有価証券報告書-第187期(2025/01/01-2025/12/31)

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2026/03/27 15:06
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166項目
(ウ)戦略
他テーマと同様に、各種ガイダンスと当社グループのビジネスモデルを踏まえ、本テーマにおいて選定した当社グループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会は以下のとおりです。
(ⅰ)気候変動リスク― 物理リスク
気候変動によって引き起こされる原料農産物の収量減、洪水又は渇水による操業停止や輸送への影響などのリスク
(ⅱ)気候変動リスク― 移行リスク
カーボンプライシングが導入された場合に、エネルギー調達費や物流費、農作物価格が高騰するリスク
(ⅲ)自然資本リスク― 原料
当社グループのサプライチェーンにおいて、農産物生産地・森林の環境が守られていない事案が発生するリスク
(ⅳ)自然資本リスク― 容器包装
バージンプラスチックに対する規制、及び、リサイクル材料の使用義務の拡大、使用済みペットボトル容器の不適切な廃棄による環境汚染リスク
気候危機、生物多様性の喪失の進行、プラスチックによる海洋汚染など地球規模の環境問題の深刻化を背景に、社会は大きな転換点を迎えております。当社グループの食領域の事業のように水や農産物など自然の恵みに依存する産業は環境問題の影響を受けやすく、この課題の克服に向けていち早く着手する必要があります。
当社グループが2017年から行っているTCFD提言に基づくシナリオ分析において、気候変動がもたらす農産物や水資源への影響の甚大さを把握しました(前述)。自然資本への影響を抑えて持続可能な地球を次世代に渡すには、ネガティブインパクトを最小化し、ニュートラル化するだけでは足りないことが判明しました。また企業の環境施策も、自社で完結するものから、社会全体へポジティブな影響を与えられるものへと進化することが期待されてきております。
このような社会の要請に応えるために、複合的に発生し相互に関連する環境4課題(生物資源・水資源・容器包装・気候変動)に統合的に取り組むアプローチの考え方をさらに発展させたものが、2020年に取締役会で審議・決議し、刷新した「キリングループ環境ビジョン2050」と、新たに加えた「ポジティブインパクト」アプローチです。また、当社グループはリスクに対する単独の解決策ではトレードオフのリスクがあることを認知しており、ランドスケープアプローチを採用するなど、課題を多面的にとらえながら取り組みを推進しております。
私たちはこの環境ビジョンの下、これからの世代を担う若者をはじめとする社会とともに、こころ豊かな地球を次世代につなげていきます。
なお、当年度においては、前年度末時点で想定していた計画通りに取り組みを推進しております。
(ⅰ)気候変動リスク― 物理リスク
当社グループの食領域においては、バリューチェーンの上流であるサプライヤー、並びに製造拠点で活用する水資源に対して、気候変動によるリスクが大きいと捉えており、重要な物理リスクとして農産物の収量減、洪水による操業停止、渇水による操業停止を認識しております。
当社の主要製品であるビールの製造に欠かせない大麦の生産農家は、特に洪水等の気候変動に伴う環境変化に大きく影響を受けることが想定され、直接的な大麦収量の減少の他、洪水発生時の代替調達の実行、設備の復旧等で、調達コストの増加と売上原価へのマイナス影響が予想されます。
リスク及び機会バリューチェーン
(当社グループのステークホルダーを記載)
リスク及び機会が顕在化したときに発生するビジネスモデル・バリューチェーンへの影響と財務的影響発生可能性金額的重要性リスク及び
機会の影響が
及ぶセグメント
リスク及び
機会の影響が
発生すると
見込む時間軸
上流当社下流
リスク気候変動によって引き起こされる原料農産物の収量減、洪水又は渇水による操業停止や輸送への影響などの物理リスクビジネスパートナー、地球環境ビジネスパートナー、お客様ビジネスモデル・バリューチェーンへの影響
・原材料の安定調達を阻害
・製造拠点の稼働停止
財務的影響
・原材料調達コスト、輸送コストの増加
・一時的な販売機会の喪失による売上の減少
・製造可能量減に伴う売上の減少、固定費率の上昇
酒類
飲料
医薬
ヘルスサイエンス
短期
中期
長期

過去にグループ内に実際に影響が及んだ物理リスクとして、異常気象(洪水・渇水などに代表される水リスク・水ストレス)による製造停止が挙げられます。この事例を踏まえ、(a) 調達リスク(気候変動による農産物の収穫減のリスク)、(b) 水リスク・水ストレス、の2つが最も大きな物理リスクであると認識しております。この2つに晒されている事業活動のグループに占める各比率から、グループにおける物理リスクに対する脆弱性を試算しております。
(a) 調達リスク(気候変動による農産物の収穫減のリスク)による物理リスクに対する脆弱性
調達リスク(気候変動による農産物の収穫減のリスク)による物理リスクに対し、当社グループ売上の77%を占める事業会社(7社)にて、最大137億円/年の調達コストが発生するものと試算しております。物理リスク(調達コスト)に対し脆弱な事業活動は下表の事業会社7社(当社グループ売上の77%)が該当します。
事業会社気候変動の影響について
把握できている原料
キリンビール大麦、ホップ、トウモロコシ、大豆、等
Lion
メルシャンワイン用ブドウ、等
キリンビバレッジ紅茶葉、コーヒー豆、等
協和発酵バイオトウモロコシ、大豆、等
協和ファーマケミカル
協和キリン

(b) 水リスク・水ストレスによる物理リスクに対する脆弱性
水リスク・水ストレスによる物理リスクに対する脆弱性は、当社グループにおけるそれらの度合いの高い国に所在する製造拠点数が各国に所在するすべての製造拠点に占める割合により試算しております。試算には、2023年の拠点データを用いました。試算は適宜更新し、都度、その時点の拠点数に対する脆弱性を評価してまいります。最新のAqueduct4.0(WRI)を用い、水ストレスはBaseline Water stress、水リスクはPhysical Risks Quantityの項目を参照しております。影響を受ける製造拠点について、それぞれのリスク・ストレスが5段階で分類されるため、リスク・ストレスが低い場合を「1」、高い場合を「5」として点数付けを行いました。リスク点数、ストレス点数の合計が6点以上である拠点は下表のとおりであることから、物理リスク(水)に対し脆弱な事業活動は下表の所在国の拠点(合計57%)が相当するものと判断しております。
