有価証券報告書-第13期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)
(1)経営方針、経営戦略、経営計画、経営環境及び対処すべき課題
当社グループを取り巻く経営環境として、中長期的には世界の中間層人口の拡大、新興国を中心とした経済成長等により、一次エネルギー需要は持続的に増加すると見込まれています。石油の需要は、今後も堅調に推移すると見込まれていますが、他の化石燃料と比較してCO2の排出が少ない天然ガスと、環境負荷が小さい再生可能エネルギーの需要は長期的に大幅に増加すると見込まれています。
日本では、安定的なエネルギー供給と石油・天然ガスの自主開発比率の向上が課題となっており、日本政府による2030年度の自主開発比率目標40%以上に対して、2016年度の実績は30%未満の水準となっております。
また、2015年に採択されたパリ協定では世界共通の長期目標として、産業革命前からの平均気温上昇を2℃未満に抑え、さらに1.5℃に抑える努力をする目標が設定され、温室効果ガスの削減と低炭素社会の実現に向けた国際社会全体での積極的な取り組みが求められています。
こうした経営環境の認識を踏まえ、当社は、昨年5月に「ビジョン2040 -エネルギーの未来に応える-」を策定しました。「エネルギーの開発・生産・供給を、持続可能な形で実現することを通じて、より豊かな社会づくりに貢献する」という経営理念のもと、当社グループは日本をはじめとする世界のエネルギー需要に応えていくことで、社会にとってかけがえのないリーディングエネルギーカンパニーとなることを目指します。
その実現に向け、①石油・天然ガス上流事業の持続的成長を通じて、同分野でトップクラスを目指すとともに、②グローバルガスバリューチェーンを構築し、天然ガス供給拡大と柔軟なLNG供給体制を整備し、③再生可能エネルギーの取り組みを強化し、気候変動対応を見据えつつ、将来の成長分野での事業拡大を図ってまいります。そして、企業として果たすべき社会的責任や様々なステークホルダーの皆様からの期待を強く認識し、CSR経営を推進することで長期的に企業価値を向上させるとともに、活力に満ちた企業風土を醸成し、社員と会社が共に成長する企業となることを目指します。
同じく昨年5月には、「ビジョン2040」に併せて「中期経営計画 2018‐2022 -Growth & Value Creation-」を策定し、同ビジョンの達成に向けた2018年度から2022年度の具体的な取り組み及び目標を掲げております。
さらに、効率的な事業遂行体制を維持・強化すべく、個別プロジェクトごとの投資の見直しや操業費及び本社管理費等の間接経費の節減を引き続き進めており、原油換算1バレル当たりの生産コスト(ロイヤリティ除く)は2015年3月期10.9ドル、2016年3月期7.6ドル、2017年3月期5.9ドル、2018年3月期5.9ドル、2019年3月期5.7ドルと着実に低減しております。
上記の経営環境の認識及び中長期的な経営方針を踏まえ、当社グループは、ビジョン2040及び中期経営計画に掲げる事業目標の達成とこれを支える基盤整備に向け、以下のとおり継続的かつ確実な取り組みを進めております。
1.事業目標
①石油・天然ガス上流事業の持続的成長
当社グループは、コアビジネスである石油・天然ガス上流事業において、新規探鉱の推進、効率的な操業や油ガス田の回収率向上等による既存開発・生産プロジェクトの価値向上、戦略的な資産買収やM&Aの実行、面的な事業展開を可能とするコアエリアの充実と拡大、当社技術力の向上につながるオペレータープロジェクトの遂行を進めてまいります。
また、これらを通じて、(1)地域や事業ステージなどにおいてバランスの取れたポートフォリオの構築、(2)オペレーターとしてイクシス・アバディの安定的、効率的な開発・操業の実現、(3)既存プロジェクトに加え、新規探鉱の成功、資産買収などによる次の成長プロジェクトの創出、という成長に必要な3つの要素を獲得し、当社のポートフォリオを質・量ともに大きく成長させることで、持続的成長の実現を目指してまいります。
具体的には、長期的にネット生産量日量100万バレルを展望した埋蔵量の維持・拡大、純利益及び営業キャッシュフローの大幅な拡大と資本効率性の向上の実現により、2040年に向けて生産量・埋蔵量・収益力・技術力などにおいて国際大手石油会社トップ10へと成長することを目指します。
・オーストラリアでのイクシスLNGプロジェクトについては、昨年7月に生産井からのガス生産を開始し、その後昨年10月に沖合生産施設からのコンデンセート(フィールドコンデンセート)の出荷に続き、LNGの出荷を、昨年11月にLPGの出荷を、昨年12月に北部準州・ダーウィンの陸上液化プラント設備からのコンデンセート(プラントコンデンセート)の出荷をそれぞれ開始しております。また、当社は、昨年12月にトタール社がプロジェクト会社を通じて保有する参加権益の一部(4.0%)を取得し、当社のプロジェクト参加権益の比率が62.245%から66.245%へ増加すること等に合意しております。
・同じくオーストラリアの西豪州沖合WA-44-L鉱区プレリュードFLNGプロジェクトにおいては、昨年12月に生産井からガス生産を開始しております。また、本年6月にLNG出荷を開始しております。
・インドネシアでのアバディLNGプロジェクトについては、2015年9月にインドネシア政府当局に対して、年産750万トン規模の処理能力を有するフローティングLNGによる開発計画を提出しておりましたが、2016年4月に同政府当局より陸上LNGによる開発計画の再検討を求める内容の通知を受領いたしました。その後、同政府当局との本プロジェクトの経済性確保を含めた建設的な協議結果を踏まえ、昨年3月から10月にかけて、年産950万トン規模を想定する陸上LNGのPre-FEED作業を実施いたしました。今後は、改定開発計画提出後のFEED作業の開始に向け、政府当局との協議や検討を進めてまいります。
