訂正有価証券報告書-第156期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/07/08 14:05
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【項目】
135項目

研究開発活動

当社グループは、「環境、ライフサイエンス、高機能で、社会に貢献する価値を、創造しつづけるカテゴリー・リーダー」をめざし、これまで培ってきたコア技術である「重合・変性」、「加工」、「バイオ」を組み合わせ、融合させることで、新製品や新技術の創出に注力しました。
当社グループの研究開発は、セグメントごとに担当事業部が直接運営する事業部研究部門と、中長期的視点から次代を担う新製品・新技術を開発する全社共通のコーポレート研究部門とに大別されます。これらの研究開発のマネジメントは事業開発企画室が担当し、各部門相互の連携を図りながら、当社グループの総合力を発揮した研究開発活動を推進しました。
(フィルム・機能樹脂事業)
包装用フィルム分野では、高強度で薄肉化が可能な熱収縮性ポリエステルフィルム“スペースクリーン”、飲料向けでは日本で初めてのポリエステル系縦収縮ラベル、高耐熱高剛性ポリプロピレンフィルム、薄肉ナイロンフィルム、無機二元蒸着バリアフィルム“エコシアール”等の新商品・新技術の開発を進めました。“スペースクリーン”については食品以外の業界についても積極的にマーケティング活動を展開し、書籍ラッピング用などへの採用が進みました。
工業用フィルム分野では、液晶ディスプレイ用のバックライト光源のLED化が進むなか、LED光源の特徴との組み合わせにより、虹むらを解消し、画像の再現性を高める超複屈折フィルムを開発、液晶テレビ向けに販売を開始し、タッチパネル用途への展開も進めています。また、ハードコーティング加工時の干渉ムラ発生を抑制したタッチパネル等向けのポリエステルフィルム、新規ハイクリーン離型フィルム、従来品より高い耐久性(耐加水分解性)を持つ太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム“シャインビーム”など製品ラインナップの拡充を進めたほか、光学用ポリエステルフィルム“コスモシャイン”の低収縮品や低オリゴマー品を開発しました。
さらに、環境を意識したバイオポリエステルフィルムやリサイクルポリエステルフィルムを上市しました。また、新設したハイブリッド型ポリエステルフィルム製造設備では、蒸着用ポリエステルフィルムや薄物の工業用フィルムなどの生産を開始しました。
重金属を含まず環境に優しいポリエステル重合触媒“TOYOBO GS Catalyst”については、高耐久性フィルム、熱収縮フィルムおよび太陽電池積層モジュール用接着剤等の開発を進め、優れた特性を有する樹脂を得ることに成功しました。また、触媒ライセンス事業については、海外有力PETメーカーと生産化に向けての検討を開始しました。
エンジニアリングプラスチック分野では、自動車用途で年々高まる軽量化の要求に応えるべく種々の素材にて開発を進めました。高機能性ポリアミド“グライマイド”ではエンジンカバー材用発泡成型グレードの用途拡大を行いました。また、新たに高機能性ポリエステルエラストマー“ペルプレン”での発泡成型技術に成功し、自動車内装品用途への検討を進めました。さらに、高機能性ポリエステル樹脂“バイロペット”では自動車エアーダクト用中空成形グレードの開発に成功しました。バイオマス原料を用いた高融点ポリアミド樹脂“バイロアミド”については、LED部品など電気・電子用途への採用が拡大したほか、環境ニーズを捉えた自動車用途やSMTコネクター関連グレードの開発も進みました。
高機能性共重合ポリエステル樹脂“バイロン”については、樹脂設計・配合技術の活用により、電気・電子、環境分野での接着剤、コーティング剤の開発を進めました。太陽電池積層モジュール用接着剤では、より一層の高耐候化、長期耐久化を図ることができました。スマートフォンなど情報端末のタッチパネル周辺やプリント回路積層部には、高耐熱性を有する新規変性樹脂のコーティング剤や共重合ポリアミドイミド樹脂“バイロマックス”を用いた接着剤の採用が進みました。さらには微細印刷性を可能とする導電性ペーストの開発を進めました。変性ポリオレフィン樹脂“ハードレン”については、自動車バンパー塗料やパッケージング印刷インキ分野で環境に配慮したノントルエンタイプや水性エマルジョンタイプ等の採用が国内外で拡大しました。また、“バイロン”の接着剤処方を“ハードレン”に応用し、主にオレフィン積層用接着剤として開発を進め、提案を開始しました。
以上、当事業に係る研究開発費は49億円であります。
(産業マテリアル事業)
