有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2023/03/13 15:00
【資料】
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【項目】
129項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社は「高品質な位置情報の提供により安心・安全な社会づくりに貢献する。」というミッションのもと、「リアルタイムかつ高精度な位置情報サービスで事業を拡大する。」をビジョンとして掲げており、お客さまの課題に対して、当社のリアルタイムかつ高精度な位置情報サービスと知見でアプローチすることによって、最適なサービスを追求し、課題解決を目指し、また、これまでの分野・業界にとどまらず、必要とされる新しい分野・業界へもアプローチを継続し、当社のサービスを拡大してまいります。
(2) 経営環境及び経営戦略等
当社が事業展開しているGNSS補正情報配信サービス等は、従来、道路や建物の建設前の位置情報取得や、不動産登記時に行われる筆界(土地の範囲、区画)の特定、土木工事や造成工事など、土を掘削したりする時に土量の体積の計算のためなど、主に測量領域で必要とされており、当社の売上も測量分野での利用を目的としたものが中心となっておりました。高精度の測位を可能とするGNSS機器の低価格化やIoTの広がり、測位技術の発達により、高精度の位置データの活用領域は広がりつつあります。農林水産省によるスマート農業の推奨、国土交通省による『i-Construction』を機会としたICT化の推奨など、高度な情報通信社会を支えるインフラとして大きく期待されています。当社は従来からの測量領域での事業を拡大しつつも、高精度の位置情報等を用いた更なる分野(i-Construction、IT農業、ドローン点検等といった領域)での高精度な位置補正情報の配信を進めることで事業を拡大してまいります。当社では、拡大していくことができると考える経営環境面からの要因については、以下の表のとおりと認識しております。
社会的要因政治的要因技術的要因経済的要因
測量地球温暖化の影響による災害の広域化と激甚化。政府の国土強靭化政策による対策と予算増。2020年から5年間で15兆円。ドローンレーザー測量等による作業の効率化。測量設計単価の増大、携帯端末での測量増加。
土地家屋調査空き家問題に係る登記上の問題点。2018年3月9日、政府は「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案」を閣議決定。GNSS測量の単点観測法により登記に掛かる作業を行うことが可能に。土地登記に関わる人数の減少。一人で測量できる機器の必要性。
土木ICT施工地球温暖化の影響による災害の広域化と激甚化。防災の関連から土木工事が必要。国土交通省が進めるICT施工の工種が広がっており、今後も対象工種の拡大が検討されている。GNSSを使用したICT施工用の機材が進化し、無人でも施工ができるように。中小企業のICT機器導入に向けて政府が補助金を出し、後押しをしている。
IT農業就業人口が減少し、多くの地方都市で担い手不足が懸念されている。「農業競争力強化支援法」が、2017年8月1日に施行され農業の構造改革を推進する政策が開始。GNSSを使用した自動操舵の機器が発売され作業の効率化が図られている。農業に従事する様々な企業に向けたICT機器の導入支援が行われている。
ドローンインフラ調査・点検などのニーズや過疎地域における運搬など。ドローン飛行に関する法律が制定され、2022年12月から目視外飛行のレベル4が解禁となった。GNSSの高精度位置情報をLTE経由で受けられるようになり、目視外飛行が可能に。ドローン機材の低価格化により導入が比較的容易に。

なお、新型コロナウイルス感染症の流行による緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響で、建設工事等の遅れが発生した場合、測量や建設工事等のために当社のサービスが使用されるタイミングも遅れるなど一定程度の影響はありますが、それらの時期が遅れるだけであるため、現状の認識として当社の年間を通じた売上への新型コロナウイルス感染症の影響は限定的であると考えております。

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、持続的な利益成長を目指し、継続的に事業拡大をさせるため、事業の成長性や収益性の向上に取り組ん でいることから、期末時点のリアルタイムデータ配信における契約数を重要な経営指標としております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について
当社は、GNSS測位における補正情報配信サービス等を展開する企業として、日々刻々と変化するお客さまのニーズに応えることができるよう注力しておりますが、GNSS補正情報配信サービス等事業の単一セグメントである当社は、業界の景気動向等に左右される可能性があります。今後も当社のサービスの利用領域を拡大しながら、中期経営計画である「衛星測位技術の多様化に対応したオリジナル商品の開発とビジネス化」を推進するため、事業上及び財務上の対処すべき課題として以下の施策に取り組んでいく方針であります。
