有価証券報告書-第75期(2025/02/01-2026/01/31)

【提出】
2026/04/16 13:41
【資料】
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【項目】
222項目
②戦略
当社グループは目指すべき事業全般の脱炭素化への歩みを着実に進めるために、今後起こり得る様々な事態を想定し、戦略の妥当性や課題を把握すべく、事業活動及び資源の固有の状況や、物理的リスクについて想定される事業活動・期間・資産の耐用年数などを考慮したシナリオ分析を行っています。
また、移行リスクについて法制化、技術開発、市況に係る潜在的なシナリオに基づき評価し、事業活動に与える気候関連のリスク(物理的リスク及び移行リスク)と機会を抽出し、対応しています。
2025年2月には、ネットゼロ達成に向けた日本の新たな温室効果ガス削減目標として、「2035年度及び2040年度において温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減」が設定され、これに基づき住宅産業関連で「2050年にストック平均でのZEH(Net Zero Energy House)・ZEB(Net Zero Energy Building)基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指し、これに至る2030年度以降に新築される住宅・建築物はZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」「家庭部門の非化石転換やディマンド・リスポンス(DR)も併せて進めていく観点から、家庭部門のエネルギー消費の約3割を占める給湯器の省エネルギーや非化石転換の加速、DRに必要な機能の具備の促進、開示を通じたエネルギー供給事業者の取組強化などの制度面での対応を進める」などの方向性も示されました。
そのため、全事業を対象としてあらためて大規模なシナリオ分析を実施し、戦略の見直しを行いました。
さらに、2025年度は各国法令に基づく気候関連情報の開示義務化への準備を進めました。オーストラリアにおいては「オーストラリアサステナビリティ報告基準(ASRS)」に準拠した報告書の提出に向けた準備、米国のカリフォルニア州においては「カリフォルニア州気候変動開示法(「気候関連企業データ説明責任法(SB253)」と「温室効果ガス:気候関連財務リスク(SB261)」)」の動向の把握と適切な準備を進めました。
これらの取組みにより特定した、財務影響が大であると想定された主要なリスク・機会と対応を示します。
<シナリオ分析の前提>
参照したシナリオ・IPCC(注1)SSP1-1.9(1.5℃以下を実現するため各国が野心的な気候政策を導入、2050年にCO2排出正味ゼロを実現する)
・IPCC SSP3-7.0(CO2排出が2050年でも減少に転じず、結果として高温、豪雨、暴風をはじめとする影響が大きい)
・IEA(注2)SDS(エネルギー政策や投資の展開によりパリ協定などの目標が達成される。多くの国や企業が2050年ネットゼロを実現する)
・IEA NZE2050(世界全体が2050年ネットゼロを実現する)
・NGFS(注3) Delayed Transition(新しい気候政策の導入が遅れ、また各国の行動のレベルが異なり、2030年までは減少に転じず、その後ネットゼロに向かう)
・日本政府及び審議会「2030年度温室効果ガス排出量2013年度比46%削減、2050年までにネット・ゼロ」、「2035年度、2040年度温室効果ガス排出量2013年度比60%、73%削減」、「2030年度家庭部門の温室効果ガス排出量2013年度比66%削減」、「2040年度家庭部門の温室効果ガス排出量2013年度比71~81%削減」、「2030年度以降に新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能を確保」、「2050年に住宅ストック平均でZEH基準の水準の省エネルギー性能確保」
・オーストラリア政府「2030年までに温室効果ガス排出量2005年比43%削減、2050年までにネットゼロ」、「2035年までに温室効果ガス排出量2005年比62~70%削減」、「NatHERS(注4)制度やBASIX(注5)制度の改正の動向」
・米国政府「2030年温室効果ガス排出量2005年比50~52%削減」、「2050年までに温室効果ガス排出量ネットゼロ」、「2035年温室効果ガス排出量2005年比61~66%削減」
上記の各国際機関等が発表しているシナリオ、日本政府及び関連する審議会の発表等を考慮しています。
なお、IPCC SSP1-1.9やIEA SDS、IEA NZE2050で示される、2030年までに地球全体のCO2排出量が約半減し2050年頃にはゼロとするシナリオの実現には、高額な炭素税の導入や脱炭素に向けた市場の移行といった政策導入などが必要と想定し、移行リスクの前提条件として活用しています。また、NGFS Delayed Transitionで示される、2030年までは現状の政策の延長として各国や企業が取り組むもののCO2排出削減は1.5℃シナリオに整合しない、さらにIPCC SSP3-7.0で示される中期2041~2060年に気温上昇の最良推定値が2.1℃であるなどを想定し、物理的リスクの前提条件として活用しています。
対象企業・事業米国等の海外子会社を含む積水ハウスグループの既存全事業(バリューチェーンの上流・下流の全体を含む)

