有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/05/19 15:00
【資料】
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【項目】
130項目
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態の状況
第14期事業年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
(資産)
当事業年度末の総資産につきましては、前事業年度末に比べ1,082,645千円減少し、1,701,703千円となりました。
これは主に、現金及び預金が430,236千円、関係会社株式が183,555千円、および関係会社長期貸付金が500,000千円減少したことによります。
(負債)
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ46,254千円減少し、966,017千円となりました。
これは主に、1年内返済予定の長期借入金が50,000千円減少したことによります。
(純資産)
当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ1,036,391千円減少し、735,685千円となりました。
これは、資本準備金が235,002千円、および利益剰余金が801,389千円減少したためであります。
第15期第3四半期累計期間(自 2021年4月1日 至 2021年12月31日)
総資産は1,764,611千円となり、前事業年度末に比べ62,907千円増加しました。主な要因は、売掛金が76,090千円、その他流動資産が168,413千円増加した一方、現金及び預金が132,803千円、仕掛品が10,710千円、機械及び装置が19,102千円、リース資産が14,952千円減少したことであります。
負債合計は1,031,418千円となり、前事業年度末に比べ65,400千円増加しました。主な要因は、1年内返済予定の長期借入金が50,000千円、長期借入金が160,000千円増加したのに対し、前受金が116,105千円、その他流動負債が10,761千円、リース債務が14,952千円減少したことであります。
純資産は733,192千円となり、前事業年度末に比べ2,492千円減少しました。これは、繰越利益剰余金の減少2,492千円であります。
② 経営成績の状況
第14期事業年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
当事業年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により世界経済が大きく落ち込む中、一時は持ち直しの動きがみられたものの、再び感染拡大傾向に転じるなど、景気は依然として厳しい状況で推移してまいりました。
クリーンテック・グリーンケミカル分野においては、2020年10月、臨時国会で「2050年カーボンニュートラル」が宣言されたことを受け、経済産業省により2兆円のグリーンイノベーション基金が造成されるなど、二酸化炭素排出の削減を経営課題として取り組む企業等に対して、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援を行う機運が高まっております。
このような状況下において、当社が研究開発を進めるマイクロ波プロセスは、化石資源ではなく電気由来であり、「内部加熱」「選択加熱」「急速加熱」などの特徴により効率的なエネルギー伝達を可能とするマイクロ波を利用することで、化石資源を利用している従来プロセスと比較して、大幅な二酸化炭素削減が可能であるため、近年、カーボンニュートラル実現に向けた有望なキーテクノロジーとして注目されております(※)。
当社は、2014年に世界初の大規模マイクロ波化学工場である「M3K」を立上げ新聞用インキ原料である脂肪酸ブチルエステルの商業出荷を開始したことを皮切りに、2019年にはぺプチスター㈱へのペプチド合成装置を納入、現在は、太陽化学㈱との合弁会社ティエムティ㈱において食品添加物の商業出荷に向けて準備中であるなど、多様な分野でのマイクロ波プロセスの商用化に成功しております。また、あらゆる化学プロセスへのマイクロ波技術の導入を目指して、グリーン、ヘルスケア、エレクトロニクスを重点分野として、幅広い分野において研究開発パイプラインの拡充および積極的な事業開発活動を行っております。
当事業年度においては、コロナ禍の影響により新規案件獲得のための営業活動が停滞し、新規引合い件数が減少したこと、前事業年度においてフェーズ3の案件が完了したこと等の要因により、前事業年度比で減収減益となりました。当事業年度における売上高は、化学企業等との共同開発に基づく共同開発収益等により458,026千円(前事業年度の売上高は1,052,303千円)を計上しました。一方で、研究開発を積極的に推進した結果、研究開発費362,999千円を含む販売費及び一般管理費は586,628千円となり、営業損失は348,382千円(前事業年度は営業利益28,173千円)となりました。
上記の他、営業外収益3,957千円および営業外費用11,174千円を計上したことにより経常損失は355,599千円(前事業年度は経常利益27,594千円)となり、特別利益で補助金収入17,329千円、特別損失で関係会社株式評価損683,555千円、固定資産圧縮損11,715千円を計上した結果、法人税等控除後の当期純損失は1,036,391千円(前事業年度は当期純利益32,523千円)となりました。
