有価証券報告書-第102期(2025/01/01-2025/12/31)
② 戦略
サッポログループは「環境との調和」「社会との共栄」「人財の活躍」を柱とした、サステナビリティ重点課題(マテリアリティ)を9項目設定しております。中でも、グループの事業関連性及びリスクと機会の影響度の大きさから、「脱炭素社会の実現」「自然共生社会の実現」「地域との共栄」「責任ある飲酒の推進」「多様な人財の活躍」を、経営上特に重視する最注力課題と位置付けて、「リスクの低減」とともに「企業成長につながる機会成長」の観点から取組を進めております。
Ⅰ.サステナビリティ重点課題
Ⅱ.リスクと機会、事業との関連性
サッポログループのサステナビリティ重点課題を特定する際に、各重点課題における「事業が社会・環境に与える影響」「社会・環境による自社財務への影響」に関してリスクと機会及び事業との関連性評価を実施しております。評価結果は以下のとおりです。
Ⅲ.具体的な取組と経済価値の繋がり
サステナビリティ重点課題に対しての具体的な取組と経済価値(将来的な財務影響)との繋がりは以下のとおりです。
Ⅳ.気候変動・自然資本への取組
サッポログループにとって気候変動への対応が地球規模で取り組むべき最重要課題の一つであると認識し、「緩和」と「適応」の両面から課題解決に向け、将来発生する可能性のある事業環境をシナリオ分析により複数想定した上で、リスクと機会を洗い出し、その結果を戦略や取組に反映しております。また、農作物や水資源等を利用する当社にとって、気候変動と同様に自然資本への対応も重要な課題であると認識しております。自然資本の対応策を進める際には、自然資本と気候変動は密接に関わっていることから、気候変動の対応策と相互に連携させることが重要と考えて取組を進めていきます。
当社は、TCFD、TNFDの提言に賛同し、積極的な情報開示を進めております。本提言に関連した分析の詳細は当社WEBサイトをご確認ください。
https://www.sapporoholdings.jp/sustainability/environment/nature/climate/
<事業に関連したサプライチェーンと自然への依存・影響>「酒類」「食品飲料」のサプライチェーン全体の主な産業プロセスを整理し、TNFD推奨ツール・ENCOREや社内情報等を参考にして、自然への依存と影響をヒートマップで整理しました。
「酒類」「食品飲料」では、サプライチェーンの上流及び直接操業ともに、原材料となる農作物の生産時の依存・影響が大きいと考えられました。具体的には、依存としては自然がもたらす安定した気候など、影響としては水利用や土地利用、温室効果ガス排出などが挙げられました。評価結果を踏まえ、サプライヤーと連携して、農業生産時の環境負荷の低減などに取り組んでおります。なかでも温室効果ガス排出については、2024年3月にFLAG関連排出の目標を立て、SBT認定を取得し削減に向けた取組を進めております。
容器包装に用いる紙の生産についても、自然への影響・依存が大きいと考えられます。紙使用量を削減した包装方法などに現在取り組んでおり、引き続き進めていきます。また、自社の直接操業であるアルコール発酵・蒸留や加工食品飲料の製造は、水に強く依存しております。水に関しては、水の高リスク地域に該当する当社工場での水使用量削減に関して2030年目標を掲げており、目標達成に向けた取組を進めていきます。
<自然関連リスクと機会の評価>自然への依存と影響の評価結果を踏まえて、大麦・ホップの生産に伴う自然関連のリスク・機会を特定して、その大きさや発生可能性を検討しました。影響時期は短期(~2030年)、中期(~2040年)、長期(~2050年)と設定しております。
物理リスク
移行リスク
機会
<シナリオ分析結果(財務影響)>酒類事業で気候変動による影響が想定されるビール原料農産物の調達地域を対象とした、シナリオ分析を実施しました。国際連合食糧農業機関(FAO)のシナリオ分析データ等を基に、異常気象等の要因を考慮して補正しており、気候変動要因、経済社会要因、生産量に関する要因がそれぞれ異なる、サステナビリティ進展、標準、停滞シナリオについて、2050年までの収量の変化を想定しております。
+:収量にプラス影響 -:収量にマイナス影響
