有価証券報告書-第159期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/28 14:06
【資料】
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【項目】
126項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「順理則裕(じゅんりそくゆう)」を基本理念に捉えております。これは、「道理に生きることが、すなわち繁栄につながる」を意味しております。当社グループはこの理念に従い、今後とも皆様から信頼される企業であり続けるために、社会に役立つ製品やサービス等の提供を通じて、健全で持続可能な社会づくりに貢献してまいります。
当社グループの経営方針は、「不断のポートフォリオ改革」であります。収益性が高く成長力のある事業に経営資源を集中し、国内外での積極的な拡大を進めるとともに、資産効率を高め財務体質を強化することにより、企業価値のさらなる向上を進めてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループが重視する経営指標は、「使用総資本営業利益率(ROA)」であります。資本コストを勘案し、ROA8%以上をめざしております。各事業部およびグループ各社の事業を、損益、ROAおよびキャッシュ・フローという共通の基準で評価し、ポートフォリオ改革に取り組んでおります。
財務体質に関しては、「有利子負債と純資産(非支配株主持分を除く)の比率(D/Eレシオ)」を重視しており、より強固な財務体質をめざし、D/Eレシオを1.0倍まで引き下げることを目標にしております。
(3)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題
当社グループは、「事業の成長拡大」に向けたアクションプランとして、「海外展開の加速」、「新製品の拡大・新事業の創出」、「国内事業の競争力強化」、「資産効率の改善」、「グローバル経営機能の強化」の5つを掲げております。これらのアクションプランのもと、これまで、エアバッグ用基布の海外拠点整備、またフィルムの新設備稼働や新製品拡販、さらにはポリエステルチェーン改革など、事業基盤の強化に取り組みました。今後は、こうした事業基盤を最大限に生かして、「事業の成長拡大」に取り組みます。
①海外展開の加速
当社グループは、現在、海外売上高比率が約30%にとどまっており、海外での事業拡大が課題であります。今後は、海外拠点の事業インフラの活用やアライアンス、M&Aなどを組み合わせて、特長ある製品や各地域のニーズに合った製品を、新興国など成長市場を中心に拡販していきます。
具体的な事例としては、エンジニアリングプラスチック事業で、新たに販売拠点を設立するインドにおいて事業の拡大を図ります。また、エアバッグ用基布事業では、「原糸から基布まで一貫生産のグローバルメーカー」をめざし、タイでの能力増強を手始めに海外展開を加速していきます。
また、海外での事業展開を支える人材の確保と育成も重要な課題であるとの認識から、海外拠点においては、現地スタッフの採用と育成を強化するとともに、多様な人材を幅広く活用していく人材戦略にも積極的に取り組んでいきます。
②新製品の拡大・新事業の創出
新製品の拡大では、液晶テレビ用途で大手偏光板メーカーに採用された“コスモシャイン SRF”を中心に、成長が期待される新製品を計画どおりに拡大し、真の成長ドライバーに育成していきます。
さらに「再生誘導材料」、「フィルム海外展開」、「分離膜」の3分野を今後の重点拡大分野と位置づけ、積極的な事業開発に取り組みます。また、製品のライフサイクルが短期化するなかで、新製品開発を加速させるためには、社外との協業を活用するオープンイノベーションがますます重要になってきており、骨再生誘導材のように、大学との協業から事業化の検討が進み成果が期待できる事例も出てきております。
今後も積極的にオープンイノベーションを取り入れながら、新製品開発を加速していきます。
③国内事業の競争力強化
コスト競争力は、企業の競争力の源泉であり、コストダウンは経営の常道として継続的に取り組むべき課題であります。原料の調達構造の改革に加えて、生産設備の再編や遊休地への事業誘致など国内事業所の構造改革を進めていきます。また事業部門、スタッフ部門を問わず、コストダウン目標と施策を設定し、計画に対する進捗の管理を徹底するなどして、国内事業の確実な競争力強化に努めます。
④資産効率の改善
衣料繊維の分野については、これまで設備縮小・廃棄を伴う構造改革を躊躇することなく進め、資産効率の改善に努めてきました。また、スペシャルティ事業にあっても、事業環境の変化など収益性が低下した事業の見直しを進めております。
具体的な取組としては、ブラジルにおける繊維事業を休止いたしました。今後も、ポートフォリオ改革の視点に立ち、事業層別管理を徹底するなか、グループ会社と一体となって資産効率を重視した経営を継続いたします。
⑤グローバル経営機能の強化
海外展開を加速し、事業拡大を実現するためには、グローバルにグループ経営できる機能を強化することが重要であります。具体的には、グローバルな業績管理体制の強化に努めるなど、組織運営を見直すとともに、それを支えるIT基盤の整備を進めております。さらに、グローバルな人材の確保と育成のための制度改革も行います。
当社グループは、これらのアクションプランを着実に実行し、グローバルに社会貢献できる会社、新しい技術、製品を創り続ける、成長力と安定性を備えた「強い会社」をめざしてまいります。
(会社の支配に関する基本方針)
当社は、平成29年5月11日に開催された取締役会において、「当社株式の大量買付行為への対応策(買収防衛策)」(以下「本プラン」といいます。)の更新を決定しました。本プランは、平成29年6月28日開催の当社定時株主総会(以下「本定時株主総会」といいます。)において、出席株主の議決権の過半数の賛同を得て可決されております。
