有価証券届出書(新規公開時)

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2020/05/27 15:00
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152項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」というビジョンのもと、「デザインの力を証明する」というミッションを掲げ、「デザイン」を通じて人々の生活がより便利になり、より暮らしやすくなることを目指し事業活動を行うデザインカンパニーです。当社はUI/UXデザイン支援において、「デザイン」の本質的な考え方を活用し、主にスマートフォンやSaaSのアプリケーション等のデジタルプロダクトにおける戦略立案・企画・設計・開発の支援を行ってまいりました。
当社グループとしては、優良な「デザイン」で構成されたサービスはユーザーの生活に溶け込むと同時に、そのサービスを提供する企業にとっても有力なビジネスの機会を提供するものとなると考えており、UI/UXデザイン支援を通じてビジネスにおける「デザイン」の価値を世に広めていきたいと考え事業を行っております。
(2) 経営戦略、経営環境等
2007年1月、インターネットと携帯電話、そしてストレージ(記憶装置)を組み合わせたスマートフォンと呼ばれるデバイスの出現により、人々の生活が大きく変化しました。ユーザーは常にネットワークに接続し、アプリと呼ばれるソフトウェアを利用して情報を双方向に授受し、自己の生活スタイルに応じてスマートフォンの機能をカスタマイズするようになりました。以来、スマートフォンは各々の生活シーンに組み込まれ、すでに欠かせない存在になっています。
スマートフォンは「デザイン」にも大きな影響を与えました。デジタル分野のデザイン(「デジタルデザイン」)はそれまで主流であったホームページ等のPC画面のWebデザインからスマートフォン画面のアプリデザインに領域を拡大してきました。画面サイズの小さなスマートフォンでは視覚的にわかりやすい直感的操作が可能なユーザーインターフェース(UI)をもつアプリケーションが主流になり、ペイメントやカメラの利用など複数の機能がデバイスに盛り込まれる中、ユーザーの利用シーンを想定してアプリをデザインすること、つまりユーザーエクスペリエンス(UX)を「デザイン」することが不可欠となりました。
優れたUI/UXを実装したアプリを市場に投入できた企業が大きく成長するという事例が積みあがっております。例えば、LINE、Uber、Twitter、Instagram等のアプリの運営企業はスマートフォンアプリを起点として、それぞれの業界だけでなく、社会全体にまで大きな影響を与えております。一方では、既に一定の地位を築いている企業については、自社の成長のため、または生き残りのため、スマートフォンをはじめとするデジタル領域への対応において数々のチャレンジに直面しております。
経済産業省によると、「あらゆる産業において、新たなデジタル技術を使ってこれまでにないビジネスモデルを展開する新規参入者が登場し、ビジネスの従来の枠組み・ルールが崩壊し、新たな枠組みやルールに切り替わる変化が起きつつある」、そして、「企業は、この脅威に対し、現在確保している競争力維持・強化のために既存の枠組みにとらわれない自己変革が求められている」と報告されており(注1)、主にデジタル分野でのこのような取り組みをデジタルトランスフォーメーション(DX)と呼び、経済やビジネスにおけるテーマとして掲げられております。
IT専門の調査会社のIDCによる調査結果では、デジタルトランスフォーメーションの拡大を背景として、全世界におけるデジタルエージェンシー(当社グループを含む顧客企業のデジタル開発/進出を支援する事業を行う企業)の全市場の市場規模は、2018年において1,132億USドル(2018年)と推測されています。そのうち、当社グループがデザインパートナー事業及びデザインプラットフォーム事業の「Goodpatch Anywhere」にて提供しているUI/UXデザイン支援に関連した領域(UI/UXデザイン市場)については年平均成長率14.4%、市場規模では484億USドル(2018年)から950億USドル(2023年)に拡大すると予測されています(注2)。
(単位:百万USドル)
201820232018-2023
CAGR
Digital engagement project services26,663.351,695.114.2%
