有価証券報告書-第81期(2024/04/01-2025/03/31)

【提出】
2025/06/23 15:00
【資料】
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【項目】
186項目
(6)人的資本に係る戦略・指標及び目標
① 人的資本方針
当社グループの持続的な企業価値向上の源泉は従業員一人ひとりにあるとの考えに基づき、2022-2024年度の中期経営計画期間から「①非連続の成長に貢献できる中核人財の輩出 / グループ全体としての最適配置」、「②事業戦略の実行に必要な人財の確保」、「③従業員の自律的キャリア形成支援 / 成長実感を得られる機会の提供」を柱とするポリシーのもと、各施策に取り組んでまいりました。
2025年度から始まる新中期経営計画においても、上記3つの柱を人的資本方針の根幹として継続したうえで、新たに策定したパーパスとミッションのもと、新長期ビジョンの実現に向けた人財育成戦略を展開していきます。挑戦を奨励する風土を育むとともに、全社で人財を共有・活用する仕組みを整備することで、部門の壁を越えた共創を促進し、人財育成と価値創造を実現する組織づくりに重点的に取り組んでまいります。
<人的資本方針>0102010_006.png
<人事施策の全体像>0102010_007.png
② 人的資本経営の推進体制
人的資本経営の取組みを戦略的に推進するために、「人的資本経営推進プロジェクト」を設置しました。本プロジェクトは、経営企画部、人事部、事業企画部、DX推進部のメンバーで構成され、人的資本方針に掲げる3つの柱の実現に向けた活動を行っております。
2024年度は2025-2027年度の中期経営計画の策定と並行して活動を進め、中期経営計画の達成に重要となる人的課題の特定と対応策の検討を進めました。具体的には、経営戦略の実現に必要な人財要件の定義や、組織能力の強化に向けた準備を行い、中長期的な人的資本の強化に向けた基盤づくりに取り組みました。プロジェクトでの検討内容は、4部署の管掌役員によるステアリングコミッティでの審議を経て、経営会議に報告される体制を整え、全社的な人的資本経営の推進に取り組んでおります。
<2024年度プロジェクト体制図>0102010_008.png
③ 人財育成プログラム
非連続的な成長に貢献する中核人財(「経営リーダー人財」「グローバル人財」「サステナビリティ人財」「DXリーダー人財」)を育成するプログラムを2024年度に策定しました。各人財カテゴリーにおいては2030年度KPIを設定し、これらの指標に基づいて計画的な人財育成と進捗管理を行ってまいります。
a)経営リーダー人財育成
この育成プログラム(新サクセッションプログラム)は、既存の「経営リーダー人財育成プログラム」と「サクセッションプログラム」を再構築する形で策定しました。従来の取り組みでは、人財要件や選抜基準が明確でないことに加え、育成施策が一律であり、個々の能力に応じた最適な支援が行き届いていない点が課題となっておりました。
新サクセッションプログラムでは、新たに定義した人財要件に基づいて選抜した候補者について、指名・報酬委員会より任命された役員で構成される「人財投資会議」、及び「人事委員会」にて育成方針の検討とモニタリングを行い、経営に直結した後継者候補を計画的に育成する体制としました。本プログラムを通じて、中長期的な企業価値向上を牽引する経営人財の継続的な輩出を実現してまいります。
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b)グローバル人財育成
当社グループは、2025-2027年度の中期経営計画において「消費者起点のバリューサイクルをグローカルに展開する」という長期ビジョンを掲げております。海外市場への展開拡大や持続可能な資源アクセスの強化を重点テーマとして取り組む中、多様な文化や価値観に適応し、海外事業を牽引するグローバル人財の育成は最優先の課題となっております。
この課題に対応するため、2013年からグローバル人財育成プログラムを運用するなど、グローバル人財育成の取り組みを進めてきました。しかしながら、これまでは社内に点在する育成施策(グローバル人財育成プログラム、海外長期・短期トレーニー、買付業務などを行う部署における海外での実務経験)が体系化されていなかったため、グローバル人財の把握・管理が不十分な状況でした。特に買付業務などを行う部署では、海外での実務経験を通じて実践的なスキルを培った人財が多数存在するものの、これらを含めた全社的なグローバル人財の活用も十分でなく、新規事業創出やリージョンを統括する人財、経理・財務等の専門分野人財の育成も不十分といった課題も生じておりました。
そこで2024年度に、点在する育成施策を整理・体系化し、グローバル人財を計画的に育成・管理・活用していくスキームを確立しました。具体的には、グローバル人財を海外での実務経験や習熟度に応じた3段階のグレードに整理し、より実態に即した明確な定義づけを行いました。