サステナビリティ進展シナリオでは、化学肥料使用に規制がかかる影響等によって、収量に対してマイナスの影響が出る事を想定しております。収量推計が増加基調の国では上表のマイナス要因を受けても増加や横ばいを保つ場合があります。
〇原料農作物調達への財務影響
上記のシナリオ分析の結果をもとに、原材料の調達コストに影響が大きいと予想される以下の項目について財務影響を分析しました。本分析は、2022年度における全調達をもとに、気候変動関連の影響による価格増加分のみを試算しております。
・環境規制の強化による有機栽培の拡大
・エネルギー価格高騰による調達価格の上昇
・原材料(大麦、ホップ、トウモロコシ)の収量減少による原材料価格の上昇
各シナリオで最も財務影響の大きかったものは、停滞シナリオでした。停滞シナリオでは、「エネルギー価格高騰による調達価格の上昇」による影響が最も大きく、「原材料の収量減少による原材料価格の上昇」による影響で、2030年時点で2.5億円、2050年時点で7.7億円という結果になりました。次に影響の大きかった進展シナリオでは、「環境規制の強化による有機栽培の拡大」による影響で、2030年時点で2.0億円、2050年時点で5.5億円という結果になりました。標準シナリオでは、「原材料の収量減少による原材料価格の上昇」、「環境規制の強化による有機栽培の拡大」による影響で、2030年時点で1.3億円、2050年時点で5.0億円という結果になりました。
品目別にみると調達額の一番大きい大麦(麦芽含む)が、各シナリオで最も価格上昇のある品目となりました。
〇炭素税導入によるスコープ1,2への財務影響
炭素税導入による財務影響は、国際エネルギー機関(IEA)のNZEシナリオ(Net Zero Emissions by 2050 Scenario)に基づき、当社拠点のエネルギー使用量から試算をしました。2030年、2050年時点において、当社も温室効果ガス削減目標が達成できた場合とできなかった場合の財務影響を分析しました。
※1USD=133.36円 (2023年の分析時点におけるレート)
IEA:NZEシナリオ
炭素税2030年:先進国130USD、新興国90USD、発展途上国15USD
炭素税2050年:先進国250USD、新興国200USD、発展途上国55USD
計画通りに排出量を削減できた場合、2030年:110千t、2050年:0tをそれぞれ見込んでおります。一方で、削減目標を達成できなかった場合、2022年の排出量が継続することを想定し2030年、2050年それぞれの排出量を189千tと見込みました。削減目標を達成できなかった場合、できた場合をそれぞれ比較すると、2030年は約13.2億円、2050年は約60.6億円のインパクトがあるという結果となりました。
<リスクと機会、財務影響と対応・施策の方向性>シナリオ分析の結果、各シナリオで原料農産物の収量が減少する地域があることが判明しました。これらの影響を含めて、3つのシナリオが現実化した場合を想定し、サッポログループが直面するリスクと機会について、短期・中期(2030年頃)、長期(2050年)の視点で検討を行いました。
■移行リスク
■物理リスク
■機会
■適応策
酒類事業では、サッポロビール原料開発研究所を拠点に国内外の大学や研究機関、サプライヤーと連携しながら新品種の開発に取り組んでおります。気候変動により影響が大きくなると想定されるビール主原料について、病害抵抗性に優れ、異常気象でも収量や品質が安定している品種の実用化を目指し、開発を進めております。
サッポログループは「環境との調和」「社会との共栄」「人財の活躍」を柱とした、サステナビリティ重点課題(マテリアリティ)を9項目設定しております。中でも、グループの事業関連性及びリスクと機会の影響度の大きさから、「脱炭素社会の実現」「自然共生社会の実現」「地域との共栄」「責任ある飲酒の推進」「多様な人財の活躍」を、経営上特に重視する最注力課題と位置付けて、「リスクの低減」とともに「企業成長につながる機会成長」の観点から取組を進めております。
Ⅰ.サステナビリティ重点課題
| 経営理念 | 潤いを創造し 豊かさに貢献する | ||
| 提供価値 | 全ての事業が提供する時間と空間で、人々と地域社会のWell-beingに貢献 | ||
| サステナビリティ方針 | 「大地と、ともに、原点から、笑顔づくりを。」 | ||
