訂正有価証券届出書(新規公開時)
(1) 経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
1 財政状態及び経営成績の状況
第5期連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)
当社グループは、「将来の世代の利益のための安全で持続可能な宇宙開発」というビジョンを実現するため、軌道上サービス事業の多角的な展開・拡大を目指し、事業開発を推進しております。経営の意思決定や行動において最優先される共通の価値基準のうち、「Space Sustainability」や「ESG経営による顧客への付加価値の提供」を最重要テーマとして事業運営に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、インフレーションの加速や、米国等の財政・金融政策動向を背景として、株式市場や金利・為替相場は不安定な状況が継続しており、依然として先行き不透明な状況が続いております。
一方で、当社グループを取り巻く軌道上サービス市場においては、技術の進展とともに、国際機関、業界団体の取り組みや各国政府等の各種政策の推進が加速しております。国際的宇宙機関等における協議の活発化や発表等を受けて、デブリの脅威に対する認知度、デブリ除去を促進する仕組み作りへの機運、Space Sustainabilityに関するイニシアティブや軌道上サービスの事業化に対する需要は加速度的に上昇しております。
具体的には、ESAは、軌道上の物体が活動停止後、直ちにこれらを継続的かつ確実に除去することで、2030年までに「Net zero pollution」を実現する方針を示し(2022年5月)、米国ホワイトハウスはデブリに関する実施計画「National Orbital Debris Implementation Plan」を発表し、デブリ除去市場の創出に向けた具体的な内容が織り込まれました(2022年7月)。米国上院に超党派法案として提出されたORBITS Actでは、NASAによるRemediation実証プログラム(デブリ除去の他、デオービットの促進等も含む)の開始、2024年度から2028年度にわたる1.5億米ドルのADR向け予算の設定等が提示されました(当初提出:2022年9月、再提出:2023年2月)。ORBITS Actが可決・成立した場合、主に当社グループのADRサービスの市場拡大に大きく寄与することが期待されます。また、FCCは、デブリ低減ガイドラインに関し、宇宙機の運用終了から5年以内の軌道離脱を必要とする命令を発出しており(2022年9月)、当該命令は、2024年9月30日以降に打ち上げられる米国籍の衛星や米国市場へのアクセスが必要な非米国籍の衛星に適用されます。これにより、運用中の衛星のミッション終了後の軌道離脱期間が、従来の業界共通認識であった25年から5年に短縮されたことで、当社グループのEOLサービスにおける民間の衛星事業者からの需要拡大に大きく寄与しうるものと評価しております。また、直近では2023年5月に開かれたG7広島サミットにおいて作成されたG7首脳宣言において、デブリによりもたらされる喫緊の課題に対処することで、宇宙空間の安全かつ持続可能な利用を促進することについてコミットメントが表明されるとともに、デブリの低減と改善のための更なる解決策及び技術の更なる開発を推進させる各国の取り組みを強く奨励することが表明されました。
以上のように、軌道上サービスに関する政府需要及び民間需要を生み出す機運が高まっております。
このような経営環境の中で、技術開発、事業開発、各国政策への提言等レギュレーションに関する活動等を推進した結果、当社グループが取り組む4つの軌道上サービスにおける、当連結会計年度の事業進捗は以下の通りとなりました。なお、当社グループは「軌道上サービス事業」の単一セグメントであるため、セグメント毎の経営成績については記載を省略しております。
End-of-Life Services(EOL):衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去サービス
当社グループは、前連結会計年度において、世界初のデブリ除去技術実証衛星「ELSA-d」を通じて、軌道上サービスに必要な一連の技術(「宇宙空間の非協力物体に対するRPO技術」の重要な部分を包含します。)に関する軌道上実証に成功しました。
また、当社の英国連結子会社であるAstroscale Ltdは、グローバルに衛星通信サービスを提供するEutelsat OneWeb社をパートナーとして、ELSA-dの機能拡張版であり複数デブリの除去が可能な衛星「ELSA-M」の開発を推進しました。同社は、2022年5月に、当該ミッションに資金を提供するESAの通信システム先端研究「Sunrise(サンライズ)」プログラムのPhase 3を受注しております(契約金額:約14.8百万ユーロ(注))。
また、当社グループは、将来の商業フェーズに向けて、多数のコンステレーションを含む衛星事業者や政府とのドッキングプレート搭載等の交渉を進めており、複数の政府や民間の衛星事業者から関心を示されています。例えば、当社グループは、2023年2月に、三菱電機株式会社との間で、日本の安全保障用途の衛星に使用する衛星バスの共同開発・製造に向けた協業に合意しました。かかる衛星バスには、当該衛星が運用終了時に自身で軌道離脱できない場合において当社グループの捕獲衛星による除去を可能とするための、当社グループのドッキングプレートが搭載される予定です。
Active Debris Removal(ADR):既存デブリの除去サービス
日本では、2022年8月に、当社の国内連結子会社である株式会社アストロスケールがJAXAの商業デブリ除去実証であるCommercial Removal of Debris Demonstration(CRD2)フェーズⅡのフロントローディング技術検討を受注しました。英国では、Astroscale Ltdがイギリス宇宙庁のデブリ除去プログラムCleaning Outer Space Mission through Innovative Capture(COSMIC)Phase 0/Aを無事に終え、2022年9月に、同プログラムの後続フェーズであるPhase Bを受注しました(契約金額:約2.0百万英ポンド(注))。
Life Extension(LEX):寿命延長サービス
当社の米国連結子会社であるAstroscale U.S. Inc.を中心に、民間事業者向けサービス用衛星初号機「LEXI-P」の開発は順調に進捗しており、ペイロード基本設計審査(Preliminary Design Review - PDR)とミッションPDRを完了し、ペイロード詳細設計審査(Critical Design Review - CDR)の完了に向けて開発を進めております。また、バス部のサプライヤー選定を完了し、今後さらに開発を進めてまいります。
また、事業開発については20以上の顧客と積極的に議論を継続しており、静止衛星事業者2社との間で商業サービスに関する基本合意書(MOU)の署名合意に至りました。
In-Situ Space Situational Awareness(ISSA):故障機や物体の観測・点検サービス
株式会社アストロスケールが、JAXAの商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズⅠにおいて、2022年3月に詳細設計審査(CDR)を完了し、その後、組立や各種試験を順調に進めております。当該ミッションでは、非協力物体である日本のロケット上段への接近・近傍運用や撮像等を行う衛星「ADRAS-J」の開発を推進しました。
第6期第3四半期連結累計期間(自 2023年5月1日 至 2024年1月31日)
前連結会計年度から継続するインフレーションの長期化、米国・欧州等の金利引き上げにより、当四半期連結累計期間は、引き続き景気後退懸念の強い経営環境となりました。
一方で、国際機関、業界団体の取り組みや各国政府等の各種政策の推進は顕著となっております。2023年5月に開催されたG7広島サミットで作成されたG7首脳宣言において、スペースデブリによりもたらされる喫緊の課題に対処し、宇宙空間の安全かつ持続可能な利用を促進することについてのコミットメントが表明されるとともに、スペースデブリの低減と改善のための更なる解決策及び技術の更なる開発を推進させる各国の取り組みを歓迎することが表明されました。
また、下表のとおり、各国及び国際機関における積極的な取り組みが見られます。
※ ITUは、国連の機関の一つであり、193カ国や900以上の企業等が加盟しており、通信の規制及び調整を行っています。
このように、軌道上サービスに関する政府需要及び民間需要に繋がる政策推進等の機運が高まる中、当社グループは、2023年5月に日本拠点の移転に伴い製造キャパシティを強化しました。これも寄与し、後述のとおり、2023年9月には文部科学省よりISSAミッションを受注しました。また、2023年6月に当社のフランス連結子会社であるAstroscale France SASを設立し、2023年10月にはフランスのトゥールーズに同社の技術拠点を置くことを決定しました。当該技術拠点では衛星の製造開発設備を整え、増加する欧州での需要の獲得を目指します。さらに、2023年7月に当社の米国連結子会社であるAstroscale U.S. Inc.はファシリティ・クリアランス(施設保全適格証)を取得し、これにより米国の機密プロジェクトへ参画が可能になり、2023年9月には米国宇宙軍より受注を獲得しました。