(1)当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要
当社は、上場会社として、株主の皆様による当社株券等の自由な売買を認める以上、当社の支配権の移転を伴う大量買付行為に応じるべきか否かのご判断は、最終的には株主の皆様の意思に基づき行われるべきだと考えております。
しかしながら、最近の我が国の資本市場における株券等の大量買付行為の中には、現経営陣の賛同を得ず一方的に行為を強行する動きも見受けられ、①対象会社に対し高値買取の要求を狙う買収である場合や、重要な資産・技術情報等を廉価に取得するなどして会社の犠牲の下に大量買付者の利益実現を狙う買収である場合、②株主の皆様に株式の売却を事実上強要するおそれがある買収である場合、③株主の皆様に十分な検討時間を与えず、また対象会社の経営陣との十分な協議や合意等のプロセスを経ることなく行われる買収である場合、④対象会社の企業価値向上のために必要な従業員、取引先、お客様等の利害関係者との関係を損なうおそれのある買収である場合等、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益を著しく毀損するおそれがあるものも少なくありません。
当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方としては、当社の財務および基本理念、事業内容、コアテクノロジーを十分理解し長期的視野に立って企業価値ひいては株主共同の利益を高めることを目的とする者であるべきだと考えます。したがいまして、当社は、上記のような当社の企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれのある不適切な大量買付行為またはこれに類似する行為を行う者は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として適切ではなく、このような行為を抑止するための枠組みが必要不可欠であると考えております。
(2)基本方針の実現に資する特別な取組みの内容の概要
当社は、綿紡績を祖業としつつ、その後は化学繊維、合成繊維へと事業を拡大、その後には、フィルム、機能樹脂、スーパー繊維、機能膜、診断薬用酵素等の市場へも参入、以来、これらの製品に代表されるスペシャルティ事業の拡大を進めてきました。130年を超える歴史を通じて、当社は、「重合・変性」「加工」「バイオ」のコア技術を育むとともに、販売、開発、生産が一体となって、顧客の要請にきめ細かく応えていくビジネスモデルをつくり上げてきました。このビジネスモデルをもとに、さらに成長軌道に乗せるため、5つのアクションプランを設定し取り組むことで、事業の維持・拡大を図っています。
当社は、企業価値を「利益、キャッシュフロー、資産効率等の経済的価値」と「ステークホルダーからの信頼・評価を含めた社会的価値」の両方で構成されると考えており、これら両面から企業価値を高めていきます。
(3)基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの内容の概要
①本プランの概要
本プランは、大量買付者が大量買付行為を行うにあたり、所定の手続に従うことを要請するとともに、かかる手続に従わない大量買付行為が行われる場合や、かかる手続に従った場合であっても当該大量買付行為が当社の企業価値ひいては株主共同の利益を著しく毀損するものであると判断される場合には、かかる大量買付行為に対する対抗措置として、原則として新株予約権を株主の皆様に無償で割り当てるものです。また、会社法その他の法律および当社の定款上認められるその他の対抗措置を発動することが適切と判断された場合には当該その他の対抗措置が用いられることもあります。
本プランに従って割り当てられる新株予約権(以下「本新株予約権」といいます。)には、大量買付者およびその関係者による行使を禁止する行使条件や、当社が本新株予約権の取得と引換えに大量買付者およびその関係者以外の株主の皆様に当社普通株式を交付する取得条項等を付すことが予定されております。
本新株予約権の無償割当てが実施された場合、かかる行使条件や取得条項により、当該大量買付者およびその関係者の有する議決権の当社の総議決権に占める割合は、大幅に希釈化される可能性があります。
②本プランの有効期間
本プランの有効期間は、本定時株主総会の終結の時から平成32年3月期に関する定時株主総会の終結の時までとします。
(4)本プランが基本方針に沿い、当社株主の共同の利益を損なうものではなく、当社役員の地位の維持を目的とするものではないことおよびその理由
本プランは、以下の理由により、上記(1)の基本方針の実現に沿うものであり、当社株主の共同の利益を損なうものではなく、また当社役員の地位の維持を目的とするものでもないと考えております。
①買収防衛策に関する指針(経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」)の要件等を完全に充足していること
②企業価値ひいては株主共同の利益の確保または向上を目的として更新されていること
③株主意思を重視するものであること
④独立性の高い社外者(独立委員会)の判断の重視
⑤対抗措置発動に係る合理的な客観的要件の設定
⑥独立した地位にある第三者専門家の助言の取得
⑦デッドハンド型買収防衛策やスローハンド型買収防衛策ではないこと
なお、本プランの詳細につきましては、インターネット上の当社のウェブサイト(http://www.toyobo.co.jp/news/2017/)に掲載されている平成29年5月11日付「当社株式の大量買付行為への対応策(買収防衛策)の更新に関するお知らせ」をご参照ください。