有価証券報告書-第159期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/28 14:06
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126項目

研究開発活動

当社グループは、「順理則裕」の企業理念のもと、「環境、ヘルスケア、高機能で、社会に貢献する価値を、創りつづけるカテゴリー・リーダー」をめざしています。長年培ってきたコア技術である「重合・変性」、「加工」、「バイオ」をさらに発展・深化させるとともに、それらを組み合わせ、融合させることで、新製品、新技術、新機能の創出に注力しました。
当社グループの研究開発は、セグメントごとに担当事業部が直接運営する事業部研究部門と、中長期的視点から次代を担う新製品・新技術を開発する全社共通のコーポレート研究部門とに大別されます。これらの研究開発のマネジメントは事業開発管理部が担当し、各部門相互の連携を図りながら、当社グループの総合力を発揮した研究開発活動を推進しました。
(フィルム・機能樹脂事業)
包装用フィルム分野では、薄肉化可能な環境対応商品として高強度で縦・横・両方向に収縮可能な熱収縮性ポリエステルフィルム“スペースクリーン”、高耐熱高剛性ポリプロピレンフィルムが用途拡大し、環境を意識したバイオマス原料を使用したポリエステルフィルム“バイオプラーナ”やリサイクル原料を使用したポリエステルフィルム“サイクルクリーン”も採用・用途が拡大しました。また、タフネス性を有した高強度ポリエステルフィルム“タフスター”、無機二元蒸着バリアフィルム“エコシアール”等の新商品は認証・採用が拡大しました。食品用途以外の業界についても“オリエステル”等でショッピングバッグや折り紙、ブックカバー、ひねるだけで臭いが気にならないおむつ処理袋“ひねってポイ”などさらに採用が進みました。
工業用フィルム分野では、液晶ディスプレイ用のバックライト光源のLED化が進むなか、LED光源の特徴との組み合わせにより、虹むらを解消し、画像の再現性を高める超複屈折フィルム“コスモシャイン SRF”が液晶テレビ向けおよびカーナビ用のタッチパネル用途に販売を拡大しました。さらなる供給量拡大のためにつるがフイルム工場でも増産体制を確立し、今春より販売開始の予定であります。また、市場の要望に応えるために薄膜化製品の開発に注力しています。電子部品用ハイクリーン離型フィルムについては販売が拡大しました。また、工業用メカニカルリサイクルポリエステルフィルム“リシャイン”、コンシュマーラベル用合成紙“カミシャイン”、タッチペンの耐久性を向上した電子辞書用透明導電性フィルム等を開発上市しました。
重金属を含まず環境にやさしいポリエステル重合触媒“TOYOBO GS Catalyst”については、その優れた特徴を活かし、太陽電池用高耐久性フィルム用途や特殊繊維用途の拡大が進み、機能性フィルムや成型用途での検討が進みました。また、GS触媒ライセンス事業については海外大手PETメーカーにおける商業生産の目処が立ちました。
エンジニアリングプラスチック分野では、自動車用途で年々高まる軽量化要求に応えるべく種々の素材で開発を進めました。その結果、金属代替樹脂、ゴム代替樹脂などの用途を中心に日系自動車への採用が拡大しました。また、着実な海外拠点拡大を進める中で、強みの自動車内装用途を中心に欧米自動車メーカーへの採用も増えつつあります。特に、さらなる自動車の環境対応ニーズにあわせて超微細発泡技術、超耐熱技術、異種素材接着技術を加味したグレードを開発し、高機能性ポリアミド樹脂“グラマイド”と高機能性ポリエステルエラストマー“ペルプレン”を中心にラインナップさせ用途開発を促進させました。高機能性ポリエステル樹脂“バイロペット”ではランプエクステンション材や自動車内装部品において海外での採用の拡大が順調に進みました。バイオマス原料を用いた高融点ポリアミド樹脂“バイロアミド”については超耐熱と高強度を活かした各種産業用機構部品への採用も始まりました。
高機能共重合ポリエステル樹脂“バイロン”は、従来に比べ高密着、高耐久化できる樹脂変性方法を開発しました。これにより電気電子、自動車周辺用途の塗料、接着用途に評価、採用が進みました。高耐熱共重合ポリアミドイミド樹脂“バイロマックス”は応用開発による耐久性、耐熱性の改良を進めた結果、電気電子用途での採用が拡大しました。変性ポリオレフィン樹脂“ハードレン”は、海外向けの新規樹脂開発、技術サービスを強化することで、自動車バンパープライマー用途や電子部品用接着剤などで新市場を獲得しました。“バイロン”と“ハードレン”の素材、技術を融合した高機能樹脂変性技術は、引き続き開発を進めています。
以上、当事業に係る研究開発費は51億円であります。
(産業マテリアル事業)
