有価証券報告書-第6期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/29 14:11
【資料】
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【項目】
133項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在にて、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、企業価値向上支援パートナーとして、
・企業価値向上を「人」の視点からアプローチ
・永続的な成長にむけて、企業において不可欠となる「リーダー開発」
・そして、リーダー開発を通じた、勝ち残っていく「企業風土の醸成」
を支援しております。
(1)経営方針
当社グループは、これまでの既存事業を更に進化させると同時に、今後も人と企業の可能性を広げる新たな事業・市場創造に果敢に挑んでいくことで、コーポレートスローガンである「Activate Your Potential(可能性が動き出す)」を実現し続けたいと考えております。そして、顧客企業及びプロフェッショナルタレントにとって必要不可欠な存在であり続け、社会になくてはならない存在価値の高い企業を目指し、株主を始めとするステークホルダーの皆様の利益に貢献してまいります。
当社グループは、これまでも企業の経営リーダーたちの想いを形にする施策を企画し、その実行を長期的に寄り添いながら支援してきたと自負しております(顧客基盤の拡充)。顧客企業の課題を通じて、社会の課題を直視してきた経験から、大手企業は「社会の縮図」であると認識しております。社会が不連続的に大きく変化し続け、その加速度が増すほど、大手企業は常に新たな人・組織の課題を設定し続け、その解決に向けて様々な策を講じていきます。
今後は、これまで培った社会課題と企業の人・組織課題の洞察力、解決力に一層磨きをかけることで、顧客企業への貢献を追求する(ソーシャルイシューR&D)だけではなく、新たな事業・サービスを生み出し、更には新たな市場を創造していきたいと考えております。
(この考えを図式化したものが、下図「当社グループの成長の方程式」です。)。
[当社グループの成長の方程式 図表]

(2)経営指標
持続的な成長を図るためには、健全な収益水準を意識すべきと考えております。当社グループは、のれん償却が多額、かつ、長期間に亘るため「連結EBITDA」は重要な経営指標であると考えております。適切な収益性を投資家と共有し、中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。
(3)経営環境
経営環境に影響を与えうるマクロ環境要因として、今現在、大きな4つのうねりが存在していると考えております。
第一には、第4次産業革命の到来であり、AIやIoTに代表されるテクノロジー・技術革新に伴い、産業構造が大きく転換していく時代であると捉えております。
第二には、人生100年時代の到来により、働き方・生き方・学び方の見直しが求められ、新しい社会が形成されつつある中、個々人でのライフプランやキャリアプランの再設計が求められていく時代であると考えております。
第三には、地球規模で持続可能な成長が求められていると認識しております。
そして、第四には、新型コロナウイルス感染症の世界的流行による社会の秩序や人々の価値観の大きな変化です。新型コロナウイルス感染症終息後の“ニューノーマル”は上記の3つのうねりと相まって、世界的規模で個人の生活や企業活動にかつてない変化をもたらすであろうと考えられます。
このようなマクロ環境の下、下記に掲げるテーマは社会課題として大きく取り上げられていると考えております。
・デジタルテクノロジーの発展・進歩は著しく、様々な分野においてデジタライゼーションが急速に進んでおります。当社事業の組織・人材領域においても、その動きは顕著であり、HRテック市場は約476億円の市場規模(2020年度)、学校教科・教育機関も含まれるEdTech市場においては、約2,346億円の市場規模(2020年度)と推定されております。これらの市場は、向こう5年間拡大し続ける見込みとなっています。(出典:HRテック市場‐ミック総研「HRTechクラウド市場の実態と展望2020年度版」 、EdTech(教育)市場-野村総合研究所「ITナビゲーター2021年度版」)
・人生100年時代といわれる中、自分の価値観に基づいたキャリア構築を志向し、一つの会社にとらわれない働き方を志す個人が増えてきていると認識しております。そのような中で、フリーランス人口は増加し続け、既に1,500万人を超えています。その経済規模は年々増加しており、2021年2月調査時点で23.8兆円以上と推定されております。(出典:ランサーズ 新・フリーランス実態調査2021-2022年版 )また、会社員を取り巻く環境整備として、厚生労働省がモデル就業規則を発表した影響もあり、副業を許可している企業はここ3年で倍増しており、着実に浸透してきているものと考えております(出典:2019年パーソル総合研究所「副業の実態・意識調査」)。
