有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/05/20 15:00
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135項目

事業内容


当社は、疾病予防と健康増進の領域において、その役割を担うことを使命として、2006年7月に設立され、創業以来、「コミュニケーションを通じて、毎日の元気を。」という経営理念を掲げ、社会や人々の生活を支える経済、その経済活動を牽引する企業、企業活動の原動力・組織経営における資産といえる、従業員やその家族を対象に、「企業と人を元気にする」ことで、より豊かな社会や生活を創出すべく、便利で、ユニークで、継続してもらえるヘルスケアサービスを創出することを目指してまいりました。
これら理念をもとに当社は、従業員数100人以上1,000人未満の中規模から従業員数1,000人以上の大規模企業並びに健康保険組合向けに、健康診断・人間ドック等の予約、精算代行、健康診断結果一元化等を行うネットワーク健診事業(以下、「 NW 健診」と記載の箇所あり)、及び SaaS 型健康管理システム(以下、「ヘルスサポートシステム」、「 HSS 」と記載の箇所あり)を提供する健康管理クラウド事業を展開しております。

当社は、これらの主要事業で、それぞれのソリューションプラットフォームを推進し、健康診断を起点として、職域における健康管理(コーポレートウェルネス)の課題に対応するためのサービスを提供しております。当社は20年近く健康診断に関するサービスを専業として提供してきた実績があり、労働安全衛生法において健康診断の受診が義務となっていることからも、継続してご利用いただく顧客が多く、サブスクリプション売上高比率(※1)は両事業の平均で91.0%であり、契約継続率(※2)は99.3%であります。
また、その他として、がんなどの病変を検査する画像診断法の一つである PET (※3)関連事業等を手掛ける医療機関等支援事業があります。
※1:2022年3月末現在における各事業の売上高に占めるストック型課金売上高の比率
※2:2022年3月末現在における前年から継続利用いただく顧客の比率
※3:PET は、がんなどの病変を検査する画像診断法の一つである「陽電子放射断層撮影法」を表し、ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(Positron Emission Tomography) の略です。
(1)ネットワーク健診事業
ネットワーク健診事業は、企業・健康保険組合(以下、顧客)が行う健康診断の各種工程(医療機関との契約締結・健康診断の予約・医療機関への精算代行・健康診断結果のデータ化等)を当社が一括して受託しサービス提供を行う事業です。当社では、全国の1,960件(※1)の医療機関と業務提携契約を締結しており、顧客は、個別に医療機関と契約することなく、これらの医療機関より希望する医療機関を選択することが可能です。
当事業では、健康診断のソリューションプラットフォームとして、顧客向けに基幹システムに紐づけたi-Wellnessというサービスサイトを用意しております。なお、i-Wellnessは、健康診断の予約・受診結果を確認することができる受診者用及び受診対象者の予約状況・各受診者の健診結果を確認できる顧客担当者用があります。
ネットワーク健診事業の流れは、まず、当社が健康診断を行う受診対象者の全属性情報を顧客より預かり、健康診断の案内を送付します。その後、受診者からWEB(受診者用i-Wellnessのマイページ)もしくは電話により希望の日程・医療機関を受付け、医療機関と日程調整を行います。健康診断受診後2週間程で、医療機関から受診者宛に紙の健康診断結果が送付されますが、当社でも同じものを受領いたします。受領した健康診断結果を当社内でデータ化し、判定の一元化並びにデータのエラーチェック(※2)を行い、健康診断結果を顧客へ納品します。この一元化については、一般的に医療機関から届く健康診断の結果は、医療機関毎に不規則な判定記号となっておりますが、当事業では、医療機関と締結時に各医療機関と判定基準と当社の判定基準の整合を行い、データ化した際に、各医療機関同意のもと、健康診断結果の判定を当社の判定基準に変換しております。そのため、i-Wellnessの顧客担当者向けページに納品される健康診断結果は一元化されており、顧客内での有所見者・特定保健指導対象者の抽出、労働基準監督署への報告書の作成が容易になり、事後措置の対応強化が可能となります。また、当社は健康診断費用の精算代行業務を行っており、各医療機関への支払いは当社が行い、各顧客へは健康診断結果の納品毎に受診医療機関を問わず、まとめて請求します。
なお、当社にて予約調整を行っているため、顧客側では、i-Wellnessの顧客担当者向けページを通じ、予約の進捗状況をリアルタイムで把握可能であり、適時適切に未受診者に対し受診の勧奨を行うことで、受診率向上を図ることが可能となります。また、基幹システム上で医療機関からの健康診断結果の返却期日を管理することにより、受診後4週間程度での健康診断結果データの顧客納品を可能としています。
このように、健康診断に関する一気通貫型のサービスを提供することにより、①健康診断結果の管理等煩雑な業務から解放することで顧客担当者の業務を効率化、②受診案内・受診勧奨により健康診断受診率向上、③担当者リソースの集中により健康診断後の事後措置対応強化に寄与していると考えております。なお、一気通貫型のサービスの提供を可能にするため、当社では、コールセンター業務、問診票の印刷・発送、基幹システムの開発・保守をパートナー企業へ委託しております。
当事業の料金体系につきましては、顧客毎に健診メニューや受診医療機関等を決定した上で、健康診断の受診費用(以下、健康診断費用)を算出し、受診者数に応じて発生する、i-Wellness利用を含む事務手数料(以下、i-Wellness費用)とともに、受診者一人あたりの年間サービス料を課金いたします。なお、データ化・判定の統一化後に、健診結果を出荷(システム上でデータを登録)した日が属する月の末日締めにて、各顧客に請求いたします。また、これとは別に、受診者数より多い人数の母集団に対して、健康診断の案内を送付することや、健康診断の未予約者(未受診者)に対する受診勧奨等を代行する場合があり、サービスの対象となる人数に応じた課金を行います。大別して2つの料金体系から、受診者一人に対して、年額で課金される健康診断費用とi-Wellness費用を基本利用料とするストック型課金、基本利用料の課金対象とは異なる数量の対象者に対して課金する受診案内や受診勧奨代行等の費用をアップセル利用料(フロー型課金)として区分しており、2022年3月末現在における当事業のサブスクリプション売上高比率は90%を超える状況となっております。また、同時期現在の契約継続率は98.7%となっていることから、基本利用料に関する売上高は安定且つ継続的に伸長しております。
基本利用料(ストック型課金)の概要は次の通りであります。
項目利用料金
健康診断費用平均 25,700円/受診者1人あたり(1ID) ※3
i-Wellness費用年額利用料 4,300円/受診者1人あたり(1ID)

