有価証券報告書-第30期(2025/01/01-2025/12/31)
有報資料
文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
・ミッション「協創する喜びにあふれる人と組織と社会の発展に貢献する」
ICT(情報通信技術)は今この時もあらゆる場所へ活用範囲を広げ、その用途や役割を変化させ続けています。影響力や重要性も高まるなか、ICTになにを求めるかを今一度考えることが重要であると認識しております。ICTに仕事を奪われるのではなく、生みだされた時間でいかに「協創」を生みだすか。これこそがドリーム・アーツが考える、ICT本来の役割です。ICTだけではできない、人間だけではできない。ドリーム・アーツはそうした難題の解決を、ICTと「協創」でお手伝いしてまいります。
・スローガン「協創力を究めよ Peak the Arts of Co-creation」
創業以来「Arts of Communication」をスローガンに掲げてきましたが、「協創」こそが我々ドリーム・アーツ自身の存在意義であると再定義しました。人間がもつ知性の根源的・根本的な活動であるコミュニケーションから生み出される「協創」を、自らが究め続けてまいります。
・ビジョン「BD(ビッグ・ドーナツ)市場のリーディングカンパニーを目指す」
BD(ビッグ・ドーナツ)は当社グループの造語です。「ビッグ」は当社グループがターゲットとする国内の従業員1,000名以上の大企業約3,700社を指します。「ドーナツ」は、企業内システムに対する比喩であり、ERPなどのミッションクリティカルな基幹系システムを取り囲むように配置されている現場部門向けのシステム領域を指します。
現在、BD領域のシステムは、ERPのカスタマイズで対応することが主流となっていると認識しております。その開発と運用は、システムインテグレーターによって請負われており、企業は多額の投資を余儀なくされ、激しく変化するビジネス環境への対応を難しいものにしていると考えております。
近年、多様なSaaS(経費精算、請求書管理、契約・法務、顧客管理、マーケティングオートメーション、ビジネスインテリジェンス等)が普及し、BD領域の投資効率は徐々に向上しておりますが、各社固有の業務プロセスには対応することができず、大企業のデジタル化を遅らせる大きな要因となっているものと想定しております。今後BD領域はDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進における核心的な領域となるため、予算配分の見直しが進み、投資が急拡大すると予想しております。
当社グループは、BD(ビッグ・ドーナツ)市場のリーディングカンパニーとして、大企業の投資効率の向上と業務デジタル化を推進し、現場で働く人々や組織の生産性を高め、より多くの付加価値を生み出す「協創」環境の創造に貢献してまいりたいと考えております。
・バリュー「DA Values」
当社グループは「協創する喜びにあふれる人と組織と社会の発展に貢献する」というミッションの実現に向け、行動指針としてDA Valuesを定義しております。DA Valuesは創業以来、その時々の環境や状況に合わせて再考し、アップデートを重ねてきた当社の根幹を支える理念でもあります。役職員がDA Valuesを意識し日々の業務に取り組むよう、継続して周知徹底してまいります。
・圧倒的な当事者意識
・自律とリーダーシップ
・挑戦と変革
・機会の本質
・やりぬく忍耐と勇気
・建設的対立
(2)経営環境
日本経済は「失われた30年」と呼ばれる長期停滞を経て、社会全体の仕組みが大きく変革する転換期にあります。インターネット、スマートフォン、クラウド、AI、マイナンバー認証という五つの潮流が同時並行で進展し、社会・産業構造全体のデジタル化を後押しする基盤が急速に整いつつあります。特に、新型コロナウイルス感染症の拡大は、経営層から現場の従業員に至るまでDXの必要性に対する認識を一気に高め、長年定着してきた紙・押印・メール・Excelを前提とした業務慣行を見直す契機となりました。また、国家がデジタルネットワークを活用して個人のオンライン本人確認を可能にするマイナンバー認証の普及は、日本独自の制度基盤として社会的な変革をさらに加速させております。
一方、このような追い風があるにもかかわらず、我が国は依然として深刻な構造問題に直面しております。少子高齢化の進行による労働人口の減少は、生産性向上を目的としたデジタル技術の活用を不可欠なものとしております。企業を取り巻く環境は、デジタル化の進展に伴う破壊的イノベーションが絶えず発生しており、DXを通じて安定的かつ持続的な収益基盤を確立することが企業経営にとって喫緊の課題となっております。加えて、コロナ禍に端を発した働き方・価値観の変化を受け、組織全体の意識統一や従業員エンゲージメントの向上も、企業競争力を左右する重要なテーマとなっております。
さらに、DX推進の鍵を握る国内のIT産業は、産業構造上の根本的な課題を抱えています。「DX レポート2」(2020年12月)でも指摘されているとおり、多くの IT ベンダーは依然として受託開発中心のビジネスモデルに依存しており、開発費が労働量に比例する労働集約型構造から脱却できておりません。その結果、IT ベンダー側は生産性向上が自らの収益減少につながるというジレンマを抱え、企業側はレガシーシステムや属人化した業務がデジタル化の阻害要因として残り続けるという課題が顕在化しております。このように、日本社会はデジタル化の追い風と構造的課題が併存する局面にあり、企業には単なるIT活用に止まらず、組織・業務・文化を含めた全社的な変革を継続的に進めることが求められていると考えております。
また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2025調査」によれば、日本企業の85.1%がDX推進に必要な人材の不足に直面しており、欧米諸国と比較しても人材確保の難易度が極めて高い状況となっております。DXを加速するためには、基幹システム(ERP を含む)の刷新、データ活用基盤の整備、業務プロセス全般のデジタル化が不可欠とされております。しかしながら、多くの企業では依然として外部ITベンダーへの依存度が高く、内製化の遅れに起因する技術継承の停滞やシステム刷新の遅延が課題として顕在化しております。さらに、国内ではIT人材そのものが構造的に不足しており、みずほ情報総研株式会社「IT人材需給に関する調査」(2019年3月)では、2030年時点でIT人材需要が158万人に達する一方、供給は113万人にとどまり、約45万人の需給ギャップが生じると試算されております。また、民間企業の最新予測では2040年に約73.3万人のIT人材が不足するとの試算も発表されており、長期的にIT人材の確保が企業経営における重要課題となっています。
大企業の社内システムに目を向けると、ERPなどの基幹システムのブラックボックス化が進み、データ活用による環境変化への対応が難しい状況にあります。また、IT予算の9割が既存システムの保守に充てられ、新たなビジネスモデルに変革するためのシステム開発が進まないだけでなく、IT人材不足によるシステムトラブルやデータ滅失の危険性を抱える状況となっております。
こうした状況を受け、前述の「DXレポート2」(2020年12月)では、DXを実現するためのフレームワークが示され、DXの目的である「ビジネスモデルのデジタル化」を成功させるには、基盤システムの刷新、業務のデジタル化、製品・サービスのデジタル化を段階的に進めていく必要性が指摘されました。
大企業がDXを推進するためには、まず非競争領域である基幹システムを刷新し、コストダウンを図るとともに、業務データのデジタル化や、社内外にまたがる業務プロセスのデジタル化を実現するといった情報基盤の整備を急ぐ必要があることも指摘されております。
このように、大企業では基幹システム刷新・業務プロセスデジタル化・人材確保など多面的な課題が山積するなか、生成AIの急速な進展が新たな機会とリスクの双方をもたらしています。DXを持続的に推進するためには、生成AIを単体の技術として捉えるのではなく、組織・データ・IT基盤全体の整備と一体で活用することが重要であると認識しております。
(3)経営戦略
このような経営環境の下、当社グループは『デジタルの民主化』を基本戦略に掲げ、ITスペシャリストだけでなく、ITの専門知識を持たない現場部門のビジネス系人材を巻き込みながら、業務システムの内製化を通じてDXを推進する新しい“あたりまえ”を社会に広げることを目指しております。
(中期経営計画のスローガン)
“IT業界の「あたりまえ」が変わる”
大企業のシステム開発におけるノーコード時代の到来とともに、「SmartDB®」をデファクトスタンダードへ”
当社グループが提供するSaaSプロダクト「SmartDB®」は、プログラミング不要のノーコード開発ツールであり、直感的な操作により非IT人材による業務アプリケーション開発を可能にすることを目指しております。これにより、深刻化するIT人材不足をビジネス系人材の活用によって補い、大企業の業務デジタル化を支援してまいります。
また、ノーコード開発ツールは、業務に精通した現場担当者自身がシステム開発を推進することで、要件定義や仕様設計などのプロセスを短縮し、生産性を向上させる効果が期待できます。さらに、現場部門が主体的に業務デジタル化を進めることで、従来手つかずであったアナログ業務のデジタル化が促され、DXに向けた企業文化・組織風土の変革にもつながるものと考えております。