自動車関連分野では、長繊維不織布を使用したトノカバー“モデナ”を展開していますが、中国国内での現地調達の要望が高まり、OEMによる現地生産体制を整え、販売を開始しました。エアバッグ用基布は、グローバル供給体制の整備や共通仕様化を進め、海外ユーザーへの展開を進めました。
超高強力ポリエチレン繊維は、世界戦略製品と位置付けし、平成28年4月より新商標“イザナス”に変更しました。また、より高強度化の製品を生産するための新技術を開発しました。
フィルター分野では、新型高帯電エレクトレットフィルターを開発し、マスクやOA機器用途への販売を開始しました。
三次元スプリング構造体“ブレスエアー”は、柔らかさと底付き感の抑制の両立および従来品と比較し、体圧分散性もさらに向上させた三層構造タイプを開発し、大型寝装企画や大手ペットケア関連メーカーと共同開発した介護用ペットベッドに採用されました。
雑貨分野では、吸放湿する機能皮革“ブレスレザー”の快適性をレベルアップさせ、ランドセルの背裏や肩ベルトの部位に採用されました。
以上、当事業に係る研究開発費は11億円であります。
(ヘルスケア事業)
バイオケミカル分野では、主力の血糖測定用酵素の新製品の採用が着実に進みました。診断システムでは、遺伝子検査システム用の試薬の新銘柄を追加しました。バイオ研究試薬では、エピジェネティクス研究用の画期的な新製品を開発し、販売を開始しました。また、食品検査用試薬の採用も進みました。
医療機器分野では、神経再生誘導チューブ“ナーブリッジ”が整形外科医等の標準治療として認められ、大学病院だけでなく、一般病院においても臨床使用数が増加し、平成28年に保険請求が承認された歯科・口腔外科領域での適用も拡大しています。また、材料表面の生体適合性を向上させる医療用コーティング“セックワン”関連では、昨年、製造販売の承認を取得した末梢静脈挿入用カテーテルに続き、バスキュラーアクセスカテーテルを上市し、商品のラインナップ拡充を図りました。さらに、次世代の骨再生誘導材については、歯科・口腔外科領域の治験も順調に進んでいることから、厚生労働省の承認申請に向けた準備を開始しました。
人工腎臓用中空糸膜では、血液濾過用ならびに血液透析用の非対称膜の開発を進めました。また、これらの商品の生産性の効率を上げるプロセス開発に取り組みました。
水処理膜では、海水淡水化用正浸透膜の開発と、モジュールの高性能化、およびその実用研究を進めました。
以上、当事業に係る研究開発費は9億円であります。
(繊維・商事事業)
中東民族衣装向け生地については、長短複合紡績糸使用織物“Royal Mix”の新風合い加工開発を進め、トップブランドとしての評価を高めました。
ビジネスウェア分野では、スポーツ分野で培った技術を駆使し、ストレッチ性、イージーケア性に優れたニットスーツ、シャツのテキスタイルバリエーションの拡充、機能加工との組み合わせを行い、採用が進みました。
スポーツ分野ではアウトドア用途向けに耐摩耗性に優れた織物“シルファイン”シリーズや“マナードウール”、インナー分野では大手SPAとの取組で機能ワタ“デオドランC”や特化紡績糸の採用が進みました。
フィルム状導電素材“COCOMI”を用いた生体情報計測ウェアの開発については、ナショナルプロジェクトに参画するとともに積極的な研究開発およびマーケティング活動を進め、競走馬の心拍計測用腹帯カバーや眠気検知システムへの展開に道を拓きつつあります。
機能材分野では、ヒートアイランド現象に対する環境対策として保水パネル“アースキーパー”を開発しました。多孔質骨材と吸水性繊維をセメントで固めたパネルが水分を保持し、効率的かつ持続的に蒸発することによる打ち水効果で建物、道路等を冷却します。今後、販売を促進していきます。
以上、当事業に係る研究開発費は6億円であります。
(全社共通)
全社共通の研究開発組織であるコーポレート研究所は、当社グループの将来を担う新製品・新技術の開発を行うだけでなく、各種分析・評価業務やコンピューターシミュレーションによる解析業務を通じて、研究開発全般を支援する全社研究インフラとしての機能も有しています。また、新技術の調査および研究開発のスピードアップを図るため、ナショナルプロジェクトへの参画や国内外の企業、大学、研究機関との連携を通したオープンイノベーション活動を積極的に進めています。
当社の高分子重合技術や成形加工技術を駆使した耐熱性・寸法安定性に優れる新規ポリイミドフィルムについては、ハイエンド製品を中心に着実に用途を拡大させつつあります。より一層の研究開発およびマーケティング活動を進め、ユーザーおよび用途のさらなる拡大をめざします。
当社はこれまでバイオ由来の原料から重合したバイオ樹脂の製造・販売を実施してきましたが、この度、ガスバリヤ性に優れたポリエチレンフラノエートの製造、フィルム化について国内外の企業と連携しその開発を進めています。
以上、全社共通のコーポレート研究に係る研究開発費は34億円です。