| サステナビリティ 重点課題 (マテリアリティ) | 環境との調和 ① 脱炭素社会の実現 ② 循環型社会の実現 ③ 自然共生社会の実現 | 社会との共栄 ④ 地域との共栄 ⑤ 健康価値の提供 ⑥ 責任ある飲酒の推進 | 人財の活躍 ⑦ 多様な人財の活躍 |
| ⑧ 持続可能なサプライチェーン構築 | |||
| ⑨ 安全な製品・施設の提供 | |||
Ⅱ.リスクと機会、事業との関連性
サッポログループのサステナビリティ重点課題を特定する際に、各重点課題における「事業が社会・環境に与える影響」「社会・環境による自社財務への影響」に関してリスクと機会及び事業との関連性評価を実施しております。評価結果は以下のとおりです。
| 重点課題 | 事業が社会・環境へ与える影響 | 社会・環境による自社財務への影響 | 事業との関連性 | ||||
| リスク | 機会 | リスク | 機会 | 酒類 | 外食 | 食品飲料 | |
| 脱炭素社会の実現 | 大 | 大 | 大 | 中 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 循環型社会の実現 | 大 | 中 | 大 | 中 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 自然共生社会の実現 | 大 | 中 | 大 | 中 | ◎ | ○ | ◎ |
| 地域との共栄 | 中 | 大 | 中 | 大 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 健康価値の提供 | 小 | 大 | 小 | 大 | ○ | ○ | ◎ |
| 責任ある飲酒の推進 | 大 | 大 | 大 | 大 | ◎ | ◎ | △ |
| 多様な人財の活躍 | 小 | 中 | 大 | 大 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 持続可能なサプライチェーン構築 | 大 | 小 | 大 | 小 | ◎ | ◎ | ◎ |
| 安全な製品・施設の提供 | 大 | 中 | 大 | 中 | ◎ | ○ | ◎ |
Ⅲ.具体的な取組と経済価値の繋がり
サステナビリティ重点課題に対しての具体的な取組と経済価値(将来的な財務影響)との繋がりは以下のとおりです。
| 重点課題 | 具体的な取組 | 経済価値への繋がり |
| 脱炭素社会の実現 | ・自社拠点・サプライチェーンにおける温室効果ガス排出削減 | ・省エネ等によるエネルギー使用量減 ・将来的な炭素税導入時のコスト増の抑制 |
| 循環型社会の実現 | ・循環型社会に対応した容器包装の実現 ・プラスチック資源のリデュース・リサイクル ・廃棄物・食品ロス削減 ・水資源の有効な利用、水リスクへの対応 | ・資材の安定調達 ・資源循環を起点にした新たなビジネスモデルの創出 ・無駄のないサービス提供による利益創出 ・廃棄コストの削減 ・良質な水資源確保等のリスク低減 |
| 自然共生社会の実現 | ・気候変動に対応した原料育種 ・自然と共生する拠点・まちづくり | ・気候変動への適応策実行による、長期的な原料の安定調達 ・原料生産者との協働による付加価値創出 |
| 地域との共栄 | ・地域の価値向上 ・自社リソースを活用した地域課題解決 | ・地域創生を基軸にした新たな売上機会の創出 ・付加価値の高い国産原料の安定調達 |
| 健康価値の提供 | ・事業を通じた健康価値の提供 | ・健康価値提供による利益創出 |
| 責任ある飲酒の推進 | ・適正飲酒の啓発 | ・不適切な飲酒の防止による事業機会の維持 ・ノンアルコール・微アルコールの市場拡大 |
| 多様な人財の活躍 | ・ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進 ・成長と生産性向上に向けた人的資本投資 | ・ワークエンゲージメントを高めることによる、生産性向上 ・個のスキルアップ及び多様な価値観の融合による新たな価値創出 |
| 持続可能な サプライチェーン構築 | ・サプライチェーンにおける人権尊重 ・サプライチェーンにおける環境負荷低減 ・安定調達 | ・サプライチェーン不安定化によるリスクの低減 |
| 安全な製品・施設の提供 | ・食品安全 | ・安定的な事業継続を支える基盤の構築 |