・アラブ首長国連邦でのアブダビ事業については、昨年2月にアブダビ沖合の下部ザクム油田の権益を取得するとともに、サター油田及びウムアダルク油田の各権益についても権益期限の延長の合意に至っています。このうち、下部ザクム油田については、昨年4月にアブダビ国営石油会社(ADNOC)から同油田のアセットリーダーに任命されています。本年3月には同国において初めて開催された探鉱鉱区公開ラウンドに参加し、オペレーターとして単独で陸上の探鉱鉱区Onshore Block 4を落札しました。
・本年3月に米国テキサス州の複数のシェールオイル生産・開発権益を取得することに米国GulfTex Energy社と合意し、その後、取得いたしました。本権益の取得は、当社にとって初めての米国でのシェールオイル生産開発事業参入となります。本権益の大部分は、シェールオイル・シェールガス開発の実績が豊富なイーグルフォードシェールの中でも生産性の良いカーンズ郡に位置しており、一部の権益を除き、当社がオペレーターとして操業を行っております。
・本年1月にノルウェー王国バレンツ海西部PL1027探鉱鉱区及びノルウェー海北部PL1016探鉱鉱区の各権益を取得しました。両鉱区権益の取得により、同国において当社が参画する探鉱鉱区数は4鉱区となり、当社の事業ポートフォリオの更なる拡充に資することが期待されます。
今後も新規埋蔵量獲得に向けた探鉱活動、優良プロジェクトへの参入機会の追求を行ってまいります。
②グローバルガスバリューチェーンの構築
当社グループは、国内天然ガス開発・供給事業については既存インフラの活用による安定供給と他社との連携による供給量の拡大、インドネシアをはじめとするアジアなどの成長市場においてはガス需要の開拓を進め、輸送能力・需給調整能力を含むグローバルなトレーディング機能の維持・強化を通じて、天然ガス事業の持続的な価値向上に努めてまいります。そして、2040年に向けて日本のみならずアジア・オセアニアを中心とした地域で天然ガス開発・供給の主要プレーヤーとなることを目指します。
・昨年10月、当社が操業する直江津LNG基地において、イクシスLNGプロジェクトからのLNG受入を開始しました。本基地で受け入れたLNGは気化され、当社が生産操業を行う南長岡ガス田にて生産した天然ガスと合わせて、関東甲信越及び北陸地域に広がる総延長約1,500キロメートルの天然ガスパイプラインネットワークを通じて需要家に供給されます。これにより、当社が海外で開発・生産する天然ガスソースと国内天然ガス事業のインフラが有機的に結びつき、「グローバルガスバリューチェーンの構築」に向け大きく前進するとともに、我が国へのエネルギー安定供給にも大きく貢献するものと考えています。
・昨年11月、ADNOCの子会社とUAEにおけるLNGバンカリング事業のパートナーシップに関する覚書を締結しました。本覚書に基づき、UAEにおける船舶へのLNG燃料供給事業に取り組むと共に、東南アジアを含むUAE以外の地域におけるバンカリングネットワーク拡大の可能性を追求していきます。LNGの船舶燃料としての利用は、国際海事機関(IMO)が取組む「2020 global sulphur limit」への対応および温室効果ガス削減の有効な手段の一つとして期待されています。中東において影響力を持つADNOCグループと共にLNGバンカリングハブ拠点を設立することにより、LNGバンカリング分野における主要プレーヤーとなることを目指します。
引き続き、グローバルガスバリューチェーンの構築に向け、取り組んでまいります。
③再生可能エネルギーの取り組みの強化
当社グループは、地熱発電事業及び風力発電事業等の再生可能エネルギー事業への参入の拡大により、長期的に当社グループのポートフォリオの1割を再生可能エネルギー事業とすることを目指します。併せて温室効果ガスの削減に関連する研究開発も継続して進めてまいります。これらを通じて気候変動へ適切に対応し、長期的な再生可能エネルギー需要の増加に応えてまいります。
・秋田県小安地域において地熱発電の事業化に向けた調査を行っており、昨年掘削した2つの試験井にて噴気試験を実施しました。また昨年12月には環境アセスメントを開始いたしました。
・インドネシア共和国北スマトラ州サルーラ地区で推進しておりますサルーラ地熱IPP事業において、一昨年の第1号機・第2号機に続き、昨年には第3号機がそれぞれ商業運転を開始し、総出力約330MWにて順調に発電を継続しています。
・再生可能エネルギー事業を円滑かつ確実に推進することを企図し、更に体制を強化して積極的な事業展開を図るべく組織改編を行い、昨年6月に「再生可能エネルギー・電力事業本部」を新設しました。
これら事業目標を達成するための基盤整備については、以下の取り組みを継続してまいります。
2.基盤整備
①CSR経営の強化
当社グループは、当社グループの事業及びステークホルダー双方にとって重要度の高い6つの重点テーマとして、ガバナンス・コンプライアンス・HSE・地域社会・気候変動対応・従業員を特定し、CSR経営の実践を通じた事業と社会の持続的発展に努めてまいります。
・近年高まる国際社会の関心も踏まえ、本年3月に当社グループの税務方針及びグローバル贈収賄・汚職防止方針を策定し、ガバナンス及びコンプライアンスの更なる強化に取り組んでおります。当社は持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、これらの方針に基づき、法令遵守、企業倫理の徹底、経営の透明性確保に努めてまいります。
②気候変動対応の推進
当社グループは、気候変動対応の基本方針に基づき、パリ協定の長期目標を踏まえた低炭素社会へ積極的に対応すべく、ガバナンス体制を強化するとともに、業務執行体制を整備し、事業戦略、リスク及び機会の評価、排出量管理の各分野で取り組みを進めてまいります。
・当社グループは、2015年12月に発表したポジションペーパー「気候変動対応の基本方針」(2018年7月改定)に基づき、パリ協定の長期目標を踏まえた低炭素社会へ積極的に対応してまいります。
・また、2018年5月には「ビジョン2040」及び「中期経営計画」において、TCFD提言(2017年6月の金融安定理事会(FSB)作業部会(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)による提言)に沿った取り組み及び情報開示を進めていくことを表明しています。石油・天然ガス開発企業としての責任ある役割を踏まえ、ガバナンス体制を強化し、事業戦略、リスク及び機会の評価、ならびに排出量管理の各分野で取り組みを持続的に推進していきます。