・持続的発展、持続可能な社会を目指していく指針として、2015年に国連で採択されたSDGs(※1)が広く浸透し、企業は一層の社会的役割の発揮や社会的価値が求められております。ダイバーシティ&インクルージョン(※2)に関連するビジネスもSDGsに含まれる領域でもあり、複数の目標カテゴリーにまたがりますが、少なくとも100兆円以上(2017年調査時点)といわれております。(出典:デロイトトーマツコンサルティング「SDGsビジネスの可能性とルール形成」)
(※1) SDGs:
持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。 SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本としても積極的に取り組んでいます。
(出典:外務省ホームページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html))。
(※2)ダイバーシティ&インクルージョン:個々の「違い」を受け入れ、認め、活かしていくこと
・持続的な成長を実現する企業の在り方として、コーポレート・ガバナンスの強化が求められております。コーポレート・ガバナンスコードにおいて、「上場会社の重要な統治機関の一翼を担う者として期待される役割、責務を適切に果たすため、その役割、責務に係る理解を深めるとともに、必要な知識の習得や適切な更新等の研鑽に努めるべき」と明記されていることもあり、上場企業において役員の研修を行っていることを対外的に公表する企業が増加しています。2021年3月株式会社東京証券取引所発行の「東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書2021」によると、前回調査に引き続き上場企業の約7割が公表しております。これは、質の高い役員向け研修への関心が高まっていることも背景の一つであると考えております。
・新型コロナウイルス感染症の流行により加速された在宅勤務やリモートワーク、オンライン会議の普及・浸透は、個人の働き方の選択肢を増やす一方で、企業には組織体制やマネジメント体制、オフィスの在り方の見直しを迫っています。今後、安心・安全、かつ、柔軟で多様な働き方が出来るか否かは、個人にとって企業選びの重要な要素となり、企業の優秀な人材の採用・定着に大きな影響を与えることが予想されます。
上記のテーマから推察されるように、社会課題は「人と企業の課題」に強く結びついており、それぞれの市場は成長し続けています。企業は利益成長だけではなく、社会的価値、いわば社会における存在価値の向上に努めていくことを目指しており、より一層市場価値の高い人材の獲得と活躍・育成に向けた経営活動が強く求められていると考えております。当社グループは、「社会の縮図」である大手企業の課題解決を支援することを通じて、社会全体の課題解決の一翼を担うことを目指します。
(4)経営戦略等、経営重点テーマ
上述の経営環境の中で、当社グループは「人と企業の可能性を広げ、世界を豊かにする」というビジョンの実現に向け、既存事業のより一層の成長とに取り組んでまいります。 そのための中期的な経営重点テーマは、以下のとおりです。
i 顧客基盤の一層の拡充
当社グループの主要顧客は日本を代表する大手企業であり、この顧客層における更なるシェア拡大を目指します。加えて今後は、これまでに培われた知見を活かして、売上高2,000億円から5,000億円未満の規模を中心とした準大手企業への開拓・深耕を積極化してまいります。
ⅱ 既存顧客企業における連結グループ企業及び人事以外の各部門との取引拡大
当社グループの主要顧客は、本社人事部門が行う全社共通の人材開発以外にも、社内カンパニーや事業部、及び各機能部門で一定規模の人材・組織開発に取り組んでいます。特にここ数年は、世界企業の経営モデルに倣って、HRBP(HRビジネスパートナー:個人と組織のパフォーマンスを最大化し、事業成長に貢献することを担う役割)人員を各部門に配置し、事業戦略の加速のための人材開発、ビジョン浸透、組織間連携を強化するチームビルディング等に、本社人事部門と連携しながら戦略的に取り組む動きが広がっています。また、顧客企業は海外子会社も含めた数多くの関連子会社も有しており、自社固有の状況に合わせた人材開発を行なっています。特に昨今は、グループ一体で企業価値を高めていくために、グループ内の事業連携、人事連携の取り組みが年々強くなっていく傾向が見受けられます。
こうした動きの中で、当社グループは部門及び関連会社の取引を拡大させていくことに一層注力してまいります。顧客企業が有する海外子会社も含めた関連会社数は、非常に多く、顧客企業とのパートナーシップ強化と取引拡大の余地は大きいと考えております。
ⅲ 好循環サイクルと顧客リピートの維持
長期的な取引から生まれる顧客との信頼関係が、当社グループの知見やノウハウの蓄積に繋がり、それが更なる顧客満足と顧客基盤の強化につながる、という好循環サイクルを今後も維持していくことが極めて重要であると認識しております。
そのためには、経営人材育成に代表される、顧客にとって重要度の高い案件の継続受注を維持することと、本社人事以外の部門や関連会社等に取引窓口を広げ、顧客人脈を増やし続けていくことが必要であると考えております。
