有価証券報告書-第81期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
CEOメッセージ
ガバナンス・コンプライアンスを成長戦略として根付かせ
あらゆる状況下においても成長できる事業ポートフォリオを構築する
株主・投資家のみなさまにおかれましては、大和ハウスグループの経営に対してご理解とご支援を賜り、厚く御礼を申しあげます。
まずは、2019年度における一連の不祥事に対してみなさまにご迷惑・ご心配をおかけしましたこと、心より深くおわびを申しあげます。当社グループとしては、不祥事が相次いだ事態を真摯に受けとめ、コンプライアンス体制を立て直すとともに、さらなる成長戦略の鍵として、昨年11月にガバナンスの強化策を公表しました。これを確実に実行し、継続して改善していくことが、経営トップの使命であると考えます。
ここで強調したいのは、ガバナンスの強化は、今後の成長戦略の基盤を構築するために必要不可欠な取組みであるということです。この点を全役職員に周知徹底させてまいります。それとともに、コンプライアンス違反事案が生じた際には、それに対して正対する。すなわち事案にまっすぐに立ち向かい、適切に対処していく。この姿勢を企業グループ全体で堅持し、「攻めと守りのバランス経営」を徹底してまいります。
成長に向けたガバナンス強化策の進捗
2020年6月の株主総会後に新たに社外取締役2名が加わりました。1名は経営者の経験もあり技術畑出身で社外監査役であった桑野氏です。そしてもう1名は女性で海外経験があり現在は大学准教授である関氏です。また商社出身で海外経験のある常務執行役員であった一木が、海外事業担当として取締役に就任します。我々が今まで持っていなかった経歴を持ち合わせた人財が取締役会メンバーに加わることで、多様性の充実と取締役会の実行性が今まで以上に高まるものと期待しております。
そして取締役の上限年齢を設定しましたが、これに伴いますます経営人財の育成は重要な課題となっておりますので、引き続き取組みを強化していきます。
ガバナンス・コンプライアンスは成長戦略
守りながら攻めることで組織を強くする
昨年11月にガバナンスの強化策を公表しましたが、基本的な考えは、ガバナンスの強化はこれからの成長を実現する上で不可欠な基盤をなすものであるということです。かつて当社グループの売上高が1兆円を超えた頃、当時の経営陣が「攻めと守りのバランス経営」を掲げました。これが今日の成長に至る基盤となりました。
現在、各事業の規模やグループ会社の数が拡大する中で、事業の成長に経営体制の整備が追いついていないという現状を謙虚に反省し、「攻めと守りのバランス経営」に立ち戻ることが重要と考えます。「守ることが成長につながる」という考え方を全役職員が共有し、ガバナンスの強化に注力いたします。
今年4月からは、事業本部制へ組織運営を変更しています。この変革は、創業100周年に向けた大きな改革であり、長期的な目線での改革であります。創業者、石橋信夫は「スピードは最大のサービス」と語り、当社はそれを強みとしていかんなく発揮することで今日まで成長してきました。今後もその強みは継承していかねばなりません。だからこそ、新しい事業本部制による業務執行体制により、それぞれの現場においてスピード感を持って進めていきたいと考えています。本格的な始動は2021年度からになりますが、新型コロナウイルス感染症拡大が経営環境に甚大な影響を及ぼす中、事業本部制が的確に機能するかどうかが試されており、新たな組織体制のもとで全役職員を挙げて成果を出してまいります。そして取締役会としては、ここをしっかり管理・監督していく所存です。
2019年度はビジネス領域が堅調に推移
不動産投資の継続・強化に沿った売却により
売上高及び営業利益は過去最高を更新
第6次中期経営計画の1年目にあたる2019年度は、第3四半期まで、ハウジング領域が、10月の消費税増税の影響を受け、駆け込み需要の反動減を受けるなど厳しい事業環境であったものの、ビジネス領域が堅調に推移し、全体として業績は順調に推移しておりました。第4四半期以降、新型コロナウイルス感染症拡大が経営に影を差すこととなりましたが、結果としては、ビジネス領域の商業施設及び事業施設が堅調に推移したことと、不動産投資の継続・強化に沿って売却を進めたことなどにより、2019年度の売上高は4兆3,802億円、営業利益は3,811億円と過去最高を更新しました。