・具体的には、各国の政策移行リスクに対してインターナルカーボンプライス($35/tCO2-e)を適用し、プロジェクトの経済性評価に反映しています。
③HSE
当社グループは、環境安全方針の宣言のもと、グローバル水準のHSEマネジメントシステムを経営層から従業員までが真摯に実行し、経営の最優先課題である、労働災害の防止、職場における安全と健康の確保、環境の保全に努めております。
・HSEマネジメントシステムについては継続的な整備を実施しております。また、HSEの実行度合いを担保するために、HSEアシュアランス及びガバナンスの強化、HSE技術サポートの強化を、オペレータープロジェクトやノンオペレータープロジェクトに対して実施しております。
・重大災害防止のために、プロセスセーフティ管理の強化を継続しており、セーフティケースの作成、設備の健全性のレビュー、そして新たにバリアマネジメントの強化を実施しています。万が一、事故が発生した場合に備えて、訓練を通じて、緊急時・危機対応能力の強化にも努めております。
・本社経営層による現場訪問の頻度を増やすと同時に、操業現場の責任者による、国内外の現場訪問の機会を創出しました。この活動により、本社経営層、リーダー層そして現場従業員の間で、HSEに関して率直な意見交換、議論を継続して設けています。また、オペレータープロジェクトのHSEリスク管理状況を把握すべく、経営層による定期的なレビューを実施しています。さらに、環境への負荷を低減すべく、環境リスクの見直しと全社的な管理の方法についても検討を実施しました。
現場がHSE活動の当事者、現場のHSE管理力が当社の競争力と認識し、現場におけるHSE活動を強力に推進しております。今後もこれらの活動を通じて、組織と個人がHSEに対する前向きな意識と姿勢を高めることで、当社のHSE文化を醸成してまいります。
④人材・組織
当社グループは、ダイバーシティやワークライフバランスに配慮しつつ、すべての役員・社員が一体となって働くための共通の基盤である「INPEXバリュー」の体現を通じ、多様性に富んだ人材が自主性を発揮し使命感を持って活躍できる会社づくりを推進してまいります。また、「INPEXグループ健康宣言」の下、社員一人ひとりの心身の健康が会社の基盤であると認識し、すべての社員がいきいきと働き、持てる力を最大限発揮できるよう健康増進や職場づくりに取り組んでまいります。
・昨年、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をグループ全体で更に推進するため、ダイバーシティ&インクルージョン トップメッセージを発信し、当社グループ内外に更なるD&I推進の決意を示しました。
・女性活躍推進については、女性活躍推進法の一般事業主行動計画に則った施策を着実に進めたこと等が評価され、平成30年度「なでしこ銘柄」に選定されました。また、社員の仕事と子育ての両立を支援している「子育てサポート企業」として、3度目の次世代認定マーク(愛称:くるみん)を取得しました。
・昨年に「INPEXグループ健康宣言」を制定し、「健康経営推進委員会」を設置するなど健康経営推進体制を整備しており、「健康経営優良法人2019(大規模法人部門)」(ホワイト500)にも認定されています。
・多様性を尊重し、社員が一層いきいきと働くことができる職場環境を作り出すため、2019年よりフレックスタイム制勤務制度を導入しており、時間外労働時間の削減や有給休暇取得率の向上など、働き方改革に関連した取り組みを積極的に実施しています。
・今後も一層柔軟な働き方を追求することを通じて、外国籍人材、女性、障がいを有する人材など、多様な経験、価値観を有する人材の確保と活用を図るとともに、引き続き効率的な組織体制の整備を進めてまいります。
・併せて「ビジョン2040」に掲げた成長戦略の実現に必要な人材の育成施策の拡充に努めてまいります。
・また、組織面においても、本年1月には、更なるエネルギー開発事業運営機能の拡充を図るため、当社グループの“知の集積・発信のプラットフォーム”として、インペックスソリューションズ株式会社を設立しました。当社グループは、ビジョン2040及び中期経営計画に掲げる技術力強化等の成長目標を達成すべく、同社を通じて情報分析力及び技術的知見の強化を進めてまいります。
・さらに、2018年5月に策定した「中期経営計画 2018-2022」をさらに強力に推進することを目的として、下記の組織改編を本年6月に実施しました。
I. 上流事業開発本部の設置
石油・天然ガス上流事業における探鉱及びM&Aの体制を強化するため、現在の「新規プロジェクト開発本部」を改組し、「上流事業開発本部」を設置。同本部の下に、現在の「プロジェクト開発ユニット」「新規探鉱ユニット」に加えて、当社全体の探鉱事業に係る戦略策定や資金配分等を一元的に行う「探鉱戦略ユニット」を設置。
II. 戦略プロジェクト室の設置
プロジェクトの管理・推進体制を強化するため、経営戦略上重要なプロジェクトの推進に係る助言及び提言を行う「戦略プロジェクト室」を、社長に直属する組織として設置。
III. 海外地域事業本部の再編
海外における石油・天然ガス上流事業の効率的な推進体制を構築するため、海外地域事業本部を「アジア事業本部」「オセアニア事業本部」「米州事業本部」「ユーラシア・中東・アフリカ事業本部」「アブダビ事業本部」に再編。また、各海外地域事業本部の下に「業務企画ユニット」「技術ユニット」を設置。加えて、「アジア事業本部」に「マセラユニット」、「オセアニア事業本部」に「イクシスユニット」を設置。
IV. 技術本部の再編
競争力強化を目的としたデジタル化を集中的に推進するため、技術本部に「デジタルトランスフォーメーションユニット」を設置。また、プロジェクトへの技術的サポート機能を強化するため、「オペレータープロジェクトサポートユニット」「テクニカルサポートユニット」「ウェルエンジニアリングユニット」に再編。
V. リーガルユニットの独立
国内外の事業への法務サポート機能をさらに強化するため、「リーガルユニット」を社長に直属する独立したユニットとする。
