有価証券報告書-第86期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/28 10:16
【資料】
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【項目】
145項目

研究開発活動

当社グループは、創業理念である「和の精神」「誠意・熱意・創意」の下、「仕事が仕事を生む」の企業精神に則り、事業活動を通じ誠実なモノづくりに専心し、社会の安全・安心・快適の増進に寄与することを基本理念として、変化する社会やお客様のニーズに対応できる技術開発を、技術研究所を拠点に推進しております。
研究開発活動としては、免震及び制震技術などの高品質・高性能な構造物を実現する技術、ストック活用のためのリニューアル技術、ICTやIoTを活用した施工改善・生産性向上に資する技術の研究開発と商品化に注力しております。
当連結会計年度における研究開発費の総額は488百万円であります。
当連結会計年度の主要な研究開発活動は以下のとおりであります。なお、子会社においては、研究開発活動は特段行われておりません。
(建築及び土木)
[高品質・高性能な構造物の実現技術]
(1) 技能伝承システムの開発と運用
次世代建設生産性向上の対策として「Ai-MAP SYSTEM(アイマップシステム)」の開発に取り組んでおります。このシステムは、画像解析やセンシング等の新技術によるデータを熟練者の保有する経験値と融合させ、次世代の建設生産における課題解決と技能の継続的な育成を具現化させる技術であります。当該システムを構成する要素技術は、国土交通省の進める「建設現場の生産性を向上する革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」の試行対象技術として採択され、土木作業所における試行で高評価を得ることができました。翌連結会計年度には本システムを建築作業所にも適用し、当社の生産性向上と品質の高度化につなげる取組みを行う予定であります。
(2) 免震及び制震技術の高度化
建築物の免震及び制震技術について、設計技術の高度化と当該技術による合理化を目指した研究開発を行っております。当連結会計年度では、地震時における建物の揺れの大きさをリアルタイムに提供するモニタリングサービスのさらなる高度化のため、IoTスマートセンサーの性能検証実験を実施いたしました。翌連結会計年度では、センサーの特性を活用した評価手法の改良を行い、新たなサービスの展開を目指しております。
(3) 鉄筋コンクリート造壁のひび割れ誘発目地工法「CCB-NAC工法」の展開
当社では、鉄筋コンクリート造壁に不可避な乾燥収縮によるひび割れを、壁に設けた目地内で確実に誘発させ、高品質な壁を築造する「CCB工法」、この技術を発展させた「CCB-NAC工法」を開発してきました。当連結会計年度では16物件に採用されました。そのうち工場のリニューアル改修において、本工法をコンクリート床にも適用いたしました。翌連結会計年度には本工法を進化させた「PRS目地充填工法」について、一般財団法人日本建築総合試験所の建設材料技術性能証明の取得を目指しております。
(4) 環境配慮型コンクリートの開発
環境配慮型コンクリートは、CO2排出量を最大60%まで削減可能な脱炭素型のコンクリートで、2021年3月に「建設材料技術性能証明」を取得いたしました。高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの産業副産物をセメントの一部と置換することにより、高いレベルでのCO2排出抑制を実現します。当社名古屋支店の大規模改修工事において、初めて適用いたしました。今後、脱炭素に向けた取組みとして、設計施工物件などへ環境配慮型コンクリートの適用を推進いたします。
[ストック活用のためのリニューアル技術]
(5) 補強組積ブロック増設耐震壁による耐震補強工法の適用範囲拡大の開発
補強組積ブロック(RMユニット)を用いた増設耐震壁による耐震補強工法は、在来工法に比べ工期が短く、狭小な場所での施工が容易で、作業騒音が少ないなどの長所があり、これまで着実に施工実績を重ねております。当連結会計年度では、本工法の適用範囲の拡大を目指し、一般財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明改定のための審査を受けております。翌連結会計年度には、同建築技術性能証明を取得し、さらなる営業展開を図ります。
(6) 当社リニューアル物件におけるWELL認証の取得
WELL認証は、空間のデザインや運用に人間の健康の視点から、より良い居住環境の創造を目指し、アメリカの公益法人IWBI(International WELL Building Institute)が制定し、2014年から運用を開始した評価システムであります。施工中の当社名古屋支店の改修において設計段階からWELL認証を取得すべく取組み、当連結会計年度の2021年2月に予備認証を取得いたしました。築30年を経過したオフィス全体の改修でのWELL認証の予備認証取得はわが国では初となります。今後は本認証の取得に向け取り組んでまいります。
[施工改善・生産性向上に資する技術]
(7) 鉄骨造建物を対象とした合理化技術の開発
建築現場の人手不足にともない建築着工の比率が増加している鉄骨造を対象に、合理化技術の開発を強化しております。当連結会計年度では、物流倉庫などを対象とした鉄骨造小梁仕口部について大学との共同研究をすすめ、数値シミュレーションと実証実験により、小梁たわみ抑制の合理的設計手法を確立いたしました。翌連結会計年度では、実物件への適用を目指すとともに、新たな合理化技術の開発に着手いたします。
(8) ICTを用いた品質・生産性向上のための開発
当社での設計・施工におけるBIM(ビルディング インフォメーション モデリング)活用はBIM推進室を中心に、全店的に進めております。技術研究所ではVR(バーチャルリアリティー)を駆使し、コンピュータ上の仮想空間を利用した技術教育システムの構築およびAI(人工知能)を利用した品質管理システム(配筋自主検査システム)の開発などを進めております。当連結会計年度では3次元モデルを活用した技術教育システムの実効性検討を行い、若手技術者の研修等で利用いたしました。翌連結会計年度では、配筋自主検査システムの開発をさらに進める予定であります。
また、「その他」の事業においては、研究開発活動は特段行われておりません。