有価証券報告書-第56期(令和2年5月1日-令和3年4月30日)

【提出】
2021/07/28 13:06
【資料】
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【項目】
163項目

対処すべき課題


下記の文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2021年7月28日)現在において当社グループが判断したものです。
(1)当社グループの経営の基本方針
当社グループは創業以来、「お客様第一主義」の経営理念に基づき、全社員が「STILL NOW(お客様が今でもなお何を不満に思っていらっしゃるか)」を考え、「自然・健康・安全・良いデザイン・おいしい」の製品開発コンセプトに基づき、お客様にお喜びいただける製品の開発と、お客様に密着したサービスに努めてまいりました。
当社グループの考える「お客様」とは、「消費者の皆様・株主の皆様・販売先の皆様・仕入先の皆様・金融機関の皆様・地域社会の皆様」であり、単に消費者の皆様にとどまらず、当社グループと関わりを持たれるすべての方々を「お客様」と定義しております。
全社員が「STILL NOW(お客様が今でもなお何を不満に思っていらっしゃるか)」の精神を持ち、「お客様」にお喜びいただける最良のサービスをご提供することが、最良の経営につながるものと確信しております。
今後も、当社グループは「お客様第一主義」の経営理念に基づき、継続的に企業価値を高め、より一層株主価値を向上させる経営に努めてまいります。
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(2)当社グループの中長期的な経営戦略
当社グループは、2017年6月に2022年4月期までの中長期経営計画を発表いたしました。
当社グループは、「お客様第一主義」の経営理念のもと、長期ビジョン「世界のティーカンパニー」を目指し、次の4項目を重点に取組んでまいります。
第1に、国内事業のさらなる強化です。訪問の強化や新規顧客の獲得に加え、「お~いお茶」を中心とした主力ブランドの販売を強化し、マーケットシェアの向上を目指します。また、1,000万ケース超のブランドを現在の4つから6つに拡大を目指します。引き続き収益性を改善し生産性を向上させ、利益率の向上に取組んでまいります。
第2に、海外事業の展開強化です。グローバルブランド「MATCHA GREEN TEA」を中心としたリーフ(ティーバッグ)製品販売や抹茶製品の強化により、北米を中心に2桁成長を目指します。国内・海外ともに緑茶でNo.1の地位獲得が目標です。このため、海外との人事交流などによるグループシナジー(相乗効果)の拡大を目指してまいります。
第3に、ROE経営の強化です。収益改善に向けた取組みを継続し、総還元性向の高い経営を目指してまいります。
第4に、CSR/CSV経営とESGへの取組みの強化です。本業を活かしたCSRに加え、環境・社会・ガバナンスのESG課題への取組みを強化し、社会課題解決と企業価値の両立を目指し、CSV(共有価値創造)経営の実践と持続可能な成長への基盤を強化してまいります。
(3)当社グループの対処すべき課題
当社グループは今後、法令及び社会的規範の遵守、製品の安全性並びに品質管理体制等、企業の社会的責任に消費者の厳しい目が向けられるなか、経営理念であります「お客様第一主義」を徹底し、企業価値を高め、一層の株主価値を向上させるために、以下の項目を中心に取り組んでまいります。
① ブランドの確立
1.製品開発
当社は、「自然・健康・安全・良いデザイン・おいしい」を製品開発コンセプトに、全社員が「STILL NOW(お客様が今でもなお何を不満に思っていらっしゃるか)」を考え、当社独自の提案制度であるVoice制度(お客様のご不満やご要望を製品開発に取り入れる提案制度)を活用し、積極的に新製品の開発及び既存製品の改良を行っております。今後もVoice制度を積極的に活用し、お客様のニーズに即した製品開発・改良に努めてまいります。
2.研究開発
当社製品開発コンセプトの内、特に「健康」、「安全」、「おいしい」に重点をおいて、基礎・応用研究を進めております。当社が提供する製品が、人々の健康維持に有用であることを、様々な試験を通じて検証し、常に最新情報を発信し続けます。更に健康価値を表示できる特定保健用食品や機能性表示食品の開発にも力を注いでいきます。また、飲料のおいしさに関与する成分研究、物性に関する研究を進め、より優れた製品開発に向けた技術提案を行ってまいります。
3.ブランド強化政策
「伊藤園(ITO EN)」という「総称ブランド」を軸に、「お~いお茶」「健康ミネラルむぎ茶」「TULLY'S COFFEE」「1日分の野菜」などの「個別ブランド」の強化を図ってまいります。
特に主力製品であります「お~いお茶」につきましては、1985年の発売から続いている原料と製法にこだわり、無香料・無調味の自然のままのおいしさを引き出し、お客様へご提供してまいります。また、緑茶飲料が様々な飲用シーンでお楽しみいただけるよう、容量、容器バリエーションの充実を図るとともに、緑茶飲料を初めて発売した当社ならではの技術力で、季節に合わせた製品や「濃い茶・ほうじ茶・抹茶入り・玄米茶」など、茶葉の特徴を取り入れ、飲用価値を訴求した製品を発売し、緑茶飲料のNo.1ブランドに甘んずることなく、清涼飲料のNo.1ブランドを目指し、より一層のブランド強化に努めてまいります。今後も品揃えを強化し、お客様にご満足いただける本物のおいしさをご提供してまいります。
② 営業基盤の強化
1.ルートセールス