⑤技術
当社グループは、ビジョン2040及び中期経営計画に則り、上流事業での豊富な経験や実績により育んだコア技術をさらに得意技術として確実に強化することで、国際競争力を伸ばすとともに当社グループのプロジェクト価値を今以上に向上させてまいります。さらに未来の多様化するエネルギー社会を見据えて新たな技術分野の開発に挑戦することで、次世代のエネルギービジネスを推進してまいります。
・2018年5月には、新たに「技術ロードマップ2018」を発行し、今後5年間で得意技術としていく石油・天然ガスの上流コア技術に加え、例えば地熱・風力発電等の再生可能エネルギーや低炭素社会に向けた技術的取組み、そして今日あらゆる分野に浸透するデジタル技術を応用して行くDigital Transformation等の、当社が新たに挑戦すべき技術分野のテーマを選択し、それらへの取組方針とスケジュールを取りまとめました。現在、同技術ロードマップに則り、既存技術力の強化と次世代エネルギービジネスへの取り組みを鋭意進めているところです。
・例えば当社が、国内新潟地区のガス田やアラブ首長国連邦の油田生産開発事業、カナダシェールガス事業において培って来た低浸透性貯留岩開発技術は、米国テキサス州のシェールオイル生産開発事業の取得に大きく貢献しました。今後シェールオイル生産開発事業の運営・推進を通じて更に同技術を得意技術に深化させていくことになります。
なお、本項の記載中、将来に関する事項については、本書提出日現在での当社グループの判断であり、今後の社会経済情勢等の諸状況により変更されることがあります。
(2)株式会社の支配に関する基本方針
①基本方針の内容
当社グループは、バランスの取れた資産ポートフォリオ、国際的な有力中堅企業としてのプレゼンス及び高い水準のオペレーターとしての技術力等を最大限に活かし、既発見の大規模油ガス田の早期商業生産を達成するとともに、今後とも優良な油ガス田を積極的に獲得するための投資強化を通じ、国際競争力のある我が国の中核的企業として、我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現及び企業価値のさらなる向上を目指して積極的な事業展開に努めてまいります。
②財産の有効な活用及び不適切な支配の防止のための取り組み
当社グループは、健全な財務体質のさらなる強化を図りつつ、石油・天然ガス資源の安定的かつ効率的な供給を可能とするために事業基盤の拡大を目指し、探鉱・開発活動及び供給インフラの整備・拡充等に積極的な投資を行います。当社は、これらの活動を通じた石油・天然ガスの保有埋蔵量及び生産量の維持・拡大による持続的な企業価値の向上と配当による株主の皆様への直接的な利益還元との調和を、中長期的な視点を踏まえつつ図ってまいります。
また、当社は、上記①の基本方針に基づき、投機的な買収や外資による経営支配等により、中核的企業として我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現に果たすべき役割に背反する形での経営が行われること又は否定的な影響が及ぶことがないよう、経済産業大臣に対し甲種類株式を発行しております。
その内容としては、ⅰ)取締役の選解任、ⅱ)重要な資産の全部又は一部の処分等、ⅲ)当社の目的及び当社普通株式以外の株式への議決権(甲種類株式に既に付与された種類株主総会における議決権を除く。)の付与に係る定款変更、ⅳ)統合、ⅴ)資本金の額の減少、ⅵ)解散、に際し、当社の株主総会又は取締役会の決議に加え、甲種類株式の株主による種類株主総会(以下、「甲種類株主総会」という)の決議が必要とされております。但し、ⅰ)取締役の選解任及びⅳ)統合については、定款に定める一定の要件を充たす場合に限り、甲種類株主総会の決議が必要とされております。甲種類株主総会における議決権の行使に関しては、甲種類株主が平成20年経済産業省告示第220号に定める甲種類株式の議決権行使の基準に則り、議決権を行使できるものとしております。
当該基準では、上記ⅰ)及びⅳ)に係る決議については、「中核的企業として我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現に果たすべき役割に背反する形での経営が行われていく蓋然性が高いと判断される場合」、上記ⅲ)の当社普通株式以外の株式への議決権(甲種類株式に既に付与された種類株主総会における議決権を除く。)の付与に係る定款変更の決議については、「甲種類株式の議決権行使に影響を与える可能性のある場合」、上記ⅱ)、ⅲ)当社の目的に係る定款変更、ⅴ)及びⅵ)に係る決議については、「中核的企業として我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現に果たすべき役割に否定的な影響が及ぶ蓋然性が高いと判断される場合」のみ否決するものとされております。
さらに、当社の子会社定款においても子会社が重要な資産処分等を行う際に、上記ⅱ)の重要な資産の全部又は一部の処分等に該当する場合には、当該子会社の株主総会決議を要する旨を定めており、この場合も当社取締役会の決議に加え、甲種類株主総会の決議を必要としています。なお、当社の取締役会は、甲種類株主による甲種類株式の議決権行使を通じた拒否権の行使に関して権能を有しておらず、したがって甲種類株式は当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。
③上記②の取り組みについての取締役会の判断
上記②の取り組みは、我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現及び持続的な企業価値の向上を目指すものであり、上記①の基本方針に沿うものであります。
また、上記②の甲種類株式は、拒否権の対象が限定され、その議決権行使も平成20年経済産業省告示第220号に定める経済産業大臣による甲種類株式の議決権行使の基準に則り行われることから、経営の効率性・柔軟性を不当に阻害しないよう透明性を高くし、その影響が必要最小限にとどまるよう設計されておりますので、上記 ①の基本方針に沿うものであり、株主の皆様の共同の利益を損なうものではないと考えております。