End-of-Life Services (EOL):衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去サービス
Astroscale Ltdは、SunriseプロジェクトのPhase 3を順調に推進するとともに、Phase 4への入札を完了しました。Phase 4では、2026年4月期にサービサー衛星の打上げが予定されております。
また、将来の商業化に向けて、既に、Eutelsat OneWeb社及びOrbit Fab, Inc.との間で、これらの衛星コンステレーション運用事業者の衛星にドッキングプレートを搭載することが合意されています。加えて、Globalstar, Inc.は、ELSA-Mによる磁石捕獲が可能な他社製ドッキングプレートの搭載を決定しています。2023年7月には、Astro Digital社との間で、同社が製造する衛星への当社グループのドッキングプレートの搭載に関するパートナーシップ契約を締結しました。
なお、2021年3月に打ち上げたELSA-dは、運用可能なスラスタを使用したサービサーの軌道離脱制御の運用を終え、2024年1月にミッションを完了しました。ELSA-dミッションにより実証された技術は、当社グループが開発する軌道上サービスに必要となる技術の一部に留まりますが、非協力物体に対するRPO(ランデブ・近傍運用)を含むデブリ除去に必要な一連の技術を実証することに成功しました。
Active Debris Removal (ADR):既存デブリの除去サービス
日本では、株式会社アストロスケールが、JAXAの商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズⅡのフロントローディング技術検討を進めております。英国では、Astroscale Ltdがイギリス宇宙庁(UKSA)のデブリ除去プログラムCOSMIC Phase Bに係る開発を進めており、2023年9月にシステム要求審査(SRR)が完了しました。フランスでは、Astroscale France SASがフランス国立宇宙研究センター(CNES)からデブリ除去に関する研究案件を受注しました。
Life Extension (LEX):寿命延長サービス
商業サービス用衛星初号機「LEXI-P」については、ペイロード詳細設計審査(CDR)の完了に向けた開発が進められております。また、バス部のサプライヤーを選定し、基本設計審査(PDR)を完了しました。
Astroscale U.S. Inc.は、2023年9月に、静止軌道上で燃料補給を実施する衛星のプロトタイプの開発を行うプログラム(契約金額:約25.5百万米ドル(注))を米国宇宙軍から受注しました。
また、事業開発については20以上の顧客と積極的に議論を継続しており、新たに静止衛星事業者1社との間で商業サービスに関する基本合意書(MOU)の署名合意に至りました。Astroscale U.S. Inc.は、特定の静止衛星運用者との間で寿命延長サービスの提供に関する契約交渉を行っており、2023年12月に、法的拘束力を有しないタームシート(主要な契約条件を整理した文書)に合意・署名しました(想定契約金額:121百万米ドル(注))。
In-Situ Space Situational Awareness (ISSA):故障機や物体の観測・点検サービス
株式会社アストロスケールが取り組むJAXAのCRD2フェーズⅠにおいて、2024年2月にサービサー衛星である「ADRAS-J」の打上げに成功しました(本書提出日現在の状況については、上記「第1 企業の概況 3 事業の内容 3.5 ADRAS-J(アドラス・ジェイ)」参照)。かかるミッションに成功した場合、本プロジェクトは史上初めて軌道上で直接デブリを観測した事例になると期待されます。
また、同社は、文部科学省が実施するSBIR制度において、2023年9月に宇宙分野(事業テーマ:スペースデブリ低減に必要な技術開発・実証)を対象とした大規模技術実証事業に採択されました。本事業のフェーズ1に係る補助金交付額は最大26億円であり、全フェーズで最大120億円が交付される予定です(注)。
(注) 技術開発の進捗やサービスの提供に応じ、当社グループに支払われることが合意又は予定されている収益の合計金額であり、契約において定められた条件が実現に至らない場合、マイルストーン収入の一部が支払われない可能性があります。また、当社グループが受注未了のフェーズについては、当社グループの想定通りに受注に至る保証はありません。
この結果、当連結会計年度及び第6期第3四半期連結累計期間の財政状態及び経営成績の状況は、以下の通りとなりました。
a.財政状態の状況
第5期連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)
・資産
当連結会計年度における流動資産は24,417,246千円となり、前連結会計年度末に比べ6,827,068千円増加しました。これは主に、新株の発行による現金及び現金同等物の増加によるものです。非流動資産は6,020,413千円となり、前連結会計年度末に比べ3,485,094千円増加しました。これは主に、開発設備強化のために有形固定資産が3,372,659千円増加したことによるものです。
この結果、資産合計は30,437,660千円となり、前連結会計年度末に比べ10,312,163千円増加しました。
・負債
当連結会計年度における流動負債は6,987,296千円となり、前連結会計年度末に比べ3,040,733千円増加しました。これは主に、引当金が1,827,057千円、営業債務及びその他の債務が900,639千円増加したことによるものです。非流動負債は8,559,768千円となり、前連結会計年度末に比べ6,472,586千円増加しました。これは主に、借入金が4,975,010千円、リース負債が2,126,303千円増加したことによるものです。
この結果、負債合計は15,547,064千円となり、前連結会計年度末に比べ9,513,320千円増加しました。
・資本
当連結会計年度における資本合計は、新株の発行による資本金及び資本剰余金のそれぞれ5,112,591千円の増加、当期損失の計上による利益剰余金の9,264,266千円の減少等により、前連結会計年度末と比べて798,842千円増加し、14,890,596千円となりました。
第6期第3四半期連結累計期間(自 2023年5月1日 至 2024年1月31日)
・資産
当第3四半期連結会計期間末における流動資産は17,401,484千円となり、前連結会計年度末に比べ7,015,762千円減少しました。これは主に、現金及び現金同等物の減少によるものです。非流動資産は6,986,754千円となり、前連結会計年度末に比べ966,340千円増加しました。これは主に、開発設備強化のために有形固定資産が895,390千円増加したことによるものです。
この結果、資産合計は24,388,238千円となり、前連結会計年度末に比べ6,049,422千円減少しました。
・負債
当第3四半期連結会計期間末における流動負債は4,283,796千円となり、前連結会計年度末に比べ2,703,499千円減少しました。これは主に、引当金が2,550,303千円減少したことによるものです。非流動負債は10,678,628千円となり、前連結会計年度末に比べ2,118,860千円増加しました。これは主に、借入金が1,952,030千円、引当金が218,697千円増加したことによるものです。
この結果、負債合計は14,962,425千円となり、前連結会計年度末に比べ584,639千円減少しました。
・資本
当第3四半期連結会計期間末における資本合計は、新株の発行による資本金及び資本剰余金のそれぞれ500,000千円の増加、四半期損失の計上による利益剰余金の5,824,121千円の減少等により、前連結会計年度末と比べて5,464,782千円減少し、9,425,813千円となりました。
b.経営成績の状況
第5期連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)
当連結会計年度の売上収益は、ADRAS-JやELSA-Mの開発進捗により一定程度増加したものの、研究開発段階にある当社グループにおける研究開発費の支出は大きく、従業員数が増加し開発体制が強化されるなか、前連結会計年度に引き続き、営業損失、税引前当期損失、親会社の所有者に帰属する当期損失を計上することとなりました。
以上の結果、当連結会計年度における当社グループの業績は、売上収益1,792,991千円(前年同期比97.0%増)、営業損失9,665,628千円(前年同期は営業損失6,404,277千円)、税引前当期損失9,314,001千円(前年同期は税引前当期損失5,563,449千円)、親会社の所有者に帰属する当期損失9,264,266千円(前年同期は親会社の所有者に帰属する当期損失5,484,122千円)となりました。
第6期第3四半期連結累計期間(自 2023年5月1日 至 2024年1月31日)
当第3四半期連結累計期間の売上収益は、ADRAS-JやELSA-Mの開発進捗により増加し、受注損失引当金の戻入れにより売上総損失が大きく減少したものの、前年同期に引き続き、営業損失、税引前四半期損失、親会社の所有者に帰属する四半期損失を計上することとなりました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における当社グループの業績は、売上収益1,994,122千円(前年同期比51.7%増)、営業損失6,990,835千円(前年同期は営業損失5,944,407千円)、税引前四半期損失5,823,108千円(前年同期は税引前四半期損失6,036,317千円)、親会社の所有者に帰属する四半期損失5,824,121千円(前年同期は親会社の所有者に帰属する四半期損失6,037,329千円)となりました。