Experience design services16,014.032,843.515.4%
Brand strategy services5,732.610,505.912.9%
Total48,409.995,044.514.4%

日本においても、2018年5月、経済産業省は、経営者がデザインを有効な経営手段と認識しておらずグローバル競争環境での弱みとなっていることから、デザインを活用した経営手法、すなわち「デザイン経営」の推進を提言しております。ここでいう「デザイン経営」はデザインを重要な経営資源として活用し、ブランド力とイノベーション力を向上させるという経営の姿であり、企業の産業競争力の向上に寄与するものとされております。当社グループのUI/UXデザイン支援は「デザイン経営」を具体的に実践したい企業にむけて、企業レベルでのブランディングから個別サービスにおけるデザインの実装に至るまでデザイン領域を幅広くサポートしております。
当社グループが手がけるデザインパートナー事業は、顧客企業のデザインプロジェクトの支援において、顧客企業の目的や戦略から紐解き、顧客のユーザーへのUXの最適解を求めながらアプリ等のデジタルプロダクトのデザインの実装を進めていくというデザインプロセスを採用しております。イノベーションの創出を図りたい企業におけるデジタル分野への新規進出の実現を、デザインを切り口に行うものとなります。
具体的には、当社グループでは、先ずサービスを利用するユーザー(利用者)をデザインの中心として位置付け、ユーザーに焦点を当てていきます。ユーザーとは何者か、どのような趣向があるのか、解決には何が必要かという問いを投げかけていきます。常にユーザーを中心に考え、目的を見出し、その目的を達成するための手段を具現化するという一連のプロセスの中に、ブランド・強み、商品力等の顧客企業が有する価値を組み込み、その特徴を活かしつつ、差別化されたUXを実現していきます。また、顧客企業の有する様々な資産や技術だけでなく、企業外にある手段についても柔軟に取り入れながら対話を進めていきます。その結果、AIやクラウド、IoT等の様々な技術はその実現のための手段として組み込まれ、必要に応じてデザインの設計にも反映されるとともに、そのソリューションの実装までプロジェクトスコープを拡大して対応することがあります。
また、当社グループとしては、デジタルトランスフォーメーション領域において「デザイン」が関係する市場をより鮮明に形成するため、デザイナー組織を拡大し、デザインパートナー事業の成長を図るとともに、より多くの顧客に向けてデザインプロジェクトを実施していきたいと考えております。これまでに関与した優れたUI/UXのデザイン事例を有効に活用しながら、広告に頼らないSNS等を活用したPR活動をさらに推進することによって効率的に当領域におけるブランディングを進めてまいります。
同時に、デザインパートナー事業を後方支援するために、デザインプラットフォーム事業の推進に努めます。ソフトウェア(デザインITツール-Prott)、デザイン人材(デザイナー採用支援サービス-ReDesigner)、デザイン環境(クラウドソーシング-Goodpatch Anywhere)の点からもデザイン領域における当社の存在感を高めていきます。それぞれのシナジーを創出し、デザインビジネスにおけるリーディングカンパニーのポジションをより確固たるものとしてまいります。
(注)1.経済産業省 "産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進" https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html,(2019年10月25日)
2.IDC "Worldwide and U.S. Digital Agency Services Forecast, 2019-2023", 2019年9月, Digital engagement project services, Experience design services, Brand strategy servicesの3分野の合計
(3) 目標とする経営指標