(注)1 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change):気候変動に関する政府間パネル
2 IEA(International Energy Agency):国際エネルギー機関
3 NGFS(Network for Greening the Financial System):気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク
4 NatHERS(Nationwide House Energy Rating Scheme):全豪住宅省エネ性評価システム
5 BASIX(Building Sustainability Index standards):ニューサウスウェールズ州政府が定める建築持続可能性指数
なお、財務影響と想定期間については以下のとおり定義します。
財務影響 大:300億円以上、中:100億円以上、小:100億円未満
想定期間 短期:2025年から3年間、中期:2030年まで、長期:2050年まで
<主な移行リスク/物理的リスク>
リスク影響対応財務
影響
想定
期間
移行リスクカーボンプライシングの導入カーボンプライシングは世界で広く採用されており、2026年4月から日本においても政府による排出量取引(GX-ETS)が開始する。カーボンプライシングが導入された場合、直接及び間接的な事業コストの増加や競争力低下の可能性がある。グループ全体やサプライヤー企業の事業活動における脱炭素に向けた取組みは中期では道半ばであり、仮に炭素税や排出量取引単価が1万円/t-CO2程度かかると、その影響は大きい。RE100の推進、事務所や生産設備などの省エネルギー化、サプライヤーに対するアンケート調査や勉強会の開催等を通じた建材製造段階のCO2排出削減など、既にバリューチェーン全体において様々な取組みを始めており、この影響をできるだけ早期に減らしていくことを検討している。短期
住宅の価格上昇・市場の縮小長期的には、ネットゼロに求められる規制強化に対応するための住宅価格の高騰、また省エネルギー性能や耐震性能に劣る住宅が減り、良質な住宅ストックの住み継ぎが増えることにより、新築市場自体が縮小する可能性がある。また、海外においても、特にファーストホームバイヤーを対象とした低価格帯の商品については、原価上昇の影響が甚大なものとなり得る。短中期の規制強化に対する当社グループへの影響は小さい見込みだが、長期のさらなる規制強化に対しては、コストを抑えた脱炭素住宅の開発に計画的に取り組む必要がある。また、あわせて新築市場縮小に備え、ストック型ビジネスを強化することを検討している。長期
市場の変化による賃貸事業収益の低下管理物件の内、脱炭素化性能が不十分な物件は競争力を失い、入居率・家賃の低下につながる。管理物件のZEH住戸比率を高めるとともに、非ZEH住戸の脱炭素化リフォームを推進し、借り手に訴求力のある賃貸住宅の価値の維持・向上に努める。長期
被災リスクの高い管理物件の賃貸事業収益の低下気候変動に伴う災害(河川の氾濫による浸水、土砂災害等)の増加により、被災するリスクが高い区域に立地する管理物件において、入居率・家賃の低下につながる。行政のハザードマップを確認し建設予定地の危険について把握するなど、課題として認識し、継続して検討している。長期
物理的リスク当社保有資産の気象災害による被害全国規模での気象災害により、当社グループで保有する資産(工場、オフィスビルなどの事業拠点、生産設備や車両など)が罹災し、事業が継続できなくなる、また、補修や交換のための大きなコストが発生する可能性がある。当社グループは日本国内では沖縄県を除く全国で事業展開しており、本社機能を含む一部エリアで災害が発生した場合は、被害のないエリアがサポートすることで事業を継続できる体制を既に構築済みである。このような事業継続性に関するBCP対応は、リスク管理委員会により適切に管理され、必要に応じて更新している。なお、日本国内の5工場について河川氾濫ハザードマップまたは内水氾濫シミュレーションにより浸水深を想定して被害額を算定したところ、浸水被害を受ける可能性があるのは兵庫工場を除く4工場であり、最も大きい被害が想定される関東工場についてIPCC RCP8.5シナリオに基づくさらに詳細な分析を行った結果、既に加入済みの保険の補償範囲内であることを確認済みである。ただし、今後、さらに自然災害の激甚化が増加し、大規模災害が全国で同時に発生した場合を想定すると、当社事業も甚大な被害が想定されることから、災害へのレジリエンス性強化の検討は継続する。中期

<主な機会>
機会影響対応財務
影響
想定
期間
ZEH・ZEB受注の増加日本政府が家庭部門の温室効果ガス排出量を2030年度までに2013年度比で66%削減することを目標に掲げるなど、ZEH・ZEBの普及は重要施策として位置づけられている。また、消費者のエシカル志向や、事業者の脱炭素指向が進み、今後ますますZEH・ZEBの需要が高まると考えられる。さらに、海外でもZEH仕様の製品需要が高まることも想定される。当社の戸建ZEH比率は90%を超えており、既に標準仕様であり、新たなZEH基準(GX ZEH)への対応も進めている。また、賃貸住宅や分譲マンション、非住宅建築でも積極的にZEH・ZEBの推進を図っており、グループ全体においてZEH・ZEB受注を拡大していく。海外においては太陽光発電パネル及び蓄電池設置義務化が進んだ場合、早期にZEHの標準化に対応している当社は、調達面等で優位性をもつほか、将来にわたり高いリセールバリューを維持できるなどの顧客メリットを訴求できる。中期
賃貸管理物件のZEH化による賃貸事業収益の増加日本政府は2030年度以降に新築される全ての建物でZEH水準の省エネルギー性能を求める考えであり、いずれは賃貸住宅のZEH化が一般化する中、消費者のエシカル志向の高まりとともに、ZEH賃貸住戸のニーズが飛躍的に高まる可能性がある。当社は2018年に日本で初めて全住戸ZEH基準を満たす賃貸住宅を竣工して以来、入居者様に訴求できるZEH住戸の普及に取り組んでいる。着実に受注実績を伸ばし、将来のエシカル消費者を中心とした賃貸ZEHの需要拡大に備えている。中期
脱炭素化リフォーム受注の増加2030年度までの政府目標「家庭部門の温室効果ガス排出量2013年度比66%削減」の達成にはストックの省エネ改修も不可欠であり、様々なリフォーム支援の政策も実施され、脱炭素化リフォームの受注が好調に推移している。カスタマー対応、リフォーム提案などにより、断熱改修や燃料電池・蓄電池の受注等を推進している。工期やコストのお客様負担が少ない居住エリア中心の部分的な断熱強化を行う「いどころ暖熱」や、災害レジリエンス性を高める点に訴求するなど、今後も現実的に普及可能なリフォーム提案を推進していくことを検討している。中期

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