製造拠点の所在国国内製造拠点数水リスク・水ストレスのリスクが合計6点以上の製造拠点数
日本2814
アメリカ73
中国32
タイ11
ベトナム22
ニュージーランド3-
オーストラリア98
合計5330(=57%)

<リスク/機会への対応戦略>戦略1 調達先の分散
代替原料の開発と新たな生産技術の開発を行っております。例えば、ビールの原料農産物の大麦は気候変動による収量減のリスクがあることから、大麦に依存せずビールのような風味を実現する技術的知見は、適応策の1つであると考えております。また、ビール風味飲料の製造に必要な異性化糖の原料となる農産物については地域別に気候変動による中長期的な収量インパクトを調査・分析し、生産地や作物、醸造技術を組み合わせることで、気候変動影響下における中長期的な収量の変動に対応可能であり、安定供給が予想される原料でビール風味を再現する醸造技術を保有することは物理的リスクに対応する適応策として有効と考えております。成果として、キリンビールが日本で販売するビール風味のアルコール飲料である「のどごし生」は、大豆を原料として醸造されております。
この他、温暖化に対応する品種の改良技術と併せて、主要農産物の安定調達や農業の持続可能性への貢献が期待される植物大量増殖技術の開発なども行っております。キリン中央研究所は、ビールの原料「ホップ」の腋芽形成を促進する世界初アプローチで、ホップの大量増殖技術の開発にも成功しております。
戦略2 持続可能な農園認証取得支援
気候変動にレジリエントな農産物生産地確保、気候変動や自然環境の変化リスク緩和に向けて、持続可能な農園認証としてレインフォレスト・アライアンス(RA)認証取得支援を継続しております。自然災害への対策や、農薬・肥料の使用量を抑えながらも収量を維持できる技術のトレーニングを実施することで、環境変化が原料農産物に与える影響を軽減し、農業が環境へ及ぼす負荷の低減にも貢献していきます。当社グループは、「キリン 午後の紅茶」の原料農産物生産地であるスリランカ紅茶農園とコーヒー豆の3割を調達しているベトナムコーヒー農園に対して、RA認証取得を支援してまいりました。今後は、リジェネラティブ農業を推進することで、自然の状態の変化を最小限に抑えるとともに、自然の状態の回復にも努めます。キリンホールディングスとキリンビバレッジは、レインフォレスト・アライアンスと共同で、リジェネラティブ農業への移行を支援する「リジェネラティブ・ティー・スコアカード」を開発し、2024年12月より運用を開始しました。2025年末までにスリランカの1つの大農園と30の小農園での運用を開始しております。本ツールは、スリランカの紅茶農園での活用を目的とし、農園の農法や環境負荷を評価し、改善すべき点を可視化するチェックリスト型のガイドラインです。リジェネラティブ・ティー・スコアカードは、土壌の健全性、生物多様性の保全、生態系の回復、労働環境の向上などの指標を基に、農園の現状を評価し、持続可能な農業への移行に向けた具体的な改善策を提示します。農園はこれを活用することで、リジェネラティブ農業への移行を段階的に進めることが可能になります。
戦略3 水ストレス、水リスクの評価と対策
1)グループ全体の水問題の評価・分析
当社グループは、水ストレスの大きく異なる日本とオーストラリアで事業を行ってきた経験から、水問題が国や地域で異なり、流域や場所に大きく依存していることを理解し、2014年から定期的に科学的な調査を実施しております。
2024年に製造拠点の水リスクをAqueduct4.0及び自治体が作成しているハザードマップなどを使用して調査・分析した結果、事業所の多くで水ストレスや水リスクが以前と比べて悪化していることがわかりました。
2)高度な用水削減技術の導入、渇水対応の知見共有
水ストレス・水リスクの調査による科学的な根拠を把握したうえで、国や地域で異なる水ストレスのレベルに合わせた適切な用水削減対策の導入を実施していきます。また、グループ内の世界各拠点が渇水経験を通して構築した対応知見を共有し、各事業のレジリエンスを向上させております。例えば、オーストラリアは慢性的な水不足の課題を抱え、当社グループでもクイーンズランド州のCastlemaine Perkins Breweryが深刻な長期的渇水を経験しました。同社では、2011年に州政府と提携し、製造工程で使用した水を回収利用するための逆浸透(RO)プラントを設置することで世界トップクラスに迫る用水原単位を維持しております。2024年には、この技術をTooheys Breweryへ導入展開しました。
3)風水害シミュレーション等及び現地調査を活用した付保の必要性評価
洪水を含む水関連の自然災害リスクについて、外部モデル等を用いたシミュレーションによる定期的な評価と、必要に応じた現地調査を組み合わせ、拠点ごとのリスクの状況と財務的影響を踏まえて対応方針を検討しております。これらの評価結果を踏まえ、水リスクが相対的に高いと判断される拠点については、事業継続の観点から保険カバレッジの維持を志向し、リスクの状況に応じた保険手配・見直しを行っております。
なお、付保の要否や水災補償の範囲は、評価結果や事業特性等により個別に判断されるため、付保そのものに関する一律の定量的な指標・目標は設定しておりません。
戦略4 原料農産物生産地の水ストレス対応
生産地などにおける水リスクを分析したうえで優先サイトを絞り込みます。優先サイトの中から活動場所を特定し、水資源の保全活動やそのためのトレーニングを実施するとともに、適切な減災対策や持続可能な水利用管理を推進していきます。これにより、異常気象による収量減少リスク低減や安定した農産物供給の確保に貢献することを目指します。
スリランカ紅茶農園では、2018年から農園内の水源地保全活動を開始し、2025年末には27カ所の水源地を保全しました。知見を蓄積し、2020年からはベトナムのコーヒー農園で同様の支援を開始しております。
<財務的影響>気候変動の物理リスクについて、当社グループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会への対応戦略、並びにリスク及び機会対応のために発生する財務的影響は以下のとおりです。
当年度においては、リスクは顕在化しておりませんが、気候変動によって引き起こされる原料農産物の収量減、洪水又は渇水による操業停止や輸送の影響が発生した場合、原材料の安定調達を阻害されることなどにより売上が減少し、その影響が短期、中期、長期に及ぶ可能性があります。なお、物理リスクが顕在化したことによる調達・輸送への影響を区分して識別することが困難であるため、定量的情報を記載しておりません。
リスク及び機会リスク及び機会への
対応戦略
対応戦略の
財務的影響
財務的影響(百万円)*1
当年度短期
(1年後)
中期
(3年後)
長期
(10年後)