当社グループ主力事業であるデザインパートナー事業の収益の源泉は、顧客のデザインプロジェクトからの月額報酬となります。デザインプロジェクトの期間については、顧客企業のニーズやサービスの運営状況によっても変化するため、数か月から数年に及ぶものまで様々であります。また、プロジェクト受注数はその時々の受注可能なデザイナーリソースや既存プロジェクトの継続状況によっても変動します。そのため、当社経営上の目標達成状況を判断するための客観的指標は、月平均プロジェクト数及び平均プロジェクト月額であると考えております。当該プロジェクト数の成長とプロジェクト月額の拡大を推進することで、今後のデザインパートナー事業の売上高を継続的に成長させてまいります。
なお、当事業における毎月のデザインプロジェクトの実施数とその平均月額単価は以下のとおりです。また、契約形態としては、2017年8月期、2018年8月期及び2019年8月期には請負契約のプロジェクトもありましたが、直近では主に月額ベースの準委任契約となります。
2017年8月期第1四半期
(2016年9月~2016年11月)
第2四半期
(2016年12月~2017年2月)
第3四半期
(2017年3月~2017年5月)
第4四半期
(2017年6月~2017年8月)
通期計
(2016年9月~2017年8月)
月平均
プロジェクト
(件数)
18.317.014.717.016.8
平均プロジェクト月額
(千円)
3,2324,1192,5783,4483,344

2018年8月期第1四半期
(2017年9月~2017年11月)
第2四半期
(2017年12月~2018年2月)
第3四半期
(2018年3月~2018年5月)
第4四半期
(2018年6月~2018年8月)
通期計
(2017年9月~2018年8月)
月平均
プロジェクト
(件数)
18.321.719.320.720.0
平均プロジェクト月額
(千円)
3,5804,0403,3074,5243,863

2019年8月期第1四半期
(2018年9月~2018年11月)
第2四半期
(2018年12月~2019年2月)
第3四半期
(2019年3月~2019年5月)
第4四半期
(2019年6月~2019年8月)
通期計
(2018年9月~2019年8月)
月平均
プロジェクト
(件数)
22.022.723.722.022.6
平均プロジェクト月額
(千円)
3,8364,3773,7365,2764,306


2020年8月期第1四半期
(2019年9月~2019年11月)
第2四半期
(2019年12月~2020年2月)
月平均
プロジェクト
(件数)
23.326.3
平均プロジェクト月額
(千円)
5,2874,901

(注)1.月平均プロジェクト数=1か月に稼働したプロジェクト数の3か月または1年(12か月)の平均値
2.平均プロジェクト月額=(1か月に稼働したプロジェクトの総売上/1か月に稼働したプロジェクト数)の
3か月または1年(12か月)の平均値
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
上記の経営方針・経営目標等を推進する上で、当社グループとしてとらえている対処すべき主な課題は以下のとおりであります。
① デジタルトランスフォーメーション(DX)におけるプレゼンス向上について
当社グループとしては、社会を変革する巨大企業に成長したベンチャー企業のように、「デザイン」をビジネスに組み込み、直観的で使いやすいUX及びUIを実現することが競争力の源泉になると考え、「デザイン」を念頭においたビジネスの設計が今後必要になると認識しています。スマートフォンとそれに関連したエコシステムに端を発し、スマートフォンを活用した情報プラットフォームなどが、新たな技術を組み合わせてディスラプターと呼ばれ、市場を席巻するようになりました。それを受けて、他の企業もデジタル領域でイノベーションを引き起こそうと、その手法について社内外から可能性を探っております。これに連動して、アプリケーションの数も世界的に急速に拡大しています。
当社グループは、これまで顧客企業に対してUXやUIに優れたWebやスマートフォンのアプリケーションを実現するためのデザインプロセスを進めてまいりましたが、その過程で顧客企業のビジネスそのものをデザインするという側面についても担ってまいりました。例えば、顧客企業が新たに取り組むデジタルの顧客接点はこれまでの顧客接点の延長線にあるのではなく、新たな視点から顧客にむけた活動を再定義するものとなるため、ビジネスとデザインの連動が不可欠となります。特に、大企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)へのニーズには、急速に変化する顧客の環境を意識しながら柔軟な思考で最適なサービス設計を行う、というUXに直結する要素があるため、組織支援やブランディング支援等からデザインの実装プロセスの導入を進めることもあります。