グローバル人財ビギナー海外での短期トレーニーを経験し、グローバル人財要件の基礎能力があると考えられる者
グローバル人財レベルⅠ海外での業務に必要な一定の経験を積み、グローバル人財要件の基礎能力を有する者
グローバル人財レベルⅡ海外実務に精通し、今すぐに海外で活躍できる人財及び海外で新しい事業を創出できるポテンシャルを持った人財

「グローバル人財レベルⅡ」の育成においては、レベルⅠの基礎能力を土台に実践的な海外業務経験を通じて高度な応用力と専門性を磨く機会を重視しております。このレベルⅡ人財には、複雑な状況判断や戦略的意思決定ができ、変化する環境に適応しながら海外事業の中核を担い、グローカル戦略に基づく新たな価値創造に貢献することを期待しております。なお、高度な専門性が求められるため、職種カテゴリーごとに具体的な要件を定義しております。
このグローバル人財レベルⅡの育成に関するKPIを設定し、計画的な人材育成と進捗管理を行っております。この新たな枠組みにより、グローバル人財の可視化と戦略的配置が可能となり、長期ビジョンの実現に向けた人的基盤の強化を図っております。
c)DX人財育成
変化の激しい外部環境に柔軟に対応し、企業として持続的に成長していくために、DXを推進できる人財の育成を人的資本戦略の重要な柱と位置づけております。特に、デジタル技術(D)の活用にとどまらず、事業・組織を変革する力(X)を発揮できる人財の育成に注力しており、DXを「手段」としてではなく「価値創造の変革」として捉えた人財戦略を推進しております。
2023年度には全従業員を対象にIT・DXのスキル・リテラシーの可視化調査を実施しました。この取り組みは、階層や部門によるスキルの偏りを正確に把握し、画一的な研修ではなく実態に即した育成施策を展開するための基盤となりました。この調査結果から得られた多くの気づきを施策に反映させる取り組みは、経済産業省が選定する「DX注目企業」において高く評価され、2年連続での選定につながっております。
2024年度より調査結果を踏まえて、事業戦略と連動した「DXリーダー」及び「デジタルアーキテクト」の育成を本格的に開始しました。「DXリーダー」はデジタルを利用した業務改革を企画し、他部署との連携調整を担う人財、「デジタルアーキテクト」は改革すべき課題を発見・提案し、DXリーダーの指示のもと実行を担う人財と定義しております。変革マインド醸成を主眼とした「越境リーダーシップ研修」など、実践的なプログラムを展開しております。
2025-2027年度の中期経営計画期間においては、育成したDXリーダーとデジタルアーキテクトによる現場主体の改革を推進し、2030年度には組織や企業の壁を越えた、事業戦略に基づく変革の実現を目指しております。これらの取り組みを効果的に進めるため、2024年度に設定した各人財カテゴリーのKPIに基づいて、計画的な人財育成と進捗管理を行ってまいります。
d)サステナビリティ人財育成
当社では、私たちのルーツである海を起点に、ステークホルダーや社会全体、そして地球と一体となって、「食」を通じて地球規模の社会課題を解決していく決意を込めて、2026年3月に社名変更を予定しております。
この新たな一歩に向け、2025年度にはサステナビリティ戦略部を新設し、事業活動を通じた経済価値、社会価値及び環境価値の創造を追求するサステナブル経営を体系的かつ効果的にグループ全体で推進する体制を整えました。
この体制のもと、持続可能な社会の実現と企業価値向上の両立を目指し、サステナビリティ人財の体系的な育成に取り組んでおります。2030年度のあるべき姿として、以下の4分野において、戦略策定・推進ができる人財を各事業ユニットに配置することを目標に掲げております。
・環境
・サプライチェーンマネジメント及び人権
・水産資源
・ステークホルダーコミュニケーション
この目標達成に向け、2025-2027年度の中期経営計画では、各分野における「社外で啓発活動を推進できるエキスパート人財」と「社内で啓発を主導できるエキスパート人財」の育成に関する定量的KPIを設定しました。更に、「ビギナー人財」として、4分野の基礎知識を持ち、社内外で啓発活動に参画できる人財の育成目標も設定しております。これらの人財は、学生向けのサステナビリティ講習などの社会貢献活動を通じて、当社の企業価値向上にも貢献していきます。
サステナビリティ人財の育成は、社名変更に込めた決意を実現し、新設したサステナビリティ戦略部を中心とした全社的なサステナブル経営の推進力となるものであり、今後も計画的かつ戦略的に取り組んでまいります。
④ 人財配置戦略
長期ビジョン及び中期経営計画の達成に向けて、従来の部門個別最適から脱却し、経営・事業・従業員の3つの視点のバランスを考慮した全体最適の人財配置を企業価値創造の基盤と位置づけ、この方針に基づく戦略的な取り組みを進めております。具体的には事業ポートフォリオ方針の実現に必要な人財の質・量を確保するため、人財ポートフォリオの作成に着手しております。現段階では、組織内の人財の能力・スキルの見える化を進めており、事業戦略と人財配置の整合性を高めるための基盤構築を行っております。