Ⅳ.気候変動・自然資本への取組
サッポログループにとって気候変動への対応が地球規模で取り組むべき最重要課題の一つであると認識し、「緩和」と「適応」の両面から課題解決に向け、将来発生する可能性のある事業環境をシナリオ分析により複数想定した上で、リスクと機会を洗い出し、その結果を戦略や取組に反映しております。また、農作物や水資源等を利用する当社にとって、気候変動と同様に自然資本への対応も重要な課題であると認識しております。自然資本の対応策を進める際には、自然資本と気候変動は密接に関わっていることから、気候変動の対応策と相互に連携させることが重要と考えて取組を進めていきます。
当社は、TCFD、TNFDの提言に賛同し、積極的な情報開示を進めております。本提言に関連した分析の詳細は当社WEBサイトをご確認ください。
https://www.sapporoholdings.jp/sustainability/environment/nature/climate/
<事業に関連したサプライチェーンと自然への依存・影響>「酒類」「食品飲料」のサプライチェーン全体の主な産業プロセスを整理し、TNFD推奨ツール・ENCOREや社内情報等を参考にして、自然への依存と影響をヒートマップで整理しました。
「酒類」「食品飲料」では、サプライチェーンの上流及び直接操業ともに、原材料となる農作物の生産時の依存・影響が大きいと考えられました。具体的には、依存としては自然がもたらす安定した気候など、影響としては水利用や土地利用、温室効果ガス排出などが挙げられました。評価結果を踏まえ、サプライヤーと連携して、農業生産時の環境負荷の低減などに取り組んでおります。なかでも温室効果ガス排出については、2024年3月にFLAG関連排出の目標を立て、SBT認定を取得し削減に向けた取組を進めております。
容器包装に用いる紙の生産についても、自然への影響・依存が大きいと考えられます。紙使用量を削減した包装方法などに現在取り組んでおり、引き続き進めていきます。また、自社の直接操業であるアルコール発酵・蒸留や加工食品飲料の製造は、水に強く依存しております。水に関しては、水の高リスク地域に該当する当社工場での水使用量削減に関して2030年目標を掲げており、目標達成に向けた取組を進めていきます。
<自然関連リスクと機会の評価>自然への依存と影響の評価結果を踏まえて、大麦・ホップの生産に伴う自然関連のリスク・機会を特定して、その大きさや発生可能性を検討しました。影響時期は短期(~2030年)、中期(~2040年)、長期(~2050年)と設定しております。
物理リスク
| 項目 | リスクの概要 | 影響時期 | 財務影響 | 発生可能性 |
| 急性 | 病害虫の発生による収量・品質の低下 | 中 | 小 | 高 |
| 暴風雨や洪水などの気候災害による収量・品質の低下 | 短 | 小 | 高 | |
| 気温上昇や干ばつ等による収量・品質の低下 | 中 | 小 | 高 | |
| 慢性 | 水質汚染による収量・品質の低下や水質浄化コストの増加 | 中 | 小 | 中 |
| 土壌の健全性の低下による収量・品質の低下 | 中 | 小 | 高 |
移行リスク
| 項目 | リスクの概要 | 影響時期 | 財務影響 | 発生可能性 |
| 政策 | 温室効果ガス排出削減目標への対応による、FLAG関連排出の削減に必要なコストの増加 | 短 | 中 | 中 |
| 30by30に向けた保護区の拡大や、IPLCsの管理地域の保護による調達先の減少・変更 | 中 | 小 | 低 | |
| 化学肥料・化学農薬などの汚染に関連する規制の強化による対応コストの増加 | 中 | 小 | 中 | |
| 干ばつ時の取水制限などの規制による収量低下・品質低下 | 短 | 小 | 中 | |
| 技術 | 精密農業、再生農業などの環境負荷を低減する農業技術や、環境負荷低減やレジリエンス向上につながる品種開発への投資の増加、それらの技術の導入による短期的な収量低下やコスト増加 | 短 | 小 | 中 |
| 市場 | 環境負荷の小さい商品への消費者の選好性の変化による収益減少、市場シェアの減少 | 中 | 小 | 中 |
| 評判 | 保全重要度の高い自然などに大きな影響を与えることによるレピュテーション低下や操業許可の喪失 | 長 | 中 | 低 |