注)上記の「平成20年経済産業省告示第220号」は、「令和元年経済産業省告示第37号」として改めて告示されております。
当社グループを取り巻く経営環境として、中長期的には世界の中間層人口の拡大、新興国を中心とした経済成長等により、一次エネルギー需要は持続的に増加すると見込まれています。石油の需要は、今後も堅調に推移すると見込まれていますが、他の化石燃料と比較してCO2の排出が少ない天然ガスと、環境負荷が小さい再生可能エネルギーの需要は長期的に大幅に増加すると見込まれています。
日本では、安定的なエネルギー供給と石油・天然ガスの自主開発比率の向上が課題となっており、日本政府による2030年度の自主開発比率目標40%以上に対して、2016年度の実績は30%未満の水準となっております。
また、2015年に採択されたパリ協定では世界共通の長期目標として、産業革命前からの平均気温上昇を2℃未満に抑え、さらに1.5℃に抑える努力をする目標が設定され、温室効果ガスの削減と低炭素社会の実現に向けた国際社会全体での積極的な取り組みが求められています。
こうした経営環境の認識を踏まえ、当社は、昨年5月に「ビジョン2040 -エネルギーの未来に応える-」を策定しました。「エネルギーの開発・生産・供給を、持続可能な形で実現することを通じて、より豊かな社会づくりに貢献する」という経営理念のもと、当社グループは日本をはじめとする世界のエネルギー需要に応えていくことで、社会にとってかけがえのないリーディングエネルギーカンパニーとなることを目指します。
その実現に向け、①石油・天然ガス上流事業の持続的成長を通じて、同分野でトップクラスを目指すとともに、②グローバルガスバリューチェーンを構築し、天然ガス供給拡大と柔軟なLNG供給体制を整備し、③再生可能エネルギーの取り組みを強化し、気候変動対応を見据えつつ、将来の成長分野での事業拡大を図ってまいります。そして、企業として果たすべき社会的責任や様々なステークホルダーの皆様からの期待を強く認識し、CSR経営を推進することで長期的に企業価値を向上させるとともに、活力に満ちた企業風土を醸成し、社員と会社が共に成長する企業となることを目指します。
同じく昨年5月には、「ビジョン2040」に併せて「中期経営計画 2018‐2022 -Growth & Value Creation-」を策定し、同ビジョンの達成に向けた2018年度から2022年度の具体的な取り組み及び目標を掲げております。
さらに、効率的な事業遂行体制を維持・強化すべく、個別プロジェクトごとの投資の見直しや操業費及び本社管理費等の間接経費の節減を引き続き進めており、原油換算1バレル当たりの生産コスト(ロイヤリティ除く)は2015年3月期10.9ドル、2016年3月期7.6ドル、2017年3月期5.9ドル、2018年3月期5.9ドル、2019年3月期5.7ドルと着実に低減しております。
上記の経営環境の認識及び中長期的な経営方針を踏まえ、当社グループは、ビジョン2040及び中期経営計画に掲げる事業目標の達成とこれを支える基盤整備に向け、以下のとおり継続的かつ確実な取り組みを進めております。
1.事業目標
①石油・天然ガス上流事業の持続的成長
当社グループは、コアビジネスである石油・天然ガス上流事業において、新規探鉱の推進、効率的な操業や油ガス田の回収率向上等による既存開発・生産プロジェクトの価値向上、戦略的な資産買収やM&Aの実行、面的な事業展開を可能とするコアエリアの充実と拡大、当社技術力の向上につながるオペレータープロジェクトの遂行を進めてまいります。
また、これらを通じて、(1)地域や事業ステージなどにおいてバランスの取れたポートフォリオの構築、(2)オペレーターとしてイクシス・アバディの安定的、効率的な開発・操業の実現、(3)既存プロジェクトに加え、新規探鉱の成功、資産買収などによる次の成長プロジェクトの創出、という成長に必要な3つの要素を獲得し、当社のポートフォリオを質・量ともに大きく成長させることで、持続的成長の実現を目指してまいります。
具体的には、長期的にネット生産量日量100万バレルを展望した埋蔵量の維持・拡大、純利益及び営業キャッシュフローの大幅な拡大と資本効率性の向上の実現により、2040年に向けて生産量・埋蔵量・収益力・技術力などにおいて国際大手石油会社トップ10へと成長することを目指します。
・オーストラリアでのイクシスLNGプロジェクトについては、昨年7月に生産井からのガス生産を開始し、その後昨年10月に沖合生産施設からのコンデンセート(フィールドコンデンセート)の出荷に続き、LNGの出荷を、昨年11月にLPGの出荷を、昨年12月に北部準州・ダーウィンの陸上液化プラント設備からのコンデンセート(プラントコンデンセート)の出荷をそれぞれ開始しております。また、当社は、昨年12月にトタール社がプロジェクト会社を通じて保有する参加権益の一部(4.0%)を取得し、当社のプロジェクト参加権益の比率が62.245%から66.245%へ増加すること等に合意しております。
・同じくオーストラリアの西豪州沖合WA-44-L鉱区プレリュードFLNGプロジェクトにおいては、昨年12月に生産井からガス生産を開始しております。また、本年6月にLNG出荷を開始しております。
・インドネシアでのアバディLNGプロジェクトについては、2015年9月にインドネシア政府当局に対して、年産750万トン規模の処理能力を有するフローティングLNGによる開発計画を提出しておりましたが、2016年4月に同政府当局より陸上LNGによる開発計画の再検討を求める内容の通知を受領いたしました。その後、同政府当局との本プロジェクトの経済性確保を含めた建設的な協議結果を踏まえ、昨年3月から10月にかけて、年産950万トン規模を想定する陸上LNGのPre-FEED作業を実施いたしました。今後は、改定開発計画提出後のFEED作業の開始に向け、政府当局との協議や検討を進めてまいります。
・アラブ首長国連邦でのアブダビ事業については、昨年2月にアブダビ沖合の下部ザクム油田の権益を取得するとともに、サター油田及びウムアダルク油田の各権益についても権益期限の延長の合意に至っています。このうち、下部ザクム油田については、昨年4月にアブダビ国営石油会社(ADNOC)から同油田のアセットリーダーに任命されています。本年3月には同国において初めて開催された探鉱鉱区公開ラウンドに参加し、オペレーターとして単独で陸上の探鉱鉱区Onshore Block 4を落札しました。