また、「消費者起点のバリューサイクル」を実現するためには、各セグメント・部門間の強固な連携が不可欠であるとの認識から、人財の流動化を促進する仕組みづくりも進めております。部門間の人財交流を通じて、組織の壁を越えた知識・経験の共有を促進し、事業環境の変化に柔軟に対応できる組織体制の構築を目指しております。
今後は、これらの取り組みを体系的に進め、事業戦略の実行力強化と従業員の成長機会の拡大を両立させ、持続的な企業価値向上の実現に取り組んでまいります。
⑤ 挑戦と共創を促す風土醸成の取り組み
当社では、創業145年のDNAを活かしながら、次の100年、更にその先の未来に向けて「社員が主役」のカルチャー改革を推進しております。2024年度には、地球規模の変化や世界的課題に対応するため、海を起点とした価値創造力で「食」を通じて人も地球も健康にするソリューションカンパニーへと生まれ変わるという新たなコーポレート・アイデンティティを策定しました。
このコーポレート・アイデンティティ変革を実現するためには、従業員一人ひとりが挑戦し、現状にとらわれず自由に社内外と共創する風土が不可欠です。そのため、部門の壁を越えた人財の流動性を高めるFA制度や社内公募制を整備し、新たな視点や発想が生まれる環境づくりに取り組んでおります。これらの制度により、従業員が多様な経験を積み、新たな価値創造につながる機会を提供しております。
また、従業員の挑戦を称え、さらなる成長を促進するため、イノベーションや業務改善、価値創造に貢献した取り組みを評価する表彰制度を設けております。この表彰制度では、単なる業績だけでなく、挑戦のプロセスや組織への波及効果も重視し、新たな価値創造に向けた積極的な行動を奨励しております。
カルチャー改革の中核となる取り組みとして、2024年度より「当社グループの目指す未来の共有と共感」と「改革を身近に感じられること」を重点に置いた組織横断のプロジェクトを展開しております。従業員と経営が一体となったこれらのプロジェクトでは、従業員が自ら手を挙げて参画する公募制を採用し、自己変革と自己成長が起こりやすくなるようなワークプレイス改革や、食を通じての多数のステークホルダーとの共創に取り組んでおります。この取り組みにより、多くの従業員が自発的に参画し、組織の壁を越えた協働が生まれております。
更に、2023年度から2024年度にかけて全ての事業所で「タウンホールミーティング」を開催し、社長と従業員との直接対話の場を設けました。そこで寄せられた様々なアイデアや提案を丁寧に検討し、実現に向けた取り組みを進めております。特に「他部署の業務を体験したい」という従業員の声に応え、「他部署体験」プログラムを実施しました。13の部署にて若手から管理職まで65名が参加しました。この取り組みは、部門間の相互理解を深め、組織の壁を越えた共創の基盤づくりに貢献しております。
このように、挑戦を応援する制度の整備と風土醸成を通じて、従業員一人ひとりのマインドセット変革と実践を推進し、自律的な組織づくりと企業価値創造の実現を目指しております。
⑥ 従業員エンゲージメント
当社グループは、従業員のエンゲージメント向上を、企業価値を高める重要な要素と位置づけております。2023年度からはサーベイの対象範囲をグループ会社へ拡大し、2024年度は10,232名が対象となりました。
当社では「挑戦と共創の文化構築」という長期ビジョンの実現に向けて、エンゲージメントサーベイの以下3項目を重要指標として選定し、2030年度に向けた目標を設定しております。これらの指標は、「挑戦と共創の文化」の定着度を測る重要な尺度であり、現状の課題を反映した項目として、その改善が価値創造の基盤強化につながると考えております。
・「会社の方針や事業戦略への納得感」
・「挑戦する風土」(失敗したこと以上に挑戦したことを称えられる組織文化)
・「発言・意見に対する承認」(周囲が自分の意見や発言を聞いてくれているか)
エンゲージメント向上に向けた具体的な取り組みとして、サーベイ結果に基づく組織別の課題解決を推進しております。職場風土に課題がある工場においては、通常は管理職層を対象とする360度サーベイの範囲を拡大し、現場社員まで含めた包括的な調査を特別に実施し、その結果に基づくマネジメント研修や小集団活動を展開するなど、きめ細かな対応を行っております。
これらの取り組みを皮切りに、今後は各指標の課題に応じた多様な施策を展開し、スコア向上を図ります。従業員が新たな挑戦に踏み出し、部門を越えた共創が活発に行われる組織文化を醸成していくことで、従業員の創造性と生産性を高め、持続的な企業価値創造につなげていきます。

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