有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/08/23 15:00
【資料】
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【項目】
136項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、創業以来「困った困ったを、良かった良かったに。」を経営理念として掲げ、「新生活を迎える方だけではなく、送り出す方、また新生活を始めるに当たって必要なサービスを提供する方、それぞれの課題解決に貢献する」ことをミッションに事業を展開しております。
「売り手よし」、「買い手よし」、「世間よし」の「三方よし」の精神から、新生活を迎える方(サービス利用者)、送り出す方(サービス依頼者)、新生活関連事業者(サービス提供者)に新生活にかかわる社会問題の解決(世間)を加えて「四方よし」として、持続可能な社会の実現に取り組んでおります。
具体的には、移転に伴う新生活関連サービスという幅広い市場をターゲットとして、新生活サービスプラットフォームの構築と提供を通じて、当該市場における部屋探し、引越し、新電力、ガス小売事業者が販売するガス、インターネット回線等のライフラインの手配、また法人においては社宅管理等をワンストップで提供し一元管理することで、新生活を迎える方へのサポートに加えて、新生活に関わる不動産事業者や引越事業者、ライフライン提供事業者等の幅広いニーズに応える事業を展開しております。
新生活を迎える際に直面するそれぞれの課題を、新生活サービスプラットフォームを通じて解決することによって、新生活関連市場における社会課題である引越しワンストップサービスの推進、賃貸契約における電子契約の推進、引越し難民問題の解消などの課題に対しても同時に解決することを目指しております。新生活における様々な手続きの円滑化、顧客の利便性の向上や業務の効率化及び転勤業務の軽減やコスト削減といった各種課題に関して、個人・法人に捉われることなく、すべての顧客の満足に目を向けた「オールユーザーファースト」という考えで、新生活の課題を解決していくとともに、高いレベルでの顧客満足度の獲得による更なる企業価値の向上に尽力しております。
(2) 目標とする経営指標等
当社グループは持続的な成長と企業価値向上を目指しており、全社的な主要な指標として売上高及び営業利益を重視しております。
不動産事業者等向け移転者サポート事業「新生活ラクっとNAVI®」では、不動産仲介店舗で部屋を決めた個人が主なターゲット顧客であり、そのサポートを不動産事業者等から依頼していただく形態となっております。また、法人企業等向け移転者サポート事業「転勤ラクっとNAVI®」では、異動により転勤する従業員が主なターゲット顧客であり、そのサポートを法人企業等の総務人事担当部門より依頼していただく形態となっております。
そのため、事業運営上重視する経営指標としましては、サービス依頼者である不動産事業者等及び法人企業等の登録数とサポート依頼件数としております。
第11期連結会計年度
(自 2019年1月1日
至 2019年12月31日)
第12期連結会計年度
(自 2020年1月1日
至 2020年12月31日)
第13期第2四半期
連結累計期間
(自 2021年1月1日
至 2021年6月30日)
売上高(千円)1,900,0822,136,5831,456,399
営業利益(千円)219,777315,024451,555
サービス依頼者登録数
「新生活ラクっとNAVI®」のサービス依頼者
である不動産事業者等
「転勤ラクっとNAVI®」のサービス依頼者
である 法人企業等
(社)
(社)
860
1,974
993
2,200
1,025
2,379
サポート依頼件数
「新生活ラクっとNAVI®」主要サービス(注)1
「転勤ラクっとNAVI®」主要サービス(注)2
(件)
(件)
282,225
25,545
284,359
26,597
156,633
19,302

(注)1.主要サービスとは、ライフライン(新電力、ガス小売事業者が販売するガス及びインターネット回線)と引越し相見積りサービスのサポート件数の合計であります。
2.主要サービスとは、部屋探しと引越し相見積りサービスのサポート件数の合計であります。
(3) 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