リスク気候変動によって引き起こされる原料農産物の収量減、洪水又は渇水による操業停止や輸送への影響などの物理リスク・調達先の分散
・農園認証取得支援
・高度な用水削減技術
・原料農産物生産地の水ストレス対応
・水ストレスが高い製造拠点における用水原単位のモニタリング
・風水害シミュレーション等及び現地調査を活用した付保の必要性評価
・必要に応じ事業所への付保
PL影響
・農園認証取得支援費
・調達コスト低減に向けた研究開発費
・水資源保全活動
・付保費用
210約150約120約80
BS影響
・該当なし
合計PL影響210約150約120約80
BS影響
CF影響*2210約150約120約80

*1:当社グループでは、当社グループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会の影響が生じると見込む短期・中期・長期の時間軸について、短期を当年度末後1年、中期を2年から3年、長期を4年から10年と定義しておりますが、リスク及び機会対応のために発生する財務的影響の記載に当たっては、短期・中期・長期の数値の傾向を把握できるよう、短期は1年後、中期は3年後、長期は10年後の単年度に発生する数値を記載しております。
*2:CF影響を正確に算出することが困難であるため、PL影響とBS影響の合計額を記載しております。
<短期、中期及び長期にわたる財政状態の変化見込み>投資や処分は予定しておらず、戦略を遂行するための資金調達を予定しておりません。なお、上記のリスクが、翌年度に関連する財務諸表で報告される資産及び負債の帳簿価額に重要性がある修正を生じさせることはないと考えております。
(ⅱ)気候変動リスク― 移行リスク
移行リスクとしては、炭素税や排出量取引制度、国境炭素税措置などのカーボンプライシングが導入された場合、エネルギー調達費や物流費、農作物価格が高騰する可能性があります。日本国内ではGXリーグによる排出量取引制度の導入拡大、将来的には発電事業者に排出枠の購入を義務づける制度の導入等が想定され、これによる追加コストが発生する可能性もあります。
リスク及び機会バリューチェーン
(当社グループのステークホルダーを記載)
リスク及び機会が顕在化したときに発生するビジネスモデル・バリューチェーンへの影響と財務的影響発生可能性金額的重要性リスク及び
機会の影響が
及ぶセグメント
リスク及び
機会の影響が
発生すると
見込む時間軸
上流当社下流
リスク脱炭素社会への移行リスクビジネスパートナー、地球環境ビジネスパートナー、お客様ビジネスモデル・バリューチェーンへの影響
・製品展開先国でのカーボンプライシングの導入
財務的影響
・エネルギー費の増加
・原材料調達費の増加
酒類
飲料
医薬
ヘルスサイエンス
短期
中期
長期

(a) 移行リスクに対する脆弱性
移行リスクについては、カーボンプライシングによる財務影響が当社グループにとって最も大きいとの前提のもと、製造現場(工場)を有する事業活動が「移行リスクに脆弱な事業活動」に該当すると判断しております。当社グループの売上の内、91%が製造拠点を有する事業会社による売上であり、これらの事業活動が移行リスクに対して脆弱であると判断しております。
<リスク/機会への対応戦略>当社グループの移行計画を示す、2030年に向けた「SBT1.5℃」目標と、2050年の「SBTネットゼロ」目標に整合したロードマップに基づき、GHG排出量の着実な削減達成を進めております。本ロードマップは、SBTイニシアチブ(SBTi)のガイダンスに則っており、Scope1,2,3における自社努力による排出削減を優先して取り組む移行計画となっており、パリ協定での合意事項が今後大きく後退しないという仮定の下で策定されております。当ロードマップにおいて、当社グループは科学的根拠に基づくGHG排出量削減目標を設定しております。具体的には、2019年を基準年として、2030年までにScope1およびScope2のGHG排出量を50%、ならびにScope3のGHG排出量を30%削減する中間目標を掲げており、これらはいずれもSBT1.5℃水準に整合しております。なお、当社グループの移行計画は、既存の技術および現在利用可能なインフラのみで完結するものではありません。2050年の「SBTネットゼロ」目標の達成に向けては、2030年以降に想定されるエネルギーインフラの整備や脱炭素関連技術の進展を、重要な前提条件の一つとしております。また、当社グループの温室効果ガス排出量の相当部分を占めるScope3排出量の削減については、上流サプライヤーにおけるGHG排出削減の進展が不可欠であることから、サプライチェーン全体での取り組みを前提とした移行計画としております。活用するリソースについては「(ウ)戦略 (ⅱ)気候変動リスク― 移行リスク 投資計画及び処分計画」をご参照ください。また、当社グループでは、GHG排出量削減に加え、気候変動の緩和と適応のための戦略も検討し、組み合わせて対応していきます。
戦略1 Scope1+2の排出量削減
Scope1とScope2の削減は、ネットゼロに向けたロードマップを設定し、「省エネルギー推進」「再生可能エネルギー拡大」「エネルギー転換」の3つのアプローチを組み合わせ、生産・物流の最適化等にも工夫し着実な対応を進めております。アクションの具体例は下表のとおりです。
アクション
省エネルギー推進・キリンビールで、2019年から6工場の排水処理場にヒートポンプシステムを導入
・信州ビバレッジで、ボトル・キャップのリンス水製造工程において直接利用が難しい排熱を、ヒートポンプユニットを介して再度熱利用
・キリンビールの岡山工場で、缶の温水殺菌装置における装置内の排熱や空気中の熱を再利用
再生可能エネルギー拡大・大規模太陽光発電設備をキリンビール9工場(うちPPAモデル購入が8工場)、メルシャン藤沢工場、協和キリン宇部工場、協和発酵バイオ山口事業所、LionのCastlemaine Perkins Brewery、Little Creactures Geelongに導入
・キリンビール全工場・全営業拠点、協和キリン高崎工場・宇部工場・研究所及びLion豪州及びニュージーランドの全拠点、シャトー・メルシャンの全ワイナリーの調達電力の再生可能エネルギー比率100%達成
・Lionで、オーストラリアのカーボンニュートラル認証を取得、ニュージーランドでToitūのカーボンゼロ認証を取得
エネルギー転換・キリンビール、キリンビバレッジのすべての工場、メルシャン八代工場で天然ガスへの燃料転換が完了
・Lionで電気ボイラーの設置。再生可能エネルギー電力利用を拡大
・キリンビール北海道千歳工場にて、2026年6月より化石燃料からグリーン水素へエネルギーを転換する実証事業を開始予定

戦略2 Scope3の排出量削減
