有価証券報告書-第43期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/28 11:15
【資料】
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【項目】
108項目

対処すべき課題

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。
(1)経営方針
日本国内のエンジニア人材市場は、高齢化と人口減少を背景とした構造的な人材不足に直面しております。一方で、2020年に施行された改正労働者派遣法、所謂「同一労働同一賃金」や、新型コロナウイルス感染症拡大による景況感の悪化により、中小派遣事業者の淘汰の可能性が増すなど、国内エンジニア人材関連サービス業界は転換期を迎えているというのが当社の基本的な環境認識です。
このような認識のもと、当社は「エンジニア人材の流動性の向上」が求職人材と求人企業双方のニーズを満たす鍵となると考え、当社のミッション「スキルがつながる世界へ。」のもと、当社のビジョンとして「機電系エンジニア領域の総合化」と「テクノロジーによるマッチングの効率化」の2つを掲げております。
(2)経営戦略等
当社は、上述のミッション及びビジョンの実現を目指して、長期的な視点に立ってICTへの先行投資を行ってまいりました。その成果がAIを活用した独自のスキルマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」であり、2020年3月期にエンジニア人材の全ての流動局面を捕捉できる5つの「コグナビ」サービスが出揃いました(第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内容 ご参照)。今後当社は、顧客企業に対してこれらの「コグナビ」サービスを提供することを通じて、エンジニア人材不足に悩む顧客企業のニーズを充足し、当社収益基盤を拡充する方針です。
従来当社は高い収益性と安定した需要の存在の双方を兼ね備えた機電系エンジニア人材サービスに加えて、機電系エンジニアと同様に樹形図によってスキルを可視化できるITエンジニア人材セグメントの開拓も進めてまいりましたが、今後は、収益成長を向上させるため、収益性の高いエンジニア派遣サービス及び理工系学生の就職支援サービス等、当社の専門である機電系エンジニア人材サービスに経営資源を集中してまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、収益性を判断する指標として売上高や売上総利益・営業利益及びそれぞれが売上高に占める比率を重視しております。
また、当社の売上高と売上総利益の大半を占めるエンジニア派遣サービスの売上高に大きく影響する稼働人数を、収益目標の達成度を判断する指標として重視しております。
(4)経営環境
当社が特化する機電系エンジニアの需要は、新型コロナウイルス感染症拡大による行動制限が緩和され、景気は持ち直しの動きを見せており、顧客企業の機電系エンジニア人材採用意欲は堅調に推移しております。
また、わが国の15~64才までの労働力人口約6,000万人(出典:総務省統計局 2023年3月 労働力調査)の中で、機電系エンジニアは概ね64万人(出典:2020年国勢調査、当社が元データの「電気・電子・電気通信技術者(通信ネットワーク技術者を除く)、機械技術者、輸送機器技術者」合計人数から65歳以上の人数を除いて算出)であり、機電系エンジニアが労働力人口に占める割合は低い状況にあります。
さらに、少子化に伴う就労人口の減少や学生の理系離れなどを背景として、機電系エンジニアは正社員、非正規社員共に構造的な不足状態が続いております。
一方、世界的にカーボンニュートラルをはじめとした新たな技術的課題への対応が求められる中、当社はエンジニアに対するニーズが今後も拡大するものと見込んでおります。
このような環境のもと、近年機電系エンジニアの派遣単価は継続的な上昇傾向が続きました。2020年4月の所謂「同一労働同一賃金」の導入もその傾向を後押ししております。
また、一連の労働者派遣法の改正に伴い、人材派遣業界では中小派遣事業者の淘汰の可能性が増す一方で、近年のHRテック企業の台頭により、人材紹介サービスを取り巻く環境に変化が表れる可能性がございます。
当社は、国内エンジニア派遣業界大手の一角を占めておりますが、このような経営環境の動きを的確に捉えて事業機会を見出し、当社ミッションの達成と持続的成長の実現を図ってまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上述の経営方針、経営戦略等、経営環境を踏まえ、今後当社は主に以下の課題に対処いたします。
①エンジニア人材の確保
日本国内のエンジニア人材市場は社会の高齢化と人口減少を背景とした構造的な人材不足に直面していることから、今後もエンジニア人材の確保が難しい状況が継続するものと予想されます。従いまして、エンジニア人材を確保することは当社の重要な経営課題であると考えております。
このような環境下、当社はAIを活用したスキルマッチング機能を駆使することで機電系エンジニア人材のあらゆる流動局面を捕捉し得る「コグナビ」各サービスを有しております。今後当社が持続的に成長するためには、主業のエンジニア派遣サービス「コグナビ派遣」において、派遣エンジニア社員の採用に注力すると共に、エンジニア紹介サービスである「コグナビ新卒」、「コグナビ転職」の求人側利用者、求職側利用者の両方を増やし、AIマッチングを行うことで、エンジニア人材のあらゆる流動局面を捕捉し続けることが最重要課題であると考えます。
②テクノロジーとビジネスモデルによる競合優位性の確立
所謂「同一労働同一賃金」の実現を目的とした2020年4月の労働者派遣法改正や近年のHRテック企業の台頭等を背景として人材紹介サービスを取り巻く環境に変化が表れております。その一方で、様々なHRテックが登場しているものの、大きな変化を起こして市場を制覇する革新的なテクノロジーやビジネスモデルが業界内に見当たらないことも事実です。