・本年3月に米国テキサス州の複数のシェールオイル生産・開発権益を取得することに米国GulfTex Energy社と合意し、その後、取得いたしました。本権益の取得は、当社にとって初めての米国でのシェールオイル生産開発事業参入となります。本権益の大部分は、シェールオイル・シェールガス開発の実績が豊富なイーグルフォードシェールの中でも生産性の良いカーンズ郡に位置しており、一部の権益を除き、当社がオペレーターとして操業を行っております。
・本年1月にノルウェー王国バレンツ海西部PL1027探鉱鉱区及びノルウェー海北部PL1016探鉱鉱区の各権益を取得しました。両鉱区権益の取得により、同国において当社が参画する探鉱鉱区数は4鉱区となり、当社の事業ポートフォリオの更なる拡充に資することが期待されます。
今後も新規埋蔵量獲得に向けた探鉱活動、優良プロジェクトへの参入機会の追求を行ってまいります。
②グローバルガスバリューチェーンの構築
当社グループは、国内天然ガス開発・供給事業については既存インフラの活用による安定供給と他社との連携による供給量の拡大、インドネシアをはじめとするアジアなどの成長市場においてはガス需要の開拓を進め、輸送能力・需給調整能力を含むグローバルなトレーディング機能の維持・強化を通じて、天然ガス事業の持続的な価値向上に努めてまいります。そして、2040年に向けて日本のみならずアジア・オセアニアを中心とした地域で天然ガス開発・供給の主要プレーヤーとなることを目指します。
・昨年10月、当社が操業する直江津LNG基地において、イクシスLNGプロジェクトからのLNG受入を開始しました。本基地で受け入れたLNGは気化され、当社が生産操業を行う南長岡ガス田にて生産した天然ガスと合わせて、関東甲信越及び北陸地域に広がる総延長約1,500キロメートルの天然ガスパイプラインネットワークを通じて需要家に供給されます。これにより、当社が海外で開発・生産する天然ガスソースと国内天然ガス事業のインフラが有機的に結びつき、「グローバルガスバリューチェーンの構築」に向け大きく前進するとともに、我が国へのエネルギー安定供給にも大きく貢献するものと考えています。
・昨年11月、ADNOCの子会社とUAEにおけるLNGバンカリング事業のパートナーシップに関する覚書を締結しました。本覚書に基づき、UAEにおける船舶へのLNG燃料供給事業に取り組むと共に、東南アジアを含むUAE以外の地域におけるバンカリングネットワーク拡大の可能性を追求していきます。LNGの船舶燃料としての利用は、国際海事機関(IMO)が取組む「2020 global sulphur limit」への対応および温室効果ガス削減の有効な手段の一つとして期待されています。中東において影響力を持つADNOCグループと共にLNGバンカリングハブ拠点を設立することにより、LNGバンカリング分野における主要プレーヤーとなることを目指します。
引き続き、グローバルガスバリューチェーンの構築に向け、取り組んでまいります。
③再生可能エネルギーの取り組みの強化
当社グループは、地熱発電事業及び風力発電事業等の再生可能エネルギー事業への参入の拡大により、長期的に当社グループのポートフォリオの1割を再生可能エネルギー事業とすることを目指します。併せて温室効果ガスの削減に関連する研究開発も継続して進めてまいります。これらを通じて気候変動へ適切に対応し、長期的な再生可能エネルギー需要の増加に応えてまいります。
・秋田県小安地域において地熱発電の事業化に向けた調査を行っており、昨年掘削した2つの試験井にて噴気試験を実施しました。また昨年12月には環境アセスメントを開始いたしました。
・インドネシア共和国北スマトラ州サルーラ地区で推進しておりますサルーラ地熱IPP事業において、一昨年の第1号機・第2号機に続き、昨年には第3号機がそれぞれ商業運転を開始し、総出力約330MWにて順調に発電を継続しています。
・再生可能エネルギー事業を円滑かつ確実に推進することを企図し、更に体制を強化して積極的な事業展開を図るべく組織改編を行い、昨年6月に「再生可能エネルギー・電力事業本部」を新設しました。
これら事業目標を達成するための基盤整備については、以下の取り組みを継続してまいります。
2.基盤整備
①CSR経営の強化
当社グループは、当社グループの事業及びステークホルダー双方にとって重要度の高い6つの重点テーマとして、ガバナンス・コンプライアンス・HSE・地域社会・気候変動対応・従業員を特定し、CSR経営の実践を通じた事業と社会の持続的発展に努めてまいります。
・近年高まる国際社会の関心も踏まえ、本年3月に当社グループの税務方針及びグローバル贈収賄・汚職防止方針を策定し、ガバナンス及びコンプライアンスの更なる強化に取り組んでおります。当社は持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、これらの方針に基づき、法令遵守、企業倫理の徹底、経営の透明性確保に努めてまいります。
②気候変動対応の推進
当社グループは、気候変動対応の基本方針に基づき、パリ協定の長期目標を踏まえた低炭素社会へ積極的に対応すべく、ガバナンス体制を強化するとともに、業務執行体制を整備し、事業戦略、リスク及び機会の評価、排出量管理の各分野で取り組みを進めてまいります。
・当社グループは、2015年12月に発表したポジションペーパー「気候変動対応の基本方針」(2018年7月改定)に基づき、パリ協定の長期目標を踏まえた低炭素社会へ積極的に対応してまいります。
・また、2018年5月には「ビジョン2040」及び「中期経営計画」において、TCFD提言(2017年6月の金融安定理事会(FSB)作業部会(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)による提言)に沿った取り組み及び情報開示を進めていくことを表明しています。石油・天然ガス開発企業としての責任ある役割を踏まえ、ガバナンス体制を強化し、事業戦略、リスク及び機会の評価、ならびに排出量管理の各分野で取り組みを持続的に推進していきます。