当社グループのGHG Scope3排出量の削減において、「温室効果ガスプロトコルの企業算定及び報告基準(2004年)」(以下「『GHGプロトコル(2004年)』」という)「Scope3基準」のカテゴリーのうち約71%を占めるカテゴリー1(原料・資材の製造)の「容器包装」と「農産物原料」、約12%を占めるカテゴリー4(輸送)の「輸送」を主なターゲットとしております。これらターゲットに対し、「自社主体の削減」と「サプライヤーの削減促進」の二側面にてアプローチしScope3排出量の削減を進めております。
「自社主体の削減」では、輸送及び容器包装がターゲットとなります。当社が保有するパッケージイノベーション研究所は消費財メーカーが保有する研究所としては世界で類を見ない規模です。この当社特徴である同研究所の技術を活用したGHG Scope3排出量の削減に取り組んでおります。
「サプライヤーの削減促進」のターゲットは、容器包装やその材料の製造時のGHG排出量や、原料農産物の生産時のGHG排出量です。農産物からのGHG排出量削減には、リジェネラティブ農業が有効であると判断し調査を進めております。
自社が主体となり他社と共同で削減効果を創出するScope3排出量削減アクションの具体例は下表のとおりです。
アクション
資材・原料全般
(Scope3排出量の約7割)
・サプライチェーン環境プログラムを通じたGHGの実排出削減量把握によるScope3排出量算定値の精緻化
容器包装
(Scope3排出量の約3割)
・缶では、軽量化に加えて、CAN to CANのリサイクル率を上げてバージン資材の使用量を削減し、再生材の使用率をできる限り向上
・アルミ缶では、再生可能エネルギーにより精錬されたGHGフリーアルミやリサイクル比率を上げた低排出アルミの実用化が始まっていることを受けて、カーボンフリーアルミ缶導入を検討
・リサイクルアルミ比率を上げた缶蓋「EcoEnd」をビールメーカー4社で共同採用
・ペットボトルでは、ボトル to ボトルの水平リサイクル率の向上のためのリサイクルPET樹脂素材の使用量拡大と製造工程でのGHG排出量を削減
・容器包装の軽量化による輸送でのGHG排出量削減に寄与
・Australian Climate Leaders Coalitionへの参画を通じたScope3排出量の削減取り組みの強化
農産物原料
(Scope3排出量の約3割)
・椀子ヴィンヤードの圃場内での土壌からの正確なGHG排出量の計測と剪定枝のバイオ炭による炭素固定についての共同研究を開始、サプライチェーンへの応用を模索中
・アメリカ New Belgium Brewingで、リジェネラティブ農業による大麦の調達を検討
輸送
(Scope3排出量の約1割)
・生産・物流の最適化(AIや門前倉庫の活用含む)、輸送量平準化、共同配送、モーダルシフト
・大容量バッグでのワイン輸入による海上輸送時排出量削減
・燃料電池トラックやEVトラックへの転換についての検討

GHG排出量(Scope1,2,3)削減目標達成に向けたカーボン・クレジット(温室効果ガスの削減量や大気中からの除去量などを企業間で売買できる仕組み)の購入計画は、現時点では未定です。ただし、2050年の「SBTネットゼロ」目標の内訳として、2050年に基準年比△90%のグロス目標を掲げており、残余排出量として想定する10%について、残余中和の考え方に基づいてカーボン・クレジットの活用を検討してまいります。その準備として、当社グループでは「キリングループカーボン・クレジット方針」を2025年3月に策定し、カーボン・クレジットの利活用の際に、生物多様性への影響や地域社会へのコベネフィットを重視する価値観や質を当社グループの各事業会社で自律的に確認・実行できるように方針とチェックリストを作成しました。近年、カーボン・クレジット市場では、削減効果を示すデータの信頼性や持続可能性等のクレジットが訴求する価値の質がさまざまであることが問題視されております。低品質のカーボン・クレジットは、実際のGHG削減に寄与しない可能性があり、期待する環境への貢献が実現されないばかりか、カーボン・クレジットを利用する企業の信頼性が損なわれる可能性があります。キリングループカーボン・クレジット方針は、高品質で信頼性のあるカーボン・クレジットを購入するための対応策です。また、SBTネットゼロ目標への貢献には算入しておりませんが、商品戦略としてカーボン・クレジットを購入しオフセットする事例もあります。調達の際の対応策としても本チェックリストは有効と考えます。
さらに、当社グループでは内部炭素価格7,000円/t-CO2を設定し、将来発生し得る財務インパクトの試算に活用することで、コスト増のリスクを最小化する投資判断に用いております。
<財務的影響>気候変動の移行リスクについて、当社グループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会への対応戦略、並びにリスク及び機会対応のために発生する財務的影響は以下のとおりです。
当年度においては、リスクは顕在化しておりませんが、カーボンプライシングが導入された場合、エネルギー調達費や原材料調達費が増える可能性があり、その影響が短期、中期、長期に及ぶ可能性があります。GHG排出量削減の戦略を進めることで2025年にて回避できたカーボンプライシングの費用はScope1+2で1,867百万円(基準年とする2019年に対し2025年にて削減できたScope1+2排出量266,668t-CO2×当社内部炭素価格7,000円/t-CO2)と見積もっております。なお、移行リスクが顕在化したことによる調達費への影響は区分して識別することが困難であるため、定量的情報を記載しておりません。
リスク及び機会リスク及び機会への
対応戦略
対応戦略の
財務的影響
財務的影響(百万円)*1
当年度短期
(1年後)
中期
(3年後)
長期
(10年後)
リスク脱炭素社会への移行リスク・気候変動に対する研究開発
・SBT1.5℃目標に向けたロードマップの着実な実行
・物流最適化によるGHG削減
・技術動向の把握とロードマップの適宜更新による、長期的/機動的な設備更新や導入
PL影響
・研究開発費
・規制対応のためのコスト
・再エネ調達・拡大のためのコスト
851約900約3,000約6,000
BS影響
・GHG排出量削減のための省エネ・再エネ設備、エネルギー転換設備の導入費
1,996約4,000約3,000約1,000
合計PL影響851約900約3,000約6,000
BS影響1,996約4,000約3,000約1,000
CF影響*22,847約4,900約6,000約7,000