なお、当社は、マイクロ波化学関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(※)化学工業日報(2021年7月2日)化学品生産への応用拡大 50年に世界で導入率10%へ
日経ビジネス(2021年9月6日)脱炭素のカギは「レンチン」? 化学大手がマイクロ波に熱視線
化学工業日報(2021年9月21日)SDGs達成に不可欠な革新的技術(社説)
日経産業新聞(2021年9月30日)マイクロ波に熱い視線(第2部/化ける化学脱炭素の陣)
日刊ケミカルニュース(2021年11月12日)マイクロ波により、化学産業の製造プロセスに革新を起こす(カーボンニュートラル特集)
日本経済新聞(2021年12月1日)化学、電気プラントで脱炭素 新興勢が「常識」に風穴
第15期第3四半期累計期間(自 2021年4月1日 至 2021年12月31日)
当第3四半期累計期間(2021年4月1日から2021年12月31日まで)におけるわが国経済は、持ち直しの動きが広がりましたが、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大、原料の価格高騰や半導体供給の不足等により、先行きに不透明感が増しました。
クリーンテック・グリーンケミカル分野においては、2020年10月、臨時国会で「2050年カーボンニュートラル」が宣言されたことを受け、経済産業省により2兆円のグリーンイノベーション基金が造成されるなど、二酸化炭素排出の削減を経営課題として取り組む企業等に対して、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援を行う機運が高まっております。
このような状況下において、当社が研究開発を進めるマイクロ波プロセスは、化石資源ではなく電気由来であり、「内部加熱」「選択加熱」「急速加熱」などの特徴により効率的なエネルギー伝達を可能とするマイクロ波を利用することで、化石資源を利用している従来プロセスと比較して、大幅な二酸化炭素削減が可能であるため、カーボンニュートラル実現に向けた有望なキーテクノロジーとして注目されております。
当社は、2014年に世界初の大規模マイクロ波化学工場である「M3K」を立上げ新聞用インキ原料である脂肪酸ブチルエステルの商業出荷を開始したことを皮切りに、2019年にはぺプチスター㈱へのペプチド合成装置を納入、現在は、太陽化学㈱との合弁会社ティエムティ㈱において食品添加物製造工場の立ち上げ準備中であるなど、多様な分野でのマイクロ波プロセスの商用化に成功しております。また、あらゆる化学プロセスへのマイクロ波技術の導入を目指して、グリーン、ヘルスケア、エレクトロニクスを重点分野として、幅広い分野において研究開発パイプラインの拡充および積極的な事業開発活動を行っております。
以上の結果、当第3四半期累計期間における経営成績は、売上高677,655千円、営業利益は14,539千円、経常利益は4,404千円、四半期純損失は2,492千円となりました。
従来より、当社の売上高は、季節的変動が著しく、第4四半期会計期間に売上が集中する傾向にあります。
また、当社は、マイクロ波化学関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
③ キャッシュ・フローの状況
第14期事業年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ430,236千円減少し382,320千円となりました。
当事業年度のキャッシュ・フローの概況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、287,659千円の支出(前事業年度は55,450千円の収入)となりました。主な要因は、税引前当期純損失が1,033,541千円となった一方、関係会社株式評価損の計上683,555千円、減価償却費の計上65,184千円による増加要因があったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、72,640千円の支出(前事業年度は528,748千円の支出)となりました。主な要因は、研究開発に使用する分析装置、マイクロ波発信器等の機械装置の購買を主とする有形固定資産の取得による支出66,945千円、関係会社株式の取得による支出500,000千円の減少要因があった一方、関係会社長期貸付金の回収による収入500,000千円の増加要因があったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、69,936千円の支出(前事業年度は537,266千円の収入)となりました。主な要因は、長期借入金の返済による支出50,000千円、リース債務の返済による支出19,936千円の減少要因があったことによります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
第14期事業年度の受注実績は、次のとおりであります。なお、当社はマイクロ波化学関連事業の単一セグメントであるため、売上高の主な内訳別に記載しております。
区分第14事業年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
前年同期比(%)
フェーズ1(千円)201,605165.8
フェーズ2(千円)491,219969.0
合計(千円)692,824402.1

(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
第14期事業年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社はマイクロ波化学関連事業の単一セグメントであるため、売上高の主な内訳別に記載しております。