2 キャッシュ・フローの状況
第5期連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ5,809,975千円増加し、22,678,990千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、7,937,591千円の支出(前連結会計年度は、5,501,610千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期損失9,314,001千円の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,634,729千円の支出(前連結会計年度は、662,665千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,528,567千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、15,227,617千円の収入(前連結会計年度は、13,794,672千円の収入)となりました。これは主に、株式の発行による収入10,189,395千円と長期借入れによる収入5,000,000千円によるものであります。
第6期第3四半期連結累計期間(自 2023年5月1日 至 2024年1月31日)
当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ7,430,241千円減少し、15,248,749千円となりました。
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、9,099,128千円の支出(前年同期は、4,829,425千円の支出)となりました。これは主に、税引前四半期損失5,823,108千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、999,945千円の支出(前年同期は、1,063,418千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出940,621千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、2,372,635千円の収入(前年同期は、3,052,736千円の収入)となりました。これは主に、株式の発行による収入996,500千円及び長期借入れによる収入2,027,000千円によるものであります。
3 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、軌道上サービス事業における研究開発を主たる活動としており、受注生産形態をとるに至っていないため、また、当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b.受注実績
当社グループで行う事業は、軌道上サービス事業の単一セグメントであり、当連結会計年度及び当第3四半期連結累計期間における受注実績(受注総額及び受注残総額)(注1)は、次の通りであります。第1期連結会計年度から第6期第3四半期連結累計期間にかけての当社グループの累積受注総額は13,080,326千円であり、その内訳は、非防衛関係の政府系機関から8,485,869千円、防衛関係の政府系機関から3,977,627千円、民間顧客から616,829千円(当社グループの捕獲技術に対応したドッキングプレートの搭載に係る契約を除く。)であります。
(注) 1.受注総額は、第5期連結会計年度又は第6期第3四半期連結累計期間において締結された契約に基づき、当社グループが支払いを受けた又は受けることができる金額の総額をいいます。受注残総額は、当該連結会計年度又は四半期連結累計期間までの全ての期間における受注総額の合計額のうち、当該連結会計年度末又は四半期連結累計期間末までに収益計上がなされていない金額をいいます。当社グループの技術開発の進捗その他当該契約において定められた条件が実現に至らない場合、サービス提供に応じて支払われるマイルストーン収入の一部が支払われない可能性があり、そのため、上記の受注残総額の全てにつき、収益認識に至らない可能性があります。
2.上記受注残総額のほか、第5期連結会計年度の末日時点及び第6期第3四半期連結累計期間の末日時点において、契約の締結には至っていないものの、当社が現時点で競合の存在を認識していないことから、当社グループによる受注が期待できると認識する既存ミッションの後続フェーズ(ELSA-M Phase 4並びにSBIRフェーズ2及びフェーズ3)に係る想定受注残総額としては、それぞれ2,093,795千円及び11,535,220千円を見込んでおります。後続フェーズについては契約の締結に至っていないため、当社グループが後続フェーズを受注できず、又は、実際の受注金額が当社の想定と異なる可能性があります。
3.当社は、第6期第3四半期連結累計期間の末日以降となる2024年4月に、CRD2フェーズⅡ(ADRAS-J2)につき株式会社アストロスケールを選定企業として選定する旨の選定結果通知書をJAXAから受領(契約の締結及び契約金額その他の条件の決定は未了)しており、CRD2フェーズⅡに係る想定契約金額は114億円であります。上記想定契約金額は、政府予算の配賦額から先行フェーズに拠出済みの累計金額を控除した金額等を参考に算出しておりますが、最終合意に基づく実際の契約金額は上記の想定契約金額と異なる可能性があります。なお、参考までに、第6期第3四半期連結累計期間末日時点における受注残総額に、(注)2.の第6期第3四半期連結累計期間末日時点における想定受注残総額及び2024年4月に選定を受けたCRD2フェーズⅡに係る想定契約金額を単純合算した金額は、29,929,071千円となりますが、(注)1.乃至3.記載の理由により、当該金額の全てにつき、収益認識に至らない可能性があります。
4.第6期第3四半期連結累計期間において、軌道上サービス事業セグメントの受注総額及び受注残総額に著しい変動がありました。これは主に、中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)の補助金を活用した大型衛星デブリを撮影・診断するミッションを文部科学省より、宇宙空間での燃料補給技術の開発を目指すプログラムを米国宇宙軍より、それぞれ受注したことによる増加であります。
c.販売実績
当社グループで行う事業は、軌道上サービス事業の単一セグメントであり、当連結会計年度における販売実績は、次の通りであります。
(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。
2.軌道上サービス事業における販売形態別の状況は次の通りであります。
3.受託プロジェクト収益には、当社グループが開発する軌道上サービスに関連する研究開発プロジェクト及び実証プロジェクトにより獲得した収益が含まれております。
4.その他の収益には、ロゴマーク掲載等のスポンサーシップによる収益等が含まれております。
5.第5期連結会計年度において、軌道上サービス事業セグメントの販売実績に著しい変動がありました。これは主に、ロゴマーク掲載等のスポンサーシップによる収益の計上によるものであります。
6.第6期第3四半期連結累計期間において、軌道上サービス事業セグメントの販売実績に著しい変動がありました。これは主に、ADRAS-JやELSA-Mの開発進捗による収益の計上によるものであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
第5期連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)
a.売上収益
当連結会計年度における売上収益は、ADRAS-JやELSA-Mの開発進捗により、1,792,991千円(前年同期比97.0%増)となりました。
b.売上原価、売上総利益
当連結会計年度における売上原価は、売上増加に伴う仕入高、人件費及び外注費の増加等により6,988,549千円(前年同期比154.8%増)となりました。前連結会計年度において売上原価全体に占める割合の大きかった受注損失引当金繰入額は減少したものの、プロジェクトの進捗に伴い発生するコストが増加したことにより、前年比で増加となりました。
その結果、売上総利益は5,195,557千円の損失(前年同期は1,832,535千円の損失)となりました。
c.販売費及び一般管理費、その他の収益及びその他の費用、営業利益
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、事業拡大に伴う人員拡充及びLEXI-Pミッションに係るサービサー衛星等の研究開発等により、人件費及び関連する諸経費が増加し、7,408,212千円(前年同期比55.6%増)となりました。
その他の収益については、ELSA-dのミッション保険に係る保険金収入2,611,114千円等により、2,938,141千円(前年同期比1,439.5%増)となりました。
その他の費用については、当連結会計年度に計上するものはありませんでした。
これらの結果、営業利益は、9,665,628千円の損失(前年同期は6,404,277千円の損失)となりました。
d.金融収益及び金融費用、法人所得税費用、親会社の所有者に帰属する当期利益