*1:当社グループでは、当社グループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会の影響が生じると見込む短期・中期・長期の時間軸について、短期を当年度末後1年、中期を2年から3年、長期を4年から10年と定義しておりますが、リスク及び機会対応のために発生する財務的影響の記載に当たっては、短期・中期・長期の数値の傾向を把握できるよう、短期は1年後、中期は3年後、長期は10年後の単年度に発生する数値を記載しております。
*2:CF影響を正確に算出することが困難であるため、PL影響とBS影響の合計額を記載しております。
<短期、中期及び長期にわたる財政状態の変化見込み>移行リスクの投資計画については、以下の投資計画及び処分計画をご参照ください。なお、上記のリスクが、翌年度に関連する財務諸表で報告される資産及び負債の帳簿価額に重要性がある修正を生じさせることはないと考えております。
投資計画及び処分計画
当社はトランジション・リンク・ローンによる資金調達を実行しました(2023年1月実行:金額500億円、借入期間2023年~2033年、返済期限2033年。2023年7月実行:金額300億円及び370億円、借入期間それぞれ2023年~2028年及び2023年~2030年、返済期限それぞれ2028年及び2030年)。GHG排出量削減を主目的とした環境投資の指標としてNPV(Net Present Value)を使用し、投資判断枠組みには内部炭素価格を導入しております。そのKPIはScope1とScope2におけるGHG排出量の削減(基準年度2019年)であり、省エネルギーの推進及び再生可能エネルギーの拡大施策に活用します。2030年以降については、インフラの整備や技術革新を前提として今後検討予定でおります。また、今後「Scope3の移行計画」を検討していく中で「ネイチャーポジティブ」「サーキュラーエコノミー」に関する移行計画も合わせて検討し、統合的な計画として投資や費用を計画します。なお、当期の投資金額は1,996百万円でした。
(ⅲ)自然資本リスク― 原料
農産物原料の調達先における環境対策やGHG Scope3排出量の削減対策の実施は、持続可能なサプライチェーンの強化に繋がると期待しております。
サプライヤーや生産地とのエンゲージメントを深めてさまざまな課題を把握し、共同で解決していくことで、サプライヤーや生産地、当社グループのレジリエンス向上を目指します。
当社グループが2017年から行っているTCFD提言に基づくシナリオ分析により、気候変動がもたらす農産物や水資源への影響の甚大さを把握しました。そして、自然資本への影響を抑え、持続可能な地球を次世代に渡すためには、ネガティブインパクトを最小化し、ニュートラル化するだけでは足りないことが判明しました。このことから、当社グループの環境施策を、自社で完結するものから社会全体へポジティブな影響を与えられるものへと進化する必要性を認識し、取組みを進めております。
(a) ビジネス・モデル及びバリュー・チェーンへの影響
自然資本リスク―原料については、サプライヤーの農産地に集中しており、物理リスクの脆弱性評価において、リスクがあると認識された原料には大麦やトウモロコシ、紅茶葉やコーヒー豆があります(「(ウ)戦略(ⅰ)気候変動リスク― 物理リスク(a) 調達リスク(気候変動による農産物の収穫減のリスク)による物理リスクに対する脆弱性」をご参照ください)。加えて、LEAPアプローチによる分析ではトウモロコシ、大麦、紅茶葉などの原料が当社の事業の依存度が高い原料として認識されております。リスクが顕在化した場合、これらの原材料の調達が不安定になるなどの影響が予想されます。
以上のことから、自然資本リスク(原料)として選定した、当社グループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスクは以下のとおりです。
リスク及び機会バリューチェーン
(当社グループのステークホルダーを記載)
リスク及び機会が顕在化したときに発生するビジネスモデル・バリューチェーンへの影響と財務的影響発生可能性金額的重要性リスク及び
機会の影響が
及ぶセグメント
リスク及び
機会の影響が
発生すると
見込む時間軸
上流当社下流
リスク当社グループのサプライチェーンにおいて、農産物生産地・森林の環境が守られていない事案が発生するリスクビジネスパートナー、地球環境お客様ビジネスモデル・バリューチェーンへの影響
・原材料の不安定な調達
財務的影響
・顧客信頼の失墜による販売機会の喪失による売上の減少
酒類
飲料
医薬
ヘルスサイエンス
短期
中期

<リスク/機会への対応戦略>戦略1 持続可能な農園認証取得支援
前述「物理リスク」戦略2
戦略2 持続可能な森林認証
持続可能な林業や農業を拡大するための取り組みを継続し、認証紙や認証農園由来原料の使用割合を拡大していきます。
当社グループでは持続可能な紙の利用を「持続可能な生物資源利用行動計画」に定め、2020年に紙製容器包装における認証紙または古紙100%を日本国内の飲料事業で達成しました。同行動計画においては、2021年の改訂にて、対象の事業会社を拡大し、紙製容器包装において2030年までに持続可能性に配慮した紙を100%利用する目標に更新し、取り組みを進めております。
戦略3 持続可能なパーム油の調達
当社グループでは、「持続可能な生物資源利用行動計画」にパーム油使用の方針を定め、1次原料及び2次原料のパーム油使用において、持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)認証油への切り替えを進めております。RSPOの認証クレジット(Book & Claim方式)を利用、および、物理的なRSPO認証パーム油の調達を併用し対応しております。RSPO、サプライヤー、NGOおよびさまざまなステークホルダーと連携し、調達先がRSPO認証パーム油を原料として使用できるように取り組みを行ってまいります。当社はRSPOに正会員として加盟し、「持続可能なパーム油ネットワーク(JaSPON)」に参加しております。
<財務的影響>自然資本リスク(原料)について、当社グループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会への対応戦略、並びにリスク及び機会対応のために発生する財務的影響は以下のとおりです。
当年度においては、リスクは顕在化しておりませんが、農産物生産地・森林の環境が守られていない事案が発生した場合、既存顧客との関係悪化に伴う販売機会の喪失により売上が減少し、その影響が短期、中期に及ぶ可能性があります。なお、リスクが顕在化した場合、どの程度の既存顧客に影響を及ぼすかを見積もることが困難であるため、定量的情報を記載しておりません。また、農園認証取得支援にかかる財務的影響は、物理的影響への対応戦略でもあり、その金額をリスク毎に区分することはできないため、定量的情報は物理的影響の財務的影響に記載しております。
リスク及び機会リスク及び機会への