ⅳ プロフェッショナルタレント基盤の拡充
当社グループの顧客への提供価値の決め手となるテーマ・ニーズに合わせたプロフェッショナルタレント基盤の更なる拡充は極めて重要であると認識しております。社会と企業の課題は刻々と変わっていきます。例えば、2000-2010年頃の顧客の主要課題は、チェンジマネジメント(事業ポートフォリオ再構築)、グローバル戦略、M&A、経営理念浸透等であり、2010年以降は、ダイバーシティ&インクルージョン、コーポレート・ガバナンス、オープンイノベーション、デジタルトランスフォーメーション等に比重が移っていきました。当社グループは、経営課題の変化を一歩先取りして、プロフェッショナルタレントの基盤を充実させてきました。今後も、社会課題・企業課題に沿ったプロフェッショナルタレントの拡充に取り組んでまいります。
(5)対処すべき課題
上記のような状況を踏まえ、当社グループは、人と企業の可能性を広げる新たな事業・市場創造に果敢に挑んでいくことで、コーポレートスローガンである「Activate Your Potential(可能性が動き出す)」を実現し続けたいと考えております。当社グループが更なる成長に向けて対処すべき課題は以下のとおりです。
①積極的なIT投資による生産性の向上と事業機会の創造
IT、RPA(Robotic Process Automationの頭文字で、業務プロセスを自動化すること)を活用し、業務プロセスを適正化することにより、業務の生産性の向上を図ります。特に、オンラインを前提とした人材組織開発領域における企画業務の効率化や、スピーディーな経営指標管理に向けたIT投資を行ってまいります。また、新型コロナウイルス感染症の流行により加速された在宅勤務やリモートワーク、オンライン会議の普及・浸透が進む環境において、働きやすい環境を整えるための施策を講じてまいります。
一方、HRテックを活用したデータ分析サービスの開発やオンラインを活用した研修の提供等、事業開発のための必要十分なITインフラ投資にも積極的に取り組んでまいります。
②データマーケティングによる顧客とのパートナーシップ強化
企業の人材・組織開発への投資意欲が高まったり弱まったりする要因は、マクロな経済環境に加えて、顧客企業ごとの業績、経営トップの交代、事業や組織の再編、中期経営計画の見直し等様々ですが、こうした顧客企業の経営状況を一元的にデータで管理することで、予測精度を向上させることが出来ると考えております。また、日本を代表する企業の人材開発体系と受注した研修履歴等のデータ分析により、次にどのような人材・組織開発ニーズが発生するかを予測することができる可能性があり、さらに、当社グループとの窓口となる顧客企業のご担当者やご責任者の異動後も関係性を継続することに努め、顧客内の人脈ネットワーク構築につなげていきたいと考えております。以上のようなデータマーケティングを積極化し、顧客企業への更なる貢献を追求する(ソーシャルイシューR&D)のはもちろんのこと、新たな事業・サービスを生み出し、顧客企業との更なるパートナーシップ強化を図ってまいります。
③経営管理体制の強化
当社グループは、現状、小規模な組織であり、業務執行体制もこれに応じたものになっております。今後、「人と企業の可能性を広げ、世界を豊かにする」というビジョンの実現に向け、既存事業の成長と、新市場の創造に取り組み、持続的な成長を図っていくためには、事業の成長や業容の拡大に合わせた経営管理体制の充実・強化が課題であると認識しております。また、株主を始めとするステークホルダーの皆様に信頼される企業となるために、コーポレート・ガバナンスへの積極的な取組みが不可欠であると考えております。そのため、人材の採用・育成により、業務執行体制の充実を図り、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するような仕組みを強化・維持していくとともに、業務の適正性及び財務報告の信頼性を確保するための内部統制システムの適切な運用、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守を徹底してまいります。
④オンラインを活用した新たな人材開発市場の拡張
当社グループでは、コロナ禍以前は対面形式での研修やコンサルティングが中心であったものの、顧客・プロフェッショナルタレントとの強いパートナーシップを活かすことにより、コロナ禍においても、研修やコンサルティングをオンライン形式で提供出来る体制を短期間で構築してまいりました。現在、当社が提供する研修の大半はオンライン形式に移行して実施しており、顧客企業の研修企画・運営を効率的にサポートするための運用ノウハウを蓄積出来たと考えております。
今後は、対面での集合研修とオンラインを活用した研修を融合し、これまで以上に時間効率や投資効率が高い企画運営サービスを提供してまいります。また、時間的制約等により限定的な取り組みとなっていた経営メンタリングやグループ・コーチングをオンラインで実施する等、オンライン環境を活用した新たな人材開発・組織開発の機会を追求することに注力してまいります。