「SmartDB®」はノーコード開発ツールでありながら、受託開発にも劣らない高度な機能を備えていることから、単純なデータベースやワークフローのみならず、ERPフロントシステムや基幹業務のサブシステムなど、ミッションクリティカル領域の周辺システムとしても幅広く活用できると認識しております。従来システムインテグレーターが担ってきた、「BD(ビッグ・ドーナツ)」領域のシステムを、ノーコードを活用した現場主導の開発・運用へシフトすることで、顧客の投資効率向上と変化への対応力強化を支援してまいります。当社は複数の製品・サービスを展開しておりますが、現在は「SmartDB®」を主力製品かつ成長ドライバーとして位置づけ、BD領域の業務デジタル化支援を通じた顧客基盤の拡大を目指してまいります。
(「SmartDB®」が導入企業にもたらす効果)
当社グループが基本戦略に掲げる「デジタルの民主化」の社会的浸透を図るため、「SmartDB®」導入企業における先進的な取り組みや成果を積極的に発信してまいります。また、「SmartDB®」の認知拡大に向け、自社主催イベントの開催や外部イベントへの出展、各種メディアを活用したプロモーション活動を推進し、市場における理解促進に取り組んでまいります。さらに、「デジタルの民主化」を推進するためには、いくつかの重要成功要因(CSF)が存在すると認識しております。当社グループは、特に以下の5つを重点領域として取り組んでまいります。
① MCSA(※)(Mission Critical System Aid):ERPフロント領域での活用促進
MCSAとは、ERP等の基幹システム(会計・人事・販売管理など)に隣接し、現場部門が日々の業務を遂行するために必要となる各種業務プロセスや処理ロジック(ERPフロント領域)を、ノーコード開発基盤「SmartDB®」で構築・運用する取り組みを指します。従来はERPの個別カスタマイズによって実現していた現場業務の仕組みを内製化することで、制度改正や業務変更への迅速かつ柔軟な対応を可能とし、現場・IT部門双方の負荷軽減と業務デジタル化のスピード向上に寄与することを目指しております。
MCSA領域での活用を一層拡大することで、多くの顧客企業が外部委託に依存してきた複雑かつ難易度の高い業務領域についても内製化を促し、企業のDX基盤としての「SmartDB®」の価値をより深く浸透させていくことを重要成功要因と捉えております。基幹システムと密接に関わる重要業務のデジタル化をSmartDB®上で実現することで、顧客企業との長期的な利用関係が強化され、当社におけるLTV(顧客生涯価値)の向上にも寄与するものと考えております。
(※)MCSA (Mission Critical System Aid)
当社の掲げる「ミッションクリティカル領域のシステムを支える」というコンセプトのこと。基幹システムと密接に連携しながら現場業務を遂行するために必要となるワークフロー、稟議申請、仕訳伝票、債権債務管理、経費管理、予算管理、マスタ管理、工数管理、取引先管理、プロジェクト管理などを指します。Support(サポート)ではなくAid(エイド)という表現を使用している理由は、Aidという言葉が「困難な状況にある人や組織を実践的に助ける」という意味を含むためであり、当社の「BD領域の業務デジタル化」に取り組む姿勢を示しています。
② グローバル・コネクト:日本企業の海外拠点における業務デジタル化促進
日本企業のグローバル展開が拡大するなか、国内本社と海外拠点を一体で運営できる業務基盤の整備が重要性を増しています。当社は、海外拠点でも「SmartDB®」を活用できるよう機能拡張を進め、海外DXを支援するソリューションとして提供してまいります。海外展開においては、多言語対応に加え、時差を考慮した運用体制、GDPRをはじめとする各国法規制への準拠、グローバル基準のセキュリティ対策など、日本企業に共通する課題が存在します。当社はこれらに一貫して対応可能な業務プラットフォームの提供を通じ、国内本社と海外拠点をシームレスにつなぐグローバルな業務デジタル化基盤の実現を目指してまいります。
(グローバル・コネクトにおける機能・オプション群)
③ DAPA(DreamArts Practical AI):実践・実務・実用的なAI活用構想
DAPA(DreamArts Practical AI)は、生成AIを単独のツールとして活用するのではなく、業務プロセスの中に自然に組み込み、人と協働しながら実務を支援することを目的としたAI活用戦略です。近年、RAG(※1)やAIエージェントといった技術が注目を集める一方で、精度への過度な期待やガバナンス不全、運用コストの増大により、多くの企業でPoC(※2)に止まり、実業務への定着に至らない可能性が指摘されています。DAPAでは、現時点でAIに求められる役割を「完全な自律性」ではなく、人の判断を前提にチェック、補助、提案を行うパートナーと位置付けています。
「SmartDB®」に蓄積されたデータベースや業務フローを活かし、業務プロセスにAIを組み込むことで、起案、入力確認、専門家レビュー、承認といった一連の業務プロセスの各段階において、入力補助(自動入力)、複雑な法規制などのチェック、過去事例の参照、確認ポイントの提案など、より実用的なAI活用を実現します。また、SmartDB®の特長であるノーコード・市民開発の仕組みと組み合わせることで、AIの専門知識がなくても業務に精通した現場部門自らがAI活用を継続的に設計・改善できる環境を提供します。これにより、業務効率化と品質向上の両立を図るとともに、企業の意思決定とパフォーマンスを加速させることができると考えております。
(※1)RAG(Retrieval-Augmented Generation)は「検索」と「生成」を組み合わせることで、大規模言語モデル(LLM)に最新情報や専門知識を与え、より正確な回答を可能にする自然言語処理(NLP)アプローチのこと。
(※2)PoC(Proof of Concept)とは、新しいアイデアや技術、システムの「実現可能性」を検証するために、最小限の機能やスケールで試作・試行するアプローチのこと
④ PLG(Product-led Growth)
PLG(Product-led Growth)は、プロダクトそのものを成長エンジンとし、顧客獲得・エンゲージメント・利用拡大(アップセル)を通じて継続的な収益成長を実現する取り組みです。当社グループでは成長ドライバーである「SmartDB®」の特長を活かし、導入しやすさ、段階的な拡張性、豊富なオプションを軸としたPLG戦略を推進しております。具体的には、スモールスタートが可能な価格設計により、特定業務や部門単位の導入を容易にし、利用を通じて業務改善効果を実感していただくことを想定しております。その後、利用ユーザー数や対象業務の拡大に合わせてライセンスを段階的に拡張できるモデルを採用しており、顧客企業の成長やDXの進展と連動した収益拡大を図ります。
さらに、基幹業務への展開、社外システムとの連携、AI機能の活用など、顧客の成熟度やニーズに応じた各種オプション機能を提供することでアップセルを促進しております。これにより、初期導入から全社展開、さらにはミッションクリティカルな業務領域への拡張まで、顧客企業との長期的な関係性を強化し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指してまいります。また、PLGはMCSAやDAPAといった当社の主要戦略とも連動しており、プロダクト価値の向上と収益基盤の拡大を支える重要成功要因のひとつと位置付けております。
⑤ EC2(External Capability & Capacity)
EC2とは、「デジタルの民主化」に必要な推進体制・支援体制を強化するため、社外リソースを拡充する取り組みを指します。当社は市民開発者の育成や戦略パートナーとの連携を強化し、「SmartDB®」の活用促進を支える推進・支援体制の拡充を図っております。市民開発者の育成においては、ノーコード開発基盤「SmartDB®」の認定資格制度(SmartDB Certified Specialist)の普及を推進し、役割に応じた体系的なスキル獲得を支援しております。これにより、現場主導の業務改善と内製化を促進し、IT人材不足の解消と持続的なDXの実現に貢献します。
また、コンサルティング企業やシステムインテグレーターとの連携を強化することで、市民開発の伴走支援に加え、基幹系システムの刷新や全社規模のDXといった高度な専門性を要する領域においても、「SmartDB®」の価値を最大限に引き出す体制を整備しております。さらに、ユーザーコミュニティの活性化にも注力しております。定期的なユーザー会の開催や活用事例を表彰するアワードなどを通じて、成功事例や知見の共有・横展開を促進し、ユーザー同士が学び合うエコシステムの形成を目指しております。当社内部のリソースだけでなく、外部の能力・リソースを柔軟に取り込むことで、「デジタルの民主化」を強力に推進してまいります。
「SmartDB®」のライセンス体系は、利用ユーザー数に応じた「ユーザーライセンス」、データベース数に応じた「バインダーライセンス」、追加機能を利用するための「オプションライセンス」で構成されています。これらのライセンスを組み合わせることで、全社一括導入だけでなく、部門単位などの小規模グループから利用開始する選択肢を提供します。段階的にユーザーや適用業務を増やすことで、初期投資リスクを抑えながら業務デジタル化推進が可能になると考えております。また、導入後も継続してサポートや活用事例などの情報提供を行い、他部門への横展開だけでなく、海外拠点や関連会社に至るまで、企業グループ全体での利用拡大を図ります。