対応戦略
対応戦略の
財務的影響
財務的影響(百万円)*1
当年度短期
(1年後)
中期
(3年後)
長期
(10年後)
リスク当社グループのサプライチェーンにおいて、農産物生産地・森林の環境が守られていない事案が発生するリスク・持続可能な農園認証
・持続可能な森林認証
・持続可能なパーム油購入
PL影響
・認証品の調達費*2
27,422約28,000約29,000約30,000
BS影響
・該当なし
合計PL影響27,422約28,000約29,000約30,000
BS影響
CF影響*327,422約28,000約29,000約30,000

*1:当社グループでは、当社グループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会の影響が生じると見込む短期・中期・長期の時間軸について、短期を当年度末後1年、中期を2年から3年、長期を4年から10年と定義しておりますが、リスク及び機会対応のために発生する財務的影響の記載に当たっては、短期・中期・長期の数値の傾向を把握できるよう、短期は1年後、中期は3年後、長期は10年後の単年度に発生する数値を記載しております。
*2:森林認証の調達費はキリングループ生物資源利用行動計画における対象会社8社を対象に収集しています。対象会社は(オ)指標及び目標(iii)自然資本(原料)*1(定義)をご参照ください。
*3:CF影響を正確に算出することが困難であるため、PL影響とBS影響の合計額を記載しております。
<短期、中期及び長期にわたる財政状態の変化見込み>移行リスクの投資計画に加え、今後、ネイチャーポジティブに関する移行計画も合わせて検討し、統合的な計画として投資を計画します。なお、上記のリスクが、翌年度に関連する財務諸表で報告される資産及び負債の帳簿価額に重要性がある修正を生じさせることはないと考えております。
(ⅳ)自然資本リスク― 容器包装
商品の品質を維持しつつお客様に商品をお届けするためには、容器包装が必要ですが、その製造や運搬におけるGHGの排出は避けられないほか、容器包装の材料の過剰使用や使用済み容器包装の不適切な廃棄は自然資本の毀損につながりかねません。このような容器包装がもたらすさまざまな課題に対処するため、3Rを推進し、容器包装の軽量化やリターナブル容器の活用、リサイクル材の使用を進めてまいります。
(a) ビジネス・モデル及びバリュー・チェーンへの影響
自然資本リスク―容器包装において、プラスチック容器、特に当社グループのプラスチック容器使用量の大半を占めるペットボトルに関し不適切な廃棄による地球環境への影響について社会的に課題が認識されています。これに対し、バリューチェーン全体でのサーキュラーエコノミーへの移行に向けた社会システム構築が必要とされております。リスクが顕在化した場合、ビジネスパートナーからのリサイクルプラスチックの供給不足や使用済み容器の不適切な廃棄への対応費用増加の影響が予想されます。
自然資本リスク(容器包装)として選定した、当社グループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスクは以下のとおりです。
リスク及び機会バリューチェーン
(当社グループのステークホルダーを記載)
リスク及び機会が顕在化したときに発生するビジネスモデル・バリューチェーンへの影響と財務的影響発生可能性金額的重要性リスク及び
機会の影響が
及ぶセグメント
リスク及び
機会の影響が
発生すると
見込む時間軸
上流当社下流
リスクバージンプラスチックに対する規制、及び、リサイクル材料の使用義務の拡大、使用済みペットボトル容器の不適切な廃棄による環境汚染リスクビジネスパートナーお客様、地球環境ビジネスモデル・バリューチェーンへの影響
・規制導入によるバージンプラスチック供給量の減少
・リサイクルプラスチックの供給不足
財務的影響
・規制対応コストの増加
・不適切廃棄への対応費用増加
酒類
飲料
医薬
ヘルスサイエンス
中期

<リスク/機会への対応戦略>プラスチック容器を持続可能に循環する社会を目指し、リサイクルPET樹脂使用比率の向上のため、以下の戦略を取っております。グループ事業のポートフォリオ変化を踏まえ、今後はこれら国内取り組みに加え、海外での戦略を拡げていきます。
戦略1 R100ペットボトル
当社グループでは、2019年に制定した「プラスチックポリシー」に従ってリサイクルPET樹脂を100%使用した「R100ペットボトル」の採用を順次拡大しております。
このリサイクルPET樹脂は石油由来樹脂使用量を90%、GHG排出量を50~60%削減することができます。
2014年に「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」のパッケージの一部にリサイクルPET樹脂を使用しはじめ、その後、2019年にリサイクルPET樹脂を100%使用した「R100ペットボトル」を「キリン 生茶デカフェ」に初めて採用し、R100ペットボトル採用製品を拡大しております。
戦略2 ケミカルリサイクルの拡大
2025年4月から、業界を超えた9社で連携し、飲料用ペットボトルと非食品用途PETを原料とするケミカルリサイクルにより、化粧品や飲料などの各種ペットボトルへリサイクルする取り組みを開始しました。本取り組みは、飲料用ペットボトルのケミカルリサイクル原料の一部を非食品用途PETへ拡大していくことで、これまでのリサイクルでは十分なプラスチックの資源循環には至らないという課題に対応することを目的としております。なお、非食品用途PETを原料に、飲料用ペットボトルとして再生する取り組みは国内初です。
2023年から、キリンビールが飲食店で展開する「Tap Marché(タップ・マルシェ)」及び「TAPPY(タッピー)」のビールサーバー用容器として使用している3Lのペットボトルにおいて、ケミカルリサイクル樹脂を導入しました。酒類のペットボトルにおいてケミカルリサイクル樹脂を導入するのは、日本初です。さらに、2025年12月から、会員制生ビールサービス「キリン ホームタップ」で使用する1Lペットボトルにもケミカルリサイクル樹脂の導入を拡大しました。
戦略3 使用済みペットボトル回収の社会システム構築
当社グループは、PETボトルリサイクル推進協議会の一員として、ペットボトルのリサイクルを推進しております。PETボトルリサイクル推進協議会の第4次自主行動計画(2021~2025年度)では、リサイクル率85%以上の目標に向けて取り組んでおります。2024年のリサイクル率は85.1%で、目標を達成しました。
キリンビバレッジでは、自動販売機横に清涼飲料業界統一仕様の異物混入を削減する新機能リサイクルボックスを2022年10月より導入開始し、2024年末には累計2万個以上を設置しました。今後も業界とともにボトルtoボトル水平リサイクルの取り組みを推進していきます。