・具体的には、各国の政策移行リスクに対してインターナルカーボンプライス($35/tCO2-e)を適用し、プロジェクトの経済性評価に反映しています。
③HSE
当社グループは、環境安全方針の宣言のもと、グローバル水準のHSEマネジメントシステムを経営層から従業員までが真摯に実行し、経営の最優先課題である、労働災害の防止、職場における安全と健康の確保、環境の保全に努めております。
・HSEマネジメントシステムについては継続的な整備を実施しております。また、HSEの実行度合いを担保するために、HSEアシュアランス及びガバナンスの強化、HSE技術サポートの強化を、オペレータープロジェクトやノンオペレータープロジェクトに対して実施しております。
・重大災害防止のために、プロセスセーフティ管理の強化を継続しており、セーフティケースの作成、設備の健全性のレビュー、そして新たにバリアマネジメントの強化を実施しています。万が一、事故が発生した場合に備えて、訓練を通じて、緊急時・危機対応能力の強化にも努めております。
・本社経営層による現場訪問の頻度を増やすと同時に、操業現場の責任者による、国内外の現場訪問の機会を創出しました。この活動により、本社経営層、リーダー層そして現場従業員の間で、HSEに関して率直な意見交換、議論を継続して設けています。また、オペレータープロジェクトのHSEリスク管理状況を把握すべく、経営層による定期的なレビューを実施しています。さらに、環境への負荷を低減すべく、環境リスクの見直しと全社的な管理の方法についても検討を実施しました。
現場がHSE活動の当事者、現場のHSE管理力が当社の競争力と認識し、現場におけるHSE活動を強力に推進しております。今後もこれらの活動を通じて、組織と個人がHSEに対する前向きな意識と姿勢を高めることで、当社のHSE文化を醸成してまいります。
④人材・組織
当社グループは、ダイバーシティやワークライフバランスに配慮しつつ、すべての役員・社員が一体となって働くための共通の基盤である「INPEXバリュー」の体現を通じ、多様性に富んだ人材が自主性を発揮し使命感を持って活躍できる会社づくりを推進してまいります。また、「INPEXグループ健康宣言」の下、社員一人ひとりの心身の健康が会社の基盤であると認識し、すべての社員がいきいきと働き、持てる力を最大限発揮できるよう健康増進や職場づくりに取り組んでまいります。
・昨年、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をグループ全体で更に推進するため、ダイバーシティ&インクルージョン トップメッセージを発信し、当社グループ内外に更なるD&I推進の決意を示しました。
・女性活躍推進については、女性活躍推進法の一般事業主行動計画に則った施策を着実に進めたこと等が評価され、平成30年度「なでしこ銘柄」に選定されました。また、社員の仕事と子育ての両立を支援している「子育てサポート企業」として、3度目の次世代認定マーク(愛称:くるみん)を取得しました。
・昨年に「INPEXグループ健康宣言」を制定し、「健康経営推進委員会」を設置するなど健康経営推進体制を整備しており、「健康経営優良法人2019(大規模法人部門)」(ホワイト500)にも認定されています。
・多様性を尊重し、社員が一層いきいきと働くことができる職場環境を作り出すため、2019年よりフレックスタイム制勤務制度を導入しており、時間外労働時間の削減や有給休暇取得率の向上など、働き方改革に関連した取り組みを積極的に実施しています。
・今後も一層柔軟な働き方を追求することを通じて、外国籍人材、女性、障がいを有する人材など、多様な経験、価値観を有する人材の確保と活用を図るとともに、引き続き効率的な組織体制の整備を進めてまいります。
・併せて「ビジョン2040」に掲げた成長戦略の実現に必要な人材の育成施策の拡充に努めてまいります。
・また、組織面においても、本年1月には、更なるエネルギー開発事業運営機能の拡充を図るため、当社グループの“知の集積・発信のプラットフォーム”として、インペックスソリューションズ株式会社を設立しました。当社グループは、ビジョン2040及び中期経営計画に掲げる技術力強化等の成長目標を達成すべく、同社を通じて情報分析力及び技術的知見の強化を進めてまいります。
・さらに、2018年5月に策定した「中期経営計画 2018-2022」をさらに強力に推進することを目的として、下記の組織改編を本年6月に実施しました。
I. 上流事業開発本部の設置
石油・天然ガス上流事業における探鉱及びM&Aの体制を強化するため、現在の「新規プロジェクト開発本部」を改組し、「上流事業開発本部」を設置。同本部の下に、現在の「プロジェクト開発ユニット」「新規探鉱ユニット」に加えて、当社全体の探鉱事業に係る戦略策定や資金配分等を一元的に行う「探鉱戦略ユニット」を設置。
II. 戦略プロジェクト室の設置
プロジェクトの管理・推進体制を強化するため、経営戦略上重要なプロジェクトの推進に係る助言及び提言を行う「戦略プロジェクト室」を、社長に直属する組織として設置。
III. 海外地域事業本部の再編
海外における石油・天然ガス上流事業の効率的な推進体制を構築するため、海外地域事業本部を「アジア事業本部」「オセアニア事業本部」「米州事業本部」「ユーラシア・中東・アフリカ事業本部」「アブダビ事業本部」に再編。また、各海外地域事業本部の下に「業務企画ユニット」「技術ユニット」を設置。加えて、「アジア事業本部」に「マセラユニット」、「オセアニア事業本部」に「イクシスユニット」を設置。
IV. 技術本部の再編
競争力強化を目的としたデジタル化を集中的に推進するため、技術本部に「デジタルトランスフォーメーションユニット」を設置。また、プロジェクトへの技術的サポート機能を強化するため、「オペレータープロジェクトサポートユニット」「テクニカルサポートユニット」「ウェルエンジニアリングユニット」に再編。
V. リーガルユニットの独立
国内外の事業への法務サポート機能をさらに強化するため、「リーガルユニット」を社長に直属する独立したユニットとする。
⑤技術