当連結会計年度における金融収益及び金融費用は、主に為替差損益です。
法人所得税費用については、還付額が納税額を上回った結果、49,734千円の還付(前年同期は79,327千円の還付)となりました。
これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は、9,264,266千円の損失(前年同期は5,484,122千円の損失)となりました。
第6期第3四半期連結累計期間(自 2023年5月1日 至 2024年1月31日)
a.売上収益
当第3四半期連結累計期間における売上収益は、ADRAS-JやELSA-Mの開発進捗により、1,994,122千円(前年同期比51.7%増)となりました。
b.売上原価、売上総利益
当第3四半期連結累計期間における売上原価は、売上増加に伴う人件費及び外注費の増加等の一方で、プロジェクトの進捗による受注損失引当金の戻入れにより2,508,745千円(前年同期比51.6%減)となりました。
その結果、売上総利益は514,623千円の損失(前年同期は3,872,626千円の損失)となりました。
c.販売費及び一般管理費、その他の収益及びその他の費用、営業利益
当第3四半期連結累計期間における販売費及び一般管理費は、研究開発費が増加したことに加え、事業拡大に伴う人員拡充等により、人件費及び関連する諸経費が増加したこと、新拠点に関連する減価償却費が増加したことにより、7,163,346千円(前年同期比50.4%増)となりました。
その他の収益については、政府補助金収入が増加した一方で、前年同期と異なり保険金収入が計上されなかったことにより、687,134千円(前年同期比74.5%減)となりました。
これらの結果、営業利益は、6,990,835千円の損失(前年同期は5,944,407千円の損失)となりました。
d.金融収益及び金融費用、法人所得税費用、親会社の所有者に帰属する四半期利益
当第3四半期連結累計期間における金融収益及び金融費用は、主に為替差損益及び借入金に係る支払利息です。
法人所得税費用については、1,012千円(前年同期も1,012千円)となりました。
これらの結果、親会社の所有者に帰属する四半期利益は、5,824,121千円の損失(前年同期は6,037,329千円の損失)となりました。
②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準審議会によって公表されたIFRSに基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような経営者の見積り及び予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、見積り及び予測を行っておりますが、前提条件やその後の環境等に変化がある場合には、実際の結果がこれら見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成に係る重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載の通りであります。
③経営戦略の現状と見通し
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、当社グループが構築してきた研究開発技術を最大限に活用し、デブリ除去サービスにおいては、対象となるデブリの性質に応じて、多様で安価なソリューションを提供するなど、軌道上サービス事業の多角的な展開・拡大を目指しています。
④経営者の問題意識と今後の方針について
経営者は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載されている様々な課題に対処し、安全かつ安定的で持続可能なサービスを継続的に提供していくことが必要であると認識しております。そのため、経営者は、現在の事業環境及び入手可能な外部環境の変化に関する情報に基づき、迅速かつ最善な経営戦略の立案、経営課題に対する施策の実施に努めていきます。
⑤キャッシュ・フローの分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループのキャッシュ・フローの分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要 2 キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
当社グループの資本管理及び流動性リスクとその管理方法については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 23.金融商品」に記載しています。また、当連結会計年度における資金の主な増減要因については、上記に記載しています。
⑥経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの将来の財政状態及び経営成績に重要な影響を与えるリスク要因については、「3 事業等のリスク」に記載しております。
⑦経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、フリー・キャッシュ・フローを創出するために、売上収益や売上総利益、税引前営業利益等の各種業績指標の管理に加え、プロジェクト収益を重要な経営指標と位置付けております。
(単位:千円)
(注) 1.プロジェクト収益に含まれる政府補助金収入には、特定のプロジェクトに関連して使用される政府補助金収入のみを含めております。具体的には、「第1 企業の概況 3 事業の内容 3.3 開発・運用状況」に記載するSBIR及びAPS-Rに関する政府補助金収入を含めており、詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記 11.その他の収益」に記載しています。
2.プロジェクト収益は、国際会計基準(IFRS)により規定された指標ではなく、投資家が当社グループの業績を評価する上で、当社が有用と考える財務指標であります。プロジェクト収益は以下により算出しております。
プロジェクト収益=売上収益+政府補助金収入
なお、この数値は、当社グループが提供するサービスの対価として取得する政府補助金収入を売上収益に加算して算出しており、分析手段として重要な制限があることから、国際会計基準に準拠して表示された他の指標の代替的指標として考慮されるべきではありません。当社グループにおけるこれらの数値は、同業他社の同指標あるいは類似の指標とは算定方法が異なるために、他社における指標とは比較可能でない場合があり、その結果、有用性が減少する可能性があります。
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
1 財政状態及び経営成績の状況
第5期連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)
当社グループは、「将来の世代の利益のための安全で持続可能な宇宙開発」というビジョンを実現するため、軌道上サービス事業の多角的な展開・拡大を目指し、事業開発を推進しております。経営の意思決定や行動において最優先される共通の価値基準のうち、「Space Sustainability」や「ESG経営による顧客への付加価値の提供」を最重要テーマとして事業運営に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、インフレーションの加速や、米国等の財政・金融政策動向を背景として、株式市場や金利・為替相場は不安定な状況が継続しており、依然として先行き不透明な状況が続いております。
一方で、当社グループを取り巻く軌道上サービス市場においては、技術の進展とともに、国際機関、業界団体の取り組みや各国政府等の各種政策の推進が加速しております。国際的宇宙機関等における協議の活発化や発表等を受けて、デブリの脅威に対する認知度、デブリ除去を促進する仕組み作りへの機運、Space Sustainabilityに関するイニシアティブや軌道上サービスの事業化に対する需要は加速度的に上昇しております。
具体的には、ESAは、軌道上の物体が活動停止後、直ちにこれらを継続的かつ確実に除去することで、2030年までに「Net zero pollution」を実現する方針を示し(2022年5月)、米国ホワイトハウスはデブリに関する実施計画「National Orbital Debris Implementation Plan」を発表し、デブリ除去市場の創出に向けた具体的な内容が織り込まれました(2022年7月)。米国上院に超党派法案として提出されたORBITS Actでは、NASAによるRemediation実証プログラム(デブリ除去の他、デオービットの促進等も含む)の開始、2024年度から2028年度にわたる1.5億米ドルのADR向け予算の設定等が提示されました(当初提出:2022年9月、再提出:2023年2月)。ORBITS Actが可決・成立した場合、主に当社グループのADRサービスの市場拡大に大きく寄与することが期待されます。また、FCCは、デブリ低減ガイドラインに関し、宇宙機の運用終了から5年以内の軌道離脱を必要とする命令を発出しており(2022年9月)、当該命令は、2024年9月30日以降に打ち上げられる米国籍の衛星や米国市場へのアクセスが必要な非米国籍の衛星に適用されます。これにより、運用中の衛星のミッション終了後の軌道離脱期間が、従来の業界共通認識であった25年から5年に短縮されたことで、当社グループのEOLサービスにおける民間の衛星事業者からの需要拡大に大きく寄与しうるものと評価しております。また、直近では2023年5月に開かれたG7広島サミットにおいて作成されたG7首脳宣言において、デブリによりもたらされる喫緊の課題に対処することで、宇宙空間の安全かつ持続可能な利用を促進することについてコミットメントが表明されるとともに、デブリの低減と改善のための更なる解決策及び技術の更なる開発を推進させる各国の取り組みを強く奨励することが表明されました。