当社グループとしてはこれまでの知見を活かし、「デザイン」が「ビジネス」に直結することの実例を広く市場にアピールし、デジタルトランスフォーメーション(DX)支援を推進してまいります。
② デザイン組織の拡大成長について
当社グループが顧客企業に良質のUIデザイン及びUXデザインを提供していくためには、優れたデザイナーとなりうる人材を確保し続けることが極めて重要な要素であると考えております。当社グループが「デザイン」の本質を追求し顧客企業に深くコミットしてきた結果、当社グループには、戦略の立案からプロダクトの開発まで深く関与することが可能な、デザイナーにとってやりがいのある仕事が存在することをアピールしております。
デザインパートナー事業においては、デザインスキルを必須とせず、多様な経験を有する人材を広く獲得し、社内にてデザイナーとしてのスキル向上を図るための体系的なデザイン研修を実施しております。また、デザイナーが働きやすい就業環境を整備し、デザイナー中心の企業文化を定着させ、より長期のコミットメントを引き出すため、当社のミッション、ビジョン、バリューの啓蒙活動のほか、定期的な全社ミーティング・交流イベントを通じて戦略の理解と帰属意識の醸成を図っております。
他方、デザインプラットフォーム事業「Goodpatch Anywhere」では外部のフリーランス人材の獲得を強化しております。当社のブランドを活用し獲得したデザインプロジェクトは、報酬・業務環境面で一定の水準を確保するものとし、フリーランスデザイナーにとって魅力的なプロジェクト参画が可能であるため、質の高いフリーランスのデザイナーに向けて登録を促進しております。また、デザインプラットフォーム事業の「ReDesigner」、「Prott」、「Athena」等にも社内デザイナー・エンジニアが社員として在籍しており、デザインを意識した独自のサービスの開発が行われております。
そのため、当社グループは、デザインパートナー事業の社員デザイナーを中心とした社内デザイン組織と、デザインプラットフォーム事業の「Goodpatch Anywhere」からなる社外デザイン組織を併せ持ち、それぞれの拡大成長を図り、顧客企業のデザインに対するニーズに応えてまいります。なお、過去3カ年に渡るデザイン組織の人数の推移は以下のとおりです。
2017年8月期第1四半期末
(2016年11月)
第2四半期末
(2017年2月)
第3四半期末
(2017年5月)
第4四半期末
(2017年8月)
デザインパートナー事業
社内デザイン組織
(名)
40395259
デザインプラットフォーム事業
社内デザイン組織
(ReDesigner、Prott等)
(名)
21222318
デザインプラットフォーム事業
社外デザイン組織
(Goodpatch Anywhere)
(名)
合 計61617577

2018年8月期第1四半期末
(2017年11月)
第2四半期末
(2018年2月)
第3四半期末
(2018年5月)
第4四半期末
(2018年8月)
デザインパートナー事業
社内デザイン組織
(名)
63646872
デザインプラットフォーム事業
社内デザイン組織
(ReDesigner、Prott等)
(名)
19161514
デザインプラットフォーム事業
社外デザイン組織
(Goodpatch Anywhere)
(名)
合 計82808386

2019年8月期第1四半期末
(2018年11月)
第2四半期末
(2019年2月)
第3四半期末
(2019年5月)
第4四半期末
(2019年8月)
デザインパートナー事業
社内デザイン組織
(名)
80798887
デザインプラットフォーム事業
社内デザイン組織
(ReDesigner、Prott等)
(名)
109712
デザインプラットフォーム事業
社外デザイン組織
(Goodpatch Anywhere)
(名)
203261
合 計90108127160

2020年8月期第1四半期末
(2019年11月)
第2四半期末
(2020年2月)
デザインパートナー事業
社内デザイン組織
(名)
95101
デザインプラットフォーム事業
社内デザイン組織
(ReDesigner、Prott等)
(名)
1010
デザインプラットフォーム事業
社外デザイン組織