AIを活用した独自のテクノロジーにより、スキルマッチング機能を駆使することで学生から経験者、正社員から派遣社員まで、全ての機電系エンジニア人材の流動局面を捕捉し得る当社のビジネスモデルは、業界内を見渡しても類例を見ない革新的なものになっております。当社は、この独自のスキルマッチング機能を特長、強みとした営業活動を展開し、ターゲット顧客である大手機電系製造業との取引拡大を目指してまいります。このように、「コグナビ」テクノロジー及び「コグナビ」ビジネスモデルは当社の差異化の源泉であり、これらを活用したテクノロジーとビジネスモデルで競争優位性を確立することは当社の重要な経営課題であると考えております。
③財務体質の強化と流動性資金の確保
当社は中長期的な収益の柱の一つとして、インドに子会社を設立し、システム開発・運営を支援しております。
今後も健全な財務体質を維持し、取引金融機関からの高い信用力のもと、流動性資金を適宜確保することが当社の重要な経営課題であると考えております。
④リスク管理の強化
当社はリスクを事前に回避すること及び万一リスクが顕在化した場合の被害最小化を図ることが重要であると考えております。
事業を進める上での様々なリスクの特定、リスク低減に向けた適切な対策の構築を目的に、リスクマネジメントの基本方針及び推進体制に関する基本的事項を定めたリスクマネジメント規程を定めております。
事業活動及びその他付随するリスク要因のうち、特に発生の可能性が高いと想定されたリスクについては、コンプライアンス委員会においてモニタリングを行うと共に、リスクとなる事象が発生した際には、総務担当部門、内部監査担当部門等の関係部門が連携・協議し、再発防止策等の対応を行います。
自然災害、新興感染症、サイバー攻撃等、経営資源に損害を与え、業務の停止・機能低下をもたらしかねない事象や緊急事態に迅速かつ一貫して対応するために、対策本部等の組織を設置し、危機管理体制の確立に努めております。
具体的な施策として、自然災害等不測の事態に備えたBCP(事業継続計画)の策定や情報セキュリティ基本規程等を定めると共に、社内教育や訓練の実施、備えるべきリスク項目の見直しやその対応策を検討する等、リスク管理を継続的に強化していくことは当社の重要な経営課題であると考えております。
⑤海外事業への取組み
当社は、今後飛躍的な経済成長が見込まれるインドにおいて、企業と学生をAIマッチングでつなぐジョブポー
タルサイトの開発・運営を行うCognavi India Private Limitedを主体に事業を展開してまいります。まずは、
インド学生のためのジョブポータルサイトをインドで開発し、インドの企業と学生をつなぐシステムをインド市
場において運営することが重要であると考えております。
(6)対処すべき課題に対する具体的な取組状況等
①エンジニア人材の確保のための取組み
当社のエンジニア派遣サービスにおいては、上述のとおり、顧客となる大手製造業からの需要が存在するものの、エンジニアの確保が難しい市場構造ができております。
このような環境下において、当社は、AIを活用した独自のスキルマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」システムを基盤として、全ての機電系エンジニア人材の流動局面を捕捉し得るサービスラインアップを2021年3月期までに整備し、理工系新卒学生の就職支援から転職、人材派遣、教育まで、エンジニアの全てのキャリアシーンを支援することが可能となりました。
今後当社がエンジニアを持続的に確保するためには、社員紹介制度やカムバック制度等の採用施策実施による派遣エンジニアの採用強化や、当社の元エンジニア社員が理工系学生にエンジニア職の魅力や、大学での学びがどのような職種・業種につながるかを伝える「エンジニア職セミナー」を通して、理工系学生就職支援サービス「コグナビ 新卒」の利用につなげること等を行ってまいります。
②テクノロジーとビジネスモデルによる競合優位性の確立のための取組み
当社は、これまで製造業のうち収益性の高い「主要8業種(自動車、輸送用機械、産業用機械、精密機器、電気機器、家電、電子部品、情報通信)」に集中し、同時にICTの活用による営業活動の効率化に取り組むことで、エンジニア派遣他社よりも高い売上高総利益率を実現してまいりました。
さらに当社は、独自のAIを活用した独自のスキルマッチング機能を有する「コグナビ」を構築し、この「コグナビ」テクノロジーを基盤として全ての機電系エンジニア人材の流動局面を捕捉し得るサービスラインアップを2021年3月期までに整備いたしました。「コグナビ」テクノロジーを基盤として全ての機電系エンジニア人材の流動局面を捕捉するという当社のビジネスモデルは、あまり類例を見ない革新的なものであり、国内エンジニア派遣企業他社のそれと明確に異なっております。従って、「コグナビ」テクノロジー及び「コグナビ」ビジネスモデルは当社の差異化・競合優位性の源泉であり、当社が求人企業・求職人材双方に対して独自の付加価値を提供する基盤となります。
今後当社は、「コグナビ」各サービスを本格展開することを通じて、競合優位性を顕在化させていく方針です。
③財務体質の強化と流動性資金の確保への取組み
当社は、取引金融機関とシンジケートローン方式のコミットメントライン契約及び当座貸越契約を締結しており、高い信用力のもと、適時に流動性資金を確保できる状況を整備しております。
④リスク管理の強化への取組み
当社は、これまでもリスクを事前に回避すること及び万一リスクが顕在化した場合の被害最小化を図ることに取り組んでまいりましたが、外部機関を利用したリスクの洗い出しを実施し、定期的な社内教育の実施や、BCPに基づいた訓練や情報セキュリティに関する社内教育を継続的に実施するなど、リスク管理の体制を強化してまいります。
⑤海外事業への取組み
当社は、今後飛躍的な成長が見込まれるインドにおいて、企業と学生をAIマッチングでつなぐジョブポータルサイトの自社開発・運営を行うCognavi India Private Limitedを主体に事業を展開してまいりますが、この事業をさらに加速させるために、現地人材の確保は急務と考え、採用と育成に努めてまいります。