| 賠償 責任 | 保全重要度の高い自然などに大きな影響を与えることによる法的罰則・訴訟のコスト | 長 | 中 | 低 |
機会
| 項目 | 機会の概要 | 影響時期 | 財務影響 | 発生可能性 |
| 資源 効率 | 肥料や農薬などの投入量の最適化、エネルギー効率の高い機械の導入による、コスト及び環境負荷の低減 | 中 | 小 | 中 |
| 水利用効率の向上や水源地の確保・保全による、水関連リスク及びコストの削減 | 短 | 小 | 中 | |
| 製品 サービス | 環境負荷を低減した農法の導入によるリスク低減、環境に配慮した食品の市場シェア獲得 | 長 | 小 | 中 |
| 市場 | 環境負荷の低減をテーマとした農業技術の開発や育種によるコスト削減やレジリエンス向上 | 長 | 小 | 高 |
| 環境負荷を低減した農法・農業技術の導入・開発、生物多様性保全活動によるブランドイメージ向上 | 長 | 小 | 中 | |
| 資金 | サステナブルファイナンスによる資金調達 | 短 | 中 | 中 |
| 持続可能な資源利用 | 気候変動に対してレジリエントな品種や、水や肥料などの使用量低減を可能にする品種の開発 | 長 | 大 | 高 |
| 保護・ 復元・ 再生 | 生物多様性の保全活動の実施 | 長 | 小 | 高 |
<シナリオ分析結果(財務影響)>酒類事業で気候変動による影響が想定されるビール原料農産物の調達地域を対象とした、シナリオ分析を実施しました。国際連合食糧農業機関(FAO)のシナリオ分析データ等を基に、異常気象等の要因を考慮して補正しており、気候変動要因、経済社会要因、生産量に関する要因がそれぞれ異なる、サステナビリティ進展、標準、停滞シナリオについて、2050年までの収量の変化を想定しております。
| 気温上昇 | 異常気象 | 農業関連動向 | 社会動向 | |
| 進展 シナリオ | 1.5℃ | ある程度増加(-) | 化学肥料等の使用に関する規制強化(-) | 人口増加、生活水準向上、食料需要増加、食料価格の一定程度上昇 |
| 標準 シナリオ | BAU | 頻発化や被害拡大(-) | 品種改良や設備投資の増加(+) | 人口増加、生活水準向上、食料需要増加、食料価格の上昇 |
| 停滞 シナリオ | 4℃ | 激甚化(-) | 作物の病害が多発し農業被害が拡大(-) | 食料価格高騰、貧困層の食へのアクセス困難化 |
+:収量にプラス影響 -:収量にマイナス影響
サステナビリティ進展シナリオでは、化学肥料使用に規制がかかる影響等によって、収量に対してマイナスの影響が出る事を想定しております。収量推計が増加基調の国では上表のマイナス要因を受けても増加や横ばいを保つ場合があります。
〇原料農作物調達への財務影響
上記のシナリオ分析の結果をもとに、原材料の調達コストに影響が大きいと予想される以下の項目について財務影響を分析しました。本分析は、2022年度における全調達をもとに、気候変動関連の影響による価格増加分のみを試算しております。
・環境規制の強化による有機栽培の拡大
・エネルギー価格高騰による調達価格の上昇
・原材料(大麦、ホップ、トウモロコシ)の収量減少による原材料価格の上昇
| (単位:億円) | ||
| 2030年 | 2050年 | |
| サステナビリティ進展シナリオ | 2.0 | 5.5 |
| サステナビリティ標準シナリオ | 1.3 | 5.0 |
| サステナビリティ停滞シナリオ | 2.5 | 7.7 |
各シナリオで最も財務影響の大きかったものは、停滞シナリオでした。停滞シナリオでは、「エネルギー価格高騰による調達価格の上昇」による影響が最も大きく、「原材料の収量減少による原材料価格の上昇」による影響で、2030年時点で2.5億円、2050年時点で7.7億円という結果になりました。次に影響の大きかった進展シナリオでは、「環境規制の強化による有機栽培の拡大」による影響で、2030年時点で2.0億円、2050年時点で5.5億円という結果になりました。標準シナリオでは、「原材料の収量減少による原材料価格の上昇」、「環境規制の強化による有機栽培の拡大」による影響で、2030年時点で1.3億円、2050年時点で5.0億円という結果になりました。