現在わが国では、少子高齢化による就業人口の減少に直面する中、日本政府が推進する働き方改革により、非正規雇用の待遇差改善、長時間労働の是正及び柔軟な働き方ができる環境づくり、ダイバーシティの推進、賃金引き上げ、労働生産性向上等の取り組みが行われております。また、政府が推し進める「デジタル・ガバメント実行計画」において、市町村の官民データの活用及び引越しワンストップサービスなどの各施策によって、国民の移転時に、様々な行政機関や民間事業者に対して個別に住所変更情報を届け出ることに多くの時間、手間、コストを要するという社会問題に対する取り組みが広く浸透しつつあります。
2020年第1四半期頃より新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延により、日本国内においても緊急事態宣言が出される等の影響がありました。
一方、当社グループに関係する移転者の動きに関しては、株式会社野村総合研究所の2020年並びに2021年の「住宅市場と課題」によると、新型コロナウイルス感染症の蔓延前の2019年における実績移動世帯数は421万世帯、2030年における予測移動世帯数は387万世帯でありましたが、2020年においても実績移動世帯数は418万件と2019年と比較しほぼ横ばい、2030年における予測移動世帯数も386万件と見通しに大きな変更は出されておりません。
当社グループにおいては不動産事業者との関係が重要な「新生活ラクッとNAV®」Iにおいて、対面での営業活動の進みにくい等の要因により、主要サービスのサポート件数が2021年12月期第2四半期累計において156,663件(前期比2.6%減)と影響は受けているものの、「転勤ラクっとNAVI®」においては、既存の法人顧客を中心とし、主要サービスのサポート件数が同19,302件(前期比12.7%増)と堅調に推移しております。また、「新生活ラクッとNAVI®」においても、ワクチンの普及に伴う、社会活動の正常化により、現状の影響は徐々に解消されるものと考えております。また、「新生活ラクッとNAVI®」においても、ワクチンの普及に伴う、社会活動の正常化により、現状の影響は徐々に解消されるものと考えております。
このような経営環境を背景として、当社は高い事業成長を実現するべく、以下の戦略を実行して参ります。
①継続性の高い顧客基盤の更なる拡充
当社は設立当初より、「新生活ラクっとNAVI®」というサービスで、新生活の起点となる部屋が決まったことに並行して不動産事業者等より移転者サポートを依頼されるべく提携を進めて参りました。その後、法人企業等向けの「転勤ラクっとNAVI®」というサービスにより移転者情報の上流でサポートを開始することを実現しており、法人企業等で人事異動が決まったことに並行して総務人事担当部門より依頼を受けることに成功しております。
その結果、2021年6月末現在、サービス依頼者としての不動産事業者等の登録数は1,025社、また、法人企業等の登録数は2,379社となっております。
「新生活ラクっとNAVI®」、「転勤ラクっとNAVI®」をはじめとした当社グループが提供するサービスは、高い定着性を有する顧客基盤を形成しております。具体的には、2020年12月期における「新生活ラクッとNAVI®」の主要サービスであるインターネットサポート件数のうち、99.2%が2019年以前に登録された不動産事業者等からのサポート依頼になり、2021年6月期時点においては、99.9%が2020年以前に登録された不動産事業者等からのサポート依頼になります。「転勤ラクッとNAVI®」の主要サービスである引越しサポート件数についても、2020年12月期においては2019年以前に登録された法人企業等から依頼を受けたサポート件数が93.7%、2021年6月時点においては、93.0%が2020年以前に登録された法人企業からのサポート件数となります。
今後も、不動産事業者の仲介件数及び管理物件の稼働率を向上するための提携活動を強化し、法人企業等に対しては、当社サービス認知度向上施策を強化することにより顧客基盤の更なる拡充を図ります。
具体的には、不動産事業者等については、サポート依頼者としての側面だけではなく、法人企業等の転勤又は福利厚生としての部屋探しを依頼するサービス提供者及び賃貸物件転貸サービスにおける借主としての側面を拡大させ、不動産事業者の仲介件数及び管理物件の稼働率を向上するための提携活動を強化して参ります。
