有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/02/19 15:00
【資料】
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【項目】
141項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループでは、「私たちは金融サービス業として革新を起こし続け、自分らしい未来を歩む人々が溢れる世界を創る」というミッションを掲げております。金融商品の流通を担うプレイヤーとして、お客様に最適な金融商品を提供するだけでなく、お客様の想い=ライフプランを実現するための一連のコンサルティングプロセスの品質そのものが価値提供の源泉であると考えております。
当社グループでは、自らを「フィナンシャルパートナー」と位置づけ、一つの業態にとらわれずに金融サービスを開発し、真にお客様にとって最適なサービスを提供してまいります。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、企業価値向上のため、売上高及び営業利益の継続的な成長を目指してまいります。
指標設定の理由は以下のとおりです。
a.売上高
当社グループでは、個人顧客を中心とした顧客数の拡大によって事業の成長を図ってまいります。顧客数の拡大は経営成績上では売上高に反映されるため、売上高を重要な経営指標として設定しております。
b.営業利益
当社グループの本業はフィナンシャルパートナー事業であり、本業の収益性を注意深く追っていく必要があると考えております。従って、段階利益の中で営業利益を重視し、経営指標として設定しております。
c.営業利益率
売上高の成長に伴う形で営業利益の継続的かつ安定的な成長を目指しており、売上高営業利益率を重要な経営指標として設定しております。
(3)経営環境及び中長期的な経営戦略
①経営環境
我が国では少子高齢化の進展に伴い、「人生100年時代」と呼ばれる高齢化社会を迎えようとしており、パーソナルファイナンスの領域においては、資産形成に向けた自助の必要性が高まっております。
このような環境の下、金融サービス事業者が採択すべき原則として「顧客本位の業務運営に関する原則」がありますが、2020年9月に公表された改訂案では、顧客に相応しいサービスの提供(原則6)として、顧客のライフプラン等を踏まえた業横断的な商品の提案及び商品提供後のフォローアップの実施について追加されました。
また、同年6月には金融商品の販売等に関する法律が一部改正され、2021年中に「金融サービス仲介業」が創設されることが決定し、単一の認可で保険・証券・銀行代理業に係る商品の取扱いが可能となる予定であります。
金融サービス仲介業の創設により、顧客は単独の仲介業者から業横断的にワンストップサービスを受けられるようになるため、金融サービスの利用にあたり顧客の利便性は高まるものと考えております。なお、金融サービス仲介業についてはフィンテック企業等の参入が想定され、各社独自のデジタルサービス等と関連付けながらサービス提供することが考えられます。他方で当社グループでは既に保険・証券・銀行代理業に係る商品を取り扱っている他、一連の金融サービス提供プロセスにおいてコンサルティングサービス提供部分については人(コンサルタント)の価値が発揮されるものであると当社グループでは考えており、フィンテック企業等が提供すると考えられるサービスとは異なるものと推測していることから、本書提出日時点においては金融サービス仲介業への登録の予定はありません。当社グループではこれまでライフプランニングを土台に顧客の想いに寄り添いながらコンサルティングサービスを提供してまいりましたが、今後も金融サービスにおける人(コンサルタント)の価値を高めることで金融サービス仲介業者とは異なる価値提供を図ってまいります。
以上のように、金融サービス仲介業の創設により業界全体で健全な競争が促されるものと想定されますが、顧客の中でワンストップサービスに対する理解が浸透し、当社グループの事業コンセプトの認知も高まる可能性があるものと考えております。
他方、当社グループのメインターゲットとなるのは世帯所得が200万円以上1,200万円未満の世帯(一般的な勤労者世帯)であり、我が国の全世帯の中で70%以上(推定約4,200万世帯)注1にのぼると推測されます。当該世帯層に対しては、保険・証券・住宅ローンの各専業仲介業者がメインプレイヤーとしてサービスを提供しているものと考えられますが、各業者が専業の範囲内でサービスを提供していることから家計全体に対して包括的なニード喚起を受ける機会は必ずしも多くなく、当世帯層の顧客の多くは金融商品に対するニーズが潜在化しているものと考えられます。これにより当社グループのサービスの提供余地は多く残されており、当社グループの事業は高い成長性を有していると考えております。
注1.厚生労働省/国民生活基礎調査(2019年)所得の分布状況 及び総務省/住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数
(2020年1月1日現在)より当社推計
②中長期的な経営戦略