私は今年の初めに「改革」、「変革」、「革新」という三つの「革」の時代ということを意識しておりましたが、奇しくも新型コロナウイルス感染症拡大の影響に直面している現在、「革」に向けた取組みの重要性をあらためて認識しています。
売上高の約4割を占めるビジネス領域の商業施設事業及び事業施設事業は堅調に推移しています。特に当社グループの横軸での連携を最大限に活かし、都市の再開発事業を各地で積極的に展開していますが、今後は住宅と商業施設に加えて物流施設もセットにした開発も手がけ、新たな可能性を拡げていきたいと考えています。
一方、海外事業については、東南アジアでは物流施設開発を進めておりますが、特に生鮮食品や冷凍食品を産地から消費地まで所定の温度を保ったまま流通させるコールドチェーンのニーズに対応した物流施設を手がけるなど、事業規模は拡大基調にあります。しかしながら、2020年度においてはアメリカ及びオーストラリアを含め、いずれのエリアにおいても新型コロナウイルス感染症拡大の影響は免れない状況です。中長期的な視点のもと、各エリアにおけるニーズを読み取り、人財の補強を図りながら、事業の拡大を加速させていきます。
物流施設の底堅い需要を背景に
不動産開発に引き続き注力する
現状は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえた対応を含め、フロー事業とストック事業のバランスを見ながら、あらゆる場面で収益が確保できるポートフォリオの構築を図っています。当社グループの事業を牽引する不動産開発の今後の展開について申し上げると、不動産開発のプロジェクトの規模は年々大きくなっており、また、新たなお客さまからお声がけをいただくことも増えました。それが事業機会の拡大につながっていますが、現状に慢心することなく、お客さまのニーズに真摯に向き合い、対応してまいります。
ストック事業としての不動産開発では、中でも多様なお客さまの物流ニーズにお応えできるマルチテナント型物流施設を全国各地で展開していますが、おかげさまで、竣工後1年以内には入居率がほぼ100%となっています。今後は、請負であるフロー事業に加えて、不動産開発という安定したストック事業の展開がますます重要になるものと考えており、引き続きニーズの高いマルチテナント型物流施設への取組にも注力してまいります。
なお、物流施設の底堅い需要を背景に、当社が開発した物件は順調に売却することができており、2019年度の実績は売上高1,406億円、営業利益500億円を計上することができました。2020年度においては、売上高で1,463億円、営業利益440億円を計画しております。
ハウジング領域は再成長に向けた基盤を整備する
コア事業の1つである賃貸住宅事業は、売上高の約1/4を占めておりますが、昨今の金融機関によるアパートローンの融資規制に伴い、厳しい市場環境が続いています。請負については、エリア特性に基づいた戦略と、土地オーナーさまと入居者さまが魅力を感じていただけるような新商品の投入などによりてこ入れを図っていきます。一方、管理運営事業については、入居率が97%と極めて高い点が当社の強みです。当社としては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響がある中、入居者さま・オーナーさまの双方に対して、少しでも安心していただけるよう、入居者さま向けの賃料支払猶予措置を取らせていただきました。これは収入不安を抱えた入居者さまに対して3ケ月分の賃料の支払を猶予し、最大2年間で分割してお支払いいただくこととしました。今後も請負・賃貸管理の両面から賃貸住宅事業の強化を進めてまいります。
