおける診断サポート機能の追加や医薬品とのセットでの提供(いわゆる「コンパニオンアプリ」)により、「医療機器プログラム」に認定され、当社がこれに対応できない場合は、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
また法的規制以外では、日本製薬工業協会が定める「製薬協コード・オブ・プラクティス」が存在します。製薬協コード・オブ・プラクティスとは、製薬企業が薬機法・独禁法等の関係法規と公正競争規約等の自主規制を遵守し、医薬情報を適正な手段で提供・収集・伝達するために定めている薬業界の自主ルールであり、当社では当該コードの遵守に努めております。
しかしながら、業界では各種規制の見直しが進んでおり、関連法令や業界団体による規制等の改廃、新設が行われた際に、当社が何らかの対応を余儀なくされた場合や、これらに対応できない場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。