有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/01/21 15:00
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162項目

事業等のリスク

以下において、当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。
文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。なお、当社は、これらのリスクの発生可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針です。また、以下の記載は本株式への投資に関連するリスクを全て網羅するものではありませんので、この点にご留意ください。
(1) 原材料・商品の仕入について
医薬品原薬は、それを使用する医薬品メーカー等が製造する特定の製剤の仕様に応じて主に海外から継続的に調達しております。当社の原薬輸入及び製剤製造用原材料仕入に係る価格が市況変動及び為替相場等の事情によって急激に変動した場合、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。また、海外原薬メーカーの経営状態、販売方針、供給体制、許認可及び現地政情等の影響により、原薬の調達が遅延、難航あるいは不可能となった場合には、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 市場及び顧客動向について
医薬品事業に関して原薬及び製剤の販売量は当該製剤の市場での需要変動、競合製品の動向等による影響を受ける可能性があります。商材の特性上特定の相手先との取引に依存する割合が比較的高く、2020年5月期における当社の売上高の20.9%は不二化学薬品株式会社(医薬品卸売業、資本金5,000万円、売上高21,475百万円(2019年9月期))に対するものであります。顧客の販売戦略の変更や生産・在庫調整等が取引額に大きく影響する可能性があります。また、当社の取引先が企業再編、あるいは資本変更等により他社の傘下に入ること等が発生した場合には、その親会社等の意思決定に取引先動向が左右されることから取引額が減少し、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。健康食品事業に関しては大手健康食品メーカーだけではなく医薬品大手メーカーが健康食品業界に新規参入してきており、ガリバー企業の影響で当社の販売機会喪失につながった場合、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。化学品事業に関しては中国や韓国からの安い水処理商材が日本へ輸入されております。これらが製品技術を付けてきた時に一気に価格競争が激化し、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 許認可及び法的規制に関するリスク
当社は医薬品原薬の販売及び医薬品の製造販売等の事業に関して薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)、薬機法施行規則及びそれらに関するGMP(医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)、GQP(医薬品の品質管理の基準に関する基準)関連法令の規制を受けており、主に次頁の承認・許認可等を受けております。当社は、当該許認可等を受け、また維持すべく諸条件及び関係法令の遵守を徹底しており、現時点において当該許認可等の取消又は停止等の行政処分事例は発生しておりません。しかし、意図せぬ法令違反等によりこれらの許認可に対し行政庁より許可の取り消しや業務の停止等、不利益処分が下された場合には、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす恐れがあります。
また、健康食品そのものを単独に規定する法律は存在せず、健康食品の明確な定義もありません。しかしながら販売者が、健康食品等を特定疾病や身体機能への効果を標ぼうし販売すると、医薬品等を規定する「薬機法」における無許可無認可医薬品の販売としてみなされることになります。その他の法的規制としては、飲食に起因する衛生上の危害の発生防止及び公衆衛生の向上・増進を図る見地から、食品の規格・添加物・衛生管理・営業許可を定めた「食品衛生法」、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特例を定めることにより公正な競争を確保し、もって一般消費者の利益を確保することを目的とした「不当景品類及び不当表示防止法」、健康増進の総合的な推進に関した基本的な事項を定めるとともに国民の健康の増進を図るための措置を講ずることを定めた「健康増進法」、食品の安全性の確保に関し、基本理念及び施策の策定に係わる基本方針を定め、関係者の責任及び役割を明らかにすることにより、食品の安全性の確保を総合的に推進することを目的とした「食品安全基本法」があります。
当社としては、法律を遵守するよう最善の注意と努力を行うとともに、監督諸官庁に対する報告及び照会・指導の要請並びに立会いの受け入れを行い、指導内容に対しては迅速に改善をすることで対応しております。しかしながら予期しない法律又は規制の変更及び現行の法的規制における法令の解釈・適用によって新たな対策が必要になった場合には、当社の事業、経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
当社の主要な承認・許認可等は以下のとおりです。
許認可等の名称所管官庁等有効期間主な許認可取消事由
医薬品製造業許可証福岡県5年薬機法第75条第1項
医薬品販売業許可証福岡県/東京都6年薬機法第75条第1項
向精神薬輸入業者免許書厚生労働省5年麻薬及び向精神薬取締法第51条
毒物劇物一般販売業登録票大牟田市/東京都/茨城県6年毒物及び劇物取締法第19条第4項
毒物劇物製造業登録票厚生労働省5年毒物及び劇物取締法第19条第4項
毒物劇物輸入業登録票厚生労働省5年毒物及び劇物取締法第19条第4項