戸建住宅事業については、主力ブランド「xevo(ジーヴォ)」がお客さまから高い評価をいただいていますが、課題はラインアップのさらなる充実です。昨年10月に、WEBから家づくりを体感できる「Lifegenic(ライフジェニック)」という商品を販売しました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響下において、対面での営業活動が制限されている中、この商品は大きな反響を得ており、手ごたえを感じております。また新型コロナウイルスの影響により在宅勤務をされるお客さまが増えていることから、在宅勤務に対応できる居住空間に向けての要望も既にいただいております。新型コロナウイルス感染症拡大が収束した後の人々の働き方、住まい方の変化にいち早く対応できるよう、提案・商品開発に取り組んでまいります。
また、2018年にストック事業の新ブランドとして立ち上げた「Livness(リブネス)」はグループ全体で「住み替え分野での信頼できる専門家」を意識した事業展開が進んでいます。現状、住宅ストック事業の売上高は全体の約3%にとどまっているものの、住宅に加えて、商業施設及び事業施設を扱う事業部も参画しており、今後の更なる事業拡大が期待できます。
加えて、リブネスはブランドとしての事業拡大を図る一方で、日本の人口減少と少子高齢化に向けた社会課題解決型の事業としても重要な役割を果たすと考えています。
その具体例が、「リブネスタウンプロジェクト」という当社がこれまでに手掛けた住宅団地の「再耕」を目指した取組みです。現在、兵庫県三木市や神奈川県横浜市などの当社がかつて開発した住宅団地において、多岐にわたる実験的な取組みを行っています。今後は、在宅勤務が拡がり、働き方が変化することによって、住まい方が変化していくことが想定されます。特に子育て世代においては、仕事の都合上便利な都心部や駅前に集中していた住まいを、ワークスペースが確保された戸建住宅や郊外型ニュータウンへ移住することも考えられます。そのような新しい暮らし方にも対応でき、郊外の住宅の魅力が改めて見直される時代に向けて、ふさわしい街づくりへの取組み、提案を引き続き進めてまいります。
経営環境が悪化したときこそ経営革新を図るチャンス
2020年度の経営環境は、申すまでもなくたいへん厳しいものになると考えています。しかしながら、これまで積み上げてきたことを踏まえて、今年度もなすべきことを着実にやり遂げ、事業を推進していく覚悟です。
経営環境が良いときはさらに事業を伸ばすのは当然として、逆に悪化した際に落ち込むのは仕方がないというのではなく、経営のすべてを見直すことで事業を推進していく姿勢が重要です。経営環境が良いときも悪いときも、事業機会ととらえて成長し、企業価値の向上を図っていくことに変わりはありません。今年度はまさに経営環境のきわめて悪いときにおける挑戦であり、当社グループとしての真価が問われる一年であると肝に銘じています。
これまで当社グループは、「先の先を読んで手を打て」の考え方のもと、いかなる厳しい時代においても活路を拓き、新たな成長のきっかけを生み出してきました。今回においてもそれは変わりません。この危機に直面したことで様々な気づきが生まれました。当社がこれからも成長し続けるためには、今のポートフォリオを様々な角度から見直し、より強固なものとする必要があると考えています。経営トップとして決して動じることなく、凡事徹底を通じて事業を推進してまいります。
大和ハウスグループのこれからの街づくりはR3(現実+再生可能エネルギー+回復力・復元力)
描いた未来の夢、その夢をカタチにすることが私たちの使命
現在進めている新たな街づくりの展開としては、環境を組み合わせた取組みです。これまでも当社の強みは多様な事業ポートフォリオを活かした一気通貫での街づくりですが、そこに環境エネルギー事業による付加価値を強みとして、「R3」、すなわちリアリティ(現実)、リニューアブル(再生可能)、レジリエンス(回復力・復元力)をキーワードとした街づくり「コレカラ・シティ」を企画し、追求していきます。
その代表例が、昨年7月に千葉県船橋市にて立ち上げた大型複合開発「船橋グランオアシス」です。これは物件の施工時から竣工後の暮らしに至るまで、再生可能エネルギー由来の電気のみを利用するという日本初の街づくりです。
