有価証券報告書-第77期(2024/01/01-2024/12/31)

【提出】
2025/03/28 14:26
【資料】
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【項目】
162項目
(3)戦略ならびに指標及び目標
①環境に対する取り組み
地球規模の環境問題である気候変動の緩和につきまして、当社は、生産・物流それぞれにおいて設備投資や日常活動を通じ省エネルギー化を推進し、CO2排出量の削減に取り組むとともに、食品産業全体の課題である食品ロス削減やプラスチック容器包装削減の取り組みについても、一般社団法人日本パン工業会と連携を図り、さらなる環境負荷低減に努めてまいります。
a 環境マネジメント
環境管理体制
当社は、環境管理活動を効果的に行うために、事業活動の中心である工場に「工場環境推進会議」を設置し、本社と連携しながら、それぞれの工場の実態に即した環境への取り組みを推進することで、継続的な環境負荷の低減を図っています。特にCO2排出量の削減、食品ロスやプラスチック使用量の削減に工場と本社が一体となって取り組んでいます。
b 気候変動への対応
TCFD提言に基づく情報開示
当社は、金融安定理事会により設置されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同するとともに、TCFDの枠組みに基づいた情報開示に取り組んでいます。
当社は、気候関連のリスクについて、当社への影響を定性的に把握するとともに、その中ですでに顕在化しているリスクや重要度が高いと考えられるリスクについて、国際機関が示す長期的な気候変動シナリオを用いて、将来(2050年)における影響額をシナリオ分析によって試算しました。
主要原料の小麦粉については、4℃上昇シナリオでは2℃上昇シナリオよりも価格が上昇するものの、中期的な将来において、小麦の主要調達国の収量が大幅に減少する可能性は低いと想定されます。また、4℃上昇シナリオでは、洪水および高潮による事業所被害額や物流障害による被害額が2℃上昇シナリオの2倍となることが想定され、2℃上昇するシナリオでは、炭素税導入による影響が想定されます。いずれの結果をみても、CO2排出量削減の取り組みを強化していくことが重要であると考えられます。
当社は、一般社団法人日本パン工業会が策定した「低炭素社会実行計画2030」の目標値以上の改善が図れるよう、CO2削減対策に取り組んでいます。また、日本政府が掲げる目標の達成に貢献するとともに、地球温暖化の緩和に寄与するため、技術革新の進展に鑑みて、CO2削減目標を適時更新してまいります。
日本パン工業会「低炭素社会実行計画2030」
①CO2削減対策
1)工場・事業場関連2013年を基準年とし、生産高10億円あたりのCO2排出量原単位を2017年から2030年の間に年率1%削減する
2)物流関連2013年を基準年とし、売上高10億円あたりのCO2排出量原単位を2021年から2030年の間に年率1%削減する

c 循環型社会の形成、廃棄物の削減
1)循環型社会への考え方
食品産業は地球環境の恵みによって成り立っており、当社が製造するパンや和洋菓子は、小麦や卵、砂糖、パン酵母など、豊かな自然の恩恵を受けた原料から生まれています。当社は、原材料調達から輸送、製造、販売、消費に至るバリューチェーン全体で、森林、土壌、水、大気、動物、植物などの自然資本や生物多様性に依存し、影響を及ぼしていることを認識するとともに、限りある資源の効率的な利用やリサイクルを進めることにより自然環境への負荷を低減させるという循環型社会の形成は、当社にとって重要な課題と考えています。
当社は、日本パン工業会の「循環型社会形成自主行動計画2030」に則り、食品ロスの削減と再資源化およびプラスチック容器包装の削減に取り組んでまいります。
2)食品ロスの削減と有効活用に向けての考え方
当社は日々の生産活動において、食品ロスを発生させないことを第一に取り組んでおり、製造現場での「なぜなぜ改善活動」や「5S活動」を通じて、製造過程で発生する食品ロスの削減に努めています。そのうえで、やむを得ず発生してしまう、製造過程でカットした食パンの耳などは貴重な資源と考え、適正な品質管理を行うことで、菓子やパン粉などの食品原料への利用を進めるとともに、食品リサイクル法に基づき飼料化を最優先に再生利用を行っています。また、全国各地の工場において、地域の未利用農産物を有効活用した製品開発に取り組むことにより、産地における食品ロスの削減を図っています。さらに、科学的根拠に基づいた消費期限の延長に取り組み、流通や家庭など消費段階での食品ロスの発生抑制につなげています。
3)プラスチック製容器包装軽量化への考え方
当社は、食品の安全衛生の確保と品質の保持を第一に考え、容器包装の企画と選定を行っています。そのうえで、(一社)日本パン工業会が制定した「循環型社会形成自主行動計画2030」で定める「容器包装の環境配慮設計指針」に基づき、可能な限り、当社の容器包装の9割以上を占めるプラスチック製容器包装の簡素化・軽量化を図るとともに、環境に配慮された容器包装を利用することによる、資源の節減と家庭での廃棄物の発生抑制に努めています。
日本パン工業会「循環型社会形成自主行動計画2030」
①廃棄物対策
1)総廃棄物の
再資源化率
2021年~2030年の期間、個別会員では70%を最低基準とし、全体では90%以上とする
2)食品廃棄物の
再資源化率
2021年~2030年の期間、個別会員では85%を最低基準とし、全体では95%以上とする
②プラスチック容器
包装削減対策
2004年を基準年とし、2030年までに生産高10億円あたりのプラスチック容器包装排出量を25%削減する。