(「SmartDB®」のライセンス体系)
また、「SmartDB®」の利用形態は、現場の一般的な業務をデジタル化する領域(非MCSA)と、ミッションクリティカルシステム周辺領域(MCSA)での利用に分けることができると考えております。いずれの形態で利用を開始しても、同一環境において他の利用形態に展開することで、高い投資対効果の実現を目指してまいります。
(「SmartDB®」の利用形態の種類と利用例)
(「SmartDB®」の導入支援パターン)
「SmartDB®」の導入に際しては、顧客企業における体制面の整備状況や、SmartDB®を利用して実現したいシステムの要件に応じて、上記の支援パターンを選択することができます。完全自走型でスタートした場合でも、活用度合の進展状況に応じて追加的な支援が必要になった場合は、伴走協働型もしくは請負型が追加的に選択されるケースがあるものと考えております。
当社グループは、当面の間「SmartDB®」の導入によって顧客との関係性を深め、経営改革・業務改革における「協創パートナー」としての地位確立を目指してまいります。また、さらに深く広い範囲での価値提供を行うため、2022年より製品間の機能的な連携を高める社内プロジェクト「スクラム作戦」を開始いたしました。本プロジェクトでは、SaaSプロダクト(SmartDB®、InsuiteX®、Shopらん®)間のユーザー管理・権限設定の共有化や、APIを介したデータ連携の高度化に取り組んでおります。
今後は「SmartDB®」を軸として、社内ポータル構築ツール「InsuiteX®」、チェーンストア特化型情報共有ツール「Shopらん®」、特定顧客向け開発運用一体型クラウドサービス「DCR(DX Custom Resolution)」の追加導入を図り、顧客の生産性向上や「協創」環境の創造に貢献しながら、収益の拡大を追求してまいります。
(4)市場規模
主力製品である「SmartDB®」は「ノーコード開発ツール」に属しておりますが、当該製品の2026年度の市場規模は968億円と予測されており、年率13.7%の成長が見込まれております。(株式会社アイ・ティ・アール:ローコード・ノーコード開発市場2025)
また「SmartDB®」はERPフロントシステムとしての活用も可能であり、当該市場の規模は2024年度で1,461億円、2028年度には3,632億円に成長すると予測されております。(デロイトトーマツミック研究所:ERPフロントソリューション市場の実態と展望2025年度版)
「SmartDB®」はSaaSとして分類されるサービスであり、国内SaaS市場の2026年の規模は2兆6,028億円と見込まれております。(株式会社富士キメラ総研:ソフトウェアビジネス新市場2025年版)
「SmartDB®」はこれらの市場に止まらず、受託開発にも引けを取らない高度な機能を備えていると認識しており、受託開発市場8兆7,673億円(総務省情報流通行政局 経済産業省大臣官房調査統計グループ「情報通信業 基本調査結果2022年3月29日」)という市場へのアクセスも可能であると考えております。
なお、「SmartDB®」の提供価格から算出した市場規模は3,220億円と推計しております。これは、当社のターゲットである1,000名以上の大企業3,722社に就業する従業員数1,342万人(総務省統計局;経済センサス令和6年調査)に、SmartDB®と他製品をセットで利用した場合の想定金額(一人当たり月額2千円)を乗じて算出したものです。
(5)競合環境
「SmartDB®」が属するノーコード・ローコード開発市場には、複数の競合製品が存在しております。しかし、当社以外の国内ベンダーの製品は、主に中小企業をターゲットとしており、大企業の高度な要求を満たすだけの機能的網羅性が十分ではないと認識しております。一方、海外ベンダーの製品は、日本特有の組織構造、意思決定プロセスへの対応などが標準機能として提供されておらず、システムインテグレーターによる追加開発や高額な導入サービスが必要となるケースが多いものと考えております。これらと比較して当社のプロダクトは、機能的網羅性および投資効率の面で優位性があると考えております。また、豊富な導入実績に基づく業務ノウハウに基づき、付加価値の高い導入・活用コンサルティングを提供できる点も強みであると認識しております。
さらに、ノーコードとローコードは名称こそ類似しておりますが、その本質は異なります。ローコードはIT専門家向けの開発支援ツールでありプログラミング知識が前提となるのに対し、ノーコードは非エンジニア(市民開発者)でも業務アプリを開発・改善できる仕組みであり、業務部門が主体となるDX内製化を実現するものです。なかでも「SmartDB®」は2004年の企画段階から完全ノーコードを設計思想としており、その成熟度と一貫性は他の製品と一線を画すものと考えております。
また、近年はAIが注目を集め、業務効率化に対する期待が高まっておりますが、精度、ガバナンス、セキュリティなどの課題から業務適用が難しいケースも多いと認識しております。当社は現時点でAIの役割を、人の判断を前提としてチェック・補助・提案を行う「パートナー」と位置付けています。AIを単独のツールとしてではなく、業務プロセスの中に組み込み、人と協働しながら実務を支援する考え方を重視しています。「SmartDB®」に蓄積されたデータや業務フローを基盤としてAIを活用することで、業務効率化と品質向上の両立を図り、企業の意思決定とパフォーマンスを加速させることが可能であると考えております。
(6)ビジネスモデルの変革
当社グループは、設立当初の1999年から、独立系ソフトウェアベンダーとして、自社開発パッケージソフトウェアの販売を行ってまいりました。近年になり、ようやく大企業におけるクラウド利用が進展してきたため、2018年12月にパッケージソフトウェアの新規販売を停止し、SaaSプロダクト(SmartDB®、InsuiteX®)を提供するクラウドサービスベンダーへの転換を図りました。
ビジネスモデルをパッケージソフトウェア型からクラウドサービス型へ転換するにあたっては、収益モデルの変更と、新たな組織能力を確保するための投資を必要とします。売上面では、ソフトウェアを販売した時点で全額計上する方式から、毎月一定額を回収する月額利用料方式に変更となり、成長が一時的に鈍化します。一方、プロダクトをSaaS型に適合するための開発や、顧客への導入支援や利活用促進をおこなうカスタマーサクセスチームの新設などが必要となり、コストの増加を招くこととなります。そのため、2020年12月期から2期間にわたり赤字を計上いたしましたが、粘り強くビジネスモデルの転換に取り組んだ結果、2022年12月期には再び利益を計上できる状況となっております。
各事業の売上高および総売上高に占めるクラウド事業売上比率およびストック売上比率の推移は以下の通りです。
(セグメント別売上構成の推移) (単位:千円)
(全社売上に占める割合)
(注)ストック売上はクラウド事業売上とオンプレミス事業のソフトウェアメンテナンス売上の合計値を総売上高で除して算出しております。クラウド事業売上比率は、SaaSプロダクト「SmartDB®」、「InsuiteX®」、「Shopらん®」及び「DCR」の売上合計値を総売上高で除して算出しております。
(7)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、成長性、収益性、キャッシュフローの観点から、売上高成長率、売上総利益率および営業キャッシュフローに影響を与える前受収益(※)残高を重視しております。特に成長指標の核となる売上高においては、総売上高に占めるストック売上高比率に加え、クラウド事業の売上高成長率、導入企業数、平均月額利用料、売上継続率を重視しております。
(※)前受収益は連結財務諸表上において契約負債に含めて表示しております。
(8)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①優秀な人材の確保と育成
当社グループの持続的な成長には、優秀な人材の確保と育成が不可欠であると認識しております。新卒採用およびキャリア採用の双方を強化するとともに、採用活動を全社的な取り組みと位置づけた「全社採用」を推進し、プロダクト開発、サービス運用、カスタマーサクセス、フィールドセールス、マーケティングなどの主要職種において、地方拠点を含め積極的な採用活動を展開してまいります。また、2025年12月期に導入した株式報酬制度を活用し、従業員のエンゲージメント向上を図るとともに、教育・研修制度や評価制度の充実を通じて既存社員の能力向上にも取り組んでまいります。
②製品競争力の向上
当社グループの持続的成長には、提供価値の中核をなすクラウドサービスの競争力強化が不可欠です。定期的な開発プロセスの見直しに加え、子会社・業務委託先の活用、各種AIツールの導入による生産性向上を通じて、開発スピードと品質の一層の向上に取り組んでまいります。また、当社クラウドサービスは大企業を主要ターゲットとしていることから、大規模利用に耐えうるパフォーマンス向上や機能拡張を進めるとともに、顧客企業内での自律的な利用拡大を促進する機能開発にも注力してまいります。さらに、急速に発展する生成AI技術を組み込んだ機能開発を進め、顧客企業の意思決定および業務効率化に資する機能強化を推進してまいります。今後も積極的な開発投資を継続し、製品競争力の強化を通じて収益機会の拡大に努めてまいります。