菓子製造業(パン以外)福岡県南筑後保険福祉環境事務所6年食品衛生法第55条、第56条
清涼飲料水製造業福岡県南筑後保険福祉環境事務所6年食品衛生法第55条、第56条
JISマーク表示制度認証一般財団法人日本品質保証機構3年JIS Q 1001:2009 15

(4) 品質に関するリスク
当社は、取り扱う医薬品原薬や製剤、健康食品の製造の品質に関して、取扱及び生産工程での管理徹底、継続的な研究開発によりその維持・向上に取り組んでおり、日本国内のGMP(医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)及び食品GMPの品質基準に適合する生産体制を備えております。しかしながら、外的要因等の影響によりこうした生産体制の維持が困難となり製品の品質低下が生じた場合、社会的信用力や営業上の競争力が低下することにより、当社の経営成績及び財政状態は重大な影響を受ける可能性があります。
当社では、品質管理基準等に適合するよう細心の注意を払い品質保証に取り組んでおりますが、原薬供給もしくは開発製造、受託製造を行う医薬品に関して品質保証の取組みの範囲を超えてこれらの事態による販売中止、製品回収もしくは損害賠償等が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
また、医薬品の発売後に予期していなかった副作用が発生したり、製造過程での製品への異物混入等が発見される、あるいは薬機法に基づく再審査や再評価において、品質、有効性もしくは安全性に関して不適当と評価される可能性があります。
輸入供給する原薬についても、特に海外における原薬製造の部分においては日本国内の種々の基準や規制に適合する製品が供給されるよう、継続した製造工程や製造環境等のコントロールが不可欠であり、納品後に異物混入が見つかるなどして回収を余儀なくされる場合があります。
(5) 薬価改定及び政府による制度見直し等の影響について
医療用医薬品は政府の制定する薬価基準により保険価格が定められております。2017年に政府が打ち出した薬価制度抜本改革に向けた基本方針においては、定期的に実施される薬価改定が2年ごとから1年ごとへと改められ、販売が好調な品目等において薬価の引き下げ等が行われた場合の影響が予想されます。
薬価改定後には、医薬品製造販売における販売価格低下、利益幅減少等の影響や、原薬販売における需要変動や販売価格低下、利益幅減少等の影響が生じ、政府による医療保険制度抜本改革と併せ当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 競合に関するリスク
当社では、医薬品事業について自社で分析を行う設備を有しており、日本国内の品質基準への対応の面で取引先からも相応の評価を得ております。また、医薬品製造販売においても少量多品種生産に対応可能な工場を保有することから製造受託において競合他社に比べ優位な部分もあるものと考えております。しかしながら、競合他社の分析設備導入や同種工場新設によっては当社の優位性が損なわれ経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
健康食品事業については、スティックゼリーの製造において、高速充填機を複数台所有し、中規模・大規模の案件にも対応できる体制を有しております。しかしながら、競合他社の設備導入等による増産対応によっては当社の優位性が損なわれ経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
化学品事業についてはイオン交換樹脂の粉砕・乾燥設備を保有しているのは国内でも稀であり、長年の加工実績により培われた技術は直ぐに真似出来ない領域まで来ています。しかしながら、一般的な水処理用途(純水製造等)で使用される製品については、特別な技術を必要とせず価格面による優位性が第一となり、取り扱う競合他社も多く、取引額の減少から経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 知的財産権に係る紛争に関するリスク
物質、製法、用途、製剤等に関する特許権等、他者の権利の存否が製品開発に大きな影響をもたらすため、当社は特許権を中心とした知的財産権に関し調査を実施しております。しかしながら、当社と知財権者との見解の相違から、無効審判請求の申立を含む法的紛争に発展する可能性(当社が原告)や特許抵触の疑義があることを理由に法的紛争に発展する可能性(当社が被告)が想定され、そのような場合には判決の内容により当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 設備・固定資産に関するリスク
当社は、固定資産を多数所有しており、経済情勢の変化等に伴ってそれらの資産価値が著しく変動し、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。
また、当社が保有する製造設備の中には、導入から長期間が経過した資産も含まれます。適時適切な修繕・メンテナンス・更新等を計画実施しておりますが、老朽化による予期せぬ機器不具合や不慮の故障により製造スケジュールに影響が生じる可能性があります。
設備導入に際しては、事前に収益性や投資回収可能性に関する十分な検討を行っておりますが、新規開発品目の販売開始時期の遅延、又は販売予定数量の減少等が発生し、当初の事業計画からの大幅な乖離が生じた場合、固定資産の減損処理を行う必要が生じる等、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 研究開発に関するリスク
当社は、取引先からの開発依頼案件、受託案件に関する研究開発活動、製法や品質の分析活動を行っております。これらの活動は、製造販売、業務受託に先行して開始する場合が多々ありますが、必ずしも見込んだ収益獲得につながらない可能性があり、これらの活動を通じて過大な先行投資が行われた場合には、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。また、新規開発商品を市場に出す際に、承認手続き等が必要な場合には計画的に対応しておりますが、当社又は取引先メーカー等において計画どおりの承認取得ができない場合には市場への供給に遅延が生じ、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 自然災害、事故等に係るリスク