品目別にみると調達額の一番大きい大麦(麦芽含む)が、各シナリオで最も価格上昇のある品目となりました。
〇炭素税導入によるスコープ1,2への財務影響
炭素税導入による財務影響は、国際エネルギー機関(IEA)のNZEシナリオ(Net Zero Emissions by 2050 Scenario)に基づき、当社拠点のエネルギー使用量から試算をしました。2030年、2050年時点において、当社も温室効果ガス削減目標が達成できた場合とできなかった場合の財務影響を分析しました。
| 年 | 温室効果ガス削減 目標が達成できた 場合の排出量(千t) | 温室効果ガス削減 目標が達成できなかった場合の排出量(千t) | 温室効果ガス削減 目標が達成できた場合の炭素税に関する コスト(千円) | 温室効果ガス削減 目標が達成できなかった場合の炭素税 に関するコスト(千円) |
| 2030 | 110 | 189 | 1,813,440 | 3,130,869 |
| 2050 | 0 | 189 | 0 | 6,055,178 |
※1USD=133.36円 (2023年の分析時点におけるレート)
IEA:NZEシナリオ
炭素税2030年:先進国130USD、新興国90USD、発展途上国15USD
炭素税2050年:先進国250USD、新興国200USD、発展途上国55USD
計画通りに排出量を削減できた場合、2030年:110千t、2050年:0tをそれぞれ見込んでおります。一方で、削減目標を達成できなかった場合、2022年の排出量が継続することを想定し2030年、2050年それぞれの排出量を189千tと見込みました。削減目標を達成できなかった場合、できた場合をそれぞれ比較すると、2030年は約13.2億円、2050年は約60.6億円のインパクトがあるという結果となりました。
<リスクと機会、財務影響と対応・施策の方向性>シナリオ分析の結果、各シナリオで原料農産物の収量が減少する地域があることが判明しました。これらの影響を含めて、3つのシナリオが現実化した場合を想定し、サッポログループが直面するリスクと機会について、短期・中期(2030年頃)、長期(2050年)の視点で検討を行いました。
■移行リスク
| 項目 | 関連 | 影響時期 | 財務影響 | 対応・施策の方向性 | |||
| 気候 | 自然 | 短期 | 中期 | 長期 | |||
| カーボンプライシング導入による事業拠点エネルギーコスト増加 | 〇 | 〇 | 〇 | 炭素税の課税 NZEシナリオ(進展シナリオ):2030年31.3億円,2050年60.6億円 | ・脱炭素化取組の推進(2030年・2050年目標達成) | ||
| 温室効果ガス排出削減目標への対応による、FLAG関連排出の削減に必要なコストの増加 | 〇 | 〇 | 〇 | 窒素肥料の投入量等の情報把握、その削減に必要なコスト | ・FLAG関連排出算定方法を精緻化、活動量データの取得可否や課題を調査 | ||
| 30by30に向けた保護区の拡大や、IPLCsの管理地域の保護による調達先の減少・変更 | 〇 | 〇 | 原料農作物の調達額の増加等を想定 | ・多角的な調達先の確保 ・サプライヤーを通じた最新情報の把握 | |||
| 農薬(化学肥料含む)に関する環境規制強化による農産物収量減 | ○ | ○ | ○ | ○ | 原料農産物の調達額増加 (進展)2030年2.0億円,2050年5.5億円 (標準)2030年1.3億円,2050年5.0億円 (停滞)2030年2.5億円,2050年7.7億円 ※ビール原料農産物を 対象とした2022年実績基準の試算 | ・農薬規制情報と農薬使用状況の把握 ・化学農薬に代わる生物的防除や物理的除去法等の総合的病害虫管理の情報収集と生産者動向の把握 | |
| カーボンプライシング等による農産物生産エネルギーコスト増加 | ○ | ○ | ○ | ||||
■物理リスク
| 項目 | 関連 | 影響時期 | 財務影響 | 対応・施策の方向性 | |||
| 気候 | 自然 | 短期 | 中期 | 長期 | |||