<財務的影響>自然資本リスク(容器包装)について、当社グループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会への対応戦略、並びにリスク及び機会対応のために発生する財務的影響は以下のとおりです。
当年度においては、リスクは顕在化しておりませんが、バージンプラスチック使用に対する規制への対応コスト増加の影響が中期に及ぶ可能性があります。また、プラスチックの取扱い及び廃棄などに関連した指摘によるレピュテーションリスクが生じ、売上が減少する可能性があります。なお、リスクが顕在化した場合、どの程度の既存顧客に影響を及ぼすかを見積もることが困難であるため、定量的情報を記載しておりません。
リスク及び機会リスク及び機会への
対応戦略
対応戦略の
財務的影響
財務的影響(百万円)*1
当年度短期
(1年後)
中期
(3年後)
長期
(10年後)
リスクバージンプラスチックに対する規制、及び、リサイクル材料の使用義務の拡大、使用済みペットボトル容器の不適切な廃棄による環境汚染リスク・メカニカルリサイクルの拡大
・ケミカルリサイクルの拡大
・使用済みペットボトル回収の社会システム構築
PL影響
・研究開発費用
・リサイクル樹脂購入費
7,449約7,500約8,800中期水準からの増額を想定
BS影響
・該当なし
合計PL影響7,449約7,500約8,800中期水準からの増額を想定
BS影響
CF影響*27,449約7,500約8,800中期水準からの増額を想定

*1:当社グループでは、当社グループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会の影響が生じると見込む短期・中期・長期の時間軸について、短期を当年度末後1年、中期を2年から3年、長期を4年から10年と定義しておりますが、リスク及び機会対応のために発生する財務的影響の記載に当たっては、短期・中期・長期の数値の傾向を把握できるよう、短期は1年後、中期は3年後、長期は10年後の単年度に発生する数値を記載しております。
*2:CF影響を正確に算出することが困難であるため、PL影響とBS影響の合計額を記載しております。
<短期、中期及び長期にわたる財政状態の変化見込み>移行リスクの投資計画に加え、今後、サーキュラーエコノミーに関する移行計画も合わせて検討し、統合的な計画として投資を計画します。なお、上記のリスクが、翌年度に関連する財務諸表で報告される資産及び負債の帳簿価額に重要性がある修正を生じさせることはないと考えております。
(エ)戦略―レジリエンス
レジリエンス評価に用いた気候変動に関するシナリオ分析、自然資本に関連する分析評価の詳細については、「(イ)リスク管理」をご参照ください。
(ⅰ)気候変動(物理リスク、移行リスク)
(a) 気候変動レジリエンス
認識したリスクに対し、戦略を策定し実行することで、グループの持つ強みを活かした対応により不確実性を減らし、経営のレジリエンスを高めます。
(b) 経営戦略、ビジネスモデルへの影響
1)物理リスク
製造拠点(工場)における水リスク・水ストレスなどを、最新のデータ(Aqueduct4.0)で検証した結果、全体的にリスクレベルが上がっていることがわかりました。農産物に関しても、気候変動の対策を十分行わない場合(シナリオ3に該当)では、2050年(一部は2100年)の段階で、主要な原料農産物の収量や水リスク・水ストレスによる大きな影響は避けられないと判断しております。しかしながら、従来から行っている戦略により、現時点においてビジネスモデルを変更する必要はないと考えております。
2)移行リスク
カーボンプライシングによるエネルギー費用へのインパクトについて、早期に「SBT1.5℃」目標を達成することで46億円(2030年、2℃シナリオ)のエネルギー費用削減効果があると試算されました。2050年までにネットゼロを達成できない場合は、カーボンプライシングのエネルギー費用への影響は無視できないレベルになる可能性があります。農産物価格へのカーボンプライシングによる財務インパクトの試算結果は、気候変動の物理的な影響による農産物価格の財務インパクトと同程度となっております。これらリスクに対し、当社グループでは2050年の「SBTネットゼロ」目標に整合したロードマップを作成し、これに基づいたGHG排出量削減戦略の着実な実行を進めております。戦略実行における投資では、内部炭素価格を用いた試算による投資判断、トランジション・リンク・ローンなどによる資金調達、高品質なカーボン・クレジット採用に向けた環境整備により、コスト増のリスクを最小化した上での「SBT1.5℃」目標達成に向けた取り進めを行っております。これら従来の戦略により、現時点においてビジネスモデルを変更する必要はないと考えております。
(c) 重大な不確実性のある領域
さまざまなシナリオとそれに伴う気候関連の影響をモデル化する際には、多くの不確実性や判断が必要となります。当社グループの気候レジリエンス評価において考慮された重要な不確実性の領域は以下のとおりです。
1)異なるシナリオにおける利益への潜在的な影響
TCFDガイダンスで求められたシナリオ分析へいち早く対応すると共に、複数のシナリオ下にて潜在的な財務影響を推定してきました。例えば、水リスクにおいて、過去の洪水災害による財務インパクト実績(10~50億円相当)に対し、製造拠点の水リスクをAqueduct4.0および自治体が作成しているハザードマップなどを使用した調査・分析や、風水害シミュレーションシステムを利用した洪水リスクの損害予想把握を進めています。ただし、シナリオ分析で想定した気候変動による影響と、算定した財務影響の推定が、将来の気候変動による実際の影響と異なる場合があります。
2)将来の洪水の頻度と強度
気候変動、特に温室効果ガス排出量の増減がグループの主要供給地域における渇水や大雨洪水の頻度と強度にどのように影響するかについては大きな不確実性があります。これらの不確実性は、気候予測の変動性や、気象パターンの変化や気候条件の進化による降雨量の予期しない変化から生じます。
(d) 戦略とビジネスモデルの調整にかかるケイパビリティ
グループの戦略とビジネスモデルは、最も可能性の高い基準シナリオ(前述のシナリオ1)に基づいており、これには適応計画や行動が含まれます。これらの適応計画と行動には、代替材料や生産プロセスの探索、サプライヤーの多様化、これらの取り組みを支援するためのリソースの再配分が含まれます。グループのアプローチは機敏さを保つことであり、気候変動に対応するための戦略とビジネスモデルの調整・適応能力を以下のように評価しております。
1)資金の利用可能性と柔軟性