③導入事例、活用実績を通じた当社グループの認知度向上
当社グループの持続的な成長には、対象市場における認知度向上が不可欠です。特に、当社が有する豊富な業務デジタル化事例や、経営改革・業務改革の成功事例を積極的に発信することで、顧客の「協創パートナー」として第一に選ばれるコーポレートブランドの確立を目指してまいります。また、当社が提供する各種クラウドサービスについても、デジタルマーケティング、イベント出展、既存顧客向けの年次大型イベントなどを通じて、認知度の向上を図ってまいります。加えて、導入検討に関与する主要な意思決定層や次世代リーダー層を意識したターゲットプロモーションを展開し、中長期的な顧客基盤の拡大につなげてまいります。
④仕組み・仕掛けの整備
当社グループの製品・サービスをより多くの顧客に提供するためには、「仕組み・仕掛け」の整備が重要となります。例えば、より多くの業務デジタル化人材を創出するための「SmartDB®」の認定資格制度や、高度なシステム要件に対応するためのAPIおよびSDK(Software Development Kit)の整備、顧客同士の情報交換を活性化するためのコミュニティ形成、また、購入しやすく投資対効果を検討しやすい価格・ライセンス体系の整備などが挙げられます。
また、開発、営業、マーケティングなどの組織運営における各種業務においても、「仕組み・仕掛け」化を推進することにより、業務品質を保ちつつ生産性を高め、人的資源の投入量に依存しない形での収益向上を目指してまいります。
⑤戦略パートナーの拡大
当社グループのSaaSプロダクトは、導入企業数および適用業務数から見て、いわゆる「キャズム」(※)を超えた状況となっております。
これまでは、直接販売によって顧客基盤を拡充してまいりましたが、今後の本格的な普及にあたっては、戦略パートナーの拡大が必要となります。現在パートナーの種別は以下の3種類に区分しております。
・クラウドソーシング(人材派遣業およびクラウドワーカー)
SmartDB®上でアプリケーション開発を行うことができる人材の創出
・クラウドインテグレーター(システムインテグレーター)
SmartDB®を開発基盤として利用
・ソリューションプロバイダー(事業会社およびコンサルティング企業)
SmartDB®上で業種固有プロセスをテンプレート化し、自社ソリューションとして提供
上記に示したとおり、人材派遣業やクラウドワーカー、システムインテグレーター、事業会社、コンサルティング企業など、様々な企業で構成されたパートナー制度を確立し、多様なニーズに合致した付加価値の提供を可能とすることを重視しております。なかでも、システムインテグレーターはDXの基盤となる基幹系システムの刷新プロジェクトを請負うことが多いため、「SmartDB®」の活用による投資効率の向上を図り、顧客のIT予算最適化に貢献するよう積極的な働きかけを行ってまいります。
当社が基本戦略として推進する「デジタルの民主化」は、非IT人材による市民開発に止まらず、国内IT産業の課題である多重下請構造やウォーターフォール開発による受託開発型ビジネスの変革を狙うものでもあります。上記の多様なパートナーが、顧客や元請けベンダーと主従関係を結ぶのではなく、水平的な「協創パートナー」となることで、大企業システムの在り方を大きく変え、クラウド時代にふさわしい開発・運用体制の構築とDXの推進に貢献してまいります。
(※)キャズム
マーケティング・コンサルタントのジェフリー・ムーア氏が提唱したマーケティング理論「キャズム理論」の基本コンセプト。技術進化の激しい「ハイテク業界」の製品を普及させるためには、イノベーター、アーリーアダプターと称される技術選好者が属する初期市場と、マジョリティと称される大多数の消費者が属するメインストリーム市場の間に存在する深い溝(キャズム)を超える必要があるとするもの。
⑥顧客コミュニティの形成
顧客基盤をより強固なものとするためには、自社企画イベントの開催やユーザー会の運営を通じて、顧客コミュニティを継続的に活性化していくことが重要であると考えております。顧客が保有する業務デジタル化のノウハウを相互に共有できるコミュニケーション基盤を構築し、質の高い顧客コミュニティの形成を目指してまいります。また、定期的なユーザー会の開催や優れた活用事例を表彰するアワードの実施などを通じて、市民開発における成功事例や知見の蓄積・横展開を促進し、顧客企業同士が学び合いながら継続的に価値を創出できるエコシステムの構築を進めてまいります。
⑦新サービスの開発
「SmartDB®」で拡充した顧客基盤に対して、より多面的な付加価値提供を行うためには、新サービスの開発が必要となります。特定顧客向け開発運用一体型クラウドサービスDCR(DX Custom Resolution)の提供を通じて探索した市場・顧客ニーズに基づき、SaaSラインナップの拡充を推進してまいります。
⑧情報管理体制の強化
当社グループが提供するサービスは、個人情報を含む顧客情報を取り扱っており、これらの情報管理は重要課題と位置付けております。個人情報保護方針等の社内規程の整備および運用の徹底、ISMS認証に基づく業務オペレーションの確立および運用、社内研修の実施などを通じ、一層のセキュリティ強化を進めてまいります。
⑨財務基盤の強化
当社グループは、クラウドサービスの開発および顧客基盤拡充を重視しており、今後も積極的に投資を行っていく方針であるため、財務基盤の強化が必要となります。直接金融、間接金融を活用し、資本市場とのコミュニケーションを深め、事業展開に見合った財務基盤の強化を図ってまいります。
⑩高いキャッシュ創出力を活かしたM&A機会の模索
当社グループは、ホリゾンタルSaaSにおける前受金モデルにより、売上計上に先立って現金を受領できるキャッシュフロー構造を構築しております。この仕組みによる高いキャッシュ創出力と継続的な利益成長の相乗効果により、安定的なキャッシュフローを維持しております。これにより、外部資金へ過度に依存することなく、持続的な成長投資を実行できる財務基盤を有しております。
当社グループが提供する価値は、「SmartDB®」の導入支援や活用促進にとどまらず、基幹フロント領域での業務変革支援やAI機能を活用した高度なコンサルティングなど、多様化・高度化しています。こうした需要の拡大に迅速かつ的確に対応するため、当社の財務基盤を活かし、プロダクトラインナップの拡充やキャパシティ強化を目的としたM&A機会の模索を進めてまいります。
⑪生成AI技術進展に向けた対応
生成AI技術の急速な発展に伴い、当社を取り巻く事業環境・競争環境は日々変化し、複雑化しております。このような認識のもと、当社サービスへのAI機能の実装を通して、機能高度化および付加価値向上を図ってまいります。また、社内業務においてもAI活用を推進し、開発・営業・管理部門等における生産性向上および業務効率化を通じて、収益性の改善と競争優位性の強化に取り組んでまいります。
(1)経営方針
・ミッション「協創する喜びにあふれる人と組織と社会の発展に貢献する」
ICT(情報通信技術)は今この時もあらゆる場所へ活用範囲を広げ、その用途や役割を変化させ続けています。影響力や重要性も高まるなか、ICTになにを求めるかを今一度考えることが重要であると認識しております。ICTに仕事を奪われるのではなく、生みだされた時間でいかに「協創」を生みだすか。これこそがドリーム・アーツが考える、ICT本来の役割です。ICTだけではできない、人間だけではできない。ドリーム・アーツはそうした難題の解決を、ICTと「協創」でお手伝いしてまいります。
・スローガン「協創力を究めよ Peak the Arts of Co-creation」
創業以来「Arts of Communication」をスローガンに掲げてきましたが、「協創」こそが我々ドリーム・アーツ自身の存在意義であると再定義しました。人間がもつ知性の根源的・根本的な活動であるコミュニケーションから生み出される「協創」を、自らが究め続けてまいります。
・ビジョン「BD(ビッグ・ドーナツ)市場のリーディングカンパニーを目指す」
BD(ビッグ・ドーナツ)は当社グループの造語です。「ビッグ」は当社グループがターゲットとする国内の従業員1,000名以上の大企業約3,700社を指します。「ドーナツ」は、企業内システムに対する比喩であり、ERPなどのミッションクリティカルな基幹系システムを取り囲むように配置されている現場部門向けのシステム領域を指します。
現在、BD領域のシステムは、ERPのカスタマイズで対応することが主流となっていると認識しております。その開発と運用は、システムインテグレーターによって請負われており、企業は多額の投資を余儀なくされ、激しく変化するビジネス環境への対応を難しいものにしていると考えております。
近年、多様なSaaS(経費精算、請求書管理、契約・法務、顧客管理、マーケティングオートメーション、ビジネスインテリジェンス等)が普及し、BD領域の投資効率は徐々に向上しておりますが、各社固有の業務プロセスには対応することができず、大企業のデジタル化を遅らせる大きな要因となっているものと想定しております。今後BD領域はDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進における核心的な領域となるため、予算配分の見直しが進み、投資が急拡大すると予想しております。