当社の工場拠点は福岡県、茨城県にあり、自然災害等で両拠点同時に被害を受ける可能性は低いと考えられます。しかし、医薬品、健康食品、化学品全ての生産拠点は福岡県に集中し、当社の工場は全てにおいて直ちに代替が効くものではないことから、災害や事故等が発生した場合、製造設備等への損害、製造ラインの停止、取引先や工場近隣住民への補償等により、当社の事業、経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
新型コロナウイルス感染症に対しては、当社では、従業員の安全確保のため、在宅勤務や時差出勤の実施、事務所内のソーシャルディスタンスの確保、不急の出張・外出の自粛、Web会議等の活用、手指の消毒・マスク着用の推進、検温等の体調管理など感染拡大防止に向けた取り組みを実行し、安定した製品・サービスの提供に努めておりますが、従業員に感染者が発生した場合、一時的に工場の操業や営業活動の停止をするなどの対応が必要となる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染拡大や長期化により、取引先の業績悪化や方針変更が発生した場合、開発案件の停止や取引の遅延、縮小などで、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 金利変動について
当社では、金融機関からの借入によって製造設備、運転資金その他必要な資金を調達しておりますが、有利子負債の金額は売上高に比して多額なものであると認識しています。今後、市場において金利が上昇した場合には当社の借入金利も上昇することが予想され、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社の借入金には財務制限条項が付されている契約があり、これらには純資産の減少及び経常損失の計上に関する財務制限条項が付されております。万一、当社の業績が悪化し、財務制限条項に抵触した場合には、当該契約による借入金の返済を求められる結果、当社の財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 売掛金回収に関するリスク
当社では、取引先各社との売掛取引に際しては十分な与信管理の元で販売を行っておりますが、予期せぬ取引先の倒産等により貸倒れが発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 税務上の繰越欠損金について
当社は、過去の子会社吸収合併により、税務上の繰越欠損金が存在しております。当社の事業が順調に推移することにより、繰越欠損金が解消した場合には、法人税、住民税及び事業税の金額が増加することとなり、当社の経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
(14) 安全性確保及び環境保全に関するリスク
製造、分析、研究の過程等で使用し、又は発生する化学物質の中には、人体、生態系、その他環境に悪影響を与える可能性のある物質も含まれます。当社は、関連諸法令の遵守を徹底すると共に、有害物質の漏洩防止及び適法適切な廃棄処理を徹底し、土壌汚染、水質汚濁及び悪臭その他環境被害の発生防止に取り組んでおります。しかしながら、取り扱う物質の特性上予期し得ない現象や結果が発生する可能性も否定はできず、万一事業活動に関係する環境問題が発生した場合には、損害賠償義務の発生やブランドイメージの毀損等経営に影響を与える結果となる可能性があります。また、関連諸法令の改定に伴って多額の対策費用が発生する場合等においても、当社の事業、経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 人材確保について
当社は今後の事業継続・拡大のため質の高い人材を継続的に確保していくことが重要な課題であると認識し人材確保に注力しておりますが、周辺情勢の変動により人材を十分に確保できなかった場合には当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(16) 特定の経営者への依存について
当社の代表取締役会長である村山哲朗は、当社の創業家出身であり、当社の経営方針決定において重要な役割を果たしております。2019年に代表取締役社長を後任に譲り、ガバナンス体制の構築のみならずノウハウや経験の伝承の面からも人材の強化を図っており、経営層、従業員共に適材適所に配置した体制を築いており、事業承継は進んでおりますが、不測の事態により同氏の業務遂行が困難になった場合、人脈や業界内でのネットワーク等の面で影響がでる可能性は否定できず、当社の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(17) 機密情報の管理に係るリスク
当社は、各事業における業務受託等において、取引先の生産計画や新製品の開発に関する機密性の高い情報を取得する場合があります。当社では、機密情報の授受に際し秘密保持契約締結を徹底しているほか、従業員教育やIT統制を通じて機密情報の管理の徹底を図っておりますが、万が一情報漏洩等が発生した場合には、当社の信用の失墜等により、経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(18) 大株主のリスクについて
当社の代表取締役会長であり、筆頭株主である村山哲朗の本書提出日現在での議決権所有割合(自己株式を除く)は44.44%であります。また、同氏の配偶者である村山ひとみの議決権を合算した所有割合は64.65%となっております。
上場時の売出によって支配株主ではなくなる予定ですが、同氏は引き続き当社の筆頭株主となる見通しであります。議決権の行使に当たっては、株主共同利益を追求するとともに少数株主の利益にも配慮する方針であります。しかしながら、何らかの事情によって、同氏が当社株式をやむを得ず売却することとなった場合、当社株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。