※1:2022年3月31日現在
※2:前年度の健診結果からの差分チェックなど約6,000通りに上るエラーチェックを行っております。
※3:2020年3月期から2022年3月期までの平均金額
以上に述べた内容を事業系統図によって示すと、次の通りであります。

(2)健康管理クラウド事業
当社が提供するヘルスサポートシステムは、企業(人事部・産業保健担当者)及び企業とコラボヘルス(※1)を行っている一部健康保険組合向けの健康管理クラウドサービス(SaaS)です。
企業においては、労働安全衛生法により、安全配慮義務の観点から長時間残業時の産業医(※2)が行う心身の状況把握及び面接指導や、健康診断受診後のフォローが必要な方への事後措置等を行う事が義務づけられております。健康保険組合においても、「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づき、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防と改善を目的とした特定健診・特定保健指導が2008年から義務化されております。また、2014年には、労働者の心理的な負担の程度を把握するストレスチェックが義務化されております。
これら諸制度に対応すべく、ヘルスサポートシステムには、健康診断結果、就労データ、ストレスチェックデータ及び各種面談の記録を個人単位にて紐づけ、心と身体に関するデータを一元管理・可視化できる機能を有しております。また、健康診断後の各種集計・抽出機能、労働基準監督署等への定期健康診断結果報告書等各種報告書(※3)の作成機能、産業医との面談(対面・オンライン)スケジュール管理のほか、従業員自身の健康診断結果を経年にて確認可能なマイページ機能も備えております。
また、ヘルスサポートシステム上には、紙の健康診断結果をデータ化する無料の画像自動読み取り機能も付属しており、この機能もしくは別途料金にてお申込みいただくデータ化オプションを利用いただくことで、手元に届く紙の健康診断結果をヘルスサポートシステムに反映することが可能です。さらには、ネットワーク健診サービスとあわせて導入いただくことにより、当社で精査・一元化された健康診断結果の自動連携が可能になり、健診の案内から予約、過年度からのデータ管理から事後措置に至るまで、一貫してサービスをご利用いただくことが可能になります。
システム利用に関する料金体系は、ストック売上として顧客企業の対象従業員数であるID数に応じた①システムの基本利用料、②従業員データの保管料、③産業保健スタッフが利用する管理者サイトへのセキュリティ認証利用料、フロー売上として④オプション機能利用料、⑤顧客の要望に応じて機能改修をする個別カスタマイズに大別されます。加えて導入時に、要求仕様や従業員数などの規模により変動するサーバセットアップ費用や過去データ移行などの初期設定費用が必要になります。なお、2022年3月末現在における当事業のサブスクリプション売上高比率は83.9%、契約継続率は99.8%であります。
当事業における月額利用料の概要は下記の通りであります。
項目利用料金
基本利用料月額平均 60円/ID ※