当社グループは、BD(ビッグ・ドーナツ)市場のリーディングカンパニーとして、大企業の投資効率の向上と業務デジタル化を推進し、現場で働く人々や組織の生産性を高め、より多くの付加価値を生み出す「協創」環境の創造に貢献してまいりたいと考えております。
・バリュー「DA Values」
当社グループは「協創する喜びにあふれる人と組織と社会の発展に貢献する」というミッションの実現に向け、行動指針としてDA Valuesを定義しております。DA Valuesは創業以来、その時々の環境や状況に合わせて再考し、アップデートを重ねてきた当社の根幹を支える理念でもあります。役職員がDA Valuesを意識し日々の業務に取り組むよう、継続して周知徹底してまいります。
・圧倒的な当事者意識
・自律とリーダーシップ
・挑戦と変革
・機会の本質
・やりぬく忍耐と勇気
・建設的対立
(2)経営環境
日本経済は「失われた30年」と呼ばれる長期停滞を経て、社会全体の仕組みが大きく変革する転換期にあります。インターネット、スマートフォン、クラウド、AI、マイナンバー認証という五つの潮流が同時並行で進展し、社会・産業構造全体のデジタル化を後押しする基盤が急速に整いつつあります。特に、新型コロナウイルス感染症の拡大は、経営層から現場の従業員に至るまでDXの必要性に対する認識を一気に高め、長年定着してきた紙・押印・メール・Excelを前提とした業務慣行を見直す契機となりました。また、国家がデジタルネットワークを活用して個人のオンライン本人確認を可能にするマイナンバー認証の普及は、日本独自の制度基盤として社会的な変革をさらに加速させております。
一方、このような追い風があるにもかかわらず、我が国は依然として深刻な構造問題に直面しております。少子高齢化の進行による労働人口の減少は、生産性向上を目的としたデジタル技術の活用を不可欠なものとしております。企業を取り巻く環境は、デジタル化の進展に伴う破壊的イノベーションが絶えず発生しており、DXを通じて安定的かつ持続的な収益基盤を確立することが企業経営にとって喫緊の課題となっております。加えて、コロナ禍に端を発した働き方・価値観の変化を受け、組織全体の意識統一や従業員エンゲージメントの向上も、企業競争力を左右する重要なテーマとなっております。
さらに、DX推進の鍵を握る国内のIT産業は、産業構造上の根本的な課題を抱えています。「DX レポート2」(2020年12月)でも指摘されているとおり、多くの IT ベンダーは依然として受託開発中心のビジネスモデルに依存しており、開発費が労働量に比例する労働集約型構造から脱却できておりません。その結果、IT ベンダー側は生産性向上が自らの収益減少につながるというジレンマを抱え、企業側はレガシーシステムや属人化した業務がデジタル化の阻害要因として残り続けるという課題が顕在化しております。このように、日本社会はデジタル化の追い風と構造的課題が併存する局面にあり、企業には単なるIT活用に止まらず、組織・業務・文化を含めた全社的な変革を継続的に進めることが求められていると考えております。
また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2025調査」によれば、日本企業の85.1%がDX推進に必要な人材の不足に直面しており、欧米諸国と比較しても人材確保の難易度が極めて高い状況となっております。DXを加速するためには、基幹システム(ERP を含む)の刷新、データ活用基盤の整備、業務プロセス全般のデジタル化が不可欠とされております。しかしながら、多くの企業では依然として外部ITベンダーへの依存度が高く、内製化の遅れに起因する技術継承の停滞やシステム刷新の遅延が課題として顕在化しております。さらに、国内ではIT人材そのものが構造的に不足しており、みずほ情報総研株式会社「IT人材需給に関する調査」(2019年3月)では、2030年時点でIT人材需要が158万人に達する一方、供給は113万人にとどまり、約45万人の需給ギャップが生じると試算されております。また、民間企業の最新予測では2040年に約73.3万人のIT人材が不足するとの試算も発表されており、長期的にIT人材の確保が企業経営における重要課題となっています。
大企業の社内システムに目を向けると、ERPなどの基幹システムのブラックボックス化が進み、データ活用による環境変化への対応が難しい状況にあります。また、IT予算の9割が既存システムの保守に充てられ、新たなビジネスモデルに変革するためのシステム開発が進まないだけでなく、IT人材不足によるシステムトラブルやデータ滅失の危険性を抱える状況となっております。
こうした状況を受け、前述の「DXレポート2」(2020年12月)では、DXを実現するためのフレームワークが示され、DXの目的である「ビジネスモデルのデジタル化」を成功させるには、基盤システムの刷新、業務のデジタル化、製品・サービスのデジタル化を段階的に進めていく必要性が指摘されました。
大企業がDXを推進するためには、まず非競争領域である基幹システムを刷新し、コストダウンを図るとともに、業務データのデジタル化や、社内外にまたがる業務プロセスのデジタル化を実現するといった情報基盤の整備を急ぐ必要があることも指摘されております。
このように、大企業では基幹システム刷新・業務プロセスデジタル化・人材確保など多面的な課題が山積するなか、生成AIの急速な進展が新たな機会とリスクの双方をもたらしています。DXを持続的に推進するためには、生成AIを単体の技術として捉えるのではなく、組織・データ・IT基盤全体の整備と一体で活用することが重要であると認識しております。
(3)経営戦略
このような経営環境の下、当社グループは『デジタルの民主化』を基本戦略に掲げ、ITスペシャリストだけでなく、ITの専門知識を持たない現場部門のビジネス系人材を巻き込みながら、業務システムの内製化を通じてDXを推進する新しい“あたりまえ”を社会に広げることを目指しております。
(中期経営計画のスローガン)
“IT業界の「あたりまえ」が変わる”
大企業のシステム開発におけるノーコード時代の到来とともに、「SmartDB®」をデファクトスタンダードへ”
当社グループが提供するSaaSプロダクト「SmartDB®」は、プログラミング不要のノーコード開発ツールであり、直感的な操作により非IT人材による業務アプリケーション開発を可能にすることを目指しております。これにより、深刻化するIT人材不足をビジネス系人材の活用によって補い、大企業の業務デジタル化を支援してまいります。
また、ノーコード開発ツールは、業務に精通した現場担当者自身がシステム開発を推進することで、要件定義や仕様設計などのプロセスを短縮し、生産性を向上させる効果が期待できます。さらに、現場部門が主体的に業務デジタル化を進めることで、従来手つかずであったアナログ業務のデジタル化が促され、DXに向けた企業文化・組織風土の変革にもつながるものと考えております。
「SmartDB®」はノーコード開発ツールでありながら、受託開発にも劣らない高度な機能を備えていることから、単純なデータベースやワークフローのみならず、ERPフロントシステムや基幹業務のサブシステムなど、ミッションクリティカル領域の周辺システムとしても幅広く活用できると認識しております。従来システムインテグレーターが担ってきた、「BD(ビッグ・ドーナツ)」領域のシステムを、ノーコードを活用した現場主導の開発・運用へシフトすることで、顧客の投資効率向上と変化への対応力強化を支援してまいります。当社は複数の製品・サービスを展開しておりますが、現在は「SmartDB®」を主力製品かつ成長ドライバーとして位置づけ、BD領域の業務デジタル化支援を通じた顧客基盤の拡大を目指してまいります。
(「SmartDB®」が導入企業にもたらす効果)
| 内 容 | |
| 1.高速な業務デジタル化 | システムを利用する部門・担当者自身が開発することにより、工数・期間・コストの圧縮が見込める。 |
| 2.環境変化への対応力向上 | 外部のベンダーに依存せずシステムの変更・改修ができるため、環境変化に応じて素早く対応する体制の構築が見込める。 |
| 3.包括的なセキュリティ | データ、ファイル単位でのきめ細かいアクセス制限が可能であり、機密性の高い業務のデジタル化の実現を見込める。 |
| 4.運用負荷の低減 | システムの運用にIT人材を充てる必要が無いため、運用負荷の軽減が見込める。 |
| 5.企業文化・風土の改革 | 現場部門スタッフが自らシステム開発を行うことで、組織内のデジタルに対するリテラシー向上が見込める。 |
当社グループが基本戦略に掲げる「デジタルの民主化」の社会的浸透を図るため、「SmartDB®」導入企業における先進的な取り組みや成果を積極的に発信してまいります。また、「SmartDB®」の認知拡大に向け、自社主催イベントの開催や外部イベントへの出展、各種メディアを活用したプロモーション活動を推進し、市場における理解促進に取り組んでまいります。さらに、「デジタルの民主化」を推進するためには、いくつかの重要成功要因(CSF)が存在すると認識しております。当社グループは、特に以下の5つを重点領域として取り組んでまいります。
① MCSA(※)(Mission Critical System Aid):ERPフロント領域での活用促進