区分第14事業年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
前年同期比(%)
フェーズ1(千円)211,92579.3
フェーズ2(千円)246,101132.9
合計(千円)458,02643.5


(注)1.最近2事業年度及び第15期第3四半期累計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先第13事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
第14事業年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
第15期第3四半期累計期間
(自 2021年4月1日
至 2021年12月31日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
三菱ケミカル㈱--48,00010.5200,53229.6
ティエムティ㈱----200,00029.5
三井化学㈱135,69412.9121,14326.4116,62517.2
大日本印刷㈱--87,00019.0--
太陽化学㈱--53,30011.6--
BASF戸田バッテリーマテリアルズ(同)--48,30010.5--
ぺプチスター㈱600,00057.0----

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.最近2事業年度及び第15期第3四半期累計期間の主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、当事業年度末日における資産および負債、会計年度における収益および費用について会計上の見積りを必要としております。この見積りに関しては、過去の実績および適切な仮定に基づいて合理的に計算しておりますが、実際の結果と相違する場合があります。
当社の財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
(売上高)
当事業年度における売上高は、458,026千円(前事業年度の売上高は1,052,303千円)を計上しました。化学企業等との共同開発契約は、初期的な検討であるラボ開発から始まり、次にミニプラント等を用いた実証開発、続いて商業機の装置販売へと進むのが一般的であり、一件当たりの契約金額は、開発ステージが進むほど大きくなる傾向があります。前事業年度においては装置販売がありましたが、当事業年度はなかったため、売上高が減少しております。
(販売費及び一般管理費)
当事業年度における販売費及び一般管理費は、586,628千円(前事業年度の販売費及び一般管理費は622,951千円)となりました。これは主に、当事業年度より、販売費及び一般管理費のうち、共同開発プロジェクトに関連する経費を売上原価に振替える処理を行っていることによります。
(特別利益)
当事業年度における特別利益は、前事業年度に比べて19,614千円減少し、17,329千円を計上しました。これは、補助金収入が減少したことによるものであります。
(特別損失)
当事業年度における特別損失は、前事業年度に比べて666,105千円増加し、695,271千円を計上しました。これは、当事業年度において関係会社株式評価損を計上したこと等によるものであります。
(資産)
当事業年度末の総資産につきましては、前事業年度末に比べ1,082,645千円減少し、1,701,703千円となりました。
これは主に、現金及び預金が430,236千円、関係会社株式が183,555千円、および関係会社長期貸付金が500,000千円減少したことによります。
(負債)
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ46,254千円減少し、966,017千円となりました。
これは主に、1年内返済予定の長期借入金が50,000千円減少したことによります。
(純資産)
当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ1,036,391千円減少し、735,685千円となりました。
これは、資本準備金が235,002千円、および利益剰余金が801,389千円減少したためであります。
③ キャッシュ・フロー、資本の財源および資金の流動性
当社は、基盤技術の強化をはかるべく、積極的に研究開発活動を実施してまいりましたが、今後も継続して実施する方針であり、必要な資金は、自己資金、金融機関からの借入金、新株発行による調達資金により充当することとしております。
当社の資金の流動性については、「(1)経営成績等の状況の概要③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④ 経営方針、経営戦略又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標の分析
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載の通り、1)新規案件獲得数、2)案件総数の拡大を主な経営指標として重視しており、各指標の進捗度は以下のとおりです。
2020年3月期2021年3月期2022年3月期
新規案件獲得数11件9件18件
案件総数23件19件41件

2021年3月期は、コロナ禍の影響により新規案件獲得のための営業活動が停滞し、新規引合い件数が減少したこともあり、各指標は減少しましたが、営業担当者の増員、ウェブセミナーの開催などにより、各指標の改善に取り組んだ結果、2022年3月期においては堅調に推移したものと認識しております。