自動車関連分野では、低樹脂塗布量でも耐熱性を維持したエアバッグ用シリコーンコーティング基布を開発し、販売を開始しました。また、国内に加えタイ、中国、北米などのグローバル供給体制の構築を進めました。
復興支援を目的に結成した「東洋紡グループ震災復興対策チーム」では、除染・放射能汚染廃棄物処理に関する資材開発に取り組みました。新たに、セシウム吸着資材として土木用途で実績のあるPETスパンボンドに高吸水膨潤性繊維“ランシール”を組み合わせた土木用不織布“ボランシール”などを開発し、被災地での屋外実証試験を実施しました。
超高強力ポリエチレン繊維“ダイニーマ”では、高強度化した新銘柄を開発し、LNGタンカーの係留ロープなどへの採用が進みました。
フィルター分野では、燃料電池用フィルターを開発し、販売を開始しました。環境関連装置では、水溶性VOCを含んだ排ガスの処理を可能とした、窒素脱着式VOC吸着回収装置を開発し、販売を開始しました。
三次元スプリング構造体“ブレスエアー”は、国内では生産能力を増強し、一般寝装分野、介護・医療分野の普及、定番化を進め、快眠をサポートする素材として消費者の認知度が向上しました。また、環境意識の高い欧州でも新設備が稼働し、家具用途への販売をはじめ、医療用マットレス、ボート、自動車や鉄道向けシートなどの用途展開を図りました。
衛生材料分野では、紙おむつ、ナプキン向けに、ソフトで肌にやさしいプレミアム不織布用原綿を開発し、販売を開始しました。バグフィルター向けに販売しているPPS繊維“プロコン”は、他社に先駆けフィルターの濾過性能が向上する異型断面タイプ、フィルターの耐用年数を伸ばした高強度タイプを開発し、販売を開始しました。
以上、当事業に係る研究開発費は10億円であります。
(ライフサイエンス事業)
バイオケミカル分野では、主力の血糖測定用酵素の新製品の開発を行い、マーケット展開を開始しました。診断システムでは、中小病院を対象とした小型尿沈渣システム、バイオ研究試薬では、創薬支援関連の前処理試薬をそれぞれ開発し、国内販売を開始しました。
医療機器分野では、神経再生誘導チューブ“ナーブリッジ”を整形外科、形成外科領域で販売するとともに、顔面神経など手足以外の末梢神経への展開を開始しました。また、合成系生体適合性材料“セックワン”のカテーテル領域への事業展開を進めました。
人工腎臓用中空糸膜では、血液透析濾過用膜を新たに開発し、生産を開始しました。
水処理膜では、海水淡水化用逆浸透膜モジュールの高性能化を図り、市場での競争力強化を進めました。また、排水再利用市場をターゲットにした新製品の開発とその実用化研究を進めました。
以上、当事業に係る研究開発費は10億円であります。
(衣料繊維事業)
スポーツ分野では、ストレッチ性、キックバック性に優れたポリエステル100%生地“テクニスタ48”のテキスタイルバリエーションを拡充し、スポーツシャツ・ユニフォームへの採用が進みました。
アウトドア向けとして熱線反射保温生地“メタルギア”を、中東民族衣装向け生地として長短複合素材“ROYAL MIX”の新バージョンをそれぞれ開発し、販売を開始しました。
インナー分野では最高級原綿を用いたソフトな風合い、高品位のインナー素材に、機能性を付与することで着用快適性をさらに向上させました。
海外展開では、日本、中国、インドネシアなどに配置した開発担当者間の連携を高め、高機能商材の開発・技術移転をさらに強化しました。
以上、当事業に係る研究開発費は4億円であります。
(全社共通)
全社共通の研究開発組織であるコーポレート研究所は、当社グループの次代を担う新製品・新技術の開発を行うだけでなく、各種分析・評価業務やコンピューターシミュレーションによる解析業務を実施するなど、全社研究インフラとしての機能も有しています。
当社グループは、「環境」「ライフサイエンス」を中心とした各分野で求められる高機能製品の開発を通して、カテゴリー・リーダーとなることをめざしています。コーポレート研究所においても、これらの分野へのさらなる展開をはかるために、ナショナルプロジェクトへの参画や外部機関とのオープンイノベーション活動を積極的に進めました。
当社の高分子重合技術や成形加工技術を駆使した耐熱性・寸法安定性に優れる新規ポリイミドフィルムについては、一部製品への採用が決定しました。今後、さらにマーケティングを行い、ユーザーおよび用途の拡大を進めていきます。
さらに、新規機能性水処理膜については、ユーザー評価およびフィールド試験を実施し、実用化に向けた検討を行いました。また、衣料繊維の開発の中で培ってきた「快適性評価技術」については、フィルムやシート材料等の高分子成形品へ応用した製品が上市されるなど、コア技術の深化・融合による新製品の開発を引き続き推進しました。
以上、全社共通のコーポレート研究に係る研究開発費は32億円であります。