ルートセールスとは、「製品、サービスをお客様へ直接ご提供する販売システム」のことであります。当社はこのシステムを採用することにより、当社とお客様をダイレクトに結びつけ、地域に密着した営業活動を展開しております。
また、機能性、携帯性に優れたルートセールス担当営業員用のポータブル端末を活用することで、お客様に効率的かつ的確なサービスをご提供できるよう努めております。
2.お客様へのサービスの強化
これまでもルートセールスにより、お客様へのサービスに努めてまいりましたが、確固たる営業基盤を築くため、新しいお客様の開拓に努めるとともに、既存のお客様への訪問サービスの強化を行っております。
また、お客様のご不満を聞き、お客様にご満足していただける製品開発や魅力的な売り場づくりなど、総合的なご提案をルートセールスにより行っております。
③ 総コストの削減
1.委託生産方式
飲料製品におきましては、「ファブレス(fabless 工場を持たない)」方式により、設備投資リスクの軽減を図り、市場環境の変化に迅速に対応できる体制にしております。
また、全国を5つの地域に分けて生産管理を行う5ブロック生産体制を敷くことにより、迅速な製品供給を行うとともに、物流の効率化も可能となっております。
2.原材料調達力の強化
当社は、緑茶のトップメーカーとして国内荒茶生産量の約4分の1を取扱い、長年にわたり生産者との信頼関係を築き上げた結果、高品質の原料茶を安定的に確保できる極めて強力な原料調達力を持っております。
また、これまでに蓄積したノウハウと高い製造技術により、高品質の飲料用原料茶を自社製造で調達することができる飲料メーカーであります。
国内では就農者の高齢化と後継者不足のため、就農人口、茶園面積の減少が進んでおります。そこで当社は、今後特に需要の増大が見込まれる飲料用原料茶を主体に、九州5県に加え静岡県での茶産地育成事業を行っております。苗木の選定から茶園づくり、そしてその茶園を機械化、IT化により低コストで管理できる栽培及び荒茶加工ノウハウを、当社が農家に対し提供することで、生産性と環境保全を両立した茶園経営を推進し、より高品質な原料茶の安定調達を目指すとともに、耕作放棄地の活用及び生産農家の後継者育成ならびに雇用の創出など茶業界と地域の活性化にも寄与しております。
④ 海外事業の強化
連結子会社であるITO EN(North America)INC.が米国における緑茶市場の創造と開拓を進めるため、全米のナチュラルフードマーケットや、ナショナルチェーン店等に対し営業活動を行い、本物の緑茶を米国に普及させると同時に、「ITO EN」ブランドの確立を図っております。ティーバッグ製品ITO EN「MATCHA GREEN TEA」につきましては、これまで米国市場には無かった高品質の緑茶ティーバッグとして、お客様に大変なご好評をいただくとともに、緑茶市場の拡大に大きく貢献しており、今後も強化してまいります。また、中国、東南アジア、豪州につきましても、引き続き販売強化を進めてまいります。
⑤ ESG(環境・社会・ガバナンス)への取組みの強化
外部環境は大きく変化しており、当社グループが持続的成長をしていくためには、財務面だけでなく、非財務面での取組みや戦略の重要性がますます高まっています。廃プラスチック問題、気候変動、水資源問題や持続可能な農業、サプライチェーンを含む人権等の社会課題に適切に対応し、中長期的な企業価値の向上を実現していかなければなりません。
環境保全におきましては、環境方針のもと中長期環境目標を設定し、目標達成に向けて積極的に取組むとともに、各環境課題への対応を推進しております。また、環境活動の持続的な改善に有効な手段として、ISO14001に沿った環境マネジメントシステムを導入し、全社全部門において認証を取得しております。
廃プラスチック問題につきましては、ペットボトルの軽量化などに加え、2030年までにペットボトルに使用するリサイクル素材等(生物由来素材を含む)の割合を100%にする目標を掲げ、資源循環に取組んでいます。
気候変動問題につきましては、2030年度、2050年度のCO2排出量削減目標としてそれぞれ、Scope1、2で総量26%削減、50%削減、Scope3で原単位26%削減、50%削減(基準年はすべて2018年度)を掲げました。また、気候変動シナリオ分析として、主力製品の原料である茶葉の収量への影響を評価しました。
持続可能な水資源の利用につきましては、2021年4月に「水資源に関する中長期環境目標」を策定し公表いたしました。
人権等の社会課題につきましては、2020年4月に国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた「伊藤園グループ人権方針」を策定し公表いたしました。
当社グループの経営理念であります「お客様第一主義」のもと、社会に求められる企業としてESGへの取組みを強化し、「世界のティーカンパニー」の実現に向けて、新たな食文化の創造と生活提案を行い、社会課題解決と企業価値の両立を目指すCSV(共有価値創造)経営を実践してまいります。
⑥ 新型コロナウイルス感染症拡大の抑止に向けた取組み
当社グループの事業環境は、世界的に感染が拡大している新型コロナウイルス感染症を契機として急速に悪化しており、不確実性が高まっております。
国内経済においては、政府による緊急事態宣言発出やまん延防止等重点措置が適用され、個人の外出自粛や企業の事業活動が制限されるなど前例のない状況もあり、先行き不透明な状況が続くと想定されます。
当社グループは、新型コロナウイルス感染症の拡大を抑止するため、お客様、お取引先様および社員の健康と安全を確保していくことを最優先とし、当社ウイルス感染対策室が策定した方針を全社員が周知徹底しております。