※:2020年3月期から2022年3月期までの平均金額
なお、当事業においては、販売代理店として、伊藤忠テクノソリューションズ㈱及びSOMPOヘルスサポート㈱と契約を締結しております。なお、代理店各社はそれぞれ大規模企業や健康保険組合をターゲット市場としております。
※1:コラボヘルスとは、企業と健康保険組合等の保険者が積極的に連携し、従業員やその家族の健康増進を効率的・効果的に図ることです。
※2:産業医は、日本医師会や産業医科大学等が行う研修や専門課程等を修了した医師であり、労働者の健康管理等を担っております。
※3:企業は、労働者の死傷病報告や定期健康診断結果、ストレスチェック、産業医選任等に関する内容を所轄の労働基準監督署に対して報告する義務があります。
以上に述べた内容を事業系統図によって示すと、次の通りであります。

(3)医療機関等支援事業
その他のサービスとして医療機関等支援事業があります。主なサービスとしては、地域中核病院に対して当該病院敷地内にあるPET検査用の建物・装置などの賃貸借を行うPET関連事業、協会けんぽや総合健康保険組合に加入している企業を対象とした健康診断のBPOサービス(※1)です。
PET関連事業については、ネットワーク健診事業拡大の一環として、2016年10月にIML㈱より譲り受けました。
BPOについては、ネットワーク健診事業と同じ健康診断に関するサービスですが、単一健康保険組合及び単一健康保険組合加入企業を対象としたネットワーク健診サービスとは違い、協会けんぽ及び総合健康保険加入企業を対象とした健康診断の予約や精算代行等を行うサービスになります。また、ネットワーク健診サービスでは、当社オリジナルの健康診断コースを全国の医療機関と契約し、顧客に対しては、コース毎に統一した顧客毎の価格で提供を行っておりますが、協会けんぽ及び多くの総合健康保険組合では、健康診断コース及び価格(企業負担額)が決まっているため、各健康保険組合が元々医療機関と契約している内容を、そのまま引き継いで対応しております。さらに、健康診断を一気通貫で代行するネットワーク健診サービスとは違い、BPOサービスでは、健康診断の予約のみ等、顧客が要望・必要とするサービスのみ対応が可能です。
また、当社では、「女性の健康支援チーム」を有し、これまでの健康関連業務の経験、ノウハウ、アイデアを生かし、世の中の女性が、さらに健康的に活躍できるようなサポートやサービス創出を行っております。具体的には、婦人科疾患啓発・受診勧奨として、リーフレットの作成及び販売、無料のセミナーやイベントの開催です。
※1:BPOサービスは、企業の業務プロセスの一部を外部委託することを言い、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(Business Process Outsourcing)の略です。当社においては、健康診断に関する業務を受託しております。
上記の通り、当社が行うネットワーク健診事業、並びに健康管理クラウド事業は、顧客における保健事業を支える基盤となっており、企業における健康経営の根幹となっております。また、かかる機能を有していることにより、継続利用をいただくお客様も多く、ネットワーク健診事業及び健康管理クラウド事業における2022年3月末日現在での契約継続利用率の平均は99.3%です。それら継続利用による情報の蓄積も当社の強みとなっております。当社としましても、それら重責を担っている使命を理解し、顧客における健康増進に寄与すべく、サービスメニュー・機能の拡充を継続しております。また、今後も顧客企業の規模等に応じた新たなサービス体制構築なども見据え、お客様の健康管理の実践におけるニーズを的確に捉えるとともに、スピーディーな対応をしてまいります。
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