MCSAとは、ERP等の基幹システム(会計・人事・販売管理など)に隣接し、現場部門が日々の業務を遂行するために必要となる各種業務プロセスや処理ロジック(ERPフロント領域)を、ノーコード開発基盤「SmartDB®」で構築・運用する取り組みを指します。従来はERPの個別カスタマイズによって実現していた現場業務の仕組みを内製化することで、制度改正や業務変更への迅速かつ柔軟な対応を可能とし、現場・IT部門双方の負荷軽減と業務デジタル化のスピード向上に寄与することを目指しております。
MCSA領域での活用を一層拡大することで、多くの顧客企業が外部委託に依存してきた複雑かつ難易度の高い業務領域についても内製化を促し、企業のDX基盤としての「SmartDB®」の価値をより深く浸透させていくことを重要成功要因と捉えております。基幹システムと密接に関わる重要業務のデジタル化をSmartDB®上で実現することで、顧客企業との長期的な利用関係が強化され、当社におけるLTV(顧客生涯価値)の向上にも寄与するものと考えております。
(※)MCSA (Mission Critical System Aid)
当社の掲げる「ミッションクリティカル領域のシステムを支える」というコンセプトのこと。基幹システムと密接に連携しながら現場業務を遂行するために必要となるワークフロー、稟議申請、仕訳伝票、債権債務管理、経費管理、予算管理、マスタ管理、工数管理、取引先管理、プロジェクト管理などを指します。Support(サポート)ではなくAid(エイド)という表現を使用している理由は、Aidという言葉が「困難な状況にある人や組織を実践的に助ける」という意味を含むためであり、当社の「BD領域の業務デジタル化」に取り組む姿勢を示しています。
② グローバル・コネクト:日本企業の海外拠点における業務デジタル化促進
日本企業のグローバル展開が拡大するなか、国内本社と海外拠点を一体で運営できる業務基盤の整備が重要性を増しています。当社は、海外拠点でも「SmartDB®」を活用できるよう機能拡張を進め、海外DXを支援するソリューションとして提供してまいります。海外展開においては、多言語対応に加え、時差を考慮した運用体制、GDPRをはじめとする各国法規制への準拠、グローバル基準のセキュリティ対策など、日本企業に共通する課題が存在します。当社はこれらに一貫して対応可能な業務プラットフォームの提供を通じ、国内本社と海外拠点をシームレスにつなぐグローバルな業務デジタル化基盤の実現を目指してまいります。
(グローバル・コネクトにおける機能・オプション群)
| 機能・オプション群 | 内 容 |
| マルチLanguage | AI翻訳による20か国以上への多言語対応(20ヵ国以上) |
| AI翻訳ロボット | 業務プロセスから呼び出される専門家ロボット 申請書など「SmartDB®」のフォームに入力されたテキストを自動翻訳 |
| 規約確認機能 | EU一般データ保護規則(GDPR:General Data Protection Regulation)やカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA:California Consumer Privacy Act)など各国の法規制に対応した規約同意を収集 |
| マルチGATEセキュリティ | 各拠点からのアクセス経路を識別し、ユーザーに応じたデータの閲覧・編集権限を付与(国内外問わず) |
| 無停止運用 | 24時間365日無停止のサービス提供 |
③ DAPA(DreamArts Practical AI):実践・実務・実用的なAI活用構想
DAPA(DreamArts Practical AI)は、生成AIを単独のツールとして活用するのではなく、業務プロセスの中に自然に組み込み、人と協働しながら実務を支援することを目的としたAI活用戦略です。近年、RAG(※1)やAIエージェントといった技術が注目を集める一方で、精度への過度な期待やガバナンス不全、運用コストの増大により、多くの企業でPoC(※2)に止まり、実業務への定着に至らない可能性が指摘されています。DAPAでは、現時点でAIに求められる役割を「完全な自律性」ではなく、人の判断を前提にチェック、補助、提案を行うパートナーと位置付けています。
「SmartDB®」に蓄積されたデータベースや業務フローを活かし、業務プロセスにAIを組み込むことで、起案、入力確認、専門家レビュー、承認といった一連の業務プロセスの各段階において、入力補助(自動入力)、複雑な法規制などのチェック、過去事例の参照、確認ポイントの提案など、より実用的なAI活用を実現します。また、SmartDB®の特長であるノーコード・市民開発の仕組みと組み合わせることで、AIの専門知識がなくても業務に精通した現場部門自らがAI活用を継続的に設計・改善できる環境を提供します。これにより、業務効率化と品質向上の両立を図るとともに、企業の意思決定とパフォーマンスを加速させることができると考えております。
(※1)RAG(Retrieval-Augmented Generation)は「検索」と「生成」を組み合わせることで、大規模言語モデル(LLM)に最新情報や専門知識を与え、より正確な回答を可能にする自然言語処理(NLP)アプローチのこと。
(※2)PoC(Proof of Concept)とは、新しいアイデアや技術、システムの「実現可能性」を検証するために、最小限の機能やスケールで試作・試行するアプローチのこと
④ PLG(Product-led Growth)
PLG(Product-led Growth)は、プロダクトそのものを成長エンジンとし、顧客獲得・エンゲージメント・利用拡大(アップセル)を通じて継続的な収益成長を実現する取り組みです。当社グループでは成長ドライバーである「SmartDB®」の特長を活かし、導入しやすさ、段階的な拡張性、豊富なオプションを軸としたPLG戦略を推進しております。具体的には、スモールスタートが可能な価格設計により、特定業務や部門単位の導入を容易にし、利用を通じて業務改善効果を実感していただくことを想定しております。その後、利用ユーザー数や対象業務の拡大に合わせてライセンスを段階的に拡張できるモデルを採用しており、顧客企業の成長やDXの進展と連動した収益拡大を図ります。
さらに、基幹業務への展開、社外システムとの連携、AI機能の活用など、顧客の成熟度やニーズに応じた各種オプション機能を提供することでアップセルを促進しております。これにより、初期導入から全社展開、さらにはミッションクリティカルな業務領域への拡張まで、顧客企業との長期的な関係性を強化し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指してまいります。また、PLGはMCSAやDAPAといった当社の主要戦略とも連動しており、プロダクト価値の向上と収益基盤の拡大を支える重要成功要因のひとつと位置付けております。
⑤ EC2(External Capability & Capacity)
EC2とは、「デジタルの民主化」に必要な推進体制・支援体制を強化するため、社外リソースを拡充する取り組みを指します。当社は市民開発者の育成や戦略パートナーとの連携を強化し、「SmartDB®」の活用促進を支える推進・支援体制の拡充を図っております。市民開発者の育成においては、ノーコード開発基盤「SmartDB®」の認定資格制度(SmartDB Certified Specialist)の普及を推進し、役割に応じた体系的なスキル獲得を支援しております。これにより、現場主導の業務改善と内製化を促進し、IT人材不足の解消と持続的なDXの実現に貢献します。
また、コンサルティング企業やシステムインテグレーターとの連携を強化することで、市民開発の伴走支援に加え、基幹系システムの刷新や全社規模のDXといった高度な専門性を要する領域においても、「SmartDB®」の価値を最大限に引き出す体制を整備しております。さらに、ユーザーコミュニティの活性化にも注力しております。定期的なユーザー会の開催や活用事例を表彰するアワードなどを通じて、成功事例や知見の共有・横展開を促進し、ユーザー同士が学び合うエコシステムの形成を目指しております。当社内部のリソースだけでなく、外部の能力・リソースを柔軟に取り込むことで、「デジタルの民主化」を強力に推進してまいります。
「SmartDB®」のライセンス体系は、利用ユーザー数に応じた「ユーザーライセンス」、データベース数に応じた「バインダーライセンス」、追加機能を利用するための「オプションライセンス」で構成されています。これらのライセンスを組み合わせることで、全社一括導入だけでなく、部門単位などの小規模グループから利用開始する選択肢を提供します。段階的にユーザーや適用業務を増やすことで、初期投資リスクを抑えながら業務デジタル化推進が可能になると考えております。また、導入後も継続してサポートや活用事例などの情報提供を行い、他部門への横展開だけでなく、海外拠点や関連会社に至るまで、企業グループ全体での利用拡大を図ります。
(「SmartDB®」のライセンス体系)
| 名称 | 内容 |
| ユーザーライセンス | 利用ユーザー数に応じて課金 |
| バインダーライセンス | アプリケーションのデータを格納するデータベース。データベース数に応じて課金 |
| オプションライセンス | 他社SaaS連携オプション、API利用オプション、タイムスタンプ利用オプション、検証環境利用オプションなど |
また、「SmartDB®」の利用形態は、現場の一般的な業務をデジタル化する領域(非MCSA)と、ミッションクリティカルシステム周辺領域(MCSA)での利用に分けることができると考えております。いずれの形態で利用を開始しても、同一環境において他の利用形態に展開することで、高い投資対効果の実現を目指してまいります。