建物を建てることに加え、街に再生可能エネルギー由来の電力を供給するといった環境エネルギー事業も含めて、当社グループの総合力を結集して取り組んでいます。
ここでの挑戦は、描いた未来の夢をカタチにする、実現させることにあります。当社グループでは、このプロジェクトを必ず成功させるとともに、現実となった「夢」をさらにブラッシュアップして、今年度以降、同様のプロジェクトを全国の事業所等で展開していくことにより、当社グループにおける新たな可能性を拓いていきたいと考えています。
気候変動というリスクに真摯に向き合い、環境貢献型事業を育てる
多くの機関投資家の方々が、長期的かつ持続的な企業価値向上に向けた取組みの一環として、気候変動の問題について重大な懸念を表明されています。当社は7つのマテリアリティを特定していますが、その1つである「環境負荷の低減と企業収益の両立」に注力しております。
その根本的な考え方は、自社活動で得た省エネや再エネのノウハウを事業機会に活かすということです。自社活動では、国際イニシアティブのEP100・RE100・SBTに加盟し、既存施設での省エネ改善と新築施設でのゼロ・エネ施設化を図るとともに、「自分たちの使うエネルギーは自分たちで創る」と決意し、2040年までにすべての電力使用量を自ら創った再生可能エネルギーで賄う」ことを目標としております。ハードルの高い課題ではありますが、将来のあるべき姿から逆算して設定した目標に向かって進んでおり、私としては計画を前倒しする強い意志で実現を目指しております。
一方、商品においても今年4月からすべての戸建住宅をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様とするなど、取組みを加速させています。今後はZEHやZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の推進、環境エネルギー事業の拡大、「コレカラ・シティ」の開発、「リブネスタウンプロジェクト」などと連携を図るなどして、環境貢献型事業の拡大に注力していきます。
創業者精神の継承を継続し
当社の長期視点をステークホルダーと共有する
昨年来、米国主要企業の経営者団体であるビジネス・ラウンドテーブルや、ダボス会議でも話題となったステークホルダー資本主義という考え方が拡がりを見せており、当社を取り巻く社会は、今まで以上に長期視点になってきていると実感します。当社においては、「100周年に売上高10兆円の企業グループ」という創業者の長期視点がありますが、そこへ至る道筋は、まだはっきりとお示しすることはできていません。現在は3年間の中期経営計画を公表しておりますが、今後は、もう少し長いスパン、例えば10年長期で進むべき道を、従業員をはじめステークホルダーのみなさまに示し、そこに至るまでの3年間にどう向き合っていくのかを考え、お示しするのが良いのではないかと考えています。
当社は、マテリアリティの筆頭に「社会課題を起点とした事業機会の拡大」を掲げています。これは65年の歴史において追求してきた事業推進の原点であります。新型コロナウイルス感染症拡大によって世界経済が大きく揺らぐ中で、今また創業者精神を発揮して、社会の課題に真正面から取り組む必要があります。この取組みをもとにして、中長期の成長を成し遂げていく覚悟です。そして、当社の次の世代により良い形で経営のバトンを渡したいと考えています。
当社は全てのステークホルダーのみなさまに向けてこれからも変わらず真摯に向き合っていきたいと考えています。株主・投資家のみなさまに向けては、対話の機会を大切にし、信頼性・透明性の高い経営体制をお示ししていきます。従業員に向けては、働き方改革を進めながら、一人一人が成長を実感できるような体制を構築していきます。お客さまに向けては、信頼の回復。そして、取引先パートナーとはこれからも共存共栄で仕事を続けてまいります。さらに地域社会のために当社が貢献できることは何かを常に考え続けてまいります。
当社はこれからも時代の先の先を見据え、社会課題の解決を通じて企業価値の向上に愚直に取り組んでまいります。つきましては、変わらぬご支援を賜りますよう心よりお願い申しあげます。
CEOメッセージ
ガバナンス・コンプライアンスを成長戦略として根付かせ
