有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/11/22 15:00
【資料】
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【項目】
158項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「AI×セキュリティで新しい価値を創る」をビジョンに掲げ、入退室管理システムや監視カメラシステムなどの物理セキュリティシステムにAI(画像認識)技術を掛け合わせた付加価値の高いソリューションを開発・提供しております。これまでの実績で培ってきたセキュリティソリューション事業で基盤を固め、さらなるAI(画像認識)技術の実装力を強化し活用することで新規ビジネスの成長を加速させ、「Make place Secure upgrade place Smart」安心安全な空間を提供し、空間をデータ化することでスマートな社会の実現を目指してまいります。
(2)経営戦略等
当社グループは、主にオフィス、商業施設、工場における中堅・大企業をメインターゲットとして、「SECURE AC(入退室管理システム)」「SECURE VS(監視カメラシステム)」「SECURE Analytics(画像解析サービス)」という3つのサービスを、各企業のニーズに合ったデバイスとソフトウェアを組み合わせて、ワンストップで提供する「セキュリティソリューション事業」を単一セグメントとして事業展開しております。今後、販売パートナーの深堀と発掘による顧客接点のさらなる拡大を図り、企業で顕在化するキュリティニーズの適切な把握と営業提案手法の最適化によるソリューション力の強化や、高度化するセキュリティニーズに対応するためのAI(画像認識)実装力の強化による商品機能の拡充、SaaS系サービスの強化による収益力向上を実現させることで、当社事業を継続的に発展させてまいります。また、新たな事業領域としての無人型店舗「AI STORE LAB」の事業化や、韓国子会社を起点とした海外への展開等を推進し、さらなる事業規模の拡大を促進させてまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループにおける経営目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、事業規模の拡張性を示す売上高成長率、事業活動の成果を示す営業利益、収益性の判断指標である売上総利益率になります。また、当社グループでは、非財務指標としてシステム単位での導入件数(※)を活用しています。当社グループの主たる収益源は、SECURE ACとSECURE VSのシステム案件に係る売上であり、システム単位での導入件数を増加させることで将来の収益拡大が見込まれます。
※導入件数とは、SECURE ACは20万円以上、SECURE VSは10万円以上のシステム案件としており、不具合対応やOEM等のプロジェクトは対象外としております。
(4)経営環境
国内のセキュリティ市場全体では2023年の予測で1兆147億円(2016年実績と比較すると約12%増)、うち監視カメラ分野は1,051億円、入退室管理分野は628億円で合計は1,679億円(同約26%増)であり、一定の成長率で推移しておりますが(出典:富士経済「2020セキュリティ関連市場の将来展望」)、企業においては、内部不正やバイトテロなど、内部からの脅威が拡大するとともに、働き方改革に伴うシェアオフィスの利用拡大や、人手不足による無人化・省力化の促進、新型コロナウイルス感染拡大の影響によるオフィスの在り方の変化等により、監視カメラや顔認証による本人確認など、物理セキュリティに求められる技術水準は高度化しております。また、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、リモートワークの推進やオフィス移転需要が一時的に停止した影響によりオフィスマーケットが停滞し当社の営業活動も一時的に減少しましたが、感染防止対策や三密回避、施設への出入りにおける検温とマスク着用の日常化等、新たな生活環境を推奨する流れも活発化しており、顔認証による非接触・健康管理の需要は増加しているものと考えております。
物理セキュリティシステムは複雑化する一方で、ITの専門的人材の不足が露呈してきていることを背景に、AIなどの新しいITサービスとの連携が困難になるとともに、コスト負担の拡大が各企業の皆さまにおいての重要な経営課題となってきていることを踏まえ、物理セキュリティと先端技術との総合的でリーズナブルなソリューション、いわゆるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の必要性が急速に高まってきているものと考えております。そのような環境のなか、当社グループの見通しとしては、監視カメラと入退室管理のセキュリティ市場は将来的にはIoT市場10兆4,000億円(出典:IDC Japan「国内IoT市場予測」)との垣根がなくなり成長性の高い巨大な1つの市場を形成するものと予測しており、無人店舗やスマートシティ等に利用される高付加価値な監視カメラの潜在台数はとても大きくなると考えております。また、AI関連の市場規模は2025年で2,226億円(出典:富士キメラ総研「2020 画像・音声AI/次世代インターフェース市場の現状と将来展望」より当社集計)を予測しておりますが、顔・表情認識市場は470億円と大きな割合を占めております。
