有価証券報告書-第74期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/28 13:05
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119項目

業績等の概要

(1) 業績
当期におけるわが国の経済は、一部に改善の遅れがみられるものの、個人消費は持ち直しの動きが続き、企業収益や雇用情勢も改善するなど、緩やかな回復基調が続きました。
建設業界におきましては、民間建設投資は、分譲マンションが着工減となる一方、節税対策による貸家の着工増が継続することから、民間住宅投資では増加が見込まれ、民間非住宅建設投資も企業収益の改善等を背景に設備投資は底堅く推移し、また、政府建設投資も、前年度を上回る水準が予想されるなど、建設投資全体としては前年度比増加となる見通しです。
このような状況のなかで、当社グループにおきましては、3ヵ年中期経営計画(2015~2018)『東鉄 3D Step2018』の2年目を迎え、その基本方針、及び基本戦略である『3D戦略』(スリーディ戦略)に基づき、諸施策の推進を積極的に図ってまいりました。
「顧客層」のウイング拡大を図る《Ⅹ軸戦略》につきましては、最大最重要顧客である東日本旅客鉄道(株)からの受注工事の安全遂行を当社の社会的使命と捉え、経営資源を継続的に重点投下し、その最も重要なプロジェクトの一つである首都直下地震に備えた耐震補強対策工事では、御茶ノ水盛土・切土耐震補強をはじめ、駅舎等の天井耐震化工事など数々の工事に継続して取り組んでまいりました。また、品川新駅プロジェクトに伴う東海道上り線の軌道移設工事、コンクリート製のランガー橋による成田線成田~下総松崎間高架橋新設工事、常磐線神立駅橋上化工事や新大久保駅バリアフリー化工事をはじめとする駅舎改良工事など、様々な鉄道関連工事の安全施工に努めました。社会的な要請が益々高まっているホームドアにつきましては、山手線に続き京浜東北線における設置工事に取り組んでおり、さらに、2020年東京オリンピック・パラリンピック関連工事では、千駄ヶ谷駅改良工事の施工を進めてまいりました。
東日本旅客鉄道(株)が計画中の新幹線鉄道大規模改修につきましては、当社におきましても、できるだけ早期に準備体制の構築を図ることが必要と判断し、昨年5月に「新幹線大規模改修本部」を設置いたしました。効率的な施工方法の検討や必要な機械の開発に加え、新規材料の開発・提案など、諸準備を進めてまいることとしております。また、鉄道関連工事のリーディング・カンパニーとして、海外の鉄道に関する様々なニーズにもお応えすることができるよう、本年4月に「線路海外事業部」を新たに設置いたしました。
多方面にわたる民間一般部門のお客様に対しては、「顧客層」のウイング拡大を図り、「地下鉄東西線行徳車両基地・深川車両基地分岐器改良工事(東京地下鉄(株))」「東武野田線六実~逆井間複線化工事(東武鉄道(株))」「東急田園都市線あざみ野駅高架下駐輪場新設工事(東京急行電鉄(株))」「リーフィアレジデンス栗平新築工事(小田急不動産(株))」「ゆめみ野研修所新築工事(日本リーテック(株))」「マーブルロードH&Hビル新築工事(エイチアンドエイチビルディング(株))」など、幅広いお客様から多数の受注を獲得いたしました。また、官公庁部門におきましても、当社初となる大型の公共建築工事である「高崎文化芸術センター新築工事(群馬県高崎市)」をはじめ、「大面川第二雨水幹線下水道整備工事(横浜市)」「大江戸線牛込神楽坂~上野御徒町間レール交換工事(東京都交通局)」「さくらの名所散策路整備工事(静岡県熱海市)」「東京大学生産技術研究所実験軌道工事(東京大学)」など様々な受注・施工実績をあげることができました。
「業域」の深掘りを図る《Y軸戦略》につきましては、当社の強みである鉄道関連工事、防災・耐震・メンテナンス関連工事などの業務分野を徹底的に継続強化したうえで、お客様や社会の新しいニーズに応じた業務・業域の深掘りによる拡大強化を図り、新しい成長機会に挑戦してまいりました。当期にスタートした最も革新的なプロジェクトの一つは、新幹線レール交換システム(通称REXS)の導入です。このREXSは、レール交換の主な作業であるレールの運搬・積みおろし・溶接・交換を、種々の大型機械を組み合わせて一つのシステムとして行うことができる世界初の保守用車であり、開業から35年が経過する東北新幹線のレール交換を計画的に施工してまいります。