あらゆる状況下においても成長できる事業ポートフォリオを構築する
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| 代表取締役社長/CEO 芳井 敬一 |
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株主・投資家のみなさまにおかれましては、大和ハウスグループの経営に対してご理解とご支援を賜り、厚く御礼を申しあげます。
まずは、2019年度における一連の不祥事に対してみなさまにご迷惑・ご心配をおかけしましたこと、心より深くおわびを申しあげます。当社グループとしては、不祥事が相次いだ事態を真摯に受けとめ、コンプライアンス体制を立て直すとともに、さらなる成長戦略の鍵として、昨年11月にガバナンスの強化策を公表しました。これを確実に実行し、継続して改善していくことが、経営トップの使命であると考えます。
ここで強調したいのは、ガバナンスの強化は、今後の成長戦略の基盤を構築するために必要不可欠な取組みであるということです。この点を全役職員に周知徹底させてまいります。それとともに、コンプライアンス違反事案が生じた際には、それに対して正対する。すなわち事案にまっすぐに立ち向かい、適切に対処していく。この姿勢を企業グループ全体で堅持し、「攻めと守りのバランス経営」を徹底してまいります。
成長に向けたガバナンス強化策の進捗
2020年6月の株主総会後に新たに社外取締役2名が加わりました。1名は経営者の経験もあり技術畑出身で社外監査役であった桑野氏です。そしてもう1名は女性で海外経験があり現在は大学准教授である関氏です。また商社出身で海外経験のある常務執行役員であった一木が、海外事業担当として取締役に就任します。我々が今まで持っていなかった経歴を持ち合わせた人財が取締役会メンバーに加わることで、多様性の充実と取締役会の実行性が今まで以上に高まるものと期待しております。
そして取締役の上限年齢を設定しましたが、これに伴いますます経営人財の育成は重要な課題となっておりますので、引き続き取組みを強化していきます。
ガバナンス・コンプライアンスは成長戦略
守りながら攻めることで組織を強くする
昨年11月にガバナンスの強化策を公表しましたが、基本的な考えは、ガバナンスの強化はこれからの成長を実現する上で不可欠な基盤をなすものであるということです。かつて当社グループの売上高が1兆円を超えた頃、当時の経営陣が「攻めと守りのバランス経営」を掲げました。これが今日の成長に至る基盤となりました。
現在、各事業の規模やグループ会社の数が拡大する中で、事業の成長に経営体制の整備が追いついていないという現状を謙虚に反省し、「攻めと守りのバランス経営」に立ち戻ることが重要と考えます。「守ることが成長につながる」という考え方を全役職員が共有し、ガバナンスの強化に注力いたします。
今年4月からは、事業本部制へ組織運営を変更しています。この変革は、創業100周年に向けた大きな改革であり、長期的な目線での改革であります。創業者、石橋信夫は「スピードは最大のサービス」と語り、当社はそれを強みとしていかんなく発揮することで今日まで成長してきました。今後もその強みは継承していかねばなりません。だからこそ、新しい事業本部制による業務執行体制により、それぞれの現場においてスピード感を持って進めていきたいと考えています。本格的な始動は2021年度からになりますが、新型コロナウイルス感染症拡大が経営環境に甚大な影響を及ぼす中、事業本部制が的確に機能するかどうかが試されており、新たな組織体制のもとで全役職員を挙げて成果を出してまいります。そして取締役会としては、ここをしっかり管理・監督していく所存です。
2019年度はビジネス領域が堅調に推移
不動産投資の継続・強化に沿った売却により
売上高及び営業利益は過去最高を更新
