有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/11/17 15:00
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【項目】
163項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、当社の代表取締役社長 眞邉勝仁が、2011年3月11日に発生した東日本大震災の際に被災地を訪れ、太陽光で稼働する浄水設備を届けたことをきっかけに、2012年に創業いたしました。
当社グループは「持続可能なエネルギーを届け、生き生きと暮らせる未来を実現します」というビジョンの下、これを実現するために以下の3つのミッションを掲げて事業を行っております。
①クオリティの高い再生可能エネルギー発電所をつくり、安全に運営します
②金融のノウハウを活かし、再生可能エネルギーをひろげます
③再生可能エネルギーで地域社会を元気にします
(2)経営環境
①再生可能エネルギー事業を取り巻く状況
当社グループが位置する再生可能エネルギー事業は、気候変動問題に関する国際的な枠組みである「パリ協定」の締結を契機に脱炭素化に向けた取り組みが世界的な潮流となっており、2021年1月時点において、日本を含む124か国と1地域が、2050年までのカーボンニュートラル実現を表明しています。日本においては、2020年10月の菅前政権発足後初の所信表明において、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとし、カーボンニュートラルの実現を目指すこと、そのために、省エネルギーを徹底し再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、規制改革等の政策を総動員しグリーン投資の更なる普及を進めること等が宣言されました。2021年4月には、菅前首相が政府の地球温暖化対策推進本部の会合において、2030年の温室効果ガスの削減目標を2013年度比で従来の26%減から46%減に大幅に積み増しすると発表しました。
2021年5月には、改正地球温暖化対策推進法が成立し、(1)2050年カーボンニュートラルを法に明記し、(2)地方自治体が再生可能エネルギー導入目標の開示を義務化、(3)地方自治体に促進区域の設定に努めること等が設けられました。
また、2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画において、2030年度の再生可能エネルギーの電源構成の占める割合は、従来の第5次エネルギー基本計画の22~24%から36~38%へと1.5倍以上に引き上げられました。
再生可能エネルギー導入に対する政府の支援姿勢は継続しており、今後も再生可能エネルギー市場はより一層拡大していく見通しです。
0202010_001.png(注1)上段のグラフは資源エネルギー庁『2030年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)』を基に当社にて作成したものです。
(注2)下段の表は『第6次エネルギー基本計画の概要』、『エネルギー基本計画策定後の動向と今後の対応の方向性について』を基に当社にて作成したものです。
(注3)2030年度目標新計画は資源エネルギー庁『第6次エネルギー基本計画の概要』において、「様々な課題の克服を野心的に想定した場合に、どのようなエネルギーの需給の見通しとなるかを示すもの」として記載された数値です。
②再生可能エネルギーにおける太陽光発電の市場規模
日本国内における太陽光発電の市場規模は、資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた検討」及び「第6次エネルギー基本計画」によると、日本の太陽光発電導入量は、2019年度の55.8GWから2030年度には103.5~117.6GWとなる見込みであり、2019年度の導入量の約2倍の市場に拡大する見込みです。また、これまで太陽光発電所の開発はFIT制度に基づき開発されてまいりましたが、今後はFIP制度(Feed in Premium制度)に基づく開発及びNon-FIT開発が中心になってきます。
③FIT制度による再生可能エネルギーの導入拡大とFIP制度・Non-FITへの移行
FIT制度は、日本のエネルギー自給率が低水準であること及び温室効果ガスの削減を主たる目的として、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(以下「再エネ特措法」といいます。)に基づき2012年7月より開始しました。FIT制度は、太陽光発電等再生可能エネルギー電源で発電した電気を国が定める期間、固定価格で送配電事業者が買い取ることを義務付ける制度です。FIT制度は長期的に安定した収益が得られるため、主に太陽光発電所を中心に急速に拡大しました。一方で、FIT制度に基づく再生可能エネルギーによる発電の普及が進むにつれ電力の買取も増加し、国民負担となる再エネ賦課金が大きくなってきました。そこで、2022年4月1日より施行が予定されている「強靭かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律(以下「エネルギー供給強靭化法」と言います。)」では、FIT制度に加え、新たに市場価格にプレミアムを上乗せして交付する制度であるFIP制度が創設されます。
FIP制度は、再生可能エネルギーのFIT制度からの自立化、卸電力取引市場への統合、国民負担の抑制を図ることを主たる目的としています。