(Goodpatch Anywhere)
(名)(注)2
7297
合 計177208

(注)1.デザイン組織には、UXデザイナー、UIデザイナー、エンジニアの3職種が所属しております。
2.2020年4月末現在においては、登録者数114名のうち29名が稼働しております。
③ デザインにおける知識マネジメントの推進について
当社グループは、UI/UXデザインの品質を継続的に向上させるために、これまでの実績とその過程で蓄積された経験をデータベース化し、当社のメンバー間で共有できるような仕組みを構築しており、デザイン組織の拡大とデザインプロジェクト(量及び質)の拡大に伴い、デザインの知見を蓄積しております。デザインはプロダクトを利用するユーザーの環境によって大きく異なることから、これまでのプロジェクトから生み出された知見を共有し、あらゆるケースに応じてベストなデザインを生み出せるように取り組みを進めてまいります。
④ デザインバリューチェーンの機能強化について
当社グループは、UI/UXデザイン支援において、UI/UXデザインの開発のみならず、ブランドデザイン、サービス戦略の策定やアプリケーションの実装についても手掛けております。UI/UXデザイン支援の上流から下流までのプロセスを一気通貫に支援することが優れたプロダクトの開発に直結するため、デザイン支援のバリューチェーン全体(サービス(企業)ブランド開発・サービス戦略策定⇒UI/UXデザイン支援⇒実装⇒メンテナンス)を意識した機能強化が必要であると考えております。
そのため、UI/UXデザイン支援を直接担当するUI/UXデザイナーだけでなく、ブランドデザインやサービス戦略の策定に専門性をもった人材や、プロダクトの実装面に直接貢献できるアプリケーションのエンジニア、さらにデザインをデジタルトランスフォーメーション(DX)領域へ拡張していくためのIoTやAIの知見をもった人材の拡充を進めております。
当社が顧客企業の企業価値の向上にさらに貢献していくため、デザイン支援にとどまらず、企業ブランディングやサービス戦略からデザイン支援を開始し、実装やメンテナンスまで含めた長期的な関係性を構築できるように、各プロセスにおけるリソースを強化してまいります。
⑤ グローバル市場の開拓について
当社グループは、日本とヨーロッパの両面から市場の拡大を図っております。日本とヨーロッパという地理的・文化的に異なった地域においても、デザインプロセスは基本的に同様に進められると考えております。文字や表現方法などの異なる点を理解しつつ、デザイン市場の大きさやトレンドを柔軟にとらえ、グローバル市場を開拓してまいります。
⑥ デザインプラットフォーム事業の成長について
当社グループは、「デザインプラットフォーム事業」を、「デザインパートナー事業」における地位をより強固なものとするための関連事業と位置付けております。「デザイン」のビジネス領域における市場を明確に形成し、そのリーディングポジションを確固たるものとするために、ソフトウェア (デザインITツール-「Prott」「Athena」)、企業内デザイン人材 (デザイナー採用支援サービス-「ReDesigner」)、デザインビジネス環境 (クラウドソーシング-「Goodpatch Anywhere」)の3領域において以下の取り組みを進めております。
⑥-1 ソフトウェアへの取り組み
当社グループは、「Prott」というSaaS(Software as a Service)アプリケーションを公開しております。「Prott」はスマートフォンアプリのデザイン開発において生産性を高めるツールとして、デザイン支援の現場から発案されサービスを提供してまいりましたが、当社グループとしては、数々のデザイン支援プロジェクトを実施した結果、「デザイン」を取り巻くソフトウェアの側面をさらに改善していく必要性を感じております。
当社グループは、デザインプロセスにおいて顧客企業の本質的な課題にフォーカスするために、顧客企業のプロジェクトチームとのコラボレーションを重視しております。これまでも顧客企業内での共通認識の確認など、効率的にアイデアを図解する必要性は存在しておりましたが、近年、プロジェクトチームが複数の拠点に分散したり、リモートワークを積極的に活用したりするなど、インターネットを活用したチームビルディングやディスカッション等のコラボレーションを活性化させるニーズに直面してまいりました。