以上のように、軌道上サービスに関する政府需要及び民間需要を生み出す機運が高まっております。
このような経営環境の中で、技術開発、事業開発、各国政策への提言等レギュレーションに関する活動等を推進した結果、当社グループが取り組む4つの軌道上サービスにおける、当連結会計年度の事業進捗は以下の通りとなりました。なお、当社グループは「軌道上サービス事業」の単一セグメントであるため、セグメント毎の経営成績については記載を省略しております。
End-of-Life Services(EOL):衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去サービス
当社グループは、前連結会計年度において、世界初のデブリ除去技術実証衛星「ELSA-d」を通じて、軌道上サービスに必要な一連の技術(「宇宙空間の非協力物体に対するRPO技術」の重要な部分を包含します。)に関する軌道上実証に成功しました。
また、当社の英国連結子会社であるAstroscale Ltdは、グローバルに衛星通信サービスを提供するEutelsat OneWeb社をパートナーとして、ELSA-dの機能拡張版であり複数デブリの除去が可能な衛星「ELSA-M」の開発を推進しました。同社は、2022年5月に、当該ミッションに資金を提供するESAの通信システム先端研究「Sunrise(サンライズ)」プログラムのPhase 3を受注しております(契約金額:約14.8百万ユーロ(注))。
また、当社グループは、将来の商業フェーズに向けて、多数のコンステレーションを含む衛星事業者や政府とのドッキングプレート搭載等の交渉を進めており、複数の政府や民間の衛星事業者から関心を示されています。例えば、当社グループは、2023年2月に、三菱電機株式会社との間で、日本の安全保障用途の衛星に使用する衛星バスの共同開発・製造に向けた協業に合意しました。かかる衛星バスには、当該衛星が運用終了時に自身で軌道離脱できない場合において当社グループの捕獲衛星による除去を可能とするための、当社グループのドッキングプレートが搭載される予定です。
Active Debris Removal(ADR):既存デブリの除去サービス
日本では、2022年8月に、当社の国内連結子会社である株式会社アストロスケールがJAXAの商業デブリ除去実証であるCommercial Removal of Debris Demonstration(CRD2)フェーズⅡのフロントローディング技術検討を受注しました。英国では、Astroscale Ltdがイギリス宇宙庁のデブリ除去プログラムCleaning Outer Space Mission through Innovative Capture(COSMIC)Phase 0/Aを無事に終え、2022年9月に、同プログラムの後続フェーズであるPhase Bを受注しました(契約金額:約2.0百万英ポンド(注))。
Life Extension(LEX):寿命延長サービス
当社の米国連結子会社であるAstroscale U.S. Inc.を中心に、民間事業者向けサービス用衛星初号機「LEXI-P」の開発は順調に進捗しており、ペイロード基本設計審査(Preliminary Design Review - PDR)とミッションPDRを完了し、ペイロード詳細設計審査(Critical Design Review - CDR)の完了に向けて開発を進めております。また、バス部のサプライヤー選定を完了し、今後さらに開発を進めてまいります。
また、事業開発については20以上の顧客と積極的に議論を継続しており、静止衛星事業者2社との間で商業サービスに関する基本合意書(MOU)の署名合意に至りました。
In-Situ Space Situational Awareness(ISSA):故障機や物体の観測・点検サービス
株式会社アストロスケールが、JAXAの商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズⅠにおいて、2022年3月に詳細設計審査(CDR)を完了し、その後、組立や各種試験を順調に進めております。当該ミッションでは、非協力物体である日本のロケット上段への接近・近傍運用や撮像等を行う衛星「ADRAS-J」の開発を推進しました。
第6期第3四半期連結累計期間(自 2023年5月1日 至 2024年1月31日)
前連結会計年度から継続するインフレーションの長期化、米国・欧州等の金利引き上げにより、当四半期連結累計期間は、引き続き景気後退懸念の強い経営環境となりました。
一方で、国際機関、業界団体の取り組みや各国政府等の各種政策の推進は顕著となっております。2023年5月に開催されたG7広島サミットで作成されたG7首脳宣言において、スペースデブリによりもたらされる喫緊の課題に対処し、宇宙空間の安全かつ持続可能な利用を促進することについてのコミットメントが表明されるとともに、スペースデブリの低減と改善のための更なる解決策及び技術の更なる開発を推進させる各国の取り組みを歓迎することが表明されました。
また、下表のとおり、各国及び国際機関における積極的な取り組みが見られます。
年月 | 国又は地域 | 内容 |
2023年6月 | 英国 | 英国国王チャールズ3世により、宇宙産業全体で民間企業による持続可能な取り組みを加速させることを目的として、宇宙の持続利用に関するイニシアティブ「Astra Carta(アストラ・カルタ)」が発表されました。 |
2023年6月 | 日本 | 宇宙基本計画が閣議決定され、国・宇宙航空研究開発機構(JAXA)等はデブリの低減に資する技術の開発等に取り組み、民間事業者による新たな市場開拓を支援することが定められました。 |
2023年10月 | 米国 | 米国連邦通信委員会(FCC)は衛星事業者DISH Operating L.L.C.が人工衛星の軌道離脱を適切に実施しなかったとして、罰金(15万米ドル)の支払いを命じました。 |
2023年10月 | 米国 | 2023年2月に米国上院に超党派法案として再提出され、2023年10月に上院で可決されたORBITS Actでは、アメリカ航空宇宙局(NASA)によるRemediation実証プログラム(デブリ除去のほか、軌道離脱の促進等も含む)の開始、2024年度から2028年度にわたる1.5億米ドルのADR(後述)向け予算の設定等が盛り込まれています。 |
2023年11月 | 欧州 | 2023年6月、欧州宇宙機関(ESA)は2030年までに達成すべき持続可能な宇宙のための目標を特定するべく、「ゼロ・デブリ憲章」イニシアティブの始動を発表しました。 2023年11月、ESAは、低軌道(LEO)及び静止軌道(GEO)において必要な場合には外部的手段を利用することを含め、ミッション終了後の廃棄(PMD)は少なくとも99%の成功確率で適時に達成されるべきなどと明記した「ゼロ・デブリ憲章」を発表しました。また、ESAが同月に発表した「ESA Space Debris Mitigation Policy」において、ESAが今後実施する宇宙空間でのミッションに係る衛星の設計、製造、運用及び廃棄は、「ESA Space Debris Mitigation Requirements」に準拠して実施されることが示されました。これは、LEO上での廃棄フェーズに要する期間を5年以下とすること、又は、軌道滞在期間における大きさが1cm以上のデブリとの累積衝突確率を1,000分の1以下とすること等を要求するものです。 |
2023年11月 | グローバル | 2023年11月、国際電気通信連合(ITU※)は4年に一度開催される総会において、非静止軌道上の衛星につき、安全で効率的な軌道離脱及び/又は廃棄に関する戦略と方法論に関するガイダンスを提供するよう決議しました。 |
※ ITUは、国連の機関の一つであり、193カ国や900以上の企業等が加盟しており、通信の規制及び調整を行っています。
このように、軌道上サービスに関する政府需要及び民間需要に繋がる政策推進等の機運が高まる中、当社グループは、2023年5月に日本拠点の移転に伴い製造キャパシティを強化しました。これも寄与し、後述のとおり、2023年9月には文部科学省よりISSAミッションを受注しました。また、2023年6月に当社のフランス連結子会社であるAstroscale France SASを設立し、2023年10月にはフランスのトゥールーズに同社の技術拠点を置くことを決定しました。当該技術拠点では衛星の製造開発設備を整え、増加する欧州での需要の獲得を目指します。さらに、2023年7月に当社の米国連結子会社であるAstroscale U.S. Inc.はファシリティ・クリアランス(施設保全適格証)を取得し、これにより米国の機密プロジェクトへ参画が可能になり、2023年9月には米国宇宙軍より受注を獲得しました。
End-of-Life Services (EOL):衛星運用終了時のデブリ化防止のための除去サービス
Astroscale Ltdは、SunriseプロジェクトのPhase 3を順調に推進するとともに、Phase 4への入札を完了しました。Phase 4では、2026年4月期にサービサー衛星の打上げが予定されております。