第6次中期経営計画の1年目にあたる2019年度は、第3四半期まで、ハウジング領域が、10月の消費税増税の影響を受け、駆け込み需要の反動減を受けるなど厳しい事業環境であったものの、ビジネス領域が堅調に推移し、全体として業績は順調に推移しておりました。第4四半期以降、新型コロナウイルス感染症拡大が経営に影を差すこととなりましたが、結果としては、ビジネス領域の商業施設及び事業施設が堅調に推移したことと、不動産投資の継続・強化に沿って売却を進めたことなどにより、2019年度の売上高は4兆3,802億円、営業利益は3,811億円と過去最高を更新しました。
私は今年の初めに「改革」、「変革」、「革新」という三つの「革」の時代ということを意識しておりましたが、奇しくも新型コロナウイルス感染症拡大の影響に直面している現在、「革」に向けた取組みの重要性をあらためて認識しています。
売上高の約4割を占めるビジネス領域の商業施設事業及び事業施設事業は堅調に推移しています。特に当社グループの横軸での連携を最大限に活かし、都市の再開発事業を各地で積極的に展開していますが、今後は住宅と商業施設に加えて物流施設もセットにした開発も手がけ、新たな可能性を拡げていきたいと考えています。
一方、海外事業については、東南アジアでは物流施設開発を進めておりますが、特に生鮮食品や冷凍食品を産地から消費地まで所定の温度を保ったまま流通させるコールドチェーンのニーズに対応した物流施設を手がけるなど、事業規模は拡大基調にあります。しかしながら、2020年度においてはアメリカ及びオーストラリアを含め、いずれのエリアにおいても新型コロナウイルス感染症拡大の影響は免れない状況です。中長期的な視点のもと、各エリアにおけるニーズを読み取り、人財の補強を図りながら、事業の拡大を加速させていきます。
物流施設の底堅い需要を背景に
不動産開発に引き続き注力する
現状は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえた対応を含め、フロー事業とストック事業のバランスを見ながら、あらゆる場面で収益が確保できるポートフォリオの構築を図っています。当社グループの事業を牽引する不動産開発の今後の展開について申し上げると、不動産開発のプロジェクトの規模は年々大きくなっており、また、新たなお客さまからお声がけをいただくことも増えました。それが事業機会の拡大につながっていますが、現状に慢心することなく、お客さまのニーズに真摯に向き合い、対応してまいります。
ストック事業としての不動産開発では、中でも多様なお客さまの物流ニーズにお応えできるマルチテナント型物流施設を全国各地で展開していますが、おかげさまで、竣工後1年以内には入居率がほぼ100%となっています。今後は、請負であるフロー事業に加えて、不動産開発という安定したストック事業の展開がますます重要になるものと考えており、引き続きニーズの高いマルチテナント型物流施設への取組にも注力してまいります。
なお、物流施設の底堅い需要を背景に、当社が開発した物件は順調に売却することができており、2019年度の実績は売上高1,406億円、営業利益500億円を計上することができました。2020年度においては、売上高で1,463億円、営業利益440億円を計画しております。
ハウジング領域は再成長に向けた基盤を整備する
コア事業の1つである賃貸住宅事業は、売上高の約1/4を占めておりますが、昨今の金融機関によるアパートローンの融資規制に伴い、厳しい市場環境が続いています。請負については、エリア特性に基づいた戦略と、土地オーナーさまと入居者さまが魅力を感じていただけるような新商品の投入などによりてこ入れを図っていきます。一方、管理運営事業については、入居率が97%と極めて高い点が当社の強みです。当社としては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響がある中、入居者さま・オーナーさまの双方に対して、少しでも安心していただけるよう、入居者さま向けの賃料支払猶予措置を取らせていただきました。これは収入不安を抱えた入居者さまに対して3ケ月分の賃料の支払を猶予し、最大2年間で分割してお支払いいただくこととしました。今後も請負・賃貸管理の両面から賃貸住宅事業の強化を進めてまいります。