| 温暖化・異常気象による原料農産物の品質低下や収量減 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 原料農産物の調達額増加 (進展)2030年2.0億円,2050年5.5億円 (標準)2030年1.3億円,2050年5.0億円 (停滞)2030年2.5億円,2050年7.7億円 ※ビール原料農産物を 対象とした2022年実績基準の試算 | ・多角的な調達先の確保 ・異常気象による品質低下リスクの低い大麦・ホップ多収性品種の開発・普及 ・病害抵抗性に優れた大麦・ホップ新品種の開発・普及 ・サプライヤーとの連携による総合的病害虫管理の導入に向けた病害虫防除体系の確立 | |
| 異常気象(熱波、干ばつ、台風や集中豪雨による風水害等)による事業拠点の渇水・洪水 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 生産停止による損失と復旧費用を想定 | ・既存拠点の水供給の安全性と渇水及び異常気象に対するリスク評価 |
| 新規感染症流行による原材料の調達停滞 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 生産停止による損失を想定 | ・グローバルの食品輸出入動向・規制に関する情報収集・把握 ・国内生産安定化のための基盤強化 | |
| 気温上昇による設備の空調コスト増加 | 〇 | 〇 | 電力コスト増加を想定 | ・運転管理における省エネルギーの徹底 | |||
| 水質汚染や土壌の健全性の劣化による収量・品質の低下 | 〇 | 〇 | 原料農産物の調達額増加、水質浄化コストの増加を想定 | ・多角的な調達先の確保 ・生産者とのコミュニケーションによる状況把握 | |||
■機会
| 項目 | 関連 | 影響時期 | 財務影響 | 対応・施策の方向性 | |||
| 気候 | 自然 | 短期 | 中期 | 長期 | |||
| 温室効果ガス削減による事業拠点エネルギーコスト(炭素税額)の削減 | 〇 | 〇 | 〇 | NZEシナリオ(進展シナリオ)2030年13.2億円,2050年60.6億円 | ・脱炭素化取組の推進(2030年・2050年目標達成) | ||
| 気候変動に対応可能な品種開発による安定調達 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 業界での幅広い普及により調達額影響の低減 | ・干ばつや多雨等の気候変動の影響を回避・軽減する大麦・ホップ適応品種の開発・実用化(2035年実用化に向けて現在開発中の大麦新品種には、麦芽加工時の省エネ効果の特性を合わせ持つものがある) | |
| 原料農産物開発と商品開発による競争力の強化 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 大麦やホップ開発品種を用いた商品(2035年以降 上市規模 ~547億円) | ||
| 項目 | 関連 | 影響時期 | 財務影響 | 対応・施策の方向性 | |||
| 気候 | 自然 | 短期 | 中期 | 長期 | |||
| ICT・ロボット等を活用した農業の効率化品種改良(育種)による品質の安定化 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 原料農産物価格への影響を想定 | ・国内外のパートナーとの協働による農業の新技術の活用 | |
| 肥料や農薬等の投入量の最適化、エネルギー効率の高い機械の導入による、コスト及び環境負荷の削減 | 〇 | 〇 | 〇 | 投入物コストの削減効果、原料農産物価格への影響を想定 | ・国内外のパートナーとのコミュニケーション、FLAG等当社脱炭素目標の共有 | ||
| 水利用効率の向上や水源地の確保・保全による、水関連リスク及びコストの削減 | 〇 | 〇 | 水関連対応コストの削減を想定 | ・生産拠点における水の効率的使用、定期的な水リスク調査によるクライシス発生の回避 | |||
| サステナブルファイナンスによる資金調達 | 〇 | 〇 | 資金調達しやすくなることを想定 | ・ESGに関する外部評価の向上 | |||
■適応策
酒類事業では、サッポロビール原料開発研究所を拠点に国内外の大学や研究機関、サプライヤーと連携しながら新品種の開発に取り組んでおります。気候変動により影響が大きくなると想定されるビール主原料について、病害抵抗性に優れ、異常気象でも収量や品質が安定している品種の実用化を目指し、開発を進めております。