また、当社が強みとするメンテナンス技術を活かした施工では、「聖橋長寿命化工事(東京都財務局)」「アトレ目黒B館減築工事(東日本旅客鉄道(株))」「いずみ野駅リニューアル工事(相模鉄道(株))」、また、大震災復興関連では、「常磐線竜田~小高間災害復旧工事(東日本旅客鉄道(株))」「富岡~夜ノ森間富岡川橋りょう撤去工事(同左)」「富岡駅新築工事(同左)」「閖上小塚原線道路改良工事(宮城県名取市)」「東松島市立大曲小学校改修工事(宮城県東松島市)」など、新しい業域での受注・施工実績をあげることができました。
環境事業につきましては、当社施工部門との相互連携・シナジー強化を目的に「東鉄ECO2プロジェクト」を積極的に推進中でありますが、環境に配慮した駅の実現に向けた「エコステ」化工事においては、「小淵沢駅エコステ化工事(東日本旅客鉄道(株))」「武蔵溝ノ口駅エコステ化工事(同左)」を、緑化事業では、「梶原工業新工場(梶原工業(株))」の苔緑化や「浦和駅エコステ化工事(東日本旅客鉄道(株))」における壁面緑化工事の受注・施工を行うなど、多くの案件に取り組みました。また、工事現場の周辺環境との調和や近隣への環境配慮を目的に進めている「工事用仮囲い緑化」につきましては、香りを醸し出す植物を一部に使用することで、工事現場周辺に癒しを提供することを目的とした「拡げよう香りの輪プロジェクト」が、環境省「第11回『みどり香るまちづくり』企画コンテスト」において、審査委員特別賞を受賞いたしました。
『3D戦略』(スリーディ戦略)において、最も重要な戦略である《Z軸戦略》につきましては、「安全」「品質・技術力」「施工力」「企業力」の一層の強化を図る様々な取り組みを実施してまいりました。
「安全」においては、経営の最重要事項に掲げている「安全はすべてに優先する」という経営理念のもと、お客様・地域社会・従業員の「究極の安全と安心」を徹底的に追求し、「東鉄グループ方式」による的確な「作業毎のリスク把握」と、危険なポイントを「見える化」した安全ビジュアル教材(「要注カード」など)の徹底活用など、実効性のある教育・訓練を継続実施し、全社をあげて重大事故、致命的労働災害の防止に努めてまいりました。
「品質・技術力」においては、安全・安心や品質に対する社会的責任や要請が益々高まるなかで、「品質管理」「技術力」のたゆまざる維持・強化に努め、品質管理力強化のための「見える化」、鉄道関連工事をはじめ様々な工事によって培ってきた専門的技術力の維持・向上・継承、研究開発力の強化、総合評価方式に対応する高度な技術力・提案力の強化などに取り組んでまいりました。なお、当社が過去に施工した耐震補強工事における仮締切材の不適切な処理に関しましては、速やかに適切な対応に努めるとともに、再発防止策を徹底的に実施してまいりました。
「施工力」につきましては、工事量の増大に対応するために、新卒・社会人採用の継続的強化を推進いたしました。協力会社との関係強化においては、技術力の育成支援をはじめ、宿舎の整備など福利厚生の向上に取り組むとともに、協力会社とその社員の方々をご紹介する「プロフェッショナル」誌の定期的な発行などを通して、パートナーシップの一層の強化を図りました。また、綿密な施工計画の徹底と様々な創意工夫、タブレット端末の導入促進などにより、施工や業務の効率化を図り、工期短縮にも努めてまいりました。
「企業力」においては、『東鉄 3D Step2018』の基本方針である、「全てのステークホルダーから信頼される誠実なCSR経営」、「攻めと守りのバランスのとれたコーポレート・ガバナンスによる経営」に取り組んでまいりました。コーポレートガバナンス・コードにも積極的に対応し、複数の独立社外取締役体制、及び任意の諮問機関としての「経営諮問委員会」などにより、独立社外取締役の適切な関与・助言を得る運営を一層強化いたしました。また、「取締役会全体の実効性評価」や、「議決権の電子行使および招集通知の英訳」にも速やかに対応し、平成28年7月時点において、コーポレートガバナンス・コードが求める全ての項目が実施済みとなり、さらに、資本効率や株主還元の一層の充実を図るべく、ROE・総還元性向の目標化、中間配当なども実施しております。また、コンプライアンス、リスク管理体制についてのさらなる強化を図るとともに、IR活動においては、継続的に適時適切な情報開示に努め、CSR報告書についても内容の充実化を図るなど、「誠実なCSR経営」の推進に取り組みました。