戸建住宅事業については、主力ブランド「xevo(ジーヴォ)」がお客さまから高い評価をいただいていますが、課題はラインアップのさらなる充実です。昨年10月に、WEBから家づくりを体感できる「Lifegenic(ライフジェニック)」という商品を販売しました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響下において、対面での営業活動が制限されている中、この商品は大きな反響を得ており、手ごたえを感じております。また新型コロナウイルスの影響により在宅勤務をされるお客さまが増えていることから、在宅勤務に対応できる居住空間に向けての要望も既にいただいております。新型コロナウイルス感染症拡大が収束した後の人々の働き方、住まい方の変化にいち早く対応できるよう、提案・商品開発に取り組んでまいります。
また、2018年にストック事業の新ブランドとして立ち上げた「Livness(リブネス)」はグループ全体で「住み替え分野での信頼できる専門家」を意識した事業展開が進んでいます。現状、住宅ストック事業の売上高は全体の約3%にとどまっているものの、住宅に加えて、商業施設及び事業施設を扱う事業部も参画しており、今後の更なる事業拡大が期待できます。
加えて、リブネスはブランドとしての事業拡大を図る一方で、日本の人口減少と少子高齢化に向けた社会課題解決型の事業としても重要な役割を果たすと考えています。
その具体例が、「リブネスタウンプロジェクト」という当社がこれまでに手掛けた住宅団地の「再耕」を目指した取組みです。現在、兵庫県三木市や神奈川県横浜市などの当社がかつて開発した住宅団地において、多岐にわたる実験的な取組みを行っています。今後は、在宅勤務が拡がり、働き方が変化することによって、住まい方が変化していくことが想定されます。特に子育て世代においては、仕事の都合上便利な都心部や駅前に集中していた住まいを、ワークスペースが確保された戸建住宅や郊外型ニュータウンへ移住することも考えられます。そのような新しい暮らし方にも対応でき、郊外の住宅の魅力が改めて見直される時代に向けて、ふさわしい街づくりへの取組み、提案を引き続き進めてまいります。
経営環境が悪化したときこそ経営革新を図るチャンス
2020年度の経営環境は、申すまでもなくたいへん厳しいものになると考えています。しかしながら、これまで積み上げてきたことを踏まえて、今年度もなすべきことを着実にやり遂げ、事業を推進していく覚悟です。
経営環境が良いときはさらに事業を伸ばすのは当然として、逆に悪化した際に落ち込むのは仕方がないというのではなく、経営のすべてを見直すことで事業を推進していく姿勢が重要です。経営環境が良いときも悪いときも、事業機会ととらえて成長し、企業価値の向上を図っていくことに変わりはありません。今年度はまさに経営環境のきわめて悪いときにおける挑戦であり、当社グループとしての真価が問われる一年であると肝に銘じています。
これまで当社グループは、「先の先を読んで手を打て」の考え方のもと、いかなる厳しい時代においても活路を拓き、新たな成長のきっかけを生み出してきました。今回においてもそれは変わりません。この危機に直面したことで様々な気づきが生まれました。当社がこれからも成長し続けるためには、今のポートフォリオを様々な角度から見直し、より強固なものとする必要があると考えています。経営トップとして決して動じることなく、凡事徹底を通じて事業を推進してまいります。
大和ハウスグループのこれからの街づくりはR3(現実+再生可能エネルギー+回復力・復元力)
描いた未来の夢、その夢をカタチにすることが私たちの使命
現在進めている新たな街づくりの展開としては、環境を組み合わせた取組みです。これまでも当社の強みは多様な事業ポートフォリオを活かした一気通貫での街づくりですが、そこに環境エネルギー事業による付加価値を強みとして、「R3」、すなわちリアリティ(現実)、リニューアブル(再生可能)、レジリエンス(回復力・復元力)をキーワードとした街づくり「コレカラ・シティ」を企画し、追求していきます。
その代表例が、昨年7月に千葉県船橋市にて立ち上げた大型複合開発「船橋グランオアシス」です。これは物件の施工時から竣工後の暮らしに至るまで、再生可能エネルギー由来の電気のみを利用するという日本初の街づくりです。