こうした機運の高まりを踏まえ、セキュリティ業界においては、企業の規模や業種等によって求められるセキュリティニーズは様々でありそうした様々なニーズに柔軟に対応するためにも、より付加価値の高いサービスの提供が求められており、高品質のハードウェアの提供はもとより、常に最先端のIT・ICT(※)技術を駆使し、AIを活用した画像解析技術の革新に邁進していくことにより、高度化するお客さまのニーズに迅速かつ柔軟にお応えしていくことが最大の経営課題であると認識しています。
(※)「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略
・様々なセキュリティニーズ(当社作成)

(5)事業上および財務上の対処すべき課題
当社グループでは、当社グループが継続企業として成長し続けるために対処しなければならない課題を以下のように考えております。
① 研究開発活動における課題
当社グループにおける主要なテクノロジーである画像関連技術の分野は、ディープラーニングを活用したAI技術の進歩による技術革新によって、商品・サービスの価値も飛躍的に向上します。
従って、当社グループでは、ディープラーニングをはじめとした高度な画像関連技術の応用に取組み、実証実験に基づく実効性あるデータを蓄積しながら、実用化に向けて常に改良を重ねていかなければならないと認識しております。またその一環として2020年9月にクラウド型入退室管理システム「SECURE AI Office Base」を開発するなどSaaS型のサービス強化にも取組んでおり、今後従来のオンプレ型の商品に加えてクラウド型(SaaS型)のサービス拡充のため積極的な研究開発は重要な課題だと考えております。
こうした課題に対処するため、当社グループでは「Security System Lab」と「SECURE AI STORE LAB」という2つのラボ(研究開発施設)と、韓国城南市に子会社「SECURE KOREA, Inc.」にて、AI実装サービスの拡充や、画像解析精度の向上などのAIとセキュリティを掛け合わせたシステムの価値の向上およびSaaS型サービスの強化を推し進めるためにも積極的な研究開発に取組んでおります。また現在、「SECURE AI STORE LAB」の収益化にも取組んでおります。
② 営業活動における課題
当社グループでは、オフィス・商業施設・工場における中堅・大企業をメインターゲットとして、常に他社より競争優位性のあるシステムを提案し続けていくことが課題であると認識しております。
こうした課題に対処するため、多様な顧客ニーズに対応が可能となる優れたデバイスの調達と、新たな販売パートナーの開拓、さらに既存の販売パートナーの深堀に取組んでおります。
今後は、トレーニング用コンテンツの拡充や新サービスの共同開発等による既存パートナー企業の深堀やセミナー・展示会の開催等による新規パートナーの発掘、当社韓国子会社である「SECURE KOREA, Inc.」を拠点に海外でのセキュリティニーズの対応にも取組んでいきたいと考えております。
また、「オフィス・商業施設・工場」などで培った技術基盤を基軸に、「データセンター・ホテル・マンション」などの領域への横展開を図っていきたいと考えております。
③ 内部管理・統制体制における課題
当社グループが各ステークホルダーに幅広く信頼される企業集団となり、今後のさらなる事業拡大に向けて効率的かつ適正な業務運営体制を構築することが課題であると認識しております。そのため、経営管理部による内部管理体制の拡充・強化に努めるとともに、営業面に対するバックオフィスとしての営業アシスタントの機能強化や、機器の障害・トラブルに迅速に対応するカスタマーサービスとしての機能強化、在庫の適正化と商品受配送の円滑化を担う物流センターの機能強化にも積極的に取組んでおります。
こうした管理部門やバックオフィス機能と営業・開発部門との有機的な連携体制を構築し、実効性のある内部管理・統制体制の構築に努めております。
④ 人材の育成・確保における課題
当社グループの提供するシステムは、ハードウェアのみならずソフトウェア、サーバー構築、デバイスの選定、ネットワーク構築、システム設計、設置環境、AI(画像認識)技術に加えてセキュリティに関する専門的な知識など、非常に幅広い技術分野をカバーしたソリューションとなるため、優秀な人材の育成・確保が重要な課題であると認識しております。
従って、こうした専門性を持った人材を積極的に採用する一方で、「Security System Lab」を活用した人材トレーニングを有効に活用しながら、戦力として活躍できる人材の育成に積極的に取組んでおります。