これらの環境を背景に、当社グループでは「ライフイベントに最適な金融ソリューションを提供する」という事業コンセプトに沿って、より付加価値の高いサービスの提供を目指してまいります。具体的には次のとおりです。
a.コンサルティングの生産性向上及び当社グループ単独での見込み客獲得の強化による事業収益基盤の強化
当社グループのサービス利用動機は、具体的な商品加入の要望から社会保険及び各種公的制度等に関する情報提供並びにアドバイス、ライフスタイル(ワークスタイル)に係る資金面の相談等広範に亘り、それに伴い採るべきコンサルティングアプローチも多岐に亘ります。
顧客管理システム内には顧客に関する詳細情報(属性情報や顧客意向、面談内容等)と、成約率及び顧客単価の高い優績コンサルタントによるコンサルティングの好事例(顧客ニーズの引き出しや提案商品の内容)が蓄積されますが、それらを統合しながらコンサルティングアプローチの立案支援やコンサルタントの育成等に応用することでコンサルティングの生産性向上を図ってまいります。
同時に広報及び広告宣伝活動の強化を通じ、より収益性の高い当社グループ単独での見込み客獲得量を増加させることにより、アポイントの収益性向上も図ってまいります。
これら双方の取組により当社事業の収益基盤の強化を図ってまいります。
b.再販機会創出による顧客のライフタイム・バリュー(LTV)の向上
<サービスアクセス環境の整備>当社グループの主要顧客層は20代から40代のファミリー層でありますが、当該世代はITに親しく、日常的な消費行動の多くがスマートフォン等の情報端末を通じて行われており、金融サービス領域においても同様の行動が今後増加すると考えられます。
当社グループでは、当社で開発したライフプランニングに関するWebサービス「マネパス」及びオンライン面談システム「Broadtalk」の展開や、当サービスを含むサービスポータルサイトの構築等により、デジタルを活用した顧客接点を形成することでサービスに常時アクセスできる環境を整備し、顧客の任意のタイミングで最適なソリューションを提供する体制を整えてまいります。
<全ての年代の金融ニーズに対応するための提案力の強化>当社グループの主要顧客層の多くは、ライフステージの特性上、保障性商品を中心とした生命保険の契約により顧客関係が開始されます。他方、既存顧客が年齢を重ねることで今後50代以上のリタイアメント準備層及びリタイアメント層の増加が見込まれることから、全ての年代の金融ニーズに対応することが必要となると考えております。
当社グループでは、リタイアメント準備層及びリタイアメント層で高まると予想される資産運用及び資産保全ニーズや、セカンドライフ以降で希望するライフスタイルの実現に適したソリューションの提案力を高めてまいります。
c.人とデジタルの価値を組み合わせた金融プラットフォームの構築
昨今の金融分野における技術革新の進度は目覚ましく、今後も多くの領域でデジタルを活用したサービスが展開されるものと考えられます。他方で当社グループのサービスは金融商品という説明型商品を扱うものであり、顧客体験の観点からもコンサルタントの果たす役割は今後も大きいものと考えております。
当社グループでは今後、金融サービスのデジタル化を推進すると共に、デジタル化によって実現される「データの蓄積」「常時サービスへアクセスできる環境」を活用し、コンサルタントの効果的な育成による品質及び生産性向上と、効果的なマーケティングによる顧客LTVの両立を目指してまいります。
また、他仲介業者におけるマーケティング及び育成等の課題解決支援として、当社で開発又は今後開発予定の一連のデジタルサービス(上記のライフプランWebサービス「マネパス」やオンライン面談システム
「Broadtalk」、ポータルサイト等)を他仲介業者向けに提供することにより、新たな収益モデルの確立を図ってまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①当社グループのサービスの認知度向上
当社グループでは1人でも多くのお客様と接点を持つことが継続的な課題であり、消費者及び提携先等からの認知度を高める必要があると考えております。当社グループの提供価値は、パーソナルファイナンスの領域において、今後も我が国ではより一層求められるものだと考えております。そこで、当社グループの提供価値を、広く適切に伝える必要があると考えております。具体的な対応策として、インターネット広告や当社SNS等を活用した広告宣伝活動を展開する他、PRコンサルティング会社との協業により広報活動を強化してまいります。
②優秀な人材の確保及び育成
営業部門組織の質・量の拡大を目的に優秀な人材の確保及び育成を引き続き図る他、中長期的な戦略の実行を加速させるため、テクノロジーに関する知見を持ち合わせた、専門性の高い人材(当社グループのサービスのデジタル化を推進するにあたってのITやデジタルマーケティング領域の人材を想定)の確保も必要であると考えておりますが、採用市場の変化を捉えながら採用手法の多様化を進めることで候補者との接点拡大を図る他、当社グループ事業の独自性や職場としての魅力を訴求することで採用効率の向上及び定着を図ってまいります。