建物を建てることに加え、街に再生可能エネルギー由来の電力を供給するといった環境エネルギー事業も含めて、当社グループの総合力を結集して取り組んでいます。
ここでの挑戦は、描いた未来の夢をカタチにする、実現させることにあります。当社グループでは、このプロジェクトを必ず成功させるとともに、現実となった「夢」をさらにブラッシュアップして、今年度以降、同様のプロジェクトを全国の事業所等で展開していくことにより、当社グループにおける新たな可能性を拓いていきたいと考えています。
気候変動というリスクに真摯に向き合い、環境貢献型事業を育てる
多くの機関投資家の方々が、長期的かつ持続的な企業価値向上に向けた取組みの一環として、気候変動の問題について重大な懸念を表明されています。当社は7つのマテリアリティを特定していますが、その1つである「環境負荷の低減と企業収益の両立」に注力しております。
その根本的な考え方は、自社活動で得た省エネや再エネのノウハウを事業機会に活かすということです。自社活動では、国際イニシアティブのEP100・RE100・SBTに加盟し、既存施設での省エネ改善と新築施設でのゼロ・エネ施設化を図るとともに、「自分たちの使うエネルギーは自分たちで創る」と決意し、2040年までにすべての電力使用量を自ら創った再生可能エネルギーで賄う」ことを目標としております。ハードルの高い課題ではありますが、将来のあるべき姿から逆算して設定した目標に向かって進んでおり、私としては計画を前倒しする強い意志で実現を目指しております。
一方、商品においても今年4月からすべての戸建住宅をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様とするなど、取組みを加速させています。今後はZEHやZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の推進、環境エネルギー事業の拡大、「コレカラ・シティ」の開発、「リブネスタウンプロジェクト」などと連携を図るなどして、環境貢献型事業の拡大に注力していきます。
創業者精神の継承を継続し
当社の長期視点をステークホルダーと共有する
昨年来、米国主要企業の経営者団体であるビジネス・ラウンドテーブルや、ダボス会議でも話題となったステークホルダー資本主義という考え方が拡がりを見せており、当社を取り巻く社会は、今まで以上に長期視点になってきていると実感します。当社においては、「100周年に売上高10兆円の企業グループ」という創業者の長期視点がありますが、そこへ至る道筋は、まだはっきりとお示しすることはできていません。現在は3年間の中期経営計画を公表しておりますが、今後は、もう少し長いスパン、例えば10年長期で進むべき道を、従業員をはじめステークホルダーのみなさまに示し、そこに至るまでの3年間にどう向き合っていくのかを考え、お示しするのが良いのではないかと考えています。
当社は、マテリアリティの筆頭に「社会課題を起点とした事業機会の拡大」を掲げています。これは65年の歴史において追求してきた事業推進の原点であります。新型コロナウイルス感染症拡大によって世界経済が大きく揺らぐ中で、今また創業者精神を発揮して、社会の課題に真正面から取り組む必要があります。この取組みをもとにして、中長期の成長を成し遂げていく覚悟です。そして、当社の次の世代により良い形で経営のバトンを渡したいと考えています。
当社は全てのステークホルダーのみなさまに向けてこれからも変わらず真摯に向き合っていきたいと考えています。株主・投資家のみなさまに向けては、対話の機会を大切にし、信頼性・透明性の高い経営体制をお示ししていきます。従業員に向けては、働き方改革を進めながら、一人一人が成長を実感できるような体制を構築していきます。お客さまに向けては、信頼の回復。そして、取引先パートナーとはこれからも共存共栄で仕事を続けてまいります。さらに地域社会のために当社が貢献できることは何かを常に考え続けてまいります。
当社はこれからも時代の先の先を見据え、社会課題の解決を通じて企業価値の向上に愚直に取り組んでまいります。つきましては、変わらぬご支援を賜りますよう心よりお願い申しあげます。