また、将来の商業化に向けて、既に、Eutelsat OneWeb社及びOrbit Fab, Inc.との間で、これらの衛星コンステレーション運用事業者の衛星にドッキングプレートを搭載することが合意されています。加えて、Globalstar, Inc.は、ELSA-Mによる磁石捕獲が可能な他社製ドッキングプレートの搭載を決定しています。2023年7月には、Astro Digital社との間で、同社が製造する衛星への当社グループのドッキングプレートの搭載に関するパートナーシップ契約を締結しました。
なお、2021年3月に打ち上げたELSA-dは、運用可能なスラスタを使用したサービサーの軌道離脱制御の運用を終え、2024年1月にミッションを完了しました。ELSA-dミッションにより実証された技術は、当社グループが開発する軌道上サービスに必要となる技術の一部に留まりますが、非協力物体に対するRPO(ランデブ・近傍運用)を含むデブリ除去に必要な一連の技術を実証することに成功しました。
Active Debris Removal (ADR):既存デブリの除去サービス
日本では、株式会社アストロスケールが、JAXAの商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズⅡのフロントローディング技術検討を進めております。英国では、Astroscale Ltdがイギリス宇宙庁(UKSA)のデブリ除去プログラムCOSMIC Phase Bに係る開発を進めており、2023年9月にシステム要求審査(SRR)が完了しました。フランスでは、Astroscale France SASがフランス国立宇宙研究センター(CNES)からデブリ除去に関する研究案件を受注しました。
Life Extension (LEX):寿命延長サービス
商業サービス用衛星初号機「LEXI-P」については、ペイロード詳細設計審査(CDR)の完了に向けた開発が進められております。また、バス部のサプライヤーを選定し、基本設計審査(PDR)を完了しました。
Astroscale U.S. Inc.は、2023年9月に、静止軌道上で燃料補給を実施する衛星のプロトタイプの開発を行うプログラム(契約金額:約25.5百万米ドル(注))を米国宇宙軍から受注しました。
また、事業開発については20以上の顧客と積極的に議論を継続しており、新たに静止衛星事業者1社との間で商業サービスに関する基本合意書(MOU)の署名合意に至りました。Astroscale U.S. Inc.は、特定の静止衛星運用者との間で寿命延長サービスの提供に関する契約交渉を行っており、2023年12月に、法的拘束力を有しないタームシート(主要な契約条件を整理した文書)に合意・署名しました(想定契約金額:121百万米ドル(注))。
In-Situ Space Situational Awareness (ISSA):故障機や物体の観測・点検サービス
株式会社アストロスケールが取り組むJAXAのCRD2フェーズⅠにおいて、2024年2月にサービサー衛星である「ADRAS-J」の打上げに成功しました(本書提出日現在の状況については、上記「第1 企業の概況 3 事業の内容 3.5 ADRAS-J(アドラス・ジェイ)」参照)。かかるミッションに成功した場合、本プロジェクトは史上初めて軌道上で直接デブリを観測した事例になると期待されます。
また、同社は、文部科学省が実施するSBIR制度において、2023年9月に宇宙分野(事業テーマ:スペースデブリ低減に必要な技術開発・実証)を対象とした大規模技術実証事業に採択されました。本事業のフェーズ1に係る補助金交付額は最大26億円であり、全フェーズで最大120億円が交付される予定です(注)。
(注) 技術開発の進捗やサービスの提供に応じ、当社グループに支払われることが合意又は予定されている収益の合計金額であり、契約において定められた条件が実現に至らない場合、マイルストーン収入の一部が支払われない可能性があります。また、当社グループが受注未了のフェーズについては、当社グループの想定通りに受注に至る保証はありません。
この結果、当連結会計年度及び第6期第3四半期連結累計期間の財政状態及び経営成績の状況は、以下の通りとなりました。
a.財政状態の状況
第5期連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)
・資産
当連結会計年度における流動資産は24,417,246千円となり、前連結会計年度末に比べ6,827,068千円増加しました。これは主に、新株の発行による現金及び現金同等物の増加によるものです。非流動資産は6,020,413千円となり、前連結会計年度末に比べ3,485,094千円増加しました。これは主に、開発設備強化のために有形固定資産が3,372,659千円増加したことによるものです。
この結果、資産合計は30,437,660千円となり、前連結会計年度末に比べ10,312,163千円増加しました。
・負債
当連結会計年度における流動負債は6,987,296千円となり、前連結会計年度末に比べ3,040,733千円増加しました。これは主に、引当金が1,827,057千円、営業債務及びその他の債務が900,639千円増加したことによるものです。非流動負債は8,559,768千円となり、前連結会計年度末に比べ6,472,586千円増加しました。これは主に、借入金が4,975,010千円、リース負債が2,126,303千円増加したことによるものです。
この結果、負債合計は15,547,064千円となり、前連結会計年度末に比べ9,513,320千円増加しました。
・資本
当連結会計年度における資本合計は、新株の発行による資本金及び資本剰余金のそれぞれ5,112,591千円の増加、当期損失の計上による利益剰余金の9,264,266千円の減少等により、前連結会計年度末と比べて798,842千円増加し、14,890,596千円となりました。
第6期第3四半期連結累計期間(自 2023年5月1日 至 2024年1月31日)
・資産
当第3四半期連結会計期間末における流動資産は17,401,484千円となり、前連結会計年度末に比べ7,015,762千円減少しました。これは主に、現金及び現金同等物の減少によるものです。非流動資産は6,986,754千円となり、前連結会計年度末に比べ966,340千円増加しました。これは主に、開発設備強化のために有形固定資産が895,390千円増加したことによるものです。
この結果、資産合計は24,388,238千円となり、前連結会計年度末に比べ6,049,422千円減少しました。
・負債
当第3四半期連結会計期間末における流動負債は4,283,796千円となり、前連結会計年度末に比べ2,703,499千円減少しました。これは主に、引当金が2,550,303千円減少したことによるものです。非流動負債は10,678,628千円となり、前連結会計年度末に比べ2,118,860千円増加しました。これは主に、借入金が1,952,030千円、引当金が218,697千円増加したことによるものです。
この結果、負債合計は14,962,425千円となり、前連結会計年度末に比べ584,639千円減少しました。
・資本
当第3四半期連結会計期間末における資本合計は、新株の発行による資本金及び資本剰余金のそれぞれ500,000千円の増加、四半期損失の計上による利益剰余金の5,824,121千円の減少等により、前連結会計年度末と比べて5,464,782千円減少し、9,425,813千円となりました。
b.経営成績の状況
第5期連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)
当連結会計年度の売上収益は、ADRAS-JやELSA-Mの開発進捗により一定程度増加したものの、研究開発段階にある当社グループにおける研究開発費の支出は大きく、従業員数が増加し開発体制が強化されるなか、前連結会計年度に引き続き、営業損失、税引前当期損失、親会社の所有者に帰属する当期損失を計上することとなりました。
以上の結果、当連結会計年度における当社グループの業績は、売上収益1,792,991千円(前年同期比97.0%増)、営業損失9,665,628千円(前年同期は営業損失6,404,277千円)、税引前当期損失9,314,001千円(前年同期は税引前当期損失5,563,449千円)、親会社の所有者に帰属する当期損失9,264,266千円(前年同期は親会社の所有者に帰属する当期損失5,484,122千円)となりました。
第6期第3四半期連結累計期間(自 2023年5月1日 至 2024年1月31日)
当第3四半期連結累計期間の売上収益は、ADRAS-JやELSA-Mの開発進捗により増加し、受注損失引当金の戻入れにより売上総損失が大きく減少したものの、前年同期に引き続き、営業損失、税引前四半期損失、親会社の所有者に帰属する四半期損失を計上することとなりました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における当社グループの業績は、売上収益1,994,122千円(前年同期比51.7%増)、営業損失6,990,835千円(前年同期は営業損失5,944,407千円)、税引前四半期損失5,823,108千円(前年同期は税引前四半期損失6,036,317千円)、親会社の所有者に帰属する四半期損失5,824,121千円(前年同期は親会社の所有者に帰属する四半期損失6,037,329千円)となりました。
2 キャッシュ・フローの状況