法人企業等については、福利厚生事業者や社宅管理事業者などの代理店からの新規企業の獲得、展示会などの外部イベントへの当社サービスの積極的な展示又は出店等による認知度向上施策を強化することにより、顧客基盤の更なる拡充を図ります。
②サービス提供事業者との関係強化
当社の移転者サポート事業は、特定のサービスの販売または特定の事業者の代理となっている訳ではなく、あくまでユーザーファーストの立場で、真にサービス利用者が必要とするサービスの提供をサポートするものであります。サービス利用者の満足度を最大化するためにはサービスの選択肢を豊富にする必要があり、そのために数多くのサービス提供事業者との提携を実現しております。2021年6月末現在、サービス提供事業者としての不動産事業者の提携数は372社、引越事業者は136社、ライフライン提供事業者は77社となっております。
また、当社ではサービス利用者の満足度を最大化するための高いサービス品質も必要であると考えており、当社がサポートする顧客の満足度をともに最大化してくれる事業者との関係を強化することで、ユーザーファーストの立場で真にサービス利用者が必要とするサービスの提供を実現できるものと考えており、定期的に引越しに関する社会問題解決について検討する協議会を開催し、2020年1月には『引越し難民ゼロプロジェクト』のイベントを主催しております。
また、取引関係強化を目的として2021年6月末日現在、不動産事業者7社、引越事業者11社と資本提携を行っており、当社株式を所有していただくことで連携を強固なものとし、さらなるサービス品質の向上を図っております。
③クラウド賃貸契約サービスの個人顧客への展開
従来から存在する法人企業等に対する社宅管理サービスは、各社の事業モデルの変化と、働き方改革及び転勤を伴うジョブローテーションの見直しにより減少傾向にある市場を、社宅管理サービス事業者各社で取り合っている環境にあります。一方で、法人企業等の安定的な成長のため、人材の確保と定着は重要な課題と認識されており、法人企業等が従業員に対して提供する福利厚生などについては、改めて付加価値の向上及び改善が検討されている環境にあります。
当社では、全国の不動産事業者との提携により、一般賃貸物件に加えマンスリー物件検索サービスを開始することで様々な部屋探しのサポートをして参りましたが、上記の環境変化に対応すべく、従来の転勤社宅及び福利厚生として提供する社宅に加えて、社宅という範疇にとらわれることなく、企業に勤める従業員が個人的に利用できる賃貸住宅転貸についてもサービス開発するに至っております。
従来の社宅管理で提供されていた法人企業等の総務人事担当部門の工数削減のみに留まることなく、法人企業等の福利厚生に対する新たな価値を創出し、さらには働く個人の住み方の変革を実現すべく、提携不動産事業者等と協力して新たな事業を推進してまいります。
④引越しプラットフォーム価値の向上と高い成約率の実現
引越しの需要と供給のバランスが崩れることを起因として、ここ数年社会問題となっている引越し難民という課題に対して、当社は引越事業者の供給を最適化することにより解決を図っております。具体的には、当社が全国の提携引越事業者が利用できるプラットフォームシステムを開発し、全国の提携引越事業者が自社では対応できない引越案件を任せることができる引越事業者を、または自社で対応する引越案件を提供してくれる引越事業者をマッチングすることにより、引越事業者の引越サービスの顧客価値最大化と経営効率の向上を同時に図っております。
また、従来からの課題である、エリアを限定して営業している引越事業者のエリア外の引越受注に対しても、都市間で運行している幹線便の利用や積みと下ろしの分割及びマッチングをプラットフォーム上で実現することにより、引越事業者の受注機会を最大化することによる収益の向上を図るとともに引越サービス自体の供給量の最大化も実現しております。
こうした取り組みについては、プラットフォームシステムを開発するだけで実現できるものではなく、真に引越事業者と顧客に重きを置いたサービスを開発し続けてきた当社と引越事業者との信頼関係がなければ実現するものではなく、他社が真似することが難しい参入障壁の高いサービスであると自負しております。
今後は、引越案件のマッチングだけに留まらず、人材マッチングや作業員1人では運送ができない大型家具家電運送などの新たなマッチングサービスを開始するとともに、引越事業者のコストを低減するべく引越しに使用する車両の燃料を共同購入する取り組みについても新サービスとして開発することにより、当社のプラットフォームを引越事業者が提供できるリソースまたは引越事業者に必要なリソース全てを包括してマッチングできる領域を拡大してまいります。