また、「Non-FIT」による再生可能エネルギーの普及も期待されており、Non-FITの場合は相対取引により買取価格や契約期間を双方の合意で決めることができます。当社グループは、FIT制度に依存しない再生可能エネルギー電源の普及・拡大に向け、東京ガス株式会社との間で「非FIT太陽光発電所の電力購入契約」を締結するとともに、株式会社エコスタイルとの間で「業務連携協定書」を締結しています。EPC事業者である株式会社エコスタイルが開発する太陽光発電所を当社が取得し、発電した電力・環境価値を小売電気事業者である東京ガス株式会社へ販売します。本事業における太陽光発電所の規模は、合計500MWを目指しています。
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(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①循環型再投資モデルの強化
当社グループは循環型再投資モデルとして、当社グループのバランスシートをコントロールしつつ、再生可能エネルギー発電所の自社保有による発電事業の拡大と、上場インフラファンド及び私募ファンドへの再生可能エネルギー発電所売却による売却収入、AM・O&M収入の拡大を目指しています。この実現のためには、再生可能エネルギー発電所の新規開発とセカンダリーマーケットからの稼働済案件の取得を継続して実行することに加えて、再生可能エネルギー発電所の売却先である上場インフラファンド及び私募ファンドが円滑に資金調達できること及び安定した管理運営が必要とされます。当社グループは、一気通貫で開発から売電まで手掛ける再生可能エネルギーのコングロマリットの強みを活かし、循環型再投資モデルを強化することで当社、上場インフラファンド及び私募ファンドの成長を図ります。
②電源の多様化への取り組み
現在、当社グループは日本国内において再生可能エネルギー事業を拡大させております。太陽光分野においては、ソーラーシェアリング発電所開発や集合住宅、商業施設の屋上発電所開発等を進めております。
また、当社グループは、これまで太陽光発電を中心として事業を展開してまいりましたが、風力発電(陸上・洋上)やバイオマス発電といった太陽光発電以外の分野においての取り組みも開始しており、電源多様化の一環として、2021年2月に山形県西置賜郡の赤芝水力発電所(稼働済み、11.2MW)を取得するとともに、2017年2月に三重県松阪市において取得した松阪飯南ウィンドファーム(開発中、25.2MW,FIT22円)の風力発電所の事業認定を取得しております。さらに蓄電池の活用等についても検討を進めております。このように電源の多様化への取り組みや再生可能エネルギー事業に関するあらゆるノウハウの蓄積を図ってまいります。
③継続的な収入(ストック型収益)の拡大
当社グループでは再生可能エネルギー発電所の開発事業から得る開発報酬、EPC事業から得るEPC報酬及び上場インフラファンド及び私募ファンドへの再生可能エネルギー発電所の売却による売却収入をフロー型収益とし、発電事業から得る売電収入、AM事業及びO&M事業から得るAM報酬及びO&M報酬をストック型収益と考えております。従来、フロー型収益が多くを占めておりましたが、今後、さらに業績を拡大させていく上で収益の安定性をより高めるために、継続的な収入であるストック型収益を一段と拡大させてまいります。
フロー売上高及び売上総利益とストック売上高及び売上総利益の内訳の推移は以下のとおりであり、徐々にストック型収益が増えつつあります。
0202010_003.png(注)フロー型収益には、開発報酬、EPC報酬、発電所売却収入(販売用発電所売却収入及び匿名組合出資持分売却収益)が含まれ、ストック型収益には、売電収入、AM報酬、O&M報酬・子会社による投資運用報酬が含まれます。
④グリーンIPO・フレームワークの策定
当社では、今回のエクイティ・ファイナンスに際して、当社への投資を検討して頂く上で、当社グループの環境方針や事業活用により、環境及び社会に与える影響を特定、開示することが重要であると考えております。また、今般調達する資金の充当先に関する環境及び社会側面での改善インパクト及び発行体である当社自身のESGへの対応状況の評価については、客観性を担保する観点から、第三者による評価を受けることと致しました。
2021年10月、当社はグローバルで幅広く認知されているグリーンボンド原則(以下「GBP」といいます。)の4要素を参照し、「グリーンIPO・フレームワーク(以下「フレームワーク」といいます。)を策定しました。当社は、調達した資金全額を低炭素社会の実現に向けた適格クライテリアである「再生可能エネルギー」に充当する予定です。
GBPで示される4要素は以下の通りです。
1.調達資金の使途
2.プロジェクトの評価と選定のプロセス
3.調達資金の管理
4.レポーティング
当社のフレームワークが、GBP等で定められる4つの要素の主要な要件を満たし、適切に計画され、実施される見込みであることを、DNVビジネス・アライアンス・ジャパン株式会社及び株式会社格付投資情報センター(R&I)が確認し、両社よりセカンド・パーティ・オピニオンを取得しています。セカンド・パーティ・オピニオンの詳細については、前記「第一部 証券情報 募集又は売出に関する特別記載事項 5セカンド・パーティ・オピニオンの取得について」をご参照ください。
0202010_004.png当社は、調達した資金の使途を「再生可能エネルギー」に限定し、温室効果ガスの削減や、持続可能な開発目標(SDGs)に掲げられた気候変動対策など、持続可能な社会の発展を目指し、ESG投資に積極的な投資家層への投資機会を提供します。