第5期連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ5,809,975千円増加し、22,678,990千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、7,937,591千円の支出(前連結会計年度は、5,501,610千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期損失9,314,001千円の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,634,729千円の支出(前連結会計年度は、662,665千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,528,567千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、15,227,617千円の収入(前連結会計年度は、13,794,672千円の収入)となりました。これは主に、株式の発行による収入10,189,395千円と長期借入れによる収入5,000,000千円によるものであります。
第6期第3四半期連結累計期間(自 2023年5月1日 至 2024年1月31日)
当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ7,430,241千円減少し、15,248,749千円となりました。
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、9,099,128千円の支出(前年同期は、4,829,425千円の支出)となりました。これは主に、税引前四半期損失5,823,108千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、999,945千円の支出(前年同期は、1,063,418千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出940,621千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、2,372,635千円の収入(前年同期は、3,052,736千円の収入)となりました。これは主に、株式の発行による収入996,500千円及び長期借入れによる収入2,027,000千円によるものであります。
3 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、軌道上サービス事業における研究開発を主たる活動としており、受注生産形態をとるに至っていないため、また、当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b.受注実績
当社グループで行う事業は、軌道上サービス事業の単一セグメントであり、当連結会計年度及び当第3四半期連結累計期間における受注実績(受注総額及び受注残総額)(注1)は、次の通りであります。第1期連結会計年度から第6期第3四半期連結累計期間にかけての当社グループの累積受注総額は13,080,326千円であり、その内訳は、非防衛関係の政府系機関から8,485,869千円、防衛関係の政府系機関から3,977,627千円、民間顧客から616,829千円(当社グループの捕獲技術に対応したドッキングプレートの搭載に係る契約を除く。)であります。
セグメントの名称 | 第5期連結会計年度 (自 2022年5月1日 至 2023年4月30日) | 第6期第3四半期 連結累計期間 (自 2023年5月1日 至 2024年1月31日) | ||||
受注総額 (千円) | 前年同期比(%) | 受注残総額 (千円) | 前年同期比(%) | 受注総額 (千円) | 受注残総額 (千円) | |
軌道上サービス事業 | 2,980,331 | 441.3 | 2,843,001 | 178.8 | 6,594,991 | 6,955,380 |
合 計 | 2,980,331 | 441.3 | 2,843,001 | 178.8 | 6,594,991 | 6,955,380 |
(注) 1.受注総額は、第5期連結会計年度又は第6期第3四半期連結累計期間において締結された契約に基づき、当社グループが支払いを受けた又は受けることができる金額の総額をいいます。受注残総額は、当該連結会計年度又は四半期連結累計期間までの全ての期間における受注総額の合計額のうち、当該連結会計年度末又は四半期連結累計期間末までに収益計上がなされていない金額をいいます。当社グループの技術開発の進捗その他当該契約において定められた条件が実現に至らない場合、サービス提供に応じて支払われるマイルストーン収入の一部が支払われない可能性があり、そのため、上記の受注残総額の全てにつき、収益認識に至らない可能性があります。
2.上記受注残総額のほか、第5期連結会計年度の末日時点及び第6期第3四半期連結累計期間の末日時点において、契約の締結には至っていないものの、当社が現時点で競合の存在を認識していないことから、当社グループによる受注が期待できると認識する既存ミッションの後続フェーズ(ELSA-M Phase 4並びにSBIRフェーズ2及びフェーズ3)に係る想定受注残総額としては、それぞれ2,093,795千円及び11,535,220千円を見込んでおります。後続フェーズについては契約の締結に至っていないため、当社グループが後続フェーズを受注できず、又は、実際の受注金額が当社の想定と異なる可能性があります。
3.当社は、第6期第3四半期連結累計期間の末日以降となる2024年4月に、CRD2フェーズⅡ(ADRAS-J2)につき株式会社アストロスケールを選定企業として選定する旨の選定結果通知書をJAXAから受領(契約の締結及び契約金額その他の条件の決定は未了)しており、CRD2フェーズⅡに係る想定契約金額は114億円であります。上記想定契約金額は、政府予算の配賦額から先行フェーズに拠出済みの累計金額を控除した金額等を参考に算出しておりますが、最終合意に基づく実際の契約金額は上記の想定契約金額と異なる可能性があります。なお、参考までに、第6期第3四半期連結累計期間末日時点における受注残総額に、(注)2.の第6期第3四半期連結累計期間末日時点における想定受注残総額及び2024年4月に選定を受けたCRD2フェーズⅡに係る想定契約金額を単純合算した金額は、29,929,071千円となりますが、(注)1.乃至3.記載の理由により、当該金額の全てにつき、収益認識に至らない可能性があります。
4.第6期第3四半期連結累計期間において、軌道上サービス事業セグメントの受注総額及び受注残総額に著しい変動がありました。これは主に、中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)の補助金を活用した大型衛星デブリを撮影・診断するミッションを文部科学省より、宇宙空間での燃料補給技術の開発を目指すプログラムを米国宇宙軍より、それぞれ受注したことによる増加であります。
c.販売実績
当社グループで行う事業は、軌道上サービス事業の単一セグメントであり、当連結会計年度における販売実績は、次の通りであります。
セグメントの名称 | 第5期連結会計年度 (自 2022年5月1日 至 2023年4月30日) | 第6期第3四半期連結累計期間 (自 2023年5月1日 至 2024年1月31日) | |
販売高(千円) | 前年同期比(%) | 販売高(千円) | |
軌道上サービス事業 | 1,792,991 | 197.0 | 1,994,122 |
合 計 | 1,792,991 | 197.0 | 1,994,122 |
(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。
相手先 | 第4期連結会計年度 (自 2021年5月1日 至 2022年4月30日) | 第5期連結会計年度 (自 2022年5月1日 至 2023年4月30日) | 第6期第3四半期連結累計期間 (自 2023年5月1日 至 2024年1月31日) | |||
金額(千円) | 割合(%) | 金額(千円) | 割合(%) | 金額(千円) | 割合(%) | |
Network Access Associates Limited (Eutelsat OneWeb社) | 141,437 | 15.5 | 700,420 | 39.1 | 863,029 | 43.3 |
宇宙航空研究開発機構 | 488,953 | 53.7 | 417,680 | 23.3 | 472,214 | 23.7 |
経済産業省 | 122,703 | 13.5 | 165,062 | 9.2 | 169,965 | 8.5 |
イギリス宇宙局 | 43,504 | 4.8 | 51,117 | 2.9 | 216,196 | 10.8 |
2.軌道上サービス事業における販売形態別の状況は次の通りであります。
販売形態 | 第5期連結会計年度 (自 2022年5月1日 至 2023年4月30日) | 第6期第3四半期連結累計期間 (自 2023年5月1日 至 2024年1月31日) | |
販売高(千円) | 前年同期比(%) | 販売高(千円) | |
受託プロジェクト収益(注3) | 1,689,876 | 185.7 | 1,937,848 |
その他の収益(注4) | 103,115 | 18,533.8 | 56,273 |
合 計 | 1,792,991 | 197.0 | 1,994,122 |
3.受託プロジェクト収益には、当社グループが開発する軌道上サービスに関連する研究開発プロジェクト及び実証プロジェクトにより獲得した収益が含まれております。