(「SmartDB®」の利用形態の種類と利用例)
| 非MCSA (現場の一般的な業務) | MCSA Mission Critical System Aid (ミッションクリティカルシステムの周辺領域) | |
| 部門導入 (QSS) | 部門データベース、部門ワークフローなど | 商品開発管理、設計工程管理、予算実績管理などの現場基幹業務システム |
| 全社導入 (CLLコア) | 人事・総務系申請システムなど | 契約管理システムやERPフロントシステムなど |
| 企業グループ導入 (CLLワイド) | 稟議やワークフローなどの標準的な利用形態 | グループの間接部門業務を集約するシェアードサービス基盤など |
(「SmartDB®」の導入支援パターン)
| 導入支援パターン | 内容 |
| 完全自走型 | 当社の提供する初期オンボーディング(3か月間)支援のみで市民開発を推進しシステムの内製化を実現するパターン |
| 伴走協働型 | 当社の提供する初期オンボーディングに加え、特定の業務アプリケーション開発を当社もしくは当社のパートナー企業が支援するパターン |
| 請負型 | ERPフロントシステムなどのアプリケーション開発や他システム連携の難易度が高い場合などにおいて、当社もしくは当社のパートナー企業がプロジェクトとして請負うパターン |
「SmartDB®」の導入に際しては、顧客企業における体制面の整備状況や、SmartDB®を利用して実現したいシステムの要件に応じて、上記の支援パターンを選択することができます。完全自走型でスタートした場合でも、活用度合の進展状況に応じて追加的な支援が必要になった場合は、伴走協働型もしくは請負型が追加的に選択されるケースがあるものと考えております。
当社グループは、当面の間「SmartDB®」の導入によって顧客との関係性を深め、経営改革・業務改革における「協創パートナー」としての地位確立を目指してまいります。また、さらに深く広い範囲での価値提供を行うため、2022年より製品間の機能的な連携を高める社内プロジェクト「スクラム作戦」を開始いたしました。本プロジェクトでは、SaaSプロダクト(SmartDB®、InsuiteX®、Shopらん®)間のユーザー管理・権限設定の共有化や、APIを介したデータ連携の高度化に取り組んでおります。
今後は「SmartDB®」を軸として、社内ポータル構築ツール「InsuiteX®」、チェーンストア特化型情報共有ツール「Shopらん®」、特定顧客向け開発運用一体型クラウドサービス「DCR(DX Custom Resolution)」の追加導入を図り、顧客の生産性向上や「協創」環境の創造に貢献しながら、収益の拡大を追求してまいります。
(4)市場規模
主力製品である「SmartDB®」は「ノーコード開発ツール」に属しておりますが、当該製品の2026年度の市場規模は968億円と予測されており、年率13.7%の成長が見込まれております。(株式会社アイ・ティ・アール:ローコード・ノーコード開発市場2025)
また「SmartDB®」はERPフロントシステムとしての活用も可能であり、当該市場の規模は2024年度で1,461億円、2028年度には3,632億円に成長すると予測されております。(デロイトトーマツミック研究所:ERPフロントソリューション市場の実態と展望2025年度版)
「SmartDB®」はSaaSとして分類されるサービスであり、国内SaaS市場の2026年の規模は2兆6,028億円と見込まれております。(株式会社富士キメラ総研:ソフトウェアビジネス新市場2025年版)
「SmartDB®」はこれらの市場に止まらず、受託開発にも引けを取らない高度な機能を備えていると認識しており、受託開発市場8兆7,673億円(総務省情報流通行政局 経済産業省大臣官房調査統計グループ「情報通信業 基本調査結果2022年3月29日」)という市場へのアクセスも可能であると考えております。
なお、「SmartDB®」の提供価格から算出した市場規模は3,220億円と推計しております。これは、当社のターゲットである1,000名以上の大企業3,722社に就業する従業員数1,342万人(総務省統計局;経済センサス令和6年調査)に、SmartDB®と他製品をセットで利用した場合の想定金額(一人当たり月額2千円)を乗じて算出したものです。
(5)競合環境
「SmartDB®」が属するノーコード・ローコード開発市場には、複数の競合製品が存在しております。しかし、当社以外の国内ベンダーの製品は、主に中小企業をターゲットとしており、大企業の高度な要求を満たすだけの機能的網羅性が十分ではないと認識しております。一方、海外ベンダーの製品は、日本特有の組織構造、意思決定プロセスへの対応などが標準機能として提供されておらず、システムインテグレーターによる追加開発や高額な導入サービスが必要となるケースが多いものと考えております。これらと比較して当社のプロダクトは、機能的網羅性および投資効率の面で優位性があると考えております。また、豊富な導入実績に基づく業務ノウハウに基づき、付加価値の高い導入・活用コンサルティングを提供できる点も強みであると認識しております。
さらに、ノーコードとローコードは名称こそ類似しておりますが、その本質は異なります。ローコードはIT専門家向けの開発支援ツールでありプログラミング知識が前提となるのに対し、ノーコードは非エンジニア(市民開発者)でも業務アプリを開発・改善できる仕組みであり、業務部門が主体となるDX内製化を実現するものです。なかでも「SmartDB®」は2004年の企画段階から完全ノーコードを設計思想としており、その成熟度と一貫性は他の製品と一線を画すものと考えております。
また、近年はAIが注目を集め、業務効率化に対する期待が高まっておりますが、精度、ガバナンス、セキュリティなどの課題から業務適用が難しいケースも多いと認識しております。当社は現時点でAIの役割を、人の判断を前提としてチェック・補助・提案を行う「パートナー」と位置付けています。AIを単独のツールとしてではなく、業務プロセスの中に組み込み、人と協働しながら実務を支援する考え方を重視しています。「SmartDB®」に蓄積されたデータや業務フローを基盤としてAIを活用することで、業務効率化と品質向上の両立を図り、企業の意思決定とパフォーマンスを加速させることが可能であると考えております。
(6)ビジネスモデルの変革
当社グループは、設立当初の1999年から、独立系ソフトウェアベンダーとして、自社開発パッケージソフトウェアの販売を行ってまいりました。近年になり、ようやく大企業におけるクラウド利用が進展してきたため、2018年12月にパッケージソフトウェアの新規販売を停止し、SaaSプロダクト(SmartDB®、InsuiteX®)を提供するクラウドサービスベンダーへの転換を図りました。
ビジネスモデルをパッケージソフトウェア型からクラウドサービス型へ転換するにあたっては、収益モデルの変更と、新たな組織能力を確保するための投資を必要とします。売上面では、ソフトウェアを販売した時点で全額計上する方式から、毎月一定額を回収する月額利用料方式に変更となり、成長が一時的に鈍化します。一方、プロダクトをSaaS型に適合するための開発や、顧客への導入支援や利活用促進をおこなうカスタマーサクセスチームの新設などが必要となり、コストの増加を招くこととなります。そのため、2020年12月期から2期間にわたり赤字を計上いたしましたが、粘り強くビジネスモデルの転換に取り組んだ結果、2022年12月期には再び利益を計上できる状況となっております。
各事業の売上高および総売上高に占めるクラウド事業売上比率およびストック売上比率の推移は以下の通りです。
(セグメント別売上構成の推移) (単位:千円)
| 内訳 | 2021年12月 | 2022年12月 | 2023年12月 | 2024年12月 | 2025年12月 | |
| ストック売上 | クラウド事業 | 1,706,239 | 2,319,222 | 3,127,016 | 3,891,219 | 4,468,787 |
| オンプレミス事業 | 632,746 | 575,560 | 551,365 | 536,795 | 478,410 | |
| 小計 | 2,338,985 | 2,894,782 | 3,678,382 | 4,428,014 | 4,947,197 | |
| スポット売上 | オンプレミス事業 | 23,184 | 23,319 | 46,070 | 21,598 | 46,622 |
| プロフェッショナルサービス事業 | 576,689 | 752,205 | 715,603 | 584,242 | 660,263 | |
| 小計 | 599,873 | 775,524 | 761,673 | 605,840 | 706,886 | |
| 合計 | 2,938,859 | 3,670,307 | 4,440,056 | 5,033,855 | 5,654,084 | |
(全社売上に占める割合)
| 2021年12月 | 2022年12月 | 2023年12月 | 2024年12月 | 2025年12月 | ||
| ストック売上比率 (うちクラウド事業比率) | 79.6% (58.1%) | 78.9% (63.2%) | 82.8% (70.4%) | 88.0% (77.3%) | 87.5% (79.0%) | |