②人的資本に関する取り組み
人材面においては、日本社会における人口減少・高齢化の進展の中で、女性の活躍推進をはじめとして、多様な人材が活躍できる仕組みづくりに取り組むとともに、人的資本への投資として、中央研究所・総合研修所・飯島藤十郎社主記念LLCホール・宿泊施設からなる複合施設「山崎製パン総合クリエイションセンター」を21世紀のヤマザキの前進基地として積極的に活用し、当社グループの将来を担う人材の育成と、ヤマザキの精神の継承と醸成に力を尽くしてまいります。
a 人的資本マネジメント
人的資本および人材育成に関する考え方
当社は、「新しい価値の創造」の実現を継続し、社会に貢献し続けることにより、持続的な企業成長と中長期的な企業価値の向上を期しています。「新しい価値の創造」には、新製品開発の取り組みが重要となりますが、当社では、本社だけでなく全国各工場の製造各課がそれぞれのラインの特性や地域ニーズに合わせた新製品開発に取り組む体制づくりをしています。このシステムが有効に機能した事業経営が行われており、人的資本マネジメントの中核になるものと考えています。
全国各地の工場間や製造各課同士が、日々の業務として新製品開発を競い合い、切磋琢磨し、お客様に喜ばれる製品を提供していく取り組みの中で、そこに従事する従業員は、やりがいを持ち、仕事に喜びを見い出し、その結果として、従業員エンゲージメントが高まり、会社の業績向上につながっています。近年は、女性従業員による新製品開発を促進する取り組みを強化しており、着実に成果が現れています。
また、当社は、2016年に創業の地である千葉県市川市に、21世紀のヤマザキの前進基地とし竣工した「山崎製パン総合クリエイションセンター」を人材育成の拠点として活用しています。同センターは、中央研究所、総合研修所、飯島藤十郎社主記念LLCホールならびに宿泊施設からなる複合施設です。パン、和菓子、洋菓子それぞれの研修室を備えており、長年にわたり当社の製造現場に従事したスタッフが後進へ製造理論や技術を伝承しています。また、管理職を中心として、21世紀のヤマザキの経営手法の研修を通して、創業者飯島藤十郎社主の心であるヤマザキの精神を継承し醸成し、ヤマザキパングループの将来を担う人材の育成を図っています。
さらに、当社は、多様な人材が活躍できる職場環境づくりを推進するとともに、管理職と従業員のコミュニケーションの活性化に取り組み、人材の定着につなげています。
b 人材の多様性(ダイバーシティ)の尊重
1)多様性尊重に関する考え方
当社では、基本的人権尊重の考えに基づき、国籍や人種、思想、信条、性別、性的指向、障がいの有無、年齢などによる差別のない、従業員同士が多様な個性を認め合う職場風土の醸成に努めています。ダイバーシティの推進によりさまざまな背景、経験、価値観を持つ人材が集まることで、多様な意見交換が可能となり、均一的な組織からは生まれにくい柔軟で新しいアイデア創出の可能性を高めます。また、多様な価値観を持った人材の採用は、従業員が生き生きと働くことのできる職場づくりにつながり、優秀な人材の獲得と離職防止の効果が見込めると考えています。多様な人材が新たな価値を創造することが企業の持続的成長の源泉となると考え、すべての従業員が意欲を持って働くことのできる環境を整備していきます。
2)女性の活躍推進
当社では、性別にかかわらず個人の能力や適性に応じた適材適所の人材配置を基本としています。女性も安心して生き生きと活躍することのできる環境を整備するため、積極的な女性の採用と役職登用を推進するとともに、結婚・出産・育児というさまざまなライフイベントの中、継続して勤務することのできる両立支援制度の拡充を図り、研修の実施や積極的な広報による制度の周知に取り組んでいます。また、当社の製品には女性消費者も多く、女性目線での積極的な製品開発にも取り組んでおり、業績の向上に寄与しています。
当社は、提出日現在において、人材育成方針や社内環境整備方針に関する具体的な指標及び目標は設定しておりません。具体的な目標設定や状況の開示については、今後の課題として検討してまいります。
管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。