4.その他の収益には、ロゴマーク掲載等のスポンサーシップによる収益等が含まれております。
5.第5期連結会計年度において、軌道上サービス事業セグメントの販売実績に著しい変動がありました。これは主に、ロゴマーク掲載等のスポンサーシップによる収益の計上によるものであります。
6.第6期第3四半期連結累計期間において、軌道上サービス事業セグメントの販売実績に著しい変動がありました。これは主に、ADRAS-JやELSA-Mの開発進捗による収益の計上によるものであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
第5期連結会計年度(自 2022年5月1日 至 2023年4月30日)
a.売上収益
当連結会計年度における売上収益は、ADRAS-JやELSA-Mの開発進捗により、1,792,991千円(前年同期比97.0%増)となりました。
b.売上原価、売上総利益
当連結会計年度における売上原価は、売上増加に伴う仕入高、人件費及び外注費の増加等により6,988,549千円(前年同期比154.8%増)となりました。前連結会計年度において売上原価全体に占める割合の大きかった受注損失引当金繰入額は減少したものの、プロジェクトの進捗に伴い発生するコストが増加したことにより、前年比で増加となりました。
その結果、売上総利益は5,195,557千円の損失(前年同期は1,832,535千円の損失)となりました。
c.販売費及び一般管理費、その他の収益及びその他の費用、営業利益
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、事業拡大に伴う人員拡充及びLEXI-Pミッションに係るサービサー衛星等の研究開発等により、人件費及び関連する諸経費が増加し、7,408,212千円(前年同期比55.6%増)となりました。
その他の収益については、ELSA-dのミッション保険に係る保険金収入2,611,114千円等により、2,938,141千円(前年同期比1,439.5%増)となりました。
その他の費用については、当連結会計年度に計上するものはありませんでした。
これらの結果、営業利益は、9,665,628千円の損失(前年同期は6,404,277千円の損失)となりました。
d.金融収益及び金融費用、法人所得税費用、親会社の所有者に帰属する当期利益
当連結会計年度における金融収益及び金融費用は、主に為替差損益です。
法人所得税費用については、還付額が納税額を上回った結果、49,734千円の還付(前年同期は79,327千円の還付)となりました。
これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は、9,264,266千円の損失(前年同期は5,484,122千円の損失)となりました。
第6期第3四半期連結累計期間(自 2023年5月1日 至 2024年1月31日)
a.売上収益
当第3四半期連結累計期間における売上収益は、ADRAS-JやELSA-Mの開発進捗により、1,994,122千円(前年同期比51.7%増)となりました。
b.売上原価、売上総利益
当第3四半期連結累計期間における売上原価は、売上増加に伴う人件費及び外注費の増加等の一方で、プロジェクトの進捗による受注損失引当金の戻入れにより2,508,745千円(前年同期比51.6%減)となりました。
その結果、売上総利益は514,623千円の損失(前年同期は3,872,626千円の損失)となりました。
c.販売費及び一般管理費、その他の収益及びその他の費用、営業利益
当第3四半期連結累計期間における販売費及び一般管理費は、研究開発費が増加したことに加え、事業拡大に伴う人員拡充等により、人件費及び関連する諸経費が増加したこと、新拠点に関連する減価償却費が増加したことにより、7,163,346千円(前年同期比50.4%増)となりました。
その他の収益については、政府補助金収入が増加した一方で、前年同期と異なり保険金収入が計上されなかったことにより、687,134千円(前年同期比74.5%減)となりました。
これらの結果、営業利益は、6,990,835千円の損失(前年同期は5,944,407千円の損失)となりました。
d.金融収益及び金融費用、法人所得税費用、親会社の所有者に帰属する四半期利益
当第3四半期連結累計期間における金融収益及び金融費用は、主に為替差損益及び借入金に係る支払利息です。
法人所得税費用については、1,012千円(前年同期も1,012千円)となりました。
これらの結果、親会社の所有者に帰属する四半期利益は、5,824,121千円の損失(前年同期は6,037,329千円の損失)となりました。
②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準審議会によって公表されたIFRSに基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような経営者の見積り及び予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、見積り及び予測を行っておりますが、前提条件やその後の環境等に変化がある場合には、実際の結果がこれら見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成に係る重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載の通りであります。
③経営戦略の現状と見通し
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、当社グループが構築してきた研究開発技術を最大限に活用し、デブリ除去サービスにおいては、対象となるデブリの性質に応じて、多様で安価なソリューションを提供するなど、軌道上サービス事業の多角的な展開・拡大を目指しています。
④経営者の問題意識と今後の方針について
経営者は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載されている様々な課題に対処し、安全かつ安定的で持続可能なサービスを継続的に提供していくことが必要であると認識しております。そのため、経営者は、現在の事業環境及び入手可能な外部環境の変化に関する情報に基づき、迅速かつ最善な経営戦略の立案、経営課題に対する施策の実施に努めていきます。
⑤キャッシュ・フローの分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループのキャッシュ・フローの分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要 2 キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
当社グループの資本管理及び流動性リスクとその管理方法については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 23.金融商品」に記載しています。また、当連結会計年度における資金の主な増減要因については、上記に記載しています。
⑥経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの将来の財政状態及び経営成績に重要な影響を与えるリスク要因については、「3 事業等のリスク」に記載しております。
⑦経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、フリー・キャッシュ・フローを創出するために、売上収益や売上総利益、税引前営業利益等の各種業績指標の管理に加え、プロジェクト収益を重要な経営指標と位置付けております。
(単位:千円)
指標 | 2020年4月期 | 2021年4月期 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 第3四半期 連結累計期間 (自 2023年5月1日 至 2024年1月31日) |
売上収益 | 84,436 | 651,343 | 910,368 | 1,792,991 | 1,994,122 |
政府補助金収入(注1) | - | - | - | - | 686,395 |
プロジェクト収益 | 84,436 | 651,343 | 910,368 | 1,792,991 | 2,680,517 |
(注) 1.プロジェクト収益に含まれる政府補助金収入には、特定のプロジェクトに関連して使用される政府補助金収入のみを含めております。具体的には、「第1 企業の概況 3 事業の内容 3.3 開発・運用状況」に記載するSBIR及びAPS-Rに関する政府補助金収入を含めており、詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記 11.その他の収益」に記載しています。
2.プロジェクト収益は、国際会計基準(IFRS)により規定された指標ではなく、投資家が当社グループの業績を評価する上で、当社が有用と考える財務指標であります。プロジェクト収益は以下により算出しております。
プロジェクト収益=売上収益+政府補助金収入
なお、この数値は、当社グループが提供するサービスの対価として取得する政府補助金収入を売上収益に加算して算出しており、分析手段として重要な制限があることから、国際会計基準に準拠して表示された他の指標の代替的指標として考慮されるべきではありません。当社グループにおけるこれらの数値は、同業他社の同指標あるいは類似の指標とは算定方法が異なるために、他社における指標とは比較可能でない場合があり、その結果、有用性が減少する可能性があります。