(注)ストック売上はクラウド事業売上とオンプレミス事業のソフトウェアメンテナンス売上の合計値を総売上高で除して算出しております。クラウド事業売上比率は、SaaSプロダクト「SmartDB®」、「InsuiteX®」、「Shopらん®」及び「DCR」の売上合計値を総売上高で除して算出しております。
(7)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、成長性、収益性、キャッシュフローの観点から、売上高成長率、売上総利益率および営業キャッシュフローに影響を与える前受収益(※)残高を重視しております。特に成長指標の核となる売上高においては、総売上高に占めるストック売上高比率に加え、クラウド事業の売上高成長率、導入企業数、平均月額利用料、売上継続率を重視しております。
(※)前受収益は連結財務諸表上において契約負債に含めて表示しております。
(8)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①優秀な人材の確保と育成
当社グループの持続的な成長には、優秀な人材の確保と育成が不可欠であると認識しております。新卒採用およびキャリア採用の双方を強化するとともに、採用活動を全社的な取り組みと位置づけた「全社採用」を推進し、プロダクト開発、サービス運用、カスタマーサクセス、フィールドセールス、マーケティングなどの主要職種において、地方拠点を含め積極的な採用活動を展開してまいります。また、2025年12月期に導入した株式報酬制度を活用し、従業員のエンゲージメント向上を図るとともに、教育・研修制度や評価制度の充実を通じて既存社員の能力向上にも取り組んでまいります。
②製品競争力の向上
当社グループの持続的成長には、提供価値の中核をなすクラウドサービスの競争力強化が不可欠です。定期的な開発プロセスの見直しに加え、子会社・業務委託先の活用、各種AIツールの導入による生産性向上を通じて、開発スピードと品質の一層の向上に取り組んでまいります。また、当社クラウドサービスは大企業を主要ターゲットとしていることから、大規模利用に耐えうるパフォーマンス向上や機能拡張を進めるとともに、顧客企業内での自律的な利用拡大を促進する機能開発にも注力してまいります。さらに、急速に発展する生成AI技術を組み込んだ機能開発を進め、顧客企業の意思決定および業務効率化に資する機能強化を推進してまいります。今後も積極的な開発投資を継続し、製品競争力の強化を通じて収益機会の拡大に努めてまいります。
③導入事例、活用実績を通じた当社グループの認知度向上
当社グループの持続的な成長には、対象市場における認知度向上が不可欠です。特に、当社が有する豊富な業務デジタル化事例や、経営改革・業務改革の成功事例を積極的に発信することで、顧客の「協創パートナー」として第一に選ばれるコーポレートブランドの確立を目指してまいります。また、当社が提供する各種クラウドサービスについても、デジタルマーケティング、イベント出展、既存顧客向けの年次大型イベントなどを通じて、認知度の向上を図ってまいります。加えて、導入検討に関与する主要な意思決定層や次世代リーダー層を意識したターゲットプロモーションを展開し、中長期的な顧客基盤の拡大につなげてまいります。
④仕組み・仕掛けの整備
当社グループの製品・サービスをより多くの顧客に提供するためには、「仕組み・仕掛け」の整備が重要となります。例えば、より多くの業務デジタル化人材を創出するための「SmartDB®」の認定資格制度や、高度なシステム要件に対応するためのAPIおよびSDK(Software Development Kit)の整備、顧客同士の情報交換を活性化するためのコミュニティ形成、また、購入しやすく投資対効果を検討しやすい価格・ライセンス体系の整備などが挙げられます。
また、開発、営業、マーケティングなどの組織運営における各種業務においても、「仕組み・仕掛け」化を推進することにより、業務品質を保ちつつ生産性を高め、人的資源の投入量に依存しない形での収益向上を目指してまいります。
⑤戦略パートナーの拡大
当社グループのSaaSプロダクトは、導入企業数および適用業務数から見て、いわゆる「キャズム」(※)を超えた状況となっております。
これまでは、直接販売によって顧客基盤を拡充してまいりましたが、今後の本格的な普及にあたっては、戦略パートナーの拡大が必要となります。現在パートナーの種別は以下の3種類に区分しております。
・クラウドソーシング(人材派遣業およびクラウドワーカー)
SmartDB®上でアプリケーション開発を行うことができる人材の創出
・クラウドインテグレーター(システムインテグレーター)
SmartDB®を開発基盤として利用
・ソリューションプロバイダー(事業会社およびコンサルティング企業)
SmartDB®上で業種固有プロセスをテンプレート化し、自社ソリューションとして提供
上記に示したとおり、人材派遣業やクラウドワーカー、システムインテグレーター、事業会社、コンサルティング企業など、様々な企業で構成されたパートナー制度を確立し、多様なニーズに合致した付加価値の提供を可能とすることを重視しております。なかでも、システムインテグレーターはDXの基盤となる基幹系システムの刷新プロジェクトを請負うことが多いため、「SmartDB®」の活用による投資効率の向上を図り、顧客のIT予算最適化に貢献するよう積極的な働きかけを行ってまいります。
当社が基本戦略として推進する「デジタルの民主化」は、非IT人材による市民開発に止まらず、国内IT産業の課題である多重下請構造やウォーターフォール開発による受託開発型ビジネスの変革を狙うものでもあります。上記の多様なパートナーが、顧客や元請けベンダーと主従関係を結ぶのではなく、水平的な「協創パートナー」となることで、大企業システムの在り方を大きく変え、クラウド時代にふさわしい開発・運用体制の構築とDXの推進に貢献してまいります。
(※)キャズム
マーケティング・コンサルタントのジェフリー・ムーア氏が提唱したマーケティング理論「キャズム理論」の基本コンセプト。技術進化の激しい「ハイテク業界」の製品を普及させるためには、イノベーター、アーリーアダプターと称される技術選好者が属する初期市場と、マジョリティと称される大多数の消費者が属するメインストリーム市場の間に存在する深い溝(キャズム)を超える必要があるとするもの。
⑥顧客コミュニティの形成
顧客基盤をより強固なものとするためには、自社企画イベントの開催やユーザー会の運営を通じて、顧客コミュニティを継続的に活性化していくことが重要であると考えております。顧客が保有する業務デジタル化のノウハウを相互に共有できるコミュニケーション基盤を構築し、質の高い顧客コミュニティの形成を目指してまいります。また、定期的なユーザー会の開催や優れた活用事例を表彰するアワードの実施などを通じて、市民開発における成功事例や知見の蓄積・横展開を促進し、顧客企業同士が学び合いながら継続的に価値を創出できるエコシステムの構築を進めてまいります。
⑦新サービスの開発
「SmartDB®」で拡充した顧客基盤に対して、より多面的な付加価値提供を行うためには、新サービスの開発が必要となります。特定顧客向け開発運用一体型クラウドサービスDCR(DX Custom Resolution)の提供を通じて探索した市場・顧客ニーズに基づき、SaaSラインナップの拡充を推進してまいります。
⑧情報管理体制の強化
当社グループが提供するサービスは、個人情報を含む顧客情報を取り扱っており、これらの情報管理は重要課題と位置付けております。個人情報保護方針等の社内規程の整備および運用の徹底、ISMS認証に基づく業務オペレーションの確立および運用、社内研修の実施などを通じ、一層のセキュリティ強化を進めてまいります。
⑨財務基盤の強化
当社グループは、クラウドサービスの開発および顧客基盤拡充を重視しており、今後も積極的に投資を行っていく方針であるため、財務基盤の強化が必要となります。直接金融、間接金融を活用し、資本市場とのコミュニケーションを深め、事業展開に見合った財務基盤の強化を図ってまいります。
⑩高いキャッシュ創出力を活かしたM&A機会の模索
当社グループは、ホリゾンタルSaaSにおける前受金モデルにより、売上計上に先立って現金を受領できるキャッシュフロー構造を構築しております。この仕組みによる高いキャッシュ創出力と継続的な利益成長の相乗効果により、安定的なキャッシュフローを維持しております。これにより、外部資金へ過度に依存することなく、持続的な成長投資を実行できる財務基盤を有しております。
当社グループが提供する価値は、「SmartDB®」の導入支援や活用促進にとどまらず、基幹フロント領域での業務変革支援やAI機能を活用した高度なコンサルティングなど、多様化・高度化しています。こうした需要の拡大に迅速かつ的確に対応するため、当社の財務基盤を活かし、プロダクトラインナップの拡充やキャパシティ強化を目的としたM&A機会の模索を進めてまいります。
⑪生成AI技術進展に向けた対応
生成AI技術の急速な発展に伴い、当社を取り巻く事業環境・競争環境は日々変化し、複雑化しております。このような認識のもと、当社サービスへのAI機能の実装を通して、機能高度化および付加価値向上を図ってまいります。また、社内業務においてもAI活用を推進し、開発・営業・管理部門等における生産性向上および業務効率化を通じて、収益性の改善と競争優位性の強化に取り組んでまいります。