⑤データベースを活用した新たな商材の開発と事業領域の拡大
当社グループは新生活関連事業者の課題解決や新生活を開始する顧客などのデータベースを活用したサービスを提供しており、代表的なサービスは以下のとおりとなります。
・クラウド賃貸契約サービスにおける火災保険サービス
・単身赴任、長期出張及び一人暮らしをサポートする家具家電レンタルサービス
・長距離運送及び大型家具家電運送等の引越案件のマッチングサービス
・引越事業者が利用する燃料の共同購入
当社グループでは今後も幅広い領域をカバーした新生活関連事業者の課題を解決する新サービスを開発、拡大することにより、全社の事業成長を実現してまいります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、新生活にかかわる顧客とパートナー企業の「困った困ったを、良かった良かったに。」変えていくことを経営理念として掲げており、急速に変化する新生活にかかわる「困った」を的確に抽出し、早急に最適解を提案し「良かった」に変えていくことにより、顧客とパートナー企業の信頼を高めて企業価値を向上してまいります。
上記経営理念のもと、急速に変化を続ける市況に対応していくべく、当社グループでは、以下の課題に取り組み、事業の拡大に努めてまいります。
①事業基盤の強化
当社グループが法人及び個人を対象として展開する移転者サポート事業において、さらなる顧客の数を増加させ、その事業基盤を拡大していくためには、新たにサポートするサービスの開発と1つ1つのサポートの品質向上が重要であると考えております。法人・個人を問わず幅広い顧客のニーズの把握に努め、迅速に対応していくことにより、強固な事業基盤構築を目指してまいります。
②パートナーシップの拡大
当社グループの移転者サポート事業の運営においては、実際にサポートを実施時に具体的な業務を担当する不動産事業者、引越事業者、新電力事業者、ガス小売事業者、インターネット回線事業者等多くの事業者との連携が必要不可欠となっております。移転者サポート事業の継続的な発展のために引き続き各事業者とのパートナーシップの拡大を図ってまいります。
③拡大領域の強化
基盤事業である「新生活ラクっとNAVI®」及び「転勤ラクっとNAVI®」の継続したサービスメニューの追加とサービス依頼者の増加による成長に加えて、拡大領域となるデジタル・トランスフォーメーション(DX)を活用したクラウド賃貸契約サービス「ヘヤワリ®」、BtoBプラットフォームである「HAKOPLA(ハコプラ)®」の伸長により事業間シナジーの最大化を目指します。
④テクノロジーの活用によるデジタル連携の推進
当社グループではAI・テクノロジーの活用による新生活関連サービスのデジタル化及びワンストップ化の推進が必要だと考えております。そのために、当社グループでは、政府や民間事業者と連携して、引越しに伴う手続きの負担を軽減し、また手続漏れを防止するため引越しワンストップサービスの実証実験に参加(※)しております。
また、クラウド賃貸契約サービスにおける転貸借契約の電子化を起点として、不動産賃貸データのデジタル連携の推進、及びAI・ディープラーニング等の新技術を活用することによって、新たな顧客体験の価値向上やデジタル連携による成長に取り組んで参ります。
※内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 「引越しワンストップサービス実証実験」(2019年12月2日~12月24日)及び引越しワンストップサービス実サービス検証(2020年11月25日~12月23日)等
⑤人材の採用と教育
事業基盤の強化及びパートナーシップの拡大を図っていくためには、優秀な人材の確保が必須となってまいります。そのため、当社グループでは営業部門を中心に積極的な人材獲得と当社グループの経営理念を法人・個人を問わず的確に伝えていくための人材教育を推進してまいります。
⑥個人情報保護法への対応
当社グループでは、多くの個人情報を取り扱っており、個人情報保護法への対応が重要であると認識しております。これに対して、既にプライバシーマーク(登録番号10862073(06))を取得するとともに、継続的な運用の見直しと、社内教育などにより、高いレベルでの情報管理体制の構築を目指してまいります。