そのため、当社ではリモートワークやプロジェクトワークにおいて有効な、新たなSaaS形式のオンラインコラボレーションソフトウェア「Strap」を開発し、ベータ版のリリースを実施いたしました。デザインタスクの実施の際に一般的なオフィスソフトを利用する場合、アイデアをリアルタイムに共有し議論する際には業務効率が上がりにくい等の課題がありますが、当ソフトウェアを活用することでオンライン上の場に複数人が同時接続して文字や図を操作し、効率的にコラボレーション作業を行うことが可能となります。なお、提供形態としては、サブスクリプション型(月額課金型)とすることを計画しております。
⑥-2 デザイン人材市場への取り組み
当社グループは、デザイン人材市場へのアプローチとして「ReDesigner」及び「ReDesigner for Student」を展開し、デザイナーという限定された職種に対し、企業からデザイナーの採用支援の依頼を受け、候補者を紹介しております。デザイナーの採用及び就業環境については、企業側の「デザイン」という業務への理解が不十分である場合採用のミスマッチが起こりやすいため、企業に対しデザイナー採用時における留意点等のアドバイスを行っております。「デザイン」を取り巻く就業環境をより良いものとするため、引き続き各社のデザイナーの就業環境を整えながらも、デザイナー志望者へ提供する情報の付加価値を高め、採用企業及び求職者の両面で「ReDesigner」の人材ネットワークを拡大してまいります。また、「ReDesigner for Student」は求職者と採用企業を結びつける仕組みとしてソーシャルリクルーティングを採用し、デザイナーのためのリクルーティングサイトとしてUX及びUIの改善を継続的に進め、サービスの強化に努めております。
⑥-3 デザインを取り巻く就業環境への取り組み
「Goodpatch Anywhere」では、フリーランス等の人材を案件毎にパートタイムで採用しております。近年、「働き方改革」など、これまで当たり前であった日本企業の労働環境を大幅に見直す取り組みが進められておりますが、デザイナーについても個々の事情に合った様々な働き方が可能になってきております。デザイナーは一つの企業・ブランドに対して専業でキャリアを積むのではなく、複数のデザイン案件にてスキルを伸ばしたいという理由からフリーランスへ転身する方が多くいるため 、流動的なパートタイムのデザイナー人材マーケットはクラウドソーシングと相性が良く、複数のデザイナーを案件単位で集める場として魅力的です。
一方、デザインプロジェクトを依頼する企業にとっては、自らがデザイナーにプロジェクトを依頼する場合、能力やリソース面において十分な選定ができているかどうか事前把握が困難なことがあります。
そこで当社グループでは、「Goodpatch Anywhere」において、当社グループのリソースを用いて流動的なデザイナー人材を束ね品質管理を行うことによって、企業のニーズを満たすデザインプロジェクトの運営を可能にしました。また、遠隔地におけるメンバーとプロジェクトの場を結びつけるためにオンラインコラボレーションツールを活用し、柔軟な運営態勢を維持しながら組織拡大に努めております。当社グループとしてデザイナーの安定確保、デザイナー側への魅力的な案件の提供、企業側への柔軟で質の高いプロジェクト提供を可能とし、デザインのプロジェクトの裾野を拡大しています。
⑦ 内部管理体制の強化について
当社グループでは、今後継続的に事業が拡大していく中で、効率的な経営を行うために内部管理体制についてより一層の強化が求められていくものと認識しております。これに対応するため、当社グループでは、各分野に専門性を有した人員を配置し、社内管理体制の強化を図っており、今後においても引き続き充実させていく方針であります。
⑧ デザインパートナー投資について
当社グループは、「デザインの力を証明する」ために、デザインプロジェクトの提供とともに、顧客企業の企業価値の向上を図っております。デザインによる価値は資産として顧客企業に残るものとなりますが、一方で、一定期間のデザイン支援が完了すれば当社としての関わる余地が少なくなります。デザインによる長期的な価値向上について、当社グループが享受できるものは限られたものになります。
そこで、デザインによる価値を顧客企業に浸透させ、当該企業のさらなる成長を支援するために、当社グループとしてデザインパートナー事業の顧客企業に対して株式を取得し、顧客企業との長期的関係性を構築していきたいと考えております。デザイン支援による顧客企業の企業価値を当社グループの企業価値に反映させてまいります。