⑤ESGへの取組み
当社グループは、「すべての人を、エネルギーの主人公に」というスローガンを掲げ、「持続可能なエネルギーを届け、生き生きと暮らせる未来を実現します」というビジョンのもと、事業を行っております。
これまでも、以下のような各種ESGへの取組みを行ってきております。
・Environment:再生可能エネルギーによる発電促進、環境に配慮したオペレーション、地域の子供たちに対する環境教育の実施
・Social:地域図書館への書籍寄付、事業展開を通じた地域人材の育成支援並びに地域の活性化
・Governance:経営の透明性の確保(社外取締役5名を選任、うち2名は独立社外取締、社外監査役2名を選任、2名とも独立社外監査役)、経営におけるシニア人材の活用
当社グループは今後とも、世界的に求められているSDGsの目標達成に貢献できるよう、あらゆる取組みを行ってまいります。
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⑥FIP制度・Non-FITへの移行について
2022年4月より施行が予定されている「エネルギー供給強靭化法」では、FIT制度に加え、新たに市場価格に一定のプレミアムを上乗せして交付する制度であるFIP制度が創設されます。
FIP制度は、再生可能エネルギーのFIT制度からの自立化、卸電力取引市場への統合、国民負担の抑制を図ることを主たる目的としています。また、FIP制度に加え「Non-FIT」による再生可能エネルギーの普及も期待されています。これらの制度の変遷により、約10年後にはFIT収益が激減することが想定され、高FITに依存した経営は困難になることから、当社グループでは、FIT制度に依存しないビジネスモデルを先行して確立すること、並びに太陽光発電所普及によるカーボンニュートラルな再生可能エネルギー市場の進展させることを目的に、2021年2月に東京ガス株式会社並びに株式会社エコスタイルと業務提携を行っております。本業務提携によりFIT制度に頼らない自立した発電所の組成で合計500MWの太陽光発電所の開発を目指しております。
⑦地域との共存・共生
日本各地に地域拠点を配置し、地元の人材を雇用するだけでなく、地域住民や地方公共団体および地域の企業等と連携して事業展開することで地域社会の活性化に貢献しています。地域社会との互恵関係を構築することで案件発掘の機会創出につながり、結果として、より一層の地域社会の活性化にもつながると考えております。加えて、書籍の寄贈や地元住民を招いての環境勉強会の開催等、多様な活動も行っております。
近年、発電所の杜撰な管理、発電所内の雑草の放置、製品寿命を終えた太陽光パネルが放置・不法投棄される懸念がもたれています。当社グループはこのような懸念や安全面に配慮しながら事業を運営しております。
今後も、地域のニーズを踏まえた施策を推進することで、地域との共存・共生を図り地域社会の活性化に貢献してまいります。
⑧海外展開
当社グループは、国内市場のみならず海外市場への展開により、グローバルな再生可能エネルギー市場のリーディングプレーヤーとなることを目指しており、国内で培った知見や強みを生かし、海外展開を行うべく、現在、欧州と米国において市場調査を開始しております。
⑨電力マネジメントへの取り組み
特に太陽光や風力といった変動電源である再生可能エネルギーの導入が拡大していくためには、電力需給の適切な管理(電力マネジメント)が不可欠になります。当社グループでは、需給管理の知見蓄積や蓄電池の活用等によって、より効率的なエネルギー全体の利活用に貢献できるよう、電力供給者として売電事業の強化を行うほか、電力小売事業の中で需給管理等の知見を蓄積しております。
⑩一般社団法人再生可能エネルギー長期安定電源推進協会における活動
再生可能エネルギーを長期的な安定電源として普及・促進するため、2019年12月18日、当社、東急不動産株式会社、ENEOS株式会社、東京ガス株式会社及びオリックス株式会社は5社共同で、一般社団法人再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(以下「REASP」といいます。)を発足しました。2021年9月30日現在のREASP会員数は81社(うち銀行・証券15社)になっており、当社の代表取締役社長である眞邉勝仁が会長に就任しています。REASPは、政府への政策提言や研究開発等で連携し、経済産業省資源エネルギー庁をはじめとした関係省庁・外部機関と積極的な情報・意見交換を実施してまいります。
⑪財務体質の強化
当社グループは、再生エネルギー発電所にかかる開発資金を、金融機関からの借入等により調達しています。
今後は、営業活動によるキャッシュ・フローの拡大から生み出される余剰資金及び財務活動による増資等により、有利子負債依存度の改善を進め、財務体質の強化に努める方針です。
当社グループは、こうした課題を1つ1つ適切に対応することで、継続的に成長を続けてまいります。
(4)目標とする経営指標
当社グループは、多額の設備投資を必要とする発電事業の割合が高まっており、減価償却費等の割合が大きくなっております。減価償却費等の一過性の償却負担に過度に左右されることなく、株式価値の向上を目指すことが重要と認識していることから、EBITDAを目標とする経営指標としております。
2016年12月期2017年12月期2018年12月期2019年12月期2020年12月期
EBITDA(百万円)4851,1182,0461,6583,103

(注)EBITDAは、経常利益+支払利息+支払手数料+減価償却費+のれん償却額+その他償却にて算出しています。