以上のとおり、中期経営計画(2015~2018)『東鉄 3D Step2018』の2年目におきましては、各分野において様々な施策に積極的に取り組んでまいりました。
当社グループは、上記諸施策を着実に実施した結果、当期の業績につきましては、受注高は、鉄道関連工事における増加はもとより、『3D戦略』(スリーディ戦略)の推進により、官公庁や民間一般など幅広いお客様からの受注も順調に増加し、前期比11,610百万円増加の127,067百万円となりました。
売上高は、前期から繰越工事高が高水準でスタートしたことや、工事の進捗も順調に進んだことから、前期比3,826百万円増加の130,634百万円と、当社グループ初の1,300億円台となりました。
利益につきましては、当社が過去に施工した耐震補強工事における仮締切材の不適切な処理に関し、平成28年3月期、及び当第2四半期に完成工事補償引当金を計上しましたが、追加費用見込額が算定されたことから、当第4四半期において追加計上したものの、上記売上高の増加とともに、従来から全社をあげて粘り強く取り組んできた不採算工事の徹底排除、原価管理の強化、種々のコストダウンなどの努力とも相まって、売上総利益は前期比904百万円増加の20,085百万円、営業利益は前期比891百万円増加の13,371百万円、経常利益は前期比918百万円増加の13,668百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比1,064百万円増加の9,583百万円となり、それぞれ過去最高益を更新しました。なお、営業利益につきましては、中期経営計画(2015~2018)『東鉄 3D Step2018』の最終年度(平成30年3月期)の数値目標である「130億円以上」(当初目標としていた「120億円」を平成28年5月に変更)を、1年前倒しにて達成することができました。
セグメントの業績は、次のとおりです。なお、セグメントの売上高につきましては、外部顧客への売上高を記載しております。
(土木事業)
受注高は83,359百万円(前期比4.0%増)、売上高は89,006百万円(前期比7.3%増)となりました。
売上高のうち工事進行基準による計上額は54,237百万円であり、次期繰越高は45,429百万円となりました。
セグメント利益は8,595百万円(前期比5.4%増)となりました。
(建築事業)
受注高は43,707百万円(前期比23.8%増)、売上高は35,107百万円(前期比7.4%減)となりました。
売上高のうち工事進行基準による計上額は24,944百万円であり、次期繰越高は27,434百万円となりました。
セグメント利益は3,990百万円(前期比7.0%増)となりました。
(その他)
売上高は6,520百万円(前期比9.8%増)で、その主なものは鉄道関連製品の製造及び販売収入であります。
セグメント利益は770百万円(前期比32.5%増)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物は、前期比472百万円減少し17,357百万円となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
売上債権の増加額の減少による収入の増加等により、営業活動におけるキャッシュ・フローは前期比1,464百万円収入が増加し3,587百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出の増加等により、投資活動におけるキャッシュ・フローは前期比764百万円支出が増加し1,565百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
自己株式の取得による支出の増加等により、財務活動におけるキャッシュ・フローは前期比295百万円支出が増加し2,494百万円の支出となりました。