① GNSS測位における補正情報配信サービス等の業者としてブランドの確立
当社のGNSS補正情報配信サービス等は、提供する位置情報等の精度や安定性、お客さま対応能力等、サービスへの信頼が重要となっております。当社は高精度で安定した配信を可能とするためにバックアップ体制の強化を進めるとともに、従来からのお客さま向けの当社の営業力並びに営業組織力の強化も進めてまいります。加えて、新たに高精度の位置情報を必要とする市場に対しても積極的かつ適切な営業活動をするとともに、新しいサービスの開発をすすめてまいります。
当社は、これらの施策を取ることで、過剰な価格競争に陥ることなく、顧客満足度の更なる拡大、提供するサービスの拡充による当社ブランドの確立に取り組んでまいりたいと考えております。
② お客さまのニーズを汲み取った高精度補正情報ビジネスの開拓
当社では、GNSS補正情報配信サービス等でのさらなるビジネス展開を図るため、きめ細やかな営業活動においてお客さまのニーズを的確に把握し、増加する個別案件、コンシューマ案件に対し、実現可能な具体案・実証実験等を提案するとともに、当社内においてもその実現性を検討し、お客さまと実証実験を重ね、課題を解消してビジネス化につなげていくように鋭意努めております。また、高精度補正情報サービスを利用したビジネス開拓を目指し、補正情報の高度化・高付加価値化のための設備の新設や増強、さらには、お客さまのニーズに合致した通信装置の開発、解析エンジン(運用)バージョンアップ対応等も適宜行い、オリジナル商品の開発、ブロードキャスト配信等の実現化を目指してまいりたいと考えております。
③ 取次店並びにビジネスパートナーとのリレーション強化
当社では、少数の営業人員で多くのお客さまをカバーすべく、全国にある測量機器メーカーの取次店(GNSS受信機販売店)や業務提携等を締結しているビジネスパートナーとのリレーションを活かして、お客さまの獲得、既存のお客さまのフォローアップを行っております。全国各地に拠点を持つ取次店やビジネスパートナーとの協力体制を構築するためには、Web会議等を活用し、1件でも多く取次店やビジネスパートナーと接点を増やす必要があると考えております。全国をカバーするためにIT化による効率性を重視しながらも、取次店及びビジネスパートナーとのさらなるリレーション強化に努めてまいりたいと考えております。また、業界動向、技術情報についての知識向上のため、取次店に対して勉強会等も実施しております。
④ 測量分野以外へのさらなる展開
当社では、現在も測量分野以外への展開を積極的に行っておりますが、今後、更なる普及・拡大が予想される情報化施工分野で建機、レンタル会社等への提案外交、J-View®開発やコールセンター設置等サポート体制の充実、ICT土木を推進する自治体・企業へのサポート、ネットワーク型GNSS測位の普及活動等を継続的に実施しております。大規模展示会への自社出店、大手地域販売店の展示会への参加、自治体・企業へのサポート等、全国規模でユーザーからの課題を共有し、常に密な情報交換を行っております。また、ドローン分野、IT農業分野に加え、物流・防犯・点検等の分野のビジネスパートナーの拡大も進めてまいります。また、ビジネスパートナーの拡大と連携、新サービスの投入及び協調キャンペーン等を行うことにより、当社のサービスが必要となる事業領域のすそ野拡大により収益基盤の強化を一層図ってまいります。
⑤ コーポレート・ガバナンスの強化
当社が今後も事業の継続や拡大を進めるためには、現状の体制に満足することなく、常に事業や組織運営上の課題や問題点の把握・集約・改善が必要であり、そのためにもコンプライアンスの遵守や経営管理体制の構築はもとより、コーポレート・ガバナンスの強化が重要であると認識しております。
この課題に対処するために、今後は全役職員向けに定期的な教育研修等を行い、コンプライアンスの遵守及び経営管理体制の重要性について周知を図っていくとともに、コーポレートガバナンス・コードの基本原則に従い、株主の皆さまをはじめとする全てのステークホルダーからの社会的信頼に応えていくことを企業経営の基本的使命と考え、コンプライアンス体制の強化、迅速かつ正確な情報開示の充実に努め、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでまいります。
⑥ 優秀な人材の確保と労働生産性の向上
当社の衛星測位分野におけるビジネスは、新規参入を含め競争・多様化が進行しており、業容拡大または持続的な企業成長を実現するためには、専門的知見を有する高付加価値な能力を兼ね備えた人材をより多く確保するとともに、労働生産性を継続的に改善していくことが必要であると考えております。そのため、当社では、人員計画に応じて優秀な人材を確保するために継続的な採用活動を行い、従業員への教育・研修体制の充実を図るとともに、各部門の業務効率化・省力化を目的に各種業務システム等の構築及び連携を行うことで、全社的な生産性の向上に努めてまいります。
⑦ 財務上の課題
当社は、基本的に自己資金及び営業キャッシュ・フローによる安定的な財務基盤を確保しており、優先的に対処すべき財務上の課題はありません。ただし、今後の成長戦略の展開に伴い、内部留保の確保と営業キャッシュ・フローの拡大で、さらに財務体質を強化するとともに、株式市場からの必要な資金確保と金融機関からの融資等を選択肢とする等により多様な資金調達を図って参ります。