当社グループは、ビジョン2040及び中期経営計画に則り、上流事業での豊富な経験や実績により育んだコア技術をさらに得意技術として確実に強化することで、国際競争力を伸ばすとともに当社グループのプロジェクト価値を今以上に向上させてまいります。さらに未来の多様化するエネルギー社会を見据えて新たな技術分野の開発に挑戦することで、次世代のエネルギービジネスを推進してまいります。
・2018年5月には、新たに「技術ロードマップ2018」を発行し、今後5年間で得意技術としていく石油・天然ガスの上流コア技術に加え、例えば地熱・風力発電等の再生可能エネルギーや低炭素社会に向けた技術的取組み、そして今日あらゆる分野に浸透するデジタル技術を応用して行くDigital Transformation等の、当社が新たに挑戦すべき技術分野のテーマを選択し、それらへの取組方針とスケジュールを取りまとめました。現在、同技術ロードマップに則り、既存技術力の強化と次世代エネルギービジネスへの取り組みを鋭意進めているところです。
・例えば当社が、国内新潟地区のガス田やアラブ首長国連邦の油田生産開発事業、カナダシェールガス事業において培って来た低浸透性貯留岩開発技術は、米国テキサス州のシェールオイル生産開発事業の取得に大きく貢献しました。今後シェールオイル生産開発事業の運営・推進を通じて更に同技術を得意技術に深化させていくことになります。
なお、本項の記載中、将来に関する事項については、本書提出日現在での当社グループの判断であり、今後の社会経済情勢等の諸状況により変更されることがあります。
(2)株式会社の支配に関する基本方針
①基本方針の内容
当社グループは、バランスの取れた資産ポートフォリオ、国際的な有力中堅企業としてのプレゼンス及び高い水準のオペレーターとしての技術力等を最大限に活かし、既発見の大規模油ガス田の早期商業生産を達成するとともに、今後とも優良な油ガス田を積極的に獲得するための投資強化を通じ、国際競争力のある我が国の中核的企業として、我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現及び企業価値のさらなる向上を目指して積極的な事業展開に努めてまいります。
②財産の有効な活用及び不適切な支配の防止のための取り組み
当社グループは、健全な財務体質のさらなる強化を図りつつ、石油・天然ガス資源の安定的かつ効率的な供給を可能とするために事業基盤の拡大を目指し、探鉱・開発活動及び供給インフラの整備・拡充等に積極的な投資を行います。当社は、これらの活動を通じた石油・天然ガスの保有埋蔵量及び生産量の維持・拡大による持続的な企業価値の向上と配当による株主の皆様への直接的な利益還元との調和を、中長期的な視点を踏まえつつ図ってまいります。
また、当社は、上記①の基本方針に基づき、投機的な買収や外資による経営支配等により、中核的企業として我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現に果たすべき役割に背反する形での経営が行われること又は否定的な影響が及ぶことがないよう、経済産業大臣に対し甲種類株式を発行しております。
その内容としては、ⅰ)取締役の選解任、ⅱ)重要な資産の全部又は一部の処分等、ⅲ)当社の目的及び当社普通株式以外の株式への議決権(甲種類株式に既に付与された種類株主総会における議決権を除く。)の付与に係る定款変更、ⅳ)統合、ⅴ)資本金の額の減少、ⅵ)解散、に際し、当社の株主総会又は取締役会の決議に加え、甲種類株式の株主による種類株主総会(以下、「甲種類株主総会」という)の決議が必要とされております。但し、ⅰ)取締役の選解任及びⅳ)統合については、定款に定める一定の要件を充たす場合に限り、甲種類株主総会の決議が必要とされております。甲種類株主総会における議決権の行使に関しては、甲種類株主が平成20年経済産業省告示第220号に定める甲種類株式の議決権行使の基準に則り、議決権を行使できるものとしております。
当該基準では、上記ⅰ)及びⅳ)に係る決議については、「中核的企業として我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現に果たすべき役割に背反する形での経営が行われていく蓋然性が高いと判断される場合」、上記ⅲ)の当社普通株式以外の株式への議決権(甲種類株式に既に付与された種類株主総会における議決権を除く。)の付与に係る定款変更の決議については、「甲種類株式の議決権行使に影響を与える可能性のある場合」、上記ⅱ)、ⅲ)当社の目的に係る定款変更、ⅴ)及びⅵ)に係る決議については、「中核的企業として我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現に果たすべき役割に否定的な影響が及ぶ蓋然性が高いと判断される場合」のみ否決するものとされております。
さらに、当社の子会社定款においても子会社が重要な資産処分等を行う際に、上記ⅱ)の重要な資産の全部又は一部の処分等に該当する場合には、当該子会社の株主総会決議を要する旨を定めており、この場合も当社取締役会の決議に加え、甲種類株主総会の決議を必要としています。なお、当社の取締役会は、甲種類株主による甲種類株式の議決権行使を通じた拒否権の行使に関して権能を有しておらず、したがって甲種類株式は当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。
③上記②の取り組みについての取締役会の判断
上記②の取り組みは、我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現及び持続的な企業価値の向上を目指すものであり、上記①の基本方針に沿うものであります。
また、上記②の甲種類株式は、拒否権の対象が限定され、その議決権行使も平成20年経済産業省告示第220号に定める経済産業大臣による甲種類株式の議決権行使の基準に則り行われることから、経営の効率性・柔軟性を不当に阻害しないよう透明性を高くし、その影響が必要最小限にとどまるよう設計されておりますので、上記 ①の基本方針に沿うものであり、株主の皆様の共同の利益を損なうものではないと考えております。
注)上記の「平成20年経済産業省告示第220号」は、「令和元年経済産業省告示第37号」として改めて告示されております。