当社グループには有事の際(気候変動に起因する災害発生も含む)、必要な資金を調達するための仕組みと、そのガバナンスが存在します。
長期短期の様々な資金調達手法を行っており、必要に応じた短期資金としての流動的調達も含め、柔軟な対応が可能です。
2)既存資産の再配置、再利用、性能向上(アップグレード)
資源の再配置、再利用などの判断をするメカニズムがグループ内には存在しており、シナリオ分析においても十分な資産を備えていると評価しております。そのため、短期的には資産を大規模に再配置、再利用、又はアップグレードする必要はないものと見込んでおります。
当該メカニズムが機能した事例としては、例えば、浸水被害を受けた製造拠点に替わって近隣の製造拠点で製造量をカバーし財務への影響を最小限にとどめたケースがあります。また、当該メカニズムを可能とする具体的な施策としては、複数製造拠点の保有、BCP観点を踏まえた調達システムの整備、などが挙げられます。
3)気候関連の緩和、適応、及び機会への投資
気候変動の緩和を目的として、Scope1+2、3の排出削減率目標達成に向けた施策の実行に伴い、必要な投資の整理と財務への影響を試算したうえで、投資を実行して施策の推進を図ります。詳しくは「(ウ)戦略 (ⅱ)気候変動リスク― 移行リスク 投資計画及び処分計画」をご参照ください。この際、トランジション・リンク・ローンによる資金調達を実施し、設備投資などの資本投下によってScope1+2,3の排出量は確実に削減されております。Scope1+2の排出削減率目標達成のために「省エネ」「再エネ拡大」「エネルギー転換」に取り組んでおり、例えば「省エネ」はヒートポンプの導入にてエネルギー効率向上+電化(再エネ使用)の推進に投資をしております。削減は計画通りに進んでおりますが、2030年以降は水素エネルギー転換に向けた投資計画があり、さらに当社グループのケイパビリティを高めます。Scope3の排出削減率目標達成のために、資材の軽量化の取組みや、研究開発要素としてGHG低減を見込んだ原料の探索・開発・製品への展開にも、継続した投資を実行しております。今後の投資予定としては、自社敷地内の再エネ導入の拡大、EV・燃料電池トラックへの切り替えなどを検討しております。
4)リスク及び機会の間のトレードオフの考慮
当社グループはリスクに対する単独の解決策ではトレードオフのリスクがあることを認知しており、ランドスケープアプローチを採用するなど、課題を多面的にとらえながら取組を推進しております。例えば、新たな再生可能エネルギー電源を世の中に創出する「追加性」と、環境負荷や人権に配慮したエネルギーを利用する「倫理性」はトレードオフとなる可能性があることを認識し、再エネ採用及び調達時にはこれらを重視したチェックポイントを含むキリングループ環境価値導入方針に則って事前調査を行っております。これまでの事前調査ではトレードオフとなる事象は顕在化していません。
(ⅱ)自然資本(原料・容器包装)
(a) 自然資本(原料)レジリエンス
気候変動のシナリオ分析(詳細は(イ)リスク管理(ⅱ)リスクの識別をご参照ください)の結果において、農産物の収量減がリスクとして挙がっていますが、(b)経営戦略、ビジネスモデルへの影響 1)で示す通り、従来から行っている戦略により、現時点においてビジネスモデルを変更する必要はないと考えております。
また、「自然関連への事業の依存度」「事業が自然に与える影響度」の評価結果に加え、EUDR(European Union Deforestation Regulation)やSBTN(Science Based Targets Network)リストの集載の有無、調達量、戦略上の優先順位、を総合的に判断し、今後より詳細なリスク・機会の評価を行うべき優先農産物を特定しました。現在、 LEAPアプローチに沿って優先農作物の詳細な分析を進めております。LEAPアプローチに沿った分析の先行事例であるスリランカの紅茶農園のケースからはリスク低減・機会獲得の観点からも、レインフォレスト・アライアンス認証取得支援や、リジェネラティブ・ティー・スコアカードの普及が有効であると考え、目標を達成するための指標の1つとしております。
これから更にLEAPアプローチに沿った分析を進める中で、対応戦略やビジネスモデルの見直し要否を検討してまいります。
(b) 自然資本(容器包装)レジリエンス
自然資本(容器包装)の負の影響に関する当社グループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスクが発生すると見込む時間軸から、同課題に関する当社グループのレジリエンスは中期の時間軸で評価を行っております。当社グループでは、「容器包装」に関する大きな社会課題の1つである「プラスチック廃棄物課題」の解決に向けた取り組み方針「キリングループ プラスチックポリシー」を2019年に策定し、プラスチックが抱える本質的な課題を把握し、グループ各社が提供するプラスチック容器包装等に対する適切な取り組みを迅速に進めることで、プラスチックの持続可能な使用及び資源の循環を推進しております。バージンプラスチック使用に関する規制の導入による使用制限や、リサイクル材料の使用義務化が生じた場合でも、これまでに培ってきたリサイクルプラスチックの採用技術や、その他素材も対象とした容器包装開発力を活かし、バージンプラスチックの使用量を減らすことでその影響を小さく止める方針です。当社グループは、自社内で容器包装の開発や改良、その課題解決を行うパッケージイノベーション研究所を保有しております。その強みを生かし、容器包装の変革を通じて、サーキュラーエコノミーの実現に貢献することを目指しています。容器包装の軽量化などでScope3排出量の約12%を占める輸送のGHG排出量を削減するとともに、ケミカルリサイクルの拡大や社会全体でプラスチックが循環する社会の構築にも取り組み、サーキュラーエコノミーに貢献します。
以上のビジネスモデルへの影響度分析を実施した結果、中期的に自然資本(容器包装)の負の影響が当社グループの想定を超えて発生した場合でも、当社グループは当該不確実性の顕在化に対応する能力を有しており、自然資本(容器包装)に関する当社グループの現在のビジネスモデルを変更する必要はないと評価しております。
なお、自然資本(原料)および自然資本(容器包装)のレジリエンスへの対応にあたっては、短期的なコストの増加や選択肢間の優先順位といった制約(トレードオフ)が生じる可能性があることを前提としております。当社グループではこうした前提条件を踏まえつつ、中長期的なリスクの低減及び事業レジリエンスの向上を重視した選択、意思決定を行っております。
  • 有価証券報告書